正しい子供の作り方

2 転生者は、愛されたい。

2ー1 小川の畔で

　２ー１　小川の畔で

　翌日から僕は、二人に対する授業を始めるつもりだった。
　しかし。
　ティーナ様は、ともかくフェリオス様は、勉強部屋に現れもしない。
　僕は、ティーナ様に文字を覚えるための絵本を見せている間に、ラキアスさんに問いかけた。
　「フェリオス様は、どちらに？」
　「フェリオス様は、川に出掛けられました」
　川ですと？
　この屋敷の裏に小川があってそこに朝早くからフェリオス様は、一人出掛けられているのだとか。
　いやいや！
　一人で出掛けさせるなんてダメでしょ？
　僕は、ラキアスさんにティーナ様を頼むとフェリオス様のもとへと急いだ。
　屋敷の裏には小さな森があり、そこを奥へと進んでいくと開けた場所があり小川が流れていた。
　透明なきれいな水が流れていて、日の光りにきらきら輝いている。
　僕は、小川に近づくと辺りを見回した。
　フェリオス様は、小川の側の木の根本に腰を下ろして何やら紙に書き付けているようだ。
　そっと近づいて覗き込む。
　それは、美しい絵だった。
　白い紙に木炭で描かれた風景のスケッチに僕は、思わず息を飲んだ。
　わずか８歳の子供が描いたとは思えない美しいスケッチだった。
　と。
　僕に気付いたフェリオス様が絵を自分の背後に隠して僕を睨み付けた。
　「何しに来た？」
　「散歩です」
　僕は、にっこりと笑うとフェリオス様の隣に腰を下ろした。
　「今日は、いい天気で。屋敷の中にとじ込もって過ごすにはもったいないので」
　僕は、そう言うとのんびりと小川の方を眺めた。
　ほんとに美しい場所だ。
　もしも僕に絵心があれば僕だって絵の一枚でも描いていることだろう。
　フェリオス様は、しばらく警戒していたがふん、と鼻を鳴らすと再びスケッチに向かい出した。
　僕は、知らん顔していたがちらちらとフェリオス様の方を伺った。
　フェリオス様は、僕のことなんて無視してただ絵を描いている。
　空を見る。
　青い眩しい空を鳥たちが歌いながら飛んでいくのが見えた。
　そよ風は、心地よくて。
　僕は、久しぶりにくつろいでいた。
　「なんでそんなものつけているんだ？」
　突然の質問に僕は、意表をつかれて目を瞬いた。
　ちらっと横を見るとフェリオス様は、夢中で絵を描き続けている。
　一瞬、気のせいかと思ったけど、しばらくしてもう一度、フェリオス様が僕にきいた。
　「そのメガネ、なんでつけてるんだ？」
　はい？
　僕は、なんと答えるべきか迷ったけどいつもと同じように返事をした。
　「近眼なので」
　「嘘つくな！」
　フェリオス様が僕に声を荒げる。