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第10章 兄と弟
10ー11 政略
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10ー11 政略
「属国にされるのが嫌だとはいえ、わたしが婚約者になる理由がわかりません。それに、第一、ムスタファ王国と我がメルロープ王国では、我が国の方が大国なのではないですか?」
わたしが質問するとルシーディア様の表情が曇った。
「じつは、な」
ルシーディア様が話し始めた。
「我が国の穀物倉と呼ばれる南部のルクラシア伯爵領が近年不作続きでね。他の領地も似たような状態が続いている。つまり、今、我が国は、経済的に困窮しているんだ」
ルシーディア様が続ける。
「この状況に乗じて聖女候補であるリータと私を婚約させ我が国を属国化しようというのが相手の思惑だろうが、私は、それを阻止したい」
「なら、別のふさわしい令嬢をお探しください」
わたしは、ルシーディア様にきっぱりと伝えた。
だが、ルシーディア様は、一歩も引くことはなかった。
「君以上にふさわしい令嬢は、いないよ、カイラ」
「でも」
「なにより、私は、君が好きなんだ」
ルシーディア様がわたしに向かって身を乗り出して力説した。
「どうか、私の婚約者になって欲しい、カイラ・ルドクリフ」
「しかし」
わたしが言いかけるとルシーディア様は、思い出したように付け加えた。
「このことは、聖女アニノマス様も望んでおられる」
「アニノマス様が?」
わたしがきくとルシーディア様が勝ち誇ったように言い放った。
「そうだ。聖女様のお望みでもあるんだ、カイラ。あきらめて私の婚約者になってくれないか?」
わたしは、不承不承に頷いた。
「だけど、これは、形だけの婚約ですよ。わたしは、王妃になんてなるつもりはありませんから」
「わかっている、カイラ」
ルシーディア様は、笑顔でわたしに告げた。
「これは、あくまでも我がメルロープ王国を守るための契約だ。いつでも婚約破棄することはできるから安心してくれたらいい」
「約束、ですよ、ルシー」
わたしは、確認した。
ルシーは、満面の笑みでわたしに約束した。
「もちろんだ、カイラ」
その日、『ドリー』に帰ったわたしのもとには『グリンヒルデ』からの迎えの馬車が待っていた。
「ルドクリフ辺境伯がお待ちです」
御者に告げられてわたしは、ため息をついた。
ややこしいことにならなければいいのだが。
「属国にされるのが嫌だとはいえ、わたしが婚約者になる理由がわかりません。それに、第一、ムスタファ王国と我がメルロープ王国では、我が国の方が大国なのではないですか?」
わたしが質問するとルシーディア様の表情が曇った。
「じつは、な」
ルシーディア様が話し始めた。
「我が国の穀物倉と呼ばれる南部のルクラシア伯爵領が近年不作続きでね。他の領地も似たような状態が続いている。つまり、今、我が国は、経済的に困窮しているんだ」
ルシーディア様が続ける。
「この状況に乗じて聖女候補であるリータと私を婚約させ我が国を属国化しようというのが相手の思惑だろうが、私は、それを阻止したい」
「なら、別のふさわしい令嬢をお探しください」
わたしは、ルシーディア様にきっぱりと伝えた。
だが、ルシーディア様は、一歩も引くことはなかった。
「君以上にふさわしい令嬢は、いないよ、カイラ」
「でも」
「なにより、私は、君が好きなんだ」
ルシーディア様がわたしに向かって身を乗り出して力説した。
「どうか、私の婚約者になって欲しい、カイラ・ルドクリフ」
「しかし」
わたしが言いかけるとルシーディア様は、思い出したように付け加えた。
「このことは、聖女アニノマス様も望んでおられる」
「アニノマス様が?」
わたしがきくとルシーディア様が勝ち誇ったように言い放った。
「そうだ。聖女様のお望みでもあるんだ、カイラ。あきらめて私の婚約者になってくれないか?」
わたしは、不承不承に頷いた。
「だけど、これは、形だけの婚約ですよ。わたしは、王妃になんてなるつもりはありませんから」
「わかっている、カイラ」
ルシーディア様は、笑顔でわたしに告げた。
「これは、あくまでも我がメルロープ王国を守るための契約だ。いつでも婚約破棄することはできるから安心してくれたらいい」
「約束、ですよ、ルシー」
わたしは、確認した。
ルシーは、満面の笑みでわたしに約束した。
「もちろんだ、カイラ」
その日、『ドリー』に帰ったわたしのもとには『グリンヒルデ』からの迎えの馬車が待っていた。
「ルドクリフ辺境伯がお待ちです」
御者に告げられてわたしは、ため息をついた。
ややこしいことにならなければいいのだが。
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