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8 王国の宝玉
8ー5 『初回』の客
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8ー5 『初回』の客
準備が整いジニアス王国からの使者を部屋に通せたのは夜半過ぎのことだった。
部屋で迎えた使者は、あきらかに不機嫌だった。
「長い時間待ったのだ、それに見合うだけのものであることをお互いのために祈るよ」
俺の前に腰を下ろした男は、世の高い若い男だった。顔は、強面だがなかなか精悍だ。さすが軍事国家の使者だけあって体は、服の上からでもわかるぐらい逞しい。薄い金髪に青い瞳をしているその男は、ウィズと名乗った。
ウィズは、ルトが運んできたお茶と菓子を見て目を丸くした。
「なんだ、これは?」
「お茶と菓子です」
俺が答えるとウィズは、呆れたように俺を見た。
「まさか、本当に最初の夜は、寝ないつもりか?」
「それが『初回』の約束ですから」
俺が答えるとウィズは、鼻を鳴らした。
「お茶を飲んでる間に国が失くなってることがあるかもしれんぞ?」
「そうですか」
俺は、口許を綻ばせた。
「そうなるのであれば、仕方ないことでしょう」
「仕方がない?お前のせいで国が滅びるんだぞ?」
ウィズが脅すように言うので俺は、にぃっと笑った。
「そのときは、俺も死にますから」
ウィズは、俺をしばらく見つめていたが、ぷっと吹き出した。
「ふはっ!おかしな奴だな」
ウィズは、ふっと笑みを浮かべると俺に向き合った。
「いいだろう。お前に付き合ってやる
」
俺たちは、しばらくとりとめのない話をした。
ウィズは、ジニアス王国の武官であること、今回は、ジニアス王国よりの親書を持ってきたこと。
「そして、王に降伏か、戦争か選ぶように迫ったところ、王が即答できないと答えた。そして、自分が答えを出す間、ここでお前と遊んでこいと言われたんだが」
ウィズが不意に俺の手に触れた。
「男娼など、と思ったが、なかなか面白そうだな、お前は」
「ルシウスです」
俺が言うとウィズが奇妙な顔をしたので俺は、繰り返す。
「ルシウス・エルターク。それが俺の名前です」
「ふん」
ウィズがにやりと笑った。
「ルシウス、か」
準備が整いジニアス王国からの使者を部屋に通せたのは夜半過ぎのことだった。
部屋で迎えた使者は、あきらかに不機嫌だった。
「長い時間待ったのだ、それに見合うだけのものであることをお互いのために祈るよ」
俺の前に腰を下ろした男は、世の高い若い男だった。顔は、強面だがなかなか精悍だ。さすが軍事国家の使者だけあって体は、服の上からでもわかるぐらい逞しい。薄い金髪に青い瞳をしているその男は、ウィズと名乗った。
ウィズは、ルトが運んできたお茶と菓子を見て目を丸くした。
「なんだ、これは?」
「お茶と菓子です」
俺が答えるとウィズは、呆れたように俺を見た。
「まさか、本当に最初の夜は、寝ないつもりか?」
「それが『初回』の約束ですから」
俺が答えるとウィズは、鼻を鳴らした。
「お茶を飲んでる間に国が失くなってることがあるかもしれんぞ?」
「そうですか」
俺は、口許を綻ばせた。
「そうなるのであれば、仕方ないことでしょう」
「仕方がない?お前のせいで国が滅びるんだぞ?」
ウィズが脅すように言うので俺は、にぃっと笑った。
「そのときは、俺も死にますから」
ウィズは、俺をしばらく見つめていたが、ぷっと吹き出した。
「ふはっ!おかしな奴だな」
ウィズは、ふっと笑みを浮かべると俺に向き合った。
「いいだろう。お前に付き合ってやる
」
俺たちは、しばらくとりとめのない話をした。
ウィズは、ジニアス王国の武官であること、今回は、ジニアス王国よりの親書を持ってきたこと。
「そして、王に降伏か、戦争か選ぶように迫ったところ、王が即答できないと答えた。そして、自分が答えを出す間、ここでお前と遊んでこいと言われたんだが」
ウィズが不意に俺の手に触れた。
「男娼など、と思ったが、なかなか面白そうだな、お前は」
「ルシウスです」
俺が言うとウィズが奇妙な顔をしたので俺は、繰り返す。
「ルシウス・エルターク。それが俺の名前です」
「ふん」
ウィズがにやりと笑った。
「ルシウス、か」
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