魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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22 温泉で休暇を過ごしますか?

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    ミハイルが俺の中にいることがわかってからも、日々は、特に変わることはなかった。
    俺は、通信事業のことやらなんやらで、しょっちゅう王都と『魔王の杜』ダンジョンを行き来して忙しく過ごしていた。
   そうそう、王都にポーション屋とカフェの店を出すことにした。
   カフェでは、アイドルグループ『ビスマルク』の女の子たちが交代で働いてくれるし、ポーション屋は、少し大きめの家付きの店舗にして王都での拠点に使うことにしている。
    王都と『魔王の杜』ダンジョンを繋ぐ転移魔法のゲートも作ることにした。
   その方が便利だからな。
   王都側のゲートは、ポーション屋の地下室に建設中だ。
   さらに、通信販売のための荷物の運送用に飛竜を10頭ほどテイムした。
   これで、町と町の間の流通は、かなり改善されるだろう。
   物流は、空中輸送だけではなく陸路もルートの開拓をした。
   陸上輸送を担うのは、地竜と呼ばれる巨大な恐竜もどきたちだった。
   地竜は、巨大だが、大人しく、扱いやすい。
  とりあえず、5頭ほどテイムしてみたのだが、なかなかいい感じで働いてくれている。
   『魔王の杜』ダンジョンのダンジョンシティであるグランは、いつの間にか、ヴィスクール王国内では、王都に次ぐ第2の都市になっていた。
    冒険者ギルドも在中するようになり、それとほぼ同意に商業ギルドの支店もできた。
   グランの街は、上下水道も整った、極めて近代的な街へと変革されていっていた。
   だが、光が大きくなれば、闇も大きくなる。
   グランの街には、マフィアのような組織も現れていた。
  街の裏通りには、娼館が立ち並び、怪しい連中がうろつくようになっていた。
   街の平和を守るための自警団が組織されるようになった。
   その組織の長がなぜか、イオルグだということには、俺も驚きを隠せなかった。
   国王たちは、この『魔王の杜』ダンジョンとグランの街を特別扱いしてくれ、この街は、関税のかからない街として有名になっていた。
    国の内外から商人が集まり、さらに、街は、発展していった。
   事件が起きたのは、そんなある日のことだた。
      ヴィスクール王国より俺に呼び出しの手紙がきた。
   「何?王様が魔王様を呼び出しだって?」
   イオルグが憤懣やる方なしという様子で言った。
   「行く必要なんてないぞ、ハジメ。用があるなら、こっちにくればいいんだからな」
   だが。
  俺は、イオルグの意見を無視して王宮へと赴いた。
   供をしてくれたのは、ヴィスコンティと侑真だった。
   若き王  アルフレド・ヴィスクールは、俺たちを迎えるとさっそく用事を切り出した。
   「我が国の隣国であるアルカトラ王国が我が国へ救援を求めてきているのです」
 「へぇ」
   俺たちは、話し半分できいていた。
   「で?敵はどこの国ですか?」
    「国ではないのです」
   王は、俺たちに言った。
   「敵は、魔王です」
   はい?
   俺たちは、顔を見合わせていた。
   魔王だって?
  「あなた方、魔王は、今、戦いの刻をむかえているとか」
   王は、言った。
  「もしよければ、我々に力をお貸し願えませんか?欲望の魔王  ルファス、よ」
俺たちは、一旦城を辞して『魔王の杜』ダンジョンへと戻っていった。
   この知らせをきいて、1番喜んでいたのは、イオルグだった。
   「いよいよか。腕がなるぜ」
   「まてまて、イオルグ。俺たちは、戦うとはまだ決めてないんだからな」
   俺は、そう言ってからビザークたちの方を向いた。
   「俺は、この戦いに参加する気はない。ただ、魔王が他国で好き勝手するのを見ているつもりもない。ともかく、敵の様子を見てから、どうするかを決めるつもりだ」
    
       こうして俺とイオルグとヴィスコンティと侑真は、敵情視察の旅に出ることになった。   
  「今度の旅は、長くなるかもしれないな」
   そう俺が言うと、ヴィスコンティは答えた。
   「あなたは、少し休暇が必要です。あまりにも働きづめなので、この際、少し休んでください」
   「そういうわけにも」
    俺は、言いかけて止めた。
   せっかくヴィスコンティが休めと言ってくれてるんだ。俺も、その気持ちに答えるべきだろう。
   俺は、視察名目で、しばらく休暇をとることにした。
   俺たちは、いつもの魔導車に乗って出発した。
   目指すは、隣国アルカトラ王国の王都ではなくて、第2の都市であるグリニティ。
   グリニティは、水と緑の豊かな街であり、魔法学園都市としても有名だという。
   そこに、俺たちは、ヴィスクール王国からの使者として赴くわけだった。
   魔法学園都市グリニティは、ヴィスクール王国から3日ほど魔導車で行ったところにある。
   が、俺たちは、行き掛けにグリニティの手前の街  マイラに少し滞在することにした。
   マイラの街は、有名な温泉の街だった。
   前に旅したときは、貧乏旅行だったが、今回は違っていた。
   俺たちは、けっこう大きな温泉宿に宿泊することにした。
   部屋割りは、イオルグと俺、ヴィスコンティと侑真だった。
   イオルグと侑真を同室にすると侑真が酷い目にあいそうだからな。
   ともかく、休暇目的の視察旅行だ。
   俺とイオルグは、広くてきれいな宿の部屋につくと、まず宿自慢の温泉に入ることにした。
   俺たちが大浴場に向かうと、ヴィスコンティと侑真も風呂に入るところだった。
   俺は、なんだか恥ずかしくて、大きなタオルで体を隠して風呂に入った。
   浴場は、俺たちの貸し切り状態だった。
   無理もない。
   魔王に攻められるかもしれないんだから、温泉どころじゃないんだろう。
   「わぁ、温泉だぁ!」
    イオルグは、大喜びで湯船にダイブした。それを見たヴィスコンティがイオルグを叱った。
   「イオルグ、風呂には、飛び込んではいけませんよ」
   「固いこと言うなよな」
    イオルグが泳ぎながら言った。
   俺も本当は、イオルグみたいに泳ぎたかったけど、ヴィスコンティの手前、止めておくことにした。
   俺と侑真は、並んで大人しく温泉に浸かっていた。
      「変な感じだな。異世界に来てるのにハジメと温泉に浸かってるなんて」
   「まあ、俺は、こんな姿だけどな」
    俺は言って、侑真に笑いかけた。侑真は、なんだか少し顔を赤らめているような気がした。
   「そういえば」
    俺は、侑真に訊ねた。
   「ルファスがこの戦いの刻が終わったら、お前と結婚するとか言ってたけど」
   「ああ」
    侑真が頷いた。
   「そのつもりだ」
    マジか。
   俺は、肩までお湯に浸かって溜め息をついた。
   異世界で侑真は、俺の体に入ったルファスと結婚するんだ。
   変な感じ。
   「お前は?」
    侑真がきいた。
   「この戦いがすんだら、どうするんだ?ハジメ」
    「俺?」
    俺は考えた。
    「今は、とにかく魔王の戦いの刻を無事に乗りきることしか考えられないな」
    「そうか」
    侑真が俺に微笑みかけた。
   いつもの、俺のよく知ってる侑真だった。
   俺は、なんだか嬉しくなった。
   「ハジメ」
    ヴィスコンティが湯船の外から俺に声をかけた。
   「髪を洗いますよ」
    「えっ?」
     ヴィスコンティは、風呂の中に入っている俺の髪にお湯をかけて洗ってくれた。
   嬉しいけど、なんか、物足りなさを感じるのは、シャンプーがこの世界にはないからかな。
   俺は、そのうち、シャンプーとかの開発にも力を入れようと思っていた。
   ヴィスコンティは、洗った俺の髪を束ねてタオルで巻いた。
   「ありがとう、ヴィスコンティ」
    俺は、言った。
   「お礼に、背中を流してあげるよ、ヴィス」
   俺は、風呂から上がるとヴィスコンティの背後に回って、ヴィスの背中をタオルで擦った。
   やっぱり、石鹸の泡立ちがいまいちな感じがする。
   もっといい石鹸を開発しなくては、と俺は、心にメモった。
   しばらく擦ってると、ヴィスコンティが俺に言った。
   「ありがとうございます、ハジメ。今度は、私がハジメの背中を流しましょう」
   俺は、ヴィスコンティに背中を向けた。
   ヴィスは、俺の背中を何度か擦ると、手桶でお湯をかけた。
   気持ちいい。
   やっぱ、温泉は、最高だな。
   イオルグが風呂から顔を出して、俺たちを見てにやにや笑った。
   「よう、お前ら、その後は、どうなんだよ?」
   「どうって・・」
    俺が口ごもっていると、ヴィスコンティがイオルグに言った。
   「ハジメを困らせないでください、イオルグ」
   「困らせてねぇだろ、なぁ、ハジメ」
   イオルグは俺にきいた。
    「あれから、夢の方は、どうなったんだよ?もう、おさまってるのか?」
   「うん・・」
    実は、夢は、まだ続いていた。
   というか、だんだんと夢の中のミハイルが、俺に迫ってくるようになっていた。
   でも、俺は、ヴィスコンティにも、イグドールにもそんなこと言えなかった。
   だって、そうだろ?
   夢の中でミハイルに犯されそうだなんて、とても言えないよ。
   それを見透かしたかのように、イオルグが俺に言った。
   「欲求不満だから余計に言えないような夢を見るんじゃねぇの?」
   はい?
  俺は、目をしばたかせた。
   ヴィスコンティと目が合う。
  ヴィスコンティは、いつもと同じ無表情というか、微笑みを浮かべている。
   「ハジメ、体を洗いましょうか?」
   「いや、いいです」
   俺は、慌てて答えていた。
   「自分で洗うから」
    気のせいか、ヴィスコンティが舌打ちをしたような?
   うん。
   たぶん、気のせいだよね。
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