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第13章 暗黒の大地へ

13ー6 口づけ

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 13ー6 口づけ

 「キルハ・ダグランディスのことだが」
 ルシーディア様が口を開いた。
 「こちらで調べたことだが、どうやら父親は、魔族の者らしい」
 「魔族ですか?」
 魔族というのは、海を隔てたところにあるという暗黒大陸にあるという魔界国にすむ人々のことだ。
 人とは違う頑強な体や、強力な魔力を持つといわれている。
 「これは、ムスタファ王国にいるキルハの祖父であるダグランディス公爵から聞き出したことだ」
 ダグランディス公爵は、今回のキルハ様のことは、まったく関知していなかったとか。
 マジですか?
 ともかくキルハ様は、ムスタファ王国からの留学生ということになるわけだった。
 「カイラ、君には、危険な任務を押し付けることになるが、申し訳ない」
 ルシーディア様が問われたのでわたしは、答えた。
 「いえ。 大丈夫です」
 わたしは、ルシーディア様に笑いかけた。
 なぜか、ルシーディア様は、それを見て黙り込まれた。
 なんだか、頬がほのかに赤い?
 「どうされましたか?ルシーディア様」
 わたしは、何気なくルシーディア様に手を伸ばしてその頬に指先で触れた。 
 最近、忙しいようだし無理をされているのでは。
 わたしは、ルシーディア様が心配だった。
 この上、ルシーディア様にまで何かあったら。
  このメルロープ王国にとって大変な損害だ。
 わたしがルシーディア様を見つめているとルシーディア様は、手で口許を押さえて呻かれた。
 「・・卑怯だ・・」
 はい?
 それは、一瞬の出来事だった。
 ルシーディア様がわたしを不意に抱き寄せられて。
 そして。
 そっと唇を重ねられた。
  かすかに。
 ルシーディア様の好まれるお茶の香りがした。
 わたしがぼぅっとしているとルシーディア様がそっと手をとってわたしを部屋へと導かれる。
 「もう、休んだ方がいい」
 なんだかぶっきらぼうな態度。
 横顔の頬が赤い?
 わたしは、大人しくルシーディア様に手をひかれて部屋に戻った。
 ルシーディア様は、わたしを子供を寝かしつけるかのようにベッドに横にならせるとそっとわたしの額に口付けられた。
 真っ赤な顔をしてルシーディア様は、呟かれた。
 「おやすみ、カイラ」
 そうしてルシーディア様は、部屋を出ていかれた。
 わたしは、というと。
 なんだか、胸がわきわきして朝まで眠れない時を過ごすことになったのだった。
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