勇者は、今夜も眠れない~邪神の呪いを解くための番なのに年下賢者が甘やかすのをやめません~

トモモト ヨシユキ

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1 呪われた勇者

1ー3 守りたいもの

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 1ー3 守りたいもの

 それからの俺の人生は、『勇者』としての人生だった。
 全ては、世界を救うため。
 邪神を倒して世界を救う。
 それが俺の存在意義だった。
 それからは、毎日、厳しい鍛練の日々が待っていた。
 父は、俺が何度倒れようとも鍛練を続けた。
 俺は、負けることを許されない。
 俺が負けることは、世界が滅ぶことだ。
 苦しくて、逃げ出したいこともあった。
 それでも俺は、逃げることも許されない。
 俺の背後には、この世界の全ての人々がいるから。
 俺が負けることは、この世界に生きる全ての人々が死ぬということ。
 だから。
 俺は、負けることはできなかった。
 例え、厳しい鍛練で手足がもげそうなぐらい痛くても、苦しくても。
 俺は、自分から負けることはできない。
 俺は、日々、厳しい鍛練を堪えて生きてきた。
 全ては、邪神を倒して世界を守るため。
 その大義の前には、俺個人のことなどなきに等しかった。
 15になった年に、学園に入学した。
 そこでは、邪神と共に戦う仲間たちと引き合わされた。
 魔法使いのルシウス・ランディスは、ランディス伯爵家の嫡子で、黒髪に金色の瞳をした真面目そうな奴。
 剣士のロシス・クリフトスは、赤毛に緑の瞳の気むずかしいそうな奴だった。
 そして。
 聖女であるロマンシア王国王女アーシャ・ロマンシア。
 金色の糸を寄り合わせたような美しい髪を無造作に垂らしたアーシャは、澄んだ青い瞳をしている絶世の美少女だった。
 俺は、一目で恋に堕ちた。
 学園での5年間をただひたすらに鍛練と学びに打ち込んだ。
 甘い青春の日々など、俺にはなかった。
 唯一の思い出は、たまに行くダンジョンでの修行の旅の中で訪れた地方の町で過ごしたこと。
 常に一緒にいたせいか、俺たちには、確かに情のようなものが芽生えていた。
 それが、友情なのか、それとも同情にすぎないのかは俺には、わからなかった。
 特にアーシャとの触れあいは、俺の心を波立てた。
 いつかは、邪神と戦い、命の限りで邪神を倒さなくてはならない時がくる。
 それでも。
 俺と彼らが過ごした日々は、俺の人生の中では、美しく、心和む毎日だった。
 日々の中で、俺は、初めて明確な失いたくないものを得ていた。
 それは、顔も知らない人々を守るために戦うより、ずっと心を強くしてくれた。
 
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