奥様は腐っている~やる気ないけどなんとなく玉の輿狙っていたのに婚約破棄されて腹立ちまぎれに通販で買った何かの卵を孵化してみました~

トモモト ヨシユキ

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8 2つの世界で

8―6 きっと再び

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 8ー6 きっと再び

 壁に手を伸ばして触れた。
 冷たくて硬い。
 俺は、ガイの手を振りきると、さっきまで扉があった場所に座り込んだ。
 「レクルスが!」
 俺は、壁を殴った。
 「まだ、レクルスが残ってるのに!」
 「ティル!」
 ガイが俺の手を掴んで止めようとしたけど、かまわず俺は、壁を殴り続けた。
 「レクルスが!俺の子供が!」
 俺は、壁を殴り続けた。
 手がひどく痛み血が滲んでいた。
 それでも、俺は、壁を殴り続けた。 
 「ティル!」
 ガイが俺を背後から抱き締めた。
 「もうやめろ!」
 「でも、レクルスが」
 俺は、涙を流しながら後ろを振り返った。
 「レクルスが」
 流れる俺の涙を指先で拭うと、ガイは、俺を固く抱き締めた。
 俺は、ガイに抱かれて泣いていた。
 ガイは、何も言わずに俺を抱き締めていてくれた。
 俺は、ガイの胸にしがみついて号泣していた。
 そんな俺を見ていた奥様がぽつりと呟いた。
 「時空を越える魔法は、禁忌の術だけど、2度と使えないわけじゃないし。また、発動の条件があえば使えるから」
 「だけど、次に条件があうのは50年後だけどね」
 ミミル先生がため息をついた。
 50年。
 魔族や、若者にとっては、ありうる時間だが、俺には、そんな時間はない。
 俺は、おっさんだ。
 あと何年生きられるのかもわからないのだ。
 俺には、そんな時間はない。
 シロアは、もう、時空間の転移はできないと俺には話していた。
 つまり、俺は、もう、2度とレクルスに会うことができないということだ。
 レクルスは、年の割にしっかりとした 子だけれど、それでもきっと1人残されて不安なのに違いない。
 シロアがいるとはいえ、きっと、1人で泣いていることだろう。
 俺は、後悔にさいなまれていた。
 なぜ、俺は、あのときレクルスの手をとらえられなかったのか。
 レクルスを。
 もう一度、抱き締めてやりたい。
 俺は、ガイの腕に抱かれて泣き続けた。
 泣いて、泣いて。
 そして、いつしか、ガイの腕の中で眠りに落ちていった。
 
 そこは、いつか訪れたことのある場所だった。
 広い広い草原の中にすっくとたっている一本の大木の根元。
 あのとき、俺を導いた美しい男が立ってて俺に微笑んだ。
 「もうすぐ、2つの世界は、この神木によって繋がります。あなたが神木の王をこの世界に産み落としたから」
 クロネは、俺に告げた。
 「きっと、再び、かの方たちに出会える時はきます」
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