終末魔法少女と淵源のドラコニア

yyk

文字の大きさ
11 / 16
第一章 旅の始まり

11話 祝福なき二人

しおりを挟む
 「はぁ……はぁ……いくら何でもお前強すぎるよ」

 グレーンは額から流れ出る血を拭いながら半ば呆れ気味にそう呟く。

 「魔法加速アクセラレーション……疾風斬りスラッシュオブゲイル!!」

 バフによる加速で一気に距離を詰め、息もつかせぬ猛攻で数発の剣戟を叩き込んだ。
 しかしグレーンの攻撃は魔人の体に僅かな傷をつけた程度でダメージを与えたとは言い難いものであった。

 「おいおいこれでもだめかい」

 はっきりいって彼に勝ち目はなかった。
 それでも尚、帝国第二騎士団長グレーン・アドルフは砕けた鎧と刃こぼれした剣を構えながら戦い続けている。
 何故ならば彼の前には大勢の部下の屍があった。
 そして彼の背にはまだ息がある生存者達がいたからだ。

 「ははは!いい加減飽きてきただろう?だがよぉ俺はお前さんを殺すまでは死ねないんでね」

 (……とまぁ、かっこいい事言ってもさっきのやつで魔力も尽きた。どうっすかな?)

 グレーンは空を眺め思考を巡らせる。

 「どっちしろ体はボロボロで動けねぇんだ、だったらこれしかねぇ」

 目を閉じ、精神を極限にまで集中させ魔人が距離を詰めるのを静かに待つ。
 魔力が尽き、素早い行動が不可能になったグレーンはカウンターを主体とするファイトスタイルを選択したのだ。
 
 (……死ぬ前に最高の一撃をお見舞いしてやるぜ)

 死を覚悟したグレーンの放つ鬼気迫る気迫が伝わっているのか魔人の動きは先程よりも慎重になった様子で距離を保ったまま動かない。

 「来いよ、どうした?ここにきてビビってんのか?」

 魔人の表情に変化はないがさっきまでの相手にもされていないノーガード戦法とは違い、ようやく敵として認識された事がグレーンに多少の喜びを与える。
 その僅かな気のゆるみを察知した魔人が激しい戦闘で巻き上げられた灰埃を吹き飛ばしながら弾丸の様な高速移動でグレーンとの距離を詰める。
 
 「ぐおおおおおおお!」

 グレーンの集中力は途切れてはいなかった。
 彼の渾身の一振りは魔人の一つ残っていた左腕を斬り飛ばした。
 
 しかしその代償は大きかった。
 彼の胸部には魔人の右腕が貫通して突き刺さっていたからだ。

 「ごふっ!」

 グレーンは激しく吐血しその場で息を引き取った。

 ………………

 「そんなっ!グレーンおじさま!」

 「間に合わなかったねぇ……だが感傷に浸るのはまだだよぉ」
 
 私達が戦場に駆けつけた時には既にグレーンおじさまは亡くなっていた。
 しかしまだ生き残っていた僅かな騎士達が必死の抵抗を続けているのが見えた。
 ベヘリットの言う通りまずは彼らを救う。
 
 泣くのはその後だ。

 「行きましょう」

 「えぇ」

 ………………

 「くっ、くるなー!」

 一人の騎士が泣き喚きながら剣を振り回し攻撃するが、魔人はその行為を意にも介さずそのまま騎士の首根っこを掴み引きちぎった。

 「胸糞悪いからそれくらいにしてくれるかしらぁ?」

 ベヘリットが魔人の頭上から細身の刀身を持つ刀で強襲するが魔人は寸での所で攻撃を回避する。

 「ふぅん、さっきぶりねぇ」

 「こいつが皆を!」

 私は怒りに震えながら目の前の白い悪魔に対面する。

 「……逃げない所を見るとさっきの転移は使えないようね……それとも諦めたのかねぇ」

 「どっちでもいいわ、こいつだけは生かしちゃおけない。命に代えてもここで仕留めるわ」

 (最初から出し惜しみなしだ!全力で畳みかける!)

 「ドライマジック!魔法加速アクセラレーション攻撃強化ブリッツ滅びの火の加護ゲヘナフレイム

 私は自身にバフをかけながら宝玉剣タブリスを抜刀して魔人に斬りかかる。

 「食らえええこれが散っていった者達の無念を晴らす一撃だ!!夜明けの蒼い焔アルバアスールフラム!!」

 私の叫んだ技に呼応し宝玉剣に蒼の炎が纏わりつき激しく燃焼をはじめた。
 あとはこれをアイツにぶち当てるだけだ! 
 
 「ほう、ドライマジックに対象を焼き尽くすまで消えない炎の攻撃とはやるじゃないか……確かに当たればヤツを殺せるんだけどねぇ」

 私の持てる最大最速の剣技は魔人を捉えることは出来ず虚空を舞った。
 
 (……悔しいけど、そうだと思ってたわ)

 実は私はこうやって空ぶる事を想定してこの技に保険をかけていた。

 「まだまだああああああ爆散!!!」

 剣に宿った炎を周囲に拡散させる爆散。
 これを超至近距離で躱せるなら躱してみろ!!

 流石にこれを躱すのは不可能と悟った魔人は咄嗟に残っていた右腕で炎を防御した。
 
 炎に触れた。
 その時点で勝敗はあっけなく決する事になる。

 「終わりだねぇ……なんだい出る幕無しじゃないか」

 「いや、ヤツにもしも腕が残っていたら最悪相打ちに持ち込まれていたかもしれないわ……おじさま見てますか?私が敵を討ちましたよ」

 魔人の右腕に着火した炎は大きく火柱を上げて燃え広がる。
 ヤツが消し炭になるのも時間の問題だろう。

 腕を焼き尽くした後も体を侵食するように延焼し続ける炎に魔人は死を悟ったのかその場から一切動かなくなった。
 
 「……何か言い残す事は?口が付いてんだからなんか喋れるんでしょ」

 別にこいつから謝罪が聞きたいわけではない。
 この魔人が何のためにこんな事をしでかしたのかそれが知りたかった。

 「……私は単なる鳥籠の監視者だ、それ以上でもそれ以下でもない……祝福なき、招かざる者達よゲートは開かれた。龍と銀の騎士を追え、それがお前達の運命さだめだ」

 「わけがわからん」
 
 「あんな狂ったヤツの話なんて聞くもんじゃないさ……それよりも私は任務続行するよぉ、事務処理は面倒だからさぁ勝手にやっといて」

 ベヘリットはそう言うと後ろ手を振りながら砂漠の奥へと歩を進めていった。

 「ちょ、ベヘリット!……ちょっと、おい!そこに突っ立ってる騎士!今回の報告を頼むわ」

 「は、はい!して殿下はどちらに?」

 「決まってるじゃないベヘリットに付いて行く……任務続行よ」

 結局魔人の言っている事はよく分からないままだ。
 
 ただ一つ分かるのは多くの犠牲を出して掴んだドラコニアへの道を外れる選択は許されない。
 ここで後戻りや尻込みする事はあり得ない。
 そう、つまり結局私達は進むしかないという事だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉
ファンタジー
誰も傷つけないよう付いた嘘が暴かれる時、誰よりも優しい青年の真実が明らかになる。 悪逆非道な侯爵家に生まれたリトスは、王太子妃を狙っている妹の野望を阻止し、実家を良い感じに没落させて、自分は国外追放されたいな~と考えていた。 軟派で無能な侯爵令息を装い、妹の対抗馬である庶民出身のテレサ嬢を支援したり、裏でいろいろ画策していた。 しかし、リトスの完璧な計画は、国外から招聘された有名な魔術師レイヴンによって徐々に暴かれていく。 リトスとレイヴン、二人の【星瞳の魔術師】が織りなす、オリジナル世界観の異世界ファンタジー物語。 ※女性向けハイファンタジー&ブロマンス作品です  恋愛がメインではないので既存の女性向けカテゴリに分類できず・・主役二人の関係性はBLに近いです。  主人公最強、かつ相方も最強で、対等に戦うライバル&相棒です。  主役二人が水戸黄門よろしく事件を恰好よく解決していくお話になります。いっそ文芸の方がいいのかも? ※カクヨム、エブリスタ、Talesで連載中。掲載サイトによって進行がちがいます。  また、番外編の掲載の仕方も各サイトの仕様に合わせて変えています。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...