9 / 16
第一章 旅の始まり
9話 もう一つの旅
しおりを挟む
イル達がゴブリン狩りの依頼を受けた同時間帯、帝国では灰の砂漠を超えドラコニアを目指す件の作戦が開始されていた。
「……はぁ……この洞穴に第七騎士団を全滅させた化物がいるのぉー?」
分厚い黒のロングコートを羽織り、極端に肌の露出の少なくなっているのが印象的な長い黒髪を靡かせている2メートルを超える長身の女性。
外見年齢は20代前半の美人ではあるが、血色の悪い肌や青ざめた唇、くすんだ紫の瞳等のせいで全体的にダウナーな印象を与える。
そんな女性がかつてイル達率いる第七騎士団が散々な目にあった例の洞穴の前で一人のヤハテウス帝国の騎士だと思われる男に問いかけた。
「どうやらその様ですな、至極卿。早速突撃いたしますか?」
「はぁ……それもいいけど私達はあくまで時間稼ぎだよぉ……まずは偵察を送って様子を見る……私に埃を付けたイルのガキが殺されてんだ、ある程度様子を見なけりゃ全滅もありうるかも……分かるよねぇ?副団長?」
至極卿は嫌味たっぷりな口調で副団長を叱りつける。
「は!はい、申し訳ございません!」
副団長は自分の発言に心から反省し至極卿にペコペコと頭を下げる。
「……あれが性格に難ありで万年帝国第三騎士団、団長止まりの至極卿ベヘリット・アウギュストスか」
騎士団の鎧を着用していない帝国に徴用されたであろう冒険者の一人が隣の冒険者に耳打ちする。
「単純な実力でいえば帝国最強クラスの人らしいのにな、おぉこわいこわい……イッ!」
「ん、どした?……あっ!」
突如冒険者達が蛇に睨まれた蛙の様に固まり動かなくなった。
何故なら数十メートルは離れた位置にいた冒険者達に向かってベヘリットが邪悪な笑みを浮かべて手を振っていたからだ。
「至極卿?いったい何をなさっているのですか?」
「……副団長まずはあそこにいる冒険者どもに偵察に出てもらいましょうかねぇ」
………………
灰の砂漠、砂丘の上で一人の騎士が遠視の水晶が入った筒を使い周囲を見渡していた。
「おーい、キュリアそろそろ休憩しようぜ!ベヘリットの婆さんどうやら上手くやったみたいだしな!」
鎧越しでも分かる分厚い筋肉に覆われ、片目に大きく付けられた切傷に短く刈られた金髪、威厳のある髭を蓄えたいかにも戦士という風貌を持つ男が親しげに偵察中の騎士に声をかける。
「あらグレーンおじさまったら、まだあくまで魔人の暫定生息域から抜け出したに過ぎないわ、馬の使えない砂漠の旅ですしもう少し距離を稼ぎましょう」
彼にそう返答をしたのは周囲の騎士と比べ少し軽装気味な鎧に黒いマントを身に着けた少し風変わりな騎士であった。
恰好はいまいちだが灰の世界の中で鮮やかな光を放つスカイブルーの髪を後ろで束ね、気品ある美しい顔立ちと強い信念の輝きに燃えた切れ長の金色の瞳が見る者に圧倒的な存在感を与える風貌は王の器を感じさせる。
彼女こそ齢17にしてヤハテウス帝国、帝位継承権第三位を有する皇女キュリア・イェール・フォーチュナー・ヤハテウスその人であった。
「まぁ、キュリアがそう言うなら先に進むとするか、ここでは俺はお前の部下だしな」
「そういう事、あと10キリも行けば砂嵐を防げそうな廃墟に辿り着くわ。取り敢えず今日はそこまで向かいましょう」
キュリアがグレーンに今日の目的地を告げたその時、一人の騎士が大慌てで砂丘を上ってきて二人の前で片膝をついた。
「話し中の所失礼致します!天色卿、金色卿……至急お二方にお伝えしたい事がござり、参った所存です!」
「……楽にしていいぜ、それで何があった?」
「はっ!」
グレーンの言葉を聞いた騎士はその場に立ち上がり話を続けた。
「たった今第三騎士団の魔術師による定期連絡が途絶えました……最後に至極卿と思われる方から「逃がした。すぐにそっちに来る」と連絡があったようです」
騎士が暗い表情で連絡を伝え終わると、辺りにしばしの静寂が流れた。
「……報告ありがとな、あぁ隊列に戻るついでに皆に戦闘に備えるように伝えてくれないか」
「ははッ!畏まりました!」
連絡を終えた騎士は大急ぎで砂丘を下り騎士団の元へと向かっていった。
「さてと、気を引き締めろよキュリア。相手はあの婆さんから逃げ切った様なタマだ」
「ええ、おじさま分かってるわ……恐らくはあの空間の歪みから出てくるわ」
キュリアはとある場所に指を差しグレーンにそう告げた。
数百メートル程先の何の変哲もない砂漠の空間にぽっかりと空いた次元の裂け目から、かつてイル達に死をもたらした六本腕の魔人が腕を数本斬り落とされ体中に切り傷が付けられた幽鬼の様な姿でその場に現れた。
「……はぁ……この洞穴に第七騎士団を全滅させた化物がいるのぉー?」
分厚い黒のロングコートを羽織り、極端に肌の露出の少なくなっているのが印象的な長い黒髪を靡かせている2メートルを超える長身の女性。
外見年齢は20代前半の美人ではあるが、血色の悪い肌や青ざめた唇、くすんだ紫の瞳等のせいで全体的にダウナーな印象を与える。
そんな女性がかつてイル達率いる第七騎士団が散々な目にあった例の洞穴の前で一人のヤハテウス帝国の騎士だと思われる男に問いかけた。
「どうやらその様ですな、至極卿。早速突撃いたしますか?」
「はぁ……それもいいけど私達はあくまで時間稼ぎだよぉ……まずは偵察を送って様子を見る……私に埃を付けたイルのガキが殺されてんだ、ある程度様子を見なけりゃ全滅もありうるかも……分かるよねぇ?副団長?」
至極卿は嫌味たっぷりな口調で副団長を叱りつける。
「は!はい、申し訳ございません!」
副団長は自分の発言に心から反省し至極卿にペコペコと頭を下げる。
「……あれが性格に難ありで万年帝国第三騎士団、団長止まりの至極卿ベヘリット・アウギュストスか」
騎士団の鎧を着用していない帝国に徴用されたであろう冒険者の一人が隣の冒険者に耳打ちする。
「単純な実力でいえば帝国最強クラスの人らしいのにな、おぉこわいこわい……イッ!」
「ん、どした?……あっ!」
突如冒険者達が蛇に睨まれた蛙の様に固まり動かなくなった。
何故なら数十メートルは離れた位置にいた冒険者達に向かってベヘリットが邪悪な笑みを浮かべて手を振っていたからだ。
「至極卿?いったい何をなさっているのですか?」
「……副団長まずはあそこにいる冒険者どもに偵察に出てもらいましょうかねぇ」
………………
灰の砂漠、砂丘の上で一人の騎士が遠視の水晶が入った筒を使い周囲を見渡していた。
「おーい、キュリアそろそろ休憩しようぜ!ベヘリットの婆さんどうやら上手くやったみたいだしな!」
鎧越しでも分かる分厚い筋肉に覆われ、片目に大きく付けられた切傷に短く刈られた金髪、威厳のある髭を蓄えたいかにも戦士という風貌を持つ男が親しげに偵察中の騎士に声をかける。
「あらグレーンおじさまったら、まだあくまで魔人の暫定生息域から抜け出したに過ぎないわ、馬の使えない砂漠の旅ですしもう少し距離を稼ぎましょう」
彼にそう返答をしたのは周囲の騎士と比べ少し軽装気味な鎧に黒いマントを身に着けた少し風変わりな騎士であった。
恰好はいまいちだが灰の世界の中で鮮やかな光を放つスカイブルーの髪を後ろで束ね、気品ある美しい顔立ちと強い信念の輝きに燃えた切れ長の金色の瞳が見る者に圧倒的な存在感を与える風貌は王の器を感じさせる。
彼女こそ齢17にしてヤハテウス帝国、帝位継承権第三位を有する皇女キュリア・イェール・フォーチュナー・ヤハテウスその人であった。
「まぁ、キュリアがそう言うなら先に進むとするか、ここでは俺はお前の部下だしな」
「そういう事、あと10キリも行けば砂嵐を防げそうな廃墟に辿り着くわ。取り敢えず今日はそこまで向かいましょう」
キュリアがグレーンに今日の目的地を告げたその時、一人の騎士が大慌てで砂丘を上ってきて二人の前で片膝をついた。
「話し中の所失礼致します!天色卿、金色卿……至急お二方にお伝えしたい事がござり、参った所存です!」
「……楽にしていいぜ、それで何があった?」
「はっ!」
グレーンの言葉を聞いた騎士はその場に立ち上がり話を続けた。
「たった今第三騎士団の魔術師による定期連絡が途絶えました……最後に至極卿と思われる方から「逃がした。すぐにそっちに来る」と連絡があったようです」
騎士が暗い表情で連絡を伝え終わると、辺りにしばしの静寂が流れた。
「……報告ありがとな、あぁ隊列に戻るついでに皆に戦闘に備えるように伝えてくれないか」
「ははッ!畏まりました!」
連絡を終えた騎士は大急ぎで砂丘を下り騎士団の元へと向かっていった。
「さてと、気を引き締めろよキュリア。相手はあの婆さんから逃げ切った様なタマだ」
「ええ、おじさま分かってるわ……恐らくはあの空間の歪みから出てくるわ」
キュリアはとある場所に指を差しグレーンにそう告げた。
数百メートル程先の何の変哲もない砂漠の空間にぽっかりと空いた次元の裂け目から、かつてイル達に死をもたらした六本腕の魔人が腕を数本斬り落とされ体中に切り傷が付けられた幽鬼の様な姿でその場に現れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
嘘つきな君の世界一優しい断罪計画
空色蜻蛉
ファンタジー
誰も傷つけないよう付いた嘘が暴かれる時、誰よりも優しい青年の真実が明らかになる。
悪逆非道な侯爵家に生まれたリトスは、王太子妃を狙っている妹の野望を阻止し、実家を良い感じに没落させて、自分は国外追放されたいな~と考えていた。
軟派で無能な侯爵令息を装い、妹の対抗馬である庶民出身のテレサ嬢を支援したり、裏でいろいろ画策していた。
しかし、リトスの完璧な計画は、国外から招聘された有名な魔術師レイヴンによって徐々に暴かれていく。
リトスとレイヴン、二人の【星瞳の魔術師】が織りなす、オリジナル世界観の異世界ファンタジー物語。
※女性向けハイファンタジー&ブロマンス作品です
恋愛がメインではないので既存の女性向けカテゴリに分類できず・・主役二人の関係性はBLに近いです。
主人公最強、かつ相方も最強で、対等に戦うライバル&相棒です。
主役二人が水戸黄門よろしく事件を恰好よく解決していくお話になります。いっそ文芸の方がいいのかも?
※カクヨム、エブリスタ、Talesで連載中。掲載サイトによって進行がちがいます。
また、番外編の掲載の仕方も各サイトの仕様に合わせて変えています。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる