魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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14 恋心とスライムと紳士

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    「大変だ!ハジメ、ヴィス!」
     ばんっと扉が開かれ、イオルグが駆け込んできた。
    「あの王女様が!」
     「ええっ?」
      俺たちは、硬直した。
     ベッドの上の俺とヴィスコンティに気づいて、イオルグが立ち止まり背を向けた。
    「お前ら、そんなことしてる場合じゃねぇぞ!」
    俺たちは、慌てて体を離した。
   なんか、イオルグの乱入のおかげで助かったかも。
    俺は、ホッと吐息をついた。
   「なんです?イオルグ」
    ヴィスコンティが服を直しながらきくと、イオルグが振り向いて言った。
   「あの王女様がやってくれたぜ!」
    「な、何があったんだよ?イオルグ」
     俺は、服を着ながらきいた。
    「クリスタお王女がまた何かしたのか?」
      「ああ」
     イオルグが言った。
    「2人とも来てくれ」
     俺とヴィスコンティは、イオルグについて王女の休んでいる客間へと向かった。
   部屋の前には、ビザークと侑真とルファスの姿があった。
   「どうしたんだ?みんな」
    俺が問うとビザークが険しい表情を浮かべて俺を見た。
   「厄介なことになったぞ、ハジメ」
    「ええっ?」
     俺は、部屋の扉を押し開いて中を見た。
   中には、瘴気が立ち込めていた。
   俺は、一瞬、身を引いた。
    部屋の中は、細い糸のようなものに包まれていた。そして、その中央にあるベッドには、動かなくなった王女の体があった。
    「クリスタ?」
     俺が中に入ろうとしたのをヴィスコンティが止めた。
    俺は、ヴィスコンティを見た。
    彼の視線は、部屋の奥へと向いていた。
   俺は、部屋の奥を見た。
    そこには、巨大な毒々しい紋様の浮かび上がった蜘蛛が巣を張っていた。
    「クリスタを助けないと!」
     俺が言うと、ヴィスコンティが頭を振った。
   「もう、遅い」
    蜘蛛は、王女の体を突き破って生まれた様だった。
    「どうしてこんな・・」
     「あれは、人間の体内に卵を産み付け、それを餌にして成長するタイプの魔物です。おそらく、王女が王都を出る前に卵を産み付けられていたのでしょう」
    ヴィスコンティは、空中から剣を取り出すと部屋の中へと踏み込んだ。
   「とにかく、これを片付けましょう」

   ヴィスコンティとイオルグが巨大蜘蛛を倒したが、王女は、すでに死に絶えていた。
   俺たちは、王女の体をきれいに整えてやり、客間に安置し、入り口にオークの兵を見張りに立てた。
    俺は、色とりどりの花を王女の上に降らしてやった。
    こんなこと、なんの救いにもなりはしないが。
    それから、俺たちは、俺の部屋へ集まった。
   「王国は、なんでこんなことを?」
    俺がきくと、ヴィスコンティが答えた。
   「たぶん、あなたの持つ魔王のコアを手に入れることが目的でしょう」
    「魔王のコア?」
     「このダンジョンのコアのことです、ハジメ」
    ヴィスコンティが説明してくれた。
   「あれは、このダンジョンを形作っているものであり、魔王の命そのものでもあります」
    「なんで王国がそんなものを欲しがるんだ?」
    俺の質問にビザークが答えた。
   「ダンジョンのコアは、ありとあらゆる願いを叶える力を持っている。だからこそ、それを守るために魔王がいるんだ」
     「そのためにクリスタ王女を殺しても手に入れたいものなのかよ?」
    俺は、憤っていた。
   「王国の奴等、人の命をなんだと思ってるんだ!」
    「しかし、これで王国は、ここを攻撃する理由ができたわけだ。俺たちは、王女様を殺した大犯罪者なんだからな」
    イオルグが言った。
    マジか?
   俺は、考えていた。
   どうすればいい?
   どうすれば、最悪の事態を回避できる?
   「いっそ、こっちから攻撃を仕掛けたらどうだ?ハジメ」
    イオルグが、凶悪な微笑みを浮かべた。
   「攻撃は、最大の防御、だぜ?」
    「王女が、無事に戻れば、問題はないんじゃないのか?」
    ルファスが言った。
   「今、研究してるスライムに、食べたものと同じ姿になるのがいるんだけど」
    「王女の遺体をスライムに食べさせるのかよ?」
    俺は言ったが、はっと気づいた。
   王女が王国に戻るとどうなるのか?
   「それ、いいかもしれないな、ルファス」
   俺は、ルファスに訊ねた。
   「同じになるのは姿だけか?記憶とか、性格は?」
   「それは、まだ、研究中で」
   「わかった」
    俺は、みんなを集めて、小声で計画を伝えた。
   「それは・・」
    ヴィスコンティが何か言いかけたのを遮って、侑真が言った。
   「いい考えだと思うぜ、ハジメ」
    うん。
   俺は、頷いた。
   「見てろよ!王国の奴等に泡をふかせてやる!」

     1週間後。
   俺と王女クリスタとヴィスコンティとイオルグは、王都へと出発した。
   王女が乗ってきていた王家の馬車は、もう帰ってしまっていなかった。
   だから、俺たちは、うちの魔導車で王都へと向かうことにした。
   本当は、侑真とルファスも行く気満々だったんだが、この2人は、止めておうほうがいいということで、ビザークと留守番をすることになった。
     俺の留守の間のダンジョンのことは、俺の髪を少し食べさせて姿をうつしたスライムの影武者とイグドールに任せることにした。
   俺たちは、本当は、1ヶ月ぐらいかかる道のりを1日ほどで進むことができた。
   俺が全員の乗った魔導車を転送の術で、王都の近くへと転移したのだ。
   俺が行くことには、ヴィスコンティは、反対していたのだが、俺は、かまわず王都に同行した。
   魔王としてではなく、王女クリスタの世話係のメイドとして。
   もともとルファスの体は、小柄だったし、女顔なので、女装したら女の子にしか見えなかった。
   「もう一度、打ち合わせをするぞ」
   メイド姿の俺は、全員に聞こえるように話した。
    「ヴィスコンティは、俺とクリスタの護衛として魔王ルファスが命じて同行している。イオルグと俺は、王女の従者として王宮へと入り込む。そこからは、相手の出方によって、作戦は、変わる。作戦Aは、様子を見つつ、内部を調査する。作戦Bは、暴れるだけ暴れて、王宮を破壊して逃げる、だからな」
     「わかりました」
     ヴィスコンティが運転しながら頷いた。
    俺は、なんだか顔がぼっと熱くなってきた。
    あの時以来、俺は、ヴィスコンティのことを避け続けていた。  
   だって。
   ルファスのことが好きなくせに、なんで、俺にあんなことしたんだよ?
    俺は、視線を感じて顔を上げた。
   すると、助手席に座ったイオルグが興味深そうにこっちを見ていた。
   俺は、黙ってイオルグを睨み付けた。
   イオルグは、ニヤリと笑った。
   なんだよ?
   俺は、ムッとしていた。
   何か、言いたいことがあるのかよ?
   俺は、ぷいっと横を向くと、クリスタ王女の方を見た。
   金髪に青い瞳。透き通るような白い肌。
   美しい横顔は、まさしく王女そのものだった。
   「大丈夫か?クリスタ」
    俺は、呼び掛けた。すると、クリスタ王女は、にっこりと微笑んだ。
   「ありがとう。大丈夫です、ハジメ様」
    「ハジメじゃない。俺のことは、ルーと呼んでくれ」
    
    俺は、王女に魔王がつけたメイドだったが、王女が気に入って王宮へと連れ帰ったという設定だった。
    俺たちは、王都を取り囲む巨大な壁の前に車を停めてそれを見た。
   ここが、ヴィスクール王国の王都  アルノーか。
   俺は、ごくっと息を飲んだ。
   いよいよ、だ。
   俺は、全員に言った。
   「さあ、行くぞ!」
   俺たちを乗せた魔導車は、王都へ入るゲートへ向かって走り出した。
   ゲートは、一般の人々と、王族用とにわかれている。
   俺たちは、王族用の入り口へと向かった。
   もちろん、俺たちは、門番に止められた。
   ヴィスコンティが運転席の窓を開けて顔を見せて言った。
   「王女クリスタ様をお連れした。通してくれ」
   「ヴィス。ヴィスコンティじゃないか?」
    王族用のゲートの門番を務めるのは、騎士団の団員たちだった。
   「王女って・・クリスタ王女のことか?」
    「ああ」
     「しかし、クリスタ王女は、魔王の手によって殺されたと、王が発表されたんだが」
    騎士団員がそういうのをきいたクリスタ王女が後ろの窓を開いて顔を出した。
   「私が死人に見えますか?」
     「えっ?いえ、その、しかし、王が」
     「何か、行き違いがあったのでしょう。父王には、私から直接説明いたします」
    「はっ・・しかし」
     「ここを通しなさい!」
           俺たちが王族用ゲートでわぁわぁ言っていると、後ろから来た馬車が俺たちとすれ違い様に停車して、中から初老の紳士が降りてきた。
    「何事だ?」
     ロマンスグレーの眼鏡をかけたその紳士は、ちらっとヴィスコンティを見て小さく叫んだ。
   「ヴィスコンティ、か?」
    「・・お久しぶりです、父上。いや、インダラーク伯爵」
    ヴィスコンティが頭を下げて挨拶をした。インダラーク伯爵は、騎士団員に問いかけた。
   「なぜ、この者がここに?」
    「クリスタ王女の護衛、ということじゃないかと」
    「クリスタ王女?」
     インダラーク伯爵が眉を潜めた。
   「どういうことだ?ヴィスコンティ」
    「説明は、王都のあなたの屋敷でさせていただきます。どうか、王女をあなたの屋敷へ迎えてください」
    インダラーク伯爵は、ちらりとクリスタ王女を見た。
   「いいだろう。この連中を中へ」
    インドラーク伯爵が言った。
   「責任は、すべて、私がとる」
    こうして、俺たちは、無事に王都へと潜入することに成功した。
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