上 下
137 / 176
第13章 暗黒の大地へ

13ー5 警護

しおりを挟む
 13ー5 警護

 わたしは、深いため息をついた。
 それは、ラネア様に命じられた任務のことを考えてのことだった。
 わたしに与えられた任務。
 それは、キルハ様の警護だった。
 『キルハ・ダグランディスをサリタニア王立魔法学園の生徒として受け入れます』
 それは、思いがけない言葉だった。
 キルハ様は、投獄されていたが尋問は、はかどってはいなかった。
 というか、まったく何も聞き出せていない。
 この事件の背後に何があるのか。
 それを学園で共に過ごしながら聞き出してほしい。
 それがわたしの任務だった。
 でも、これは、ていのいい厄介払いじゃない?
 というか、キルハ様をエサにして内外のキルハ様に生きていられたら困る方々からの刺客をつり上げるってことだよね?
 ちなみにキルハ様は、王城の地下の牢獄に投獄されている間にかなり過酷な尋問を受けていたらしい。
 それでもキルハ様は、口を割らなかった。
 敵は、キルハ様を亡き者にして事件の証拠隠滅をはかってくるに違いない。
 これは、気を引き締めてかからなければ。
 そうわたしが思っていたとき、不意に誰かの話しかけてくる声がきこえた。
 「カイラ」
 声の主は、ルシーディア様だった。
 はいっ?
 わたしは、驚いてすぐに一歩ひいて礼をとろうとした。
 だが、ルシーディア様は、わたしを押し止めた。
 「カイラ、君、こんな夜更けに何をしているんだ?」
 ルシーディア様がそっと手を伸ばしてわたしの頬に触れてきた。
 「すっかり体が冷えているじゃないか」
 わたしは、ルシーディア様に急に触れられてあわあわしてしまっていた。
 「は、はひっ!」
 わたしは、失礼にならないようにルシーディア様の手から離れようとしたがルシーディア様は、それを許してくれなかった。
 「これを」
 ルシーディア様は、着ておられた上着をわたしの肩にかけてくれた。
  ふわりとルシーディア様の匂いがして。
 わたしは、どきどきしていた。
 しばらくわたしたちは、見つめあっていた。
 わたしは。
 ルシーディア様にいろいろいいたいことがあった筈だったのだが、頭が真っ白になっていた。
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

堅物監察官は、転生聖女に振り回される。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,959pt お気に入り:153

伯爵令嬢は執事に狙われている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,861pt お気に入り:459

妻が遺した三つの手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,014pt お気に入り:47

旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,018pt お気に入り:182

真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,832pt お気に入り:246

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:8,534pt お気に入り:1,961

処理中です...