上 下
6 / 11

第6話 放課後の体育館での一騎討ち その1

しおりを挟む
 真凛が靴を脱ぎ、体育館の中に足を踏み入れると、美帆は、奥の舞台に腰かけて待っていた。
 真凛が近づいていくと、美帆も舞台から飛び降りて待ち構える。
 2人は、3メートルくらい距離を開けて対峙する。

美帆「昨日は、よくもあたしに恥をかかせてくれたわね。一番の花形競技100メートル走で3連覇を逃した挙句、騎馬戦で上半身下着姿にされて、散々だったわ」
真凛「100メートル走は、実力の差が出ただけ。それに騎馬戦で先にTシャツを破ってきたのは、あんたでしょ」
美帆「100メートル走は、予選で力を入れすぎなければ、あたしが勝っていたわ。騎馬戦も、簡単に勝てるのに、100メートル走で失敗したすぐ後だったから、焦っちゃったわ」
真凛「言い訳ばかりしていても、あたしの1勝2引き分けっていう結果がもう出てるんだから、あたしの体の方が上だって認めなさいよ。騎馬戦の後の取っ組み合いだって、邪魔が入らなければ、あたしがあんたを組み伏せて、馬乗りになっていたはずよ」
美帆「へえ。言い訳してるのは、あんたの方じゃない。邪魔が入ったからこそ、あんたは、あたしに馬乗りになられて、泣きわめく姿をさらさずに済んだのよ」
真凛「あたしに何1つ勝てなかったあんたが言っても、負け犬の遠吠えになるだけよ」
美帆「100メートル走でたった0.1秒差でまぐれ勝ちしただけで、大きな口を叩くんじゃないわよ」

美帆「あんたも、早く靴下を脱いで準備しなさいよ」
 美帆は、腕を組んで仁王立ちする。
真凛「やる気満々ね。すぐ決着をつけてあげるから、そんなに慌てないでいいわよ」
美帆「あんた、喧嘩もしたことない優等生なのに、あたしに勝てると本気で思ってるのかしら」
真凛「そうよ。小学生の頃、空手をやっていたし、あたしの方が運動神経も上だから負ける気がしないわ」
美帆「ふふふ。あたしはね、1年生の頃から先輩に目をつけられて、何度もタイマンを張ってきたの。それで全員倒してきたから、無敵の美帆って呼ばれるようになったのよ」
真凛「へえ、それであたしより強いって言いたいわけ」
美帆「そうよ。ちょっと空手を習ったくらいの女に負けるほど、柔じゃないのよ」
真凛「へえ、ちょっとグレてる先輩に勝ったくらいで、勘違いしないでもらいたいけどね」

美帆「あんたこそ、クラスを総合優勝に導いて、英雄のような我が物顔で歩いてるけど、昨日の100メートル走みたいにまぐれでは勝てないわよ」
真凛「まぐれじゃないことをきっちり証明してあげるわ。何回やっても、あたしが勝つってことを」
 真凛は、靴下を素早く脱いで裸足になった。すらっとした長身に、セーラー服と紺のスカートが良く似合う。細身だが張りのある太ももと引き締まったふくらはぎに自信が漂う。
真凛「今日も、実力差を思い知らせてあげるわ」
しおりを挟む

処理中です...