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23 スライムでドッキリ?
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マイラで休暇を楽しんだ俺たちは、魔法学園都市グリニティへと向かった。
グリニティは、巨大な湖に浮かぶ都市だった。
俺たちの乗った魔導車は、湖の上の街へと通じる橋を渡っていった。
「あっ!あそこ!」
俺は、湖の方を指差して叫んだ。
「人魚だ!」
湖の水面スレスレを群れをつくって泳いでいる美しい人魚たちを見て、俺は、車窓から身を乗り出して見惚れていた。
「あれは、この湖に住むウィンディーネたちだな。気難しくっておかねぇ連中だぜ」
イオルグが、いつになく、怯えた様子で言った。
「そういや、水の精霊とかは、お前ら、初めて?」
「うん」
俺と侑真が頷くと、イオルグが妙に神妙な様子で俺たちを見た。
「あいつらは、メスしかいねぇからな。他種族のオスと交尾して子供を産むんだ。気を付けないと、お前らなんて、すぐに騙されて拐われちまって、酷い目にあわされるぞ」
「そんなわけないだろ」
俺が笑って言うと、ヴィスコンティがポツリと呟いた。
「そういえば、イオルグは、昔、ウィンディーネに拐われたことが」
「言うな!」
イオルグが震えながら叫んだ。
「あいつらのことは、もう、思い出したくもない」
マジか?
驚いている俺たちにイオルグは、言った。
「とにかく、お前ら、気を付けた方がいいぞ。奴等は、けだものだからな」
に、肉食系女子なんだ?
俺は、怖々と水面を優雅に泳いでいる人魚たちの群れを見ていた。
「大丈夫、だ。俺が守ってやる」
侑真が俺にそっと囁いたから、俺の心臓がどくん、と跳ねた。
侑真って、こんな大人っぽかったっけ?
俺が、ぼんやりと、侑真の横顔を見つめていると、ヴィスコンティが言った。
「あれが、グリニティの街の入り口です」
橋の向こうに巨大なそそり立つ城壁が見えた。島は、この城壁に囲まれて守られていた。
俺たちは、島の入り口に並んで、グリニティの街へと入った。
白を基調とした美しい街並みに、水路が縦横無尽に張り巡らされていた。豊かで、美しく澄んだ水が流れている水路を人々が小舟を操って行き来している。
俺たちは、グリニティの中央に聳えている古い聖堂を目指して魔導車を走らせた。
そこは、この都市の名に冠されている魔法学園だった。
この魔法学園には、10才ぐらいから20才ぐらいまでの魔法使いの卵たちが集って学んでいるということだった。
学園についた俺たちを迎えたのは、はちみつ色の髪をした美しい、夢見るような淡い紫の瞳の美女だった。
「魔法学園都市グリニティへ、ようこそ。私は、この学園の理事長で、この国の第2王子 スイ・ナーダ・アルカトラです」
「そうな・・えっ?」
俺は、一瞬、聞き間違えたのかと思ったのだが、スイは、ニッコリと微笑んだ。
「私は、男ですよ。実は、この街では、ウィンディーネに狙われそうな見目のいい若者は、みな、女のふりをしているんです」
マジで?
スイは、ふざける風でもなく続けた。
「こうしていないとウィンディーネに拐われてしまいますからね。あなたたちも女の格好をしている方がいいですよ。みなさん、見目麗しい方ばかりですから」
スイの言葉は、冗談でもなんでもなかったらしくって、俺たちは、構内の一室へと案内され、それぞれに女性用の服をあてがわれ、着替えるように促された。
「仕方ないですね」
ヴィスコンティが服を着替えだした。イオルグも、だ。2人は、俺と侑真が躊躇っているのを見て、俺たちに言った。
「女装しないと、国際問題になりかねないぞ、ハジメ」
「ええっ?」
俺と侑真は、顔を見合わせた。
確かに、今、俺たちは、ウィスクール王国の使者としてこの国を訪れているわけだから、俺たちが何か問題をおこすのはまずいわけだった。
俺と侑真は、渡された服を着ることにした。
「ちなみに、この国じゃ、女装しないでもいいってことは、ブサイクってことだからな」
イオルグが言った。
「だから、外国から来る客には、全員女装させるんだとよ」
俺たちは、女装を完了した。
えっと。
さすがにヴィスコンティと侑真の女装姿は、違和感があったけど、俺とイオルグは、そうでもなかった。
なんか、複雑。
「こんな姿を父に見られたら、一生、嘲笑われそうですね」
ヴィスコンティが言うので、俺たちは、吹き出しそうになった。
スイは、俺たちを学園の理事長室へと通した。
豪華なソファセットが置かれていて、年代物の家具に囲まれたいかにもな部屋に、俺は、少し、居心地の悪さを感じていた。
スイは、ソファに腰かけている俺たちに微笑みかけた。
「あなたが、欲望の魔王 ルファス様ですね?お噂はかねがねおききしておりますよ。なんでも、滅びかけた街を再生し、国を救った英雄だとか」
はい?
俺は、驚いていた。
誰の話ですか?
「本題に入らせてもらいたいのですが」
ヴィスコンティが、スイに切り出した。
「なんでも、魔王軍に襲撃されているとか」
「ええ」
スイの表情が曇った。
「今のところ、襲撃は、止んでいるのですが、国の外れにあるダンジョンの主である嫌悪の魔王ヌイと強情の魔王 アルダが、同盟を組み、ダンジョン周辺の街を襲い出したのです。もう、2つの町が奴等に攻め落とされました。我が国の魔法師団も善戦してはいるのですが、このままだと王都エタニティまで、攻め込まれかねません」
嫌悪と強情、か。
俺は、思っていた。
どんな連中なんだ?
その日は、俺たちの歓迎パーティーがあった。
魔法学園の生徒たちも参加したパーティーは、盛大なもので、俺たちは、スイに連れ回されて何人もの国の重鎮たちに引き合わされた。
戦時下にも関わらず、パーティーは、深夜まで続き、俺は、すっかり疲れてしまっていた。
深夜過ぎにやっと、俺たちは、解放され、それぞれ、魔法学園内の王族用の部屋へと案内された。
部屋に通された俺は、ベッドに倒れ込んだ。
さすが、王族用の部屋だけあって、きらびやかな装飾品に囲まれた立派な部屋だった。
なにより、ふかふかのベッドが嬉しかった。
俺は、ベッドに横たわり、目を閉じると吐息をついた。
「また、今夜も、あいつが来るのかな・・」
俺は、呟いた。
ミハイル。
俺は、なんとか、奴を拒む方法を探していたが、実際、夢の中であいつに触れられると、俺は、抗うことができなかった。
俺は、熱い息を漏らしていた。
「あいつって?」
誰かの声がきこえて、俺は、体を起こした。
「あいつって、誰?」
俺は、身構えた。
「誰だ?」
俺は、ベッドの上に座って、回りを見回した。
部屋の中には、俺の他には、誰もいない。
「私は、誰かって?」
声の主が、くすくすと笑い声をたてた。
「さて、私は、誰でしょう?」
からかう様な物言いに、俺は、いらっとしていた。
「姿を現せ!」
不意に、頭上から小さな悲鳴のような声がきこえて、俺は、上を振り仰いだ。
すると、天井の影の中から2人の子供が現れ、ふわりと俺の前に降りてきた。
「すごいね、さすが、聖女様だ」
「私たちを影から引き出すなんて、なかなか、やるな」
それは、褐色の肌をした双子の子供たちだった。
「私は、嫌悪の魔王 ヌイ、だ」
金髪の少年が名乗った。
「ほんとに、気に入らないな。魔王の癖に中身は、聖女だなんて」
「私は、強情の魔王 アルダ、だ」
銀髪の少年が言った。
「しかも、利欲の魔王 ミハイルの魂まで持っている者」
2人は、俺に向かって手を突き出した。
その手には、黒い石が握られていた。
俺は、その石を見つめた。
すると。
石が、パチッと目を開いた。
なんだ?
俺は、その目から逃れられなかった。
「捕まえた」
金髪のヌイが笑った。
「もう、お前は、逃れることはできない」
「もう、我々のもの、だ」
銀髪のアルダが言った。
「いけ、暗黒のクルダの瞳よ。聖女を捕らえろ」
石の目が、にやりと笑ったような気がしたかと思うと、いくもの触手のようなものが俺めがけて放たれた。
それは、あっという間に俺の全身を包み込んでいった。
このままじゃ、まずい。
俺は、遠退いていく意識の中で思っていた。
なんとか、しないと。
だが、黒い触手に触れられたとたんに、俺は、全身の力が抜けていくのを感じていた。
そして、俺は、そのまま、意識をうしなってしまった。
ゆっくりと、俺が目を開くと、そこは、知らない場所だった。
「ん・・こ、こは?」
俺は、冷たくて固い石の上に寝かされていて、手足を拘束されていた。
身動きがとれずに、俺は、目だけを動かして、辺りを見た。
薄暗い地下のような場所に俺は、いた。
壁に燃える炎が、わずかに辺りを照らしている。
俺は、なんとか逃れようとして、手足を縛る鎖をガチャガチャと音をたてて引っ張ったが、まったく動きはとれなかった。
「誰か!誰か、いないのか?」
俺が叫ぶと、耳元で誰かが囁いた。
「無理だよ。もう、お前は逃げられない、ハジメ」
声のする方を見ると、そこには、あの褐色の双子がいた。
「お前たち、こんなことして、ただですむと思うなよ!」
「わぁ、怖い、ハジメ」
「俺たちを、いじめるつもり?」
2人は、くすくすと笑い声をたてた。
俺は、2人にきいた。
「お前たち、俺をどうするつもりだ?」
「お前を?」
「どうするかって?」
2人は、にたりと不気味に笑った。
「お前は、今から、私たちの奴隷、だ」
「はい?」
俺は、聞き返した。
少年たちは、俺に繰り返した。
「お前は、我々の性奴にしてやる」
「お前ら、その意味わかっていってるのか?」
俺が訊ねると、2人は、にっと笑いながら、答えた。
「知ってるよ、ハジメ」
「うんと、哭かせてやるからな、ハジメ」
2人が低く笑いながら、俺の体に手を伸ばしてきた。
ええっ?
俺は、体を強張らせて身構えていた。
こんな子供に?
「うんと、いじめて哭かせてやるからな、ハジメ」
2人は、俺のことを見下ろして、何か、透明なものを俺の体の上に落とした。
それは、もぞもぞと動き出した。
「スライム?」
俺が呟くと、ガキどもは、言った。
「ただのスライムじゃないぞ。これは、衣服だけを溶かす、特別なスライムだ」
「しかも、粘液には、誘淫剤の効果があるんだぞ」
「これで、お前なんか、いちころだ」
はい?
俺の体の上でモゾモゾしていたスライムがにじりだした。
ええ?
冷たいスライムが俺の体を覆っていく。
ぬるぬるとした気色の悪い触感に、俺は、身を捩らせる。
「やめろ!」
そのスライムは、閉じることのできない足の間にも容赦なく入り込んでくる。
運が悪いことに、 俺は、女装したままだった。スライムは、スカートを溶かしながら、俺の中心へと触手を伸ばしてくる。
ぞくぞくするような感覚に襲われて、俺は、思わず声を漏らした。
「ひぁっ!やめっ!」
「そうそう」
2人は、楽しそうに言った。
「かわいい声を聞かせてね、ハジメ」
マジかよ?
俺は、全身を這い回るスライムの感触に息をあらげていた。
嘘、だろ!
俺は、じんじんと甘く痺れてくる体の熱にたまらず、喘ぎ声を漏らした。
「あっ!・・んっ・・やっ!」
グリニティは、巨大な湖に浮かぶ都市だった。
俺たちの乗った魔導車は、湖の上の街へと通じる橋を渡っていった。
「あっ!あそこ!」
俺は、湖の方を指差して叫んだ。
「人魚だ!」
湖の水面スレスレを群れをつくって泳いでいる美しい人魚たちを見て、俺は、車窓から身を乗り出して見惚れていた。
「あれは、この湖に住むウィンディーネたちだな。気難しくっておかねぇ連中だぜ」
イオルグが、いつになく、怯えた様子で言った。
「そういや、水の精霊とかは、お前ら、初めて?」
「うん」
俺と侑真が頷くと、イオルグが妙に神妙な様子で俺たちを見た。
「あいつらは、メスしかいねぇからな。他種族のオスと交尾して子供を産むんだ。気を付けないと、お前らなんて、すぐに騙されて拐われちまって、酷い目にあわされるぞ」
「そんなわけないだろ」
俺が笑って言うと、ヴィスコンティがポツリと呟いた。
「そういえば、イオルグは、昔、ウィンディーネに拐われたことが」
「言うな!」
イオルグが震えながら叫んだ。
「あいつらのことは、もう、思い出したくもない」
マジか?
驚いている俺たちにイオルグは、言った。
「とにかく、お前ら、気を付けた方がいいぞ。奴等は、けだものだからな」
に、肉食系女子なんだ?
俺は、怖々と水面を優雅に泳いでいる人魚たちの群れを見ていた。
「大丈夫、だ。俺が守ってやる」
侑真が俺にそっと囁いたから、俺の心臓がどくん、と跳ねた。
侑真って、こんな大人っぽかったっけ?
俺が、ぼんやりと、侑真の横顔を見つめていると、ヴィスコンティが言った。
「あれが、グリニティの街の入り口です」
橋の向こうに巨大なそそり立つ城壁が見えた。島は、この城壁に囲まれて守られていた。
俺たちは、島の入り口に並んで、グリニティの街へと入った。
白を基調とした美しい街並みに、水路が縦横無尽に張り巡らされていた。豊かで、美しく澄んだ水が流れている水路を人々が小舟を操って行き来している。
俺たちは、グリニティの中央に聳えている古い聖堂を目指して魔導車を走らせた。
そこは、この都市の名に冠されている魔法学園だった。
この魔法学園には、10才ぐらいから20才ぐらいまでの魔法使いの卵たちが集って学んでいるということだった。
学園についた俺たちを迎えたのは、はちみつ色の髪をした美しい、夢見るような淡い紫の瞳の美女だった。
「魔法学園都市グリニティへ、ようこそ。私は、この学園の理事長で、この国の第2王子 スイ・ナーダ・アルカトラです」
「そうな・・えっ?」
俺は、一瞬、聞き間違えたのかと思ったのだが、スイは、ニッコリと微笑んだ。
「私は、男ですよ。実は、この街では、ウィンディーネに狙われそうな見目のいい若者は、みな、女のふりをしているんです」
マジで?
スイは、ふざける風でもなく続けた。
「こうしていないとウィンディーネに拐われてしまいますからね。あなたたちも女の格好をしている方がいいですよ。みなさん、見目麗しい方ばかりですから」
スイの言葉は、冗談でもなんでもなかったらしくって、俺たちは、構内の一室へと案内され、それぞれに女性用の服をあてがわれ、着替えるように促された。
「仕方ないですね」
ヴィスコンティが服を着替えだした。イオルグも、だ。2人は、俺と侑真が躊躇っているのを見て、俺たちに言った。
「女装しないと、国際問題になりかねないぞ、ハジメ」
「ええっ?」
俺と侑真は、顔を見合わせた。
確かに、今、俺たちは、ウィスクール王国の使者としてこの国を訪れているわけだから、俺たちが何か問題をおこすのはまずいわけだった。
俺と侑真は、渡された服を着ることにした。
「ちなみに、この国じゃ、女装しないでもいいってことは、ブサイクってことだからな」
イオルグが言った。
「だから、外国から来る客には、全員女装させるんだとよ」
俺たちは、女装を完了した。
えっと。
さすがにヴィスコンティと侑真の女装姿は、違和感があったけど、俺とイオルグは、そうでもなかった。
なんか、複雑。
「こんな姿を父に見られたら、一生、嘲笑われそうですね」
ヴィスコンティが言うので、俺たちは、吹き出しそうになった。
スイは、俺たちを学園の理事長室へと通した。
豪華なソファセットが置かれていて、年代物の家具に囲まれたいかにもな部屋に、俺は、少し、居心地の悪さを感じていた。
スイは、ソファに腰かけている俺たちに微笑みかけた。
「あなたが、欲望の魔王 ルファス様ですね?お噂はかねがねおききしておりますよ。なんでも、滅びかけた街を再生し、国を救った英雄だとか」
はい?
俺は、驚いていた。
誰の話ですか?
「本題に入らせてもらいたいのですが」
ヴィスコンティが、スイに切り出した。
「なんでも、魔王軍に襲撃されているとか」
「ええ」
スイの表情が曇った。
「今のところ、襲撃は、止んでいるのですが、国の外れにあるダンジョンの主である嫌悪の魔王ヌイと強情の魔王 アルダが、同盟を組み、ダンジョン周辺の街を襲い出したのです。もう、2つの町が奴等に攻め落とされました。我が国の魔法師団も善戦してはいるのですが、このままだと王都エタニティまで、攻め込まれかねません」
嫌悪と強情、か。
俺は、思っていた。
どんな連中なんだ?
その日は、俺たちの歓迎パーティーがあった。
魔法学園の生徒たちも参加したパーティーは、盛大なもので、俺たちは、スイに連れ回されて何人もの国の重鎮たちに引き合わされた。
戦時下にも関わらず、パーティーは、深夜まで続き、俺は、すっかり疲れてしまっていた。
深夜過ぎにやっと、俺たちは、解放され、それぞれ、魔法学園内の王族用の部屋へと案内された。
部屋に通された俺は、ベッドに倒れ込んだ。
さすが、王族用の部屋だけあって、きらびやかな装飾品に囲まれた立派な部屋だった。
なにより、ふかふかのベッドが嬉しかった。
俺は、ベッドに横たわり、目を閉じると吐息をついた。
「また、今夜も、あいつが来るのかな・・」
俺は、呟いた。
ミハイル。
俺は、なんとか、奴を拒む方法を探していたが、実際、夢の中であいつに触れられると、俺は、抗うことができなかった。
俺は、熱い息を漏らしていた。
「あいつって?」
誰かの声がきこえて、俺は、体を起こした。
「あいつって、誰?」
俺は、身構えた。
「誰だ?」
俺は、ベッドの上に座って、回りを見回した。
部屋の中には、俺の他には、誰もいない。
「私は、誰かって?」
声の主が、くすくすと笑い声をたてた。
「さて、私は、誰でしょう?」
からかう様な物言いに、俺は、いらっとしていた。
「姿を現せ!」
不意に、頭上から小さな悲鳴のような声がきこえて、俺は、上を振り仰いだ。
すると、天井の影の中から2人の子供が現れ、ふわりと俺の前に降りてきた。
「すごいね、さすが、聖女様だ」
「私たちを影から引き出すなんて、なかなか、やるな」
それは、褐色の肌をした双子の子供たちだった。
「私は、嫌悪の魔王 ヌイ、だ」
金髪の少年が名乗った。
「ほんとに、気に入らないな。魔王の癖に中身は、聖女だなんて」
「私は、強情の魔王 アルダ、だ」
銀髪の少年が言った。
「しかも、利欲の魔王 ミハイルの魂まで持っている者」
2人は、俺に向かって手を突き出した。
その手には、黒い石が握られていた。
俺は、その石を見つめた。
すると。
石が、パチッと目を開いた。
なんだ?
俺は、その目から逃れられなかった。
「捕まえた」
金髪のヌイが笑った。
「もう、お前は、逃れることはできない」
「もう、我々のもの、だ」
銀髪のアルダが言った。
「いけ、暗黒のクルダの瞳よ。聖女を捕らえろ」
石の目が、にやりと笑ったような気がしたかと思うと、いくもの触手のようなものが俺めがけて放たれた。
それは、あっという間に俺の全身を包み込んでいった。
このままじゃ、まずい。
俺は、遠退いていく意識の中で思っていた。
なんとか、しないと。
だが、黒い触手に触れられたとたんに、俺は、全身の力が抜けていくのを感じていた。
そして、俺は、そのまま、意識をうしなってしまった。
ゆっくりと、俺が目を開くと、そこは、知らない場所だった。
「ん・・こ、こは?」
俺は、冷たくて固い石の上に寝かされていて、手足を拘束されていた。
身動きがとれずに、俺は、目だけを動かして、辺りを見た。
薄暗い地下のような場所に俺は、いた。
壁に燃える炎が、わずかに辺りを照らしている。
俺は、なんとか逃れようとして、手足を縛る鎖をガチャガチャと音をたてて引っ張ったが、まったく動きはとれなかった。
「誰か!誰か、いないのか?」
俺が叫ぶと、耳元で誰かが囁いた。
「無理だよ。もう、お前は逃げられない、ハジメ」
声のする方を見ると、そこには、あの褐色の双子がいた。
「お前たち、こんなことして、ただですむと思うなよ!」
「わぁ、怖い、ハジメ」
「俺たちを、いじめるつもり?」
2人は、くすくすと笑い声をたてた。
俺は、2人にきいた。
「お前たち、俺をどうするつもりだ?」
「お前を?」
「どうするかって?」
2人は、にたりと不気味に笑った。
「お前は、今から、私たちの奴隷、だ」
「はい?」
俺は、聞き返した。
少年たちは、俺に繰り返した。
「お前は、我々の性奴にしてやる」
「お前ら、その意味わかっていってるのか?」
俺が訊ねると、2人は、にっと笑いながら、答えた。
「知ってるよ、ハジメ」
「うんと、哭かせてやるからな、ハジメ」
2人が低く笑いながら、俺の体に手を伸ばしてきた。
ええっ?
俺は、体を強張らせて身構えていた。
こんな子供に?
「うんと、いじめて哭かせてやるからな、ハジメ」
2人は、俺のことを見下ろして、何か、透明なものを俺の体の上に落とした。
それは、もぞもぞと動き出した。
「スライム?」
俺が呟くと、ガキどもは、言った。
「ただのスライムじゃないぞ。これは、衣服だけを溶かす、特別なスライムだ」
「しかも、粘液には、誘淫剤の効果があるんだぞ」
「これで、お前なんか、いちころだ」
はい?
俺の体の上でモゾモゾしていたスライムがにじりだした。
ええ?
冷たいスライムが俺の体を覆っていく。
ぬるぬるとした気色の悪い触感に、俺は、身を捩らせる。
「やめろ!」
そのスライムは、閉じることのできない足の間にも容赦なく入り込んでくる。
運が悪いことに、 俺は、女装したままだった。スライムは、スカートを溶かしながら、俺の中心へと触手を伸ばしてくる。
ぞくぞくするような感覚に襲われて、俺は、思わず声を漏らした。
「ひぁっ!やめっ!」
「そうそう」
2人は、楽しそうに言った。
「かわいい声を聞かせてね、ハジメ」
マジかよ?
俺は、全身を這い回るスライムの感触に息をあらげていた。
嘘、だろ!
俺は、じんじんと甘く痺れてくる体の熱にたまらず、喘ぎ声を漏らした。
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