正しい子供の作り方

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
9 / 25
1 転生者は、隠されたい。

1ー9 ティーナ様

しおりを挟む
 1ー9 ティーナ様

 夕食時、フェリオス様は、食堂に現れなかった。
 ラキアスさんは、僕にもう一人のお子であるティーナ様を紹介してくれた。
 ティーナ様は、明るいふわふわの柔らかそうな金髪を肩までで切り揃えた可愛らしい女の子だった。
 だが。
 その青いつぶらな瞳は、落ち着きがなくきょときょとしている。
 常に何かに怯えているようだ。
 僕は、ティーナ様の前に片膝をつくと彼女の目を見つめて微笑んだ。
 「新しい家庭教師のダニー・トールズです。よろしくお願いします、ティーナ様」
 「かていきょーしのしぇんしぇい?」
 小さな声で訊ねられて僕は、頷いて見せる。
 「そうです。これから一緒にお勉強しましょうね」
 「おべんきょう?」
 ティーナ様が視線をさ迷わせる。
 まだ3歳とはいえ、なんだか不安な様子に僕は、違和感を覚えた。
 ラキアスさんを見るとラキアスさんも不安げな眼差しをしているし。
 どういうことかな?
 後でティーナ様のこともラキアスさんに確認しなくては。
 そう思いながら僕は、食卓についた。
 僕は、ティーナ様の隣の席だったのでそっと彼女の様子をうかがうことができた。
 ティーナ様は、まだ3歳。
 なんとか小さなスプーンを手に持って食事をとっていたが少しスープをテーブルに溢してしまった。
 「ご、ごめんなしゃい!」
 みるみるうちにティーナ様の目に涙が溜まり溢れ落ちていく。
 「ごめんなしゃいっ!」
 「いいんですよ?ティーナ様」
 僕は、すぐにティーナ様の溢したスープを自分のナプキンで拭った。
 子供が食事を溢すなんてよくあることだし。
 それにしては、ティーナ様の怯えようが奇妙だ。
 僕は、とにかくティーナ様を落ち着かせようとそっと頭を撫でた。
 「ティーナ様は、お一人で食事ができるのですね。そのお年で偉いですよ?」
 ティーナ様がひっくと泣きながら僕を見上げる。
 「ティーナ、えらい?」
 「そうです。えらいです」
 僕は、それからゆっくりと時間をかけてティーナ様と一緒に食事をした。
 ティーナ様は、少しでも溢したりすると、その度にびくついていた。
 何かを恐れているように。
 どういうことだ?
 もしかして今までの家庭教師の中に食べ物を溢すとひどく叱る者がいたのかな?
 でも、この幼さだし。
 一人で食事ができるだけでもすごいと思うんだけど。
 食事がすむとティーナ様は、お付きのメイドに連れられて部屋へと戻っていった。
 何度も僕を振り返る様に僕の胸は、ちくっと痛んでいた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...