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1 不憫王子、贄になる。
1ー5 尊き神の花嫁
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1ー5 尊き神の花嫁
それからすぐに『古き魔女』が僕のもとへやってきた。
浴室で1人、裸で身を屈めて泣いている僕を見下ろして彼女は、口許をにぃっと歪めた。
「やはり、そうでありましたか」
彼女の言葉の意味がわからない僕を見下して部屋の外にいたルーデニア兄上に向かって魔女は、告げた。
「マクシア様は、やはり男オメガであった!」
「男オメガ?」
ルーデニア兄上が信じられないという風に僕をちらっと見る。
「マクシアが男オメガだって?」
一瞬、ルーデニア兄上の匂いが強まるのを僕は、確かに感じた。
だが、ルーデニア兄上は、何事もなかったかのように魔女に向かって頷いた。
「そうか。マクシアは、オメガだったんだな」
ルーデニア兄上は、自分に言い聞かせるよに呟いた。
「そうなんだな」
「いったいどうすればいいかわからなくて!」
ロナがルーデニア兄上に訴えた。
「はやく!マクシア様を助けてくださいませ!」
「そうだな・・」
ルーデニア兄上が少し考えてからこくっと頷く。
「とりあえず、ここは、私がなんとかしよう。その間に『古き魔女』の手で抑制剤を用意してもらおうか」
「その必要はないかと」
ルーデニア兄上の言葉に『古き魔女』が頭を振った。
「この方に抑制剤を与える必要はございません」
「どういうことだ?」
ルーデニア兄上がきっ、と魔女を睨み付けた。
「こんなに苦しんでいるというのになぜ、抑制剤が必要ない?」
「この方は」
『古き魔女』がその嗄れた声を絞り出すよに告げた。
「尊き神の花嫁となられるのですから」
「えっ・・・?」
僕は、顔を上げた。
涙で歪む世界には、シワの中に埋もれたような老婆の顔とルーデニア兄上の姿があった。
老婆は、繰り返した。
「この方には、尊きお方の花嫁となっていただきます」
「それは!」
ルーデニア兄上が『古き魔女』に詰め寄る。
「ラディニアの役目と決まったのでは?」
「確かに、尊きお方の花嫁は、王族の血を持つオメガと決まっております故にラディニア様が選ばれておりました」
『古き魔女』は、含み笑いをする。
「しかし、マクシア様がオメガとなられた以上は、そのお役目は、マクシア様をおいてはございません」
「なぜだ?」
ルーデニア兄上が声を荒げた。
「なぜ、マクシアが生け贄にならなくてはならない?」
「それは、マクシア様が男オメガであるからでございます、ルーデニア様」
『古き魔女』が低く耳障りな笑い声をあげる。
「より希少なものこそ神の花嫁となるに相応しいからです」
より希少なもの?
僕は、遠退いていく意識の中でしゃがれた老婆の笑い声を聞いていた。
それからすぐに『古き魔女』が僕のもとへやってきた。
浴室で1人、裸で身を屈めて泣いている僕を見下ろして彼女は、口許をにぃっと歪めた。
「やはり、そうでありましたか」
彼女の言葉の意味がわからない僕を見下して部屋の外にいたルーデニア兄上に向かって魔女は、告げた。
「マクシア様は、やはり男オメガであった!」
「男オメガ?」
ルーデニア兄上が信じられないという風に僕をちらっと見る。
「マクシアが男オメガだって?」
一瞬、ルーデニア兄上の匂いが強まるのを僕は、確かに感じた。
だが、ルーデニア兄上は、何事もなかったかのように魔女に向かって頷いた。
「そうか。マクシアは、オメガだったんだな」
ルーデニア兄上は、自分に言い聞かせるよに呟いた。
「そうなんだな」
「いったいどうすればいいかわからなくて!」
ロナがルーデニア兄上に訴えた。
「はやく!マクシア様を助けてくださいませ!」
「そうだな・・」
ルーデニア兄上が少し考えてからこくっと頷く。
「とりあえず、ここは、私がなんとかしよう。その間に『古き魔女』の手で抑制剤を用意してもらおうか」
「その必要はないかと」
ルーデニア兄上の言葉に『古き魔女』が頭を振った。
「この方に抑制剤を与える必要はございません」
「どういうことだ?」
ルーデニア兄上がきっ、と魔女を睨み付けた。
「こんなに苦しんでいるというのになぜ、抑制剤が必要ない?」
「この方は」
『古き魔女』がその嗄れた声を絞り出すよに告げた。
「尊き神の花嫁となられるのですから」
「えっ・・・?」
僕は、顔を上げた。
涙で歪む世界には、シワの中に埋もれたような老婆の顔とルーデニア兄上の姿があった。
老婆は、繰り返した。
「この方には、尊きお方の花嫁となっていただきます」
「それは!」
ルーデニア兄上が『古き魔女』に詰め寄る。
「ラディニアの役目と決まったのでは?」
「確かに、尊きお方の花嫁は、王族の血を持つオメガと決まっております故にラディニア様が選ばれておりました」
『古き魔女』は、含み笑いをする。
「しかし、マクシア様がオメガとなられた以上は、そのお役目は、マクシア様をおいてはございません」
「なぜだ?」
ルーデニア兄上が声を荒げた。
「なぜ、マクシアが生け贄にならなくてはならない?」
「それは、マクシア様が男オメガであるからでございます、ルーデニア様」
『古き魔女』が低く耳障りな笑い声をあげる。
「より希少なものこそ神の花嫁となるに相応しいからです」
より希少なもの?
僕は、遠退いていく意識の中でしゃがれた老婆の笑い声を聞いていた。
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