黒ウサギ世界を廻る異世界奇譚 ~食いしん坊ウサギと世話焼き狼の絆は深い~

鴻霧

文字の大きさ
18 / 67
魔王死神編

17話 天魔官僚

しおりを挟む
レゼは地面を蹴り出しロイに突っ込んでいく
天官のロイが目で追うのがやっとの速さで近づき拳で殴る

「ぐっ!」

後ろに吹っ飛んだロイを下から上に蹴り上げる
「ぐはっ」

地面を砕く勢いで跳躍し、かかと落としをお見舞いする
物凄い速度で地面に激突する

「がはっ! 化け物が!この私が···こんなやつに···ありえない!···認めない!···あ··あぁ···」
意識が朦朧としているのか頭や口から血を流しブツブツと呟いている
「驚いた、まだ生きてる」

顔面を蹴り地面に叩きつける
「これなら」

ロイはふらふらになりながらも立ち上がる

体に数発拳を打ち込むがロイは倒れない
「うあああぁぁぁ」

「しつこい」
少しうんざりする
あれだけ殴れば死ななくても気絶ぐらいすると思っていたけど考えが甘かった

ロイは何かに取り憑かれたようにレゼに向かってくる
風刃を飛ばすが見えてないのか在らぬ方に飛んでいく
「ううぁぁ···ああ···うう」

「もういい」
影鎌で首を切り飛ばした
頭とお別れした体は力無く倒れる

「はわわぁ 天官をあっさり倒してしまうなんて···」

「片付いたな!」

「片付いたな! じゃないですよー」

「ディー」
両手を広げ抱っこをせがむ

「おぅ 行くか」
レゼを抱き抱え歩き出す

ラビリスは天魔の惨状を振り返り身震いする
「置いてかないでくださいー」

「レゼこっちでいいのか?」

「うん あの山の中腹辺りに見えた」

「あのーお二方どこに行くんですか?」

「温泉だ」

「温泉?  確かに近くにありますけど 温泉なんかに行ってる場合ではないです!天官を殺したことはもう知られているはず!いつ刺客が来てもおかしくないんですから 一刻も早く魔剣を手に入れに行きましょう!」

「知るか レゼが行きたいから俺は行く」

「そんなぁ 魔王様ぁ私たち急いでいるんですよぉ」
ラビリスの訴えを無視して歩き出す

山の中を歩いている間も天魔の雑魚兵士どもが何度も襲いかかってきたがジャッカルで皆殺しにする
「ちっ わらわらとうざってぇ」

「ディー 見えてきた」

「はぁ はぁ 足場も悪いのに歩く速度が変わらないなんて
どんな体力してるんですか···」

「着いたな」

山道を抜けると小さな村が見えてくる

「あら、お客さんだわ こんな山奥まで疲れたでしょう そんなに汚れて・・・待ってて今、村の者に頼んで用意させるからね」
そう言って親切なおばちゃんは駆けていく
この村は温泉で成り立っているようだ、お土産屋や温泉宿が立ち並び湯気がノスタルジックな雰囲気を醸し出している いわゆる温泉街というやつだ

「天魔との戦争が始まってから客足が遠退いてたから来てくれて嬉しいわ···さぁここが自慢の宿だよ心行くまで楽しんでいっておくれ」

おばちゃんが用意してくれた宿はなかなかのものだった
質素過ぎず古過ぎない木造の建物はどこか品のある佇まいだ
夜も遅いのにかかわらず女将は笑顔で出迎えてくれた
部屋は広く大きな円テーブルの奥にはふかふかのベットが3つ並んでいる
女将の話だと食事は部屋に運んでくれるらしい
部屋で食事できるのはありがたい

「ふぁ 疲れたな レゼ温泉に行く前にいいか?」

「うん?」
服をはだけさせ肩の辺りをあらわにする

「な 何してるんですか!」
赤くなり顔を手で覆うが指の隙間から見ている

「ガブッ」

「ふぅえ!?」
間抜けな声を出す

「チュル チュル···ぷはぁ 生き返るぜ」

「下僕さん吸血鬼だったんですか!?」

「いや、吸血鬼の血が混じってるだけだ」

「そうだったんですね びっくりしましたよ私てっきり···かと」
顔を赤らめる

「少し回復したし温泉に行くか」

「うん」

「ここの温泉は神水を使っていて軽い怪我も治るそうですよ」

「すごいな 俺たちはすぐ再生するから必要ないけどな」

温泉の入口に着くと左右の暖簾にはそれぞれ女、男と書かれている真ん中は貸切で入れるようだ
「混浴もあるみたいですね」

「皆で入ろう」

「魔王様!私、お背中流します!」

暖簾をくぐり脱衣場で服を脱ぐ
「わぁ!大きなお風呂ですね なんだかいい香りがしますー!」

桃色の湯に白い花が浮かび甘い香りが漂っている
水瓶を持った象からお湯が出ている

「走り回るんじゃねぇ 先ずは体を洗うぞ」
レゼを正面に座らせ頭を洗う
ラビリスも隣でゴシゴシと洗っている
服の上からは分からなかったが出るところは出ている
着やせするタイプのようだ

洗い終え温泉に浸かる
「ふわぁ 生き返りますぅ」
フニャけた顔をしている

「ふぅ」

「しっかり肩まで浸かれよ そこ髪を湯船にいれるな!」
ディーのお母さん属性がでている

温泉からあがり浴衣に着替える
「しっかり拭かないと風邪引くぞ」

「はいですー 下僕さんは世話焼きですね」

「うるせぇ」

部屋に戻ると食事が用意されていた

「久しぶりのちゃんとした食事ですー!」

「美味しい」

「魔王城を出てからまともな食事をしてなかったな」

宿の食事に舌鼓をうちながら今後の予定を立てる

「そうですね 先ずは買い出しをしてから側に大きな湖があるレクシュの街に向かい山を越えようかと思います」

「街か、でかいのか?」

「はい!魔界で3番目に大きな街で闘技場があるんですよ
四年に1度そこで最強の魔族を決める魔界武道祭りが開かれるんです
前回はシードラゴンのペンデュラムさんが優勝しました
あの戦いは見物でしたよ!」

「面白そうだな」

「今年は開催されませんよ」

「残念」

「他にも名物は沢山ありますから···串焼きとか」

「串焼き!」

「そこ、飯食ってるのに飯の話で目を輝かせるな」

「むぅ」

食事を終えた頃には夜もすっかり更けていた
天官や天魔との戦いで疲れていたのか欠伸がでる

「では寝ましょうか···ふわぁ···魔王様おやすみなさい」
ベッドに潜り込む
「ふかふかですぅ···すぅ···すぅ」
疲れていたのかラビリスは直ぐ眠りに落ちた

ディーとレゼは一緒に一つのベッドに入る
ベッドは人数分あるがいつもディーと一緒に寝ているのでこの方が落ち着く
ディーはあったかくて心地よくて怖い夢を見なくて済む
昔の記憶なのかよく分からないが、僕は大切だった人を失い寂しくて悲しくてたまらなくなり
一人は嫌で黒くてドロドロしたものに飲み込まれていく夢・・・でも今は大丈夫
一人じゃない···この温もりがそう実感させてくれる
「おやすみ」

「おう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...