黒ウサギ世界を廻る異世界奇譚 ~食いしん坊ウサギと世話焼き狼の絆は深い~

鴻霧

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お尋ね者死神編

49話 大渓谷の隠れ里

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鬼喰いが全て倒されると筒の様なものが転がり閃光を放つ

「何者だ ここで何している」
ディーとレゼの首筋に短刀が当てられる

「何してるも何も 好きでここにいるわけじゃねぇよ」

「僕たち 四天王って人に落とされた」

「四天王・・・鬼人百鬼のか?」

「うん」
首筋に当てていた刃物をどける

「いきなりごめんね あたいはすず ここに落とされるなんて災難だね・・・」

「拙者はとび丸と申す 鬼人百鬼かと思って 刃を向けてすまなかった」
短刀を鞘に収め頭を下げる

「僕はレゼ」

「俺はディー」

「ここで誰かと会うなんて初めてだよ これからどうするの?」

すずがレゼに耳打ちする
「君、死神でしょ・・・あぁ警戒しないでマキナって言えばわかるかな」
レゼから離れとび丸の側に移動する

「俺らは鬼門がある北東部に行きてぇんだけどここから上に行く方法が分からねぇんだ」

「地上に戻りたいのか・・・」

「北東部に行くならうちの里を通った方が近いよ」

「すず よそ者を里に入れるのか」

「大丈夫だって レゼとディーなら」

「その確信はどこからくるんだ・・・はぁ」
やれやれと息を吐きながら壁を探る

「何してんだ?」

「見てれば分かるよ」

とび丸の手が止まりカチッと音がして壁に横穴が現れる

「ついてこい」
言われたままとび丸の後ろをついて歩く

「こんな道があるとはなぁ」

「あたし達の里は隠れ里だから」

「へぇ そうなのか」

「うん、ここは荒魂から隠れるのにちょうどいいし本人には内緒だけど、とび丸を守らないといけないからね」

「どうして?」

「とび丸が本物の鬼巫女だからだよ」

「マジか」

「着いたぞ 拙者は先に長に話を通してくる」

「りょーかい あたいはレゼ達を連れてのんびり向かうよ」
すずが手を振る
とび丸の姿は一瞬のうちに消えてしまった

「こほん では改めて 鬼の隠れ里へようこそ! 死神さん」
洞窟を抜けた先は畑や家屋が並び
視線を上に向けるとそこには夜空があり輝く星と月が見えた
まるで大地の大穴に集落を作ったようだ

「大したものはないけど良い里だよ、空に見えるのは結界で この結界のおかけで里は誰にも見つからずにいるんだ」

「マキナに出会うとは思わなかったっすね とっくに荒魂の餌食になってると思ってたっす さらに本物の鬼巫女にも会うとは・・・レゼさん達、持ってるっすね」

「里の人はみんな鬼憑きから鬼人になって故郷を追われた人達なんだ 鬼人は人を喰らう鬼喰いだと思われているからね 本当は違うのに・・・とび丸はね小さいとき鬼人百鬼に攫われて殺されそうになった所をこの里の長に助けられたんだ それからずっと忍びとしてこの里で暮らしてるんだよ」

「とび丸が鬼巫女ってことは分かったが巫女って女がやるもんじゃねぇのか?」

「それは敵の目を欺くためだよ 鬼巫女は代々男から選ばれてるんだ」

「リーデルは知ってたの?」

「もちろんっす」

「何で教えてくれなかったんだよ」

「聞かれなかったっすから」

「そうだけど・・・いつもは聞いてないことまで話すじゃねぇか」

「レゼさん達には必要の無い情報だったっすから」

「そうかよ」

「あれが長の屋敷だよ」
すずが指差す

とび丸が木の葉と共に現れる
「遅かったな」

「とび丸、長に話は通った?」

「あぁ 今日は遅いから明日改めて来て欲しいそうだ」

「そっか じゃあ あたいの所に泊まりなよ」

「ありがと」

「うぅ かわいい」
レゼを抱きしめる

「あまりレゼにくっつくな」

「あはは じゃあ うちにレッツゴー とび丸 飯とか布団の用意お願いね」

「なんで拙者が」

「い、い、か、ら、お願い、ね」
顔は見えなかったが物凄い圧を感じる

「うっ」
一瞬のうちに消える

「うちはこの近くなんだ・・・ほらあれだよ」

すずの家に着くとエプロン姿のとび丸が料理していた

「来たか まだ飯はできないから先に風呂に入ってろ」

「りょーかい 風呂はこっちだよ」

脱衣場で服を脱ぎ、ディーに洗ってもらう

洗い終わり湯船に浸かる

「湯加減はどう?」
外で火の調整をしていたすずが聞いてくる

「いい感じ」

「良かった」

「すずはとび丸と一緒に住んでるのか?」

「そうだよ 一応幼なじみってことになってるしね・・・これでいいかな」

湯船に浸かっているとすずが裸で風呂場に現れる
「あたいも入っちゃおうかな」
体を洗い湯船に入ってくる

「3人は無茶だろ」

「大丈夫 大丈夫 あたいもレゼも小さいから ほらこれなら3人で入れる」

「狭い」

「それにしても髪も肌も綺麗だなぁ あたいの髪とは大違いだよ」

「だから レゼにくっつき過ぎるな」

「じゃあ ディーを触ろうかな」

「や やめろ 俺に触るな」

「あははは」

「ディーは触るの好きだけど自分が触られるのは嫌がるから 止めてあげて」

「嫌がるディーもかわいい」

「おいっ! いつまで入ってる 飯出来たぞ それに夜中だからもう少し静かにしろ」

「はーい」

「とんでもない女だ」

風呂からあがると美味しそうな匂いがする
「すず 並べるの手伝え」

「はーい」
次々と料理が並べられる

「遠慮せずに召し上がれ」

「お前が言うな」

「あははは」

「いただきます・・・ぱくっ 美味しい」

「そうでしょ とび丸の料理は里で一番なんだ」

「んっ 旨いな」

食べ終わり部屋に案内される
「布団も敷いてあるから」

「気が利くねぇ」

「お前が用意しとけって言ったんだろ」

「そうだったね・・・片付けはあたいととび丸でやっておくからレゼ達は先に休んで大丈夫だよ」

「悪いな」

「いいよ いいよ」

レゼの耳元で囁く
「世界を救ってもらわないといけないからね」

レゼから離れ部屋を出ていく
「それじゃあ おやすみ」
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