異世界転生したものの全てを失った俺は、奈落で奴隷王子の騎士になる

トモモト ヨシユキ

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第3章 神都の覇者

3ー1 入学試験

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 3ー1 入学試験

 入学試験の日、俺は、魔界からきた若干14歳のロイド・ヘルレイザー辺境伯として入学試験へと赴いた。
 俺は、灰色の三つ揃いを身に付けてウルマグライン魔法学園へとヘルレイザ-辺境伯家の紋章のついた立派な黒毛の馬たちにひかれた黒い大きな馬車に乘って向かった。
 だが、入試会場では一人悪目立ちをしていた。
 どう考えても俺だけ浮いている。
 14歳の子供たちに混じるにはちょっと俺は、とうがたちすぎていた。
 しかも、今日の俺には、三つ揃えを着た暗黒街のラスボスのような貫禄があった。
 まるで高校受験に来た父兄だ。
 俺は、気まずさを感じていた。
 いくつかの教室に別れて試験が始まると俺は、ちょっとホッとしていた。
 試験自体は、なんてこともなかった。
 腐っても俺は、故国の魔法学園を卒業しているのだ。
 問題は、午後からの魔法の実技の方だった。
 魔法の実技試験で俺たちが求められたのは、炎でも水でも氷でもなんの魔法を使ってもいいからその力で数メートル離れた的を狙うだけのものだった。
 うん。
 俺は、ホッとしていた。
 もっとすごいことをして見せなきゃいけないのかと思っていた。
 受験生たちは、数組に別れて試験を受ける。
  俺は、グループの中で頭一つぐらい背が高くて目立っていた。
 俺のグループを受け持った試験官が俺をじろりと見た。
 「ここは、入学試験の会場なんだが?」
 その緑の髪の小柄な女性の試験官は、俺に突き刺さるような視線を送った。
 俺は、それを苦い笑顔で受け流した。
 「俺は、入学試験を受けている受験生です」
 「本当か?どう見ても成人にしか見えないが」
 はい。
 俺は、心の中で頷いた。
 あなたは、正しいです。
 俺は、もう20歳を過ぎた大人でここにいる連中よりも少なくとも6歳は、年上です。
 でも、それが何か?
 俺は、にっこりと微笑むと試験官に答えた。
 「よく言われるんです。俺、すごく老けてるから」
 「うむ?」
 試験官が少し考え込んだ。
 だが、すぐに彼女は、軽く咳払いして気を取り直したように告げた。
 「では、これから魔法の実技試験を始める!」
 それからこのグループの前方にいた受験生から試験が始まった。
 俺は、どうやら6番目のようだ。
 全部で15人ぐらいいるからちょうど真ん中ぐらいか。
 俺がぼんやりと考えていると前方から歓声が上がった。
 「すごい!」
 「さすがは、神族の末裔だ!」
 俺は、前方に目をやった。
 金色の髪の美少女がどや顔で立っている。
 試験官が満足げに頷く。
 「さすがは、ユーリス様。すばらしい!」
 ええっ?
 俺は、何があったのかと思い耳をそばだてる。
 どうやら神族の血をひいた少女が的を射ぬいたらしい。
 俺は、ふん、と少女を見た。
 まあまあ、やれる者もいるようだな。
 だが、俺の予想はすぐに裏切られた。
 試験官は、満面の笑みを浮かべて言った。
 「その距離から的にかするとは、さすがですね、ユーリス様」
 
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