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天然のダンジョンへ向けて
攻略への準備
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演習を終えてレポートを作成し、エレオノーラに説明を行う。
その行動がいかにダンジョン経営の役に立ったか、あるいは経営に支障を与えずに、ダンジョンマスターが持つ別の目的に役に立ったかを説明せねばならない。
それがプロのコンサルタントと言う物だからだ。
もちろん上手く行った場合だけでなく上手く行かなかった時に合わせた対処、そしてその先の展望に関してもまとめておくべきだろう。
「結論から言えば予定通りに終わった」
「二人とも、考えて動くことができるようになった」
「森の手入れだけでなく、村へ向かう場合の対処」
「それと……万が一、想定外の戦力がこのダンジョンに訪れた時も討伐隊を編成して潰して回れるだろうさ」
演習の本義はダンジョン経営の健全化である。
定期的に魔力源である獣やモンスターがやって来るようにしつつ、村への被害を可能な限りゼロにし、そして想定外の事態やエレオノーラに害意を持つ第三者により陥落を避ける手段を用意するためだった。
これはリシャールを森へ管理人として居られるようにしておけば問題はなく、フィリッパがホムンクルスを貸し出せば何とでもなるようになったという訳だ。
「つまり、君が此処を留守にしても動けるようになったという訳だ」
「出来ない相談事務所を訪ねたつもりはないし、あなたを信用した以上は疑ってないわよ。で、戦力になるの?」
演習そのものの目的とは別に、彼女の戦略目的がある。
当然ながらそれは天然のダンジョンを攻略する為だ。エレオノーラが俺達を率いても留守のダンジョンが陥落しない様に手配しつつ、本来の目的の為に使用する戦力を見定める為でもあった。これらを同時に成し遂げることができると思ったからこそ、ダンジョンを弄り回すのではなく、森で演習をしていたとも言える。
俺は彼女の言葉に頷きつつ、改めて資料を提示した。
運用している量産型のデータだけではなく、そこから指揮官用や強化個体を製造中であること、そしてそれらの発展形を考え始めているという内容だった。
「基本形は気の利かないドワーフの戦士ってところだな」
「与えた武器に習熟して何でも一通り使いこなす」
「常に落ち着いて出来る事なら何でも着実に成し遂げる」
「そういうドワーフの良い所を持っている反面、ゴーレムみたいに頭が回らない所がある。なんでその程度の事を思いつけないのか、気が付いたのに報告しないのか、出来るのに対処しないのかともどかしい。こっちが状況を限定してから使うべきだろう。想定した状況に合わせて投入すれば、問題なく能力を発揮できると保証するよ」
ドワーフの中でも屈強だが盆暗な奴というと語弊があるだろうか?
ただ役割が決まっていれば話は別だ。正面に居る奴と地味に戦い続けろと言ってもまったく文句を言わず、死んでも慰労金を払う必要がない。もちろん再生産には費用がいるが、今は新型を作って更新中なので割り切れる。ドワーフと違って生まれて来る個体は確実に戦士なのだから、要は使い方次第と言うべきだろう。百人分の契約費用を払っても百人のドワーフ傭兵団を雇う事は出来ないが、ホムンクルスならば可能だというのが大きい。
そして現状の問題に関しては指揮個体が完成すれば概ね解決する。
量産型に同じ敵を狙うように指示した場合、倒しても死体に矢を放つが、指揮個体は次の敵を狙ってくれる。ということは指揮個体の真似をするように命じておけば、殆どの場合は敵を全滅させるまで戦い続けられるだろう。となると欠点は、丸ごと大穴に落ちるような大型トラップくらいだろうか? ホムンクルスは足場が悪くても全く申告しないからな。
「巣穴に籠ってるゴブリンの大集落程度なら既に問題ない」
「トロールやオーガを用心棒してるくらいなら何とでもなるだろうな」
「ただし洞穴エルフの大魔導師や知性あるトロール率いる大集団には勝てない」
「ブーの奴曰くオーク帝国の基準だと、ジェネラル率いる百戸兵で止められ、キング以上の千戸兵で闘争も許さずに撃破できるレベルだという話だ」
数を揃えて突っ込むだけでゴブリン程度は粉砕できる。
だが現状ではそこまでだ。強力な魔法を使う相手が相手であったり、四方八方から間断なく攻められると何大した成果も無く倒されてしまうだろう。これはあくまで屈強なドワーフと同程度、数を揃え易く裏切らないという程度の能力しかもたないからである。
ちなみにオークの単位が違うのはオーク帝国由来である。
百名の兵を常時提供できる部族単位が百戸兵。それを更にまとめ千人の軍団を常に維持できる氏族単位が千戸兵というらしい。その上は皇族が率いる氏族が万戸兵で、オーク皇帝は全ての氏族を統べるので、それ以上の単位はないのだとか。まあここ百年以上もサンドーンで千戸兵以上の部隊を見たことはないらしいけどな。
「今勝てない連中を何とかする対策はあるの?」
「大規模魔法に関しては、放たれると判ってれば俺が専念できるなら何とでも出来る。罠はブーの奴が、数相手にはエレオノーラが薙ぎ払えばいい。……後は屈強どころではない個体と、精鋭部隊になるな」
俺は儀式系の魔法使いなので時間と装備が必要だった。
魔法を何割か遮断する結界を張ることさえ出来れば、一撃で全滅なんて羽目には陥る事はない。その都度に普通の防御魔法も掛けるだろうし、今から大魔導師と戦うことになると判ってさえいれば何とでもなるのだ。なお、物理的な防御幕に切り替えることも出来るので、相手に大魔導師が居らずただの大軍団でも対処は可能だ。
もっとも、そんな都合が良い一面的な事はまず無いよな。
敵は数で圧倒しつつ攻撃魔法を連発するだろうし、策略も魔法も織り交ぜて来るという事だ。それが知性ある集団と戦い事の厄介さ、そしてそんな連中に余剰魔力を与えているのが天然物のダンジョンの厄介さである。天然物という時点で魔力の質は高いし、そいつらはダンジョン経営なんかしないので、余剰魔力はそのまま攻撃に回せるのだ。
「要するに後ろ向きな対処しかできないのが問題だ。どんな障害でも突破して、敵の親玉の元へ辿り着けるような頼もしさは『まだ』ない」
「突破できるか? ……なるほど、そう言えばそうね」
膠着状況になった時、何とか出来ることは重要だ。
たとえば階層ごと全部を水浸しにするような大規模魔法を唱えているとしよう。敵は当然の様に数を壁にするし、重要な場所には精鋭部隊やチャンピオン級の個体が待ち構えていると思って間違いはない。そんな状況でこちらが何ともできないのと、今にも防衛側を打ち破りそうだから、大規模魔法を唱えずに普通の攻撃魔法を連射した方が良いと思わせられるかは結構重要なのだ。
そんな状況に陥った時、攻め手は一度引くという手段も使える。
だが膠着状況だと退くもままならず、防衛側が思うままに時間を浪費して抹殺されかねない。それでなくとも、膠着状況だと敵地に魔力を残して相手を強化することになってしまうのだから。
「そして『まだ』ということは、何とかしているという事ね?」
「フィリッパが強化個体の次を考えているのと、一応は伝手で来てくれそうな連中を探してる。とはいえ『俺』の方はあまり変わりがないので、騎兵を除いたら小生物召喚の強化を研究してる奴くらいかな」
ホムンクルスの方は以前に語った通りである。
知性を大幅に強化した指揮個体と、知性では無く全体の能力を引き上げた強化個体。そして研究所が許可しないレベルまで費用を注ぎ込み、フィリッパがやりたいことを詰め込んだ『その先』の個体である。ひとまず武装込みで考えれば、チャンピオン級の個体を倒せると仮定しておこう。
そして俺個人の伝手だとどうしてもクラウディア関連になってしまう。
ペガサスを始めとした騎乗生物はどうしてもダンジョンには向かない。広い空間があるならばその時だけ呼ぶ手もあるが、そんなケースは稀にしかないだろう。
「小型生物の強化? そんなの初耳なんだけど」
「召喚師は基本的に呼べる種類を増やすし、数か大型化に進むだろう? それを初期に呼べる小型生物に限定する代わりに、ヌシ級まで育てられないかを研究して居るんだ。目指しているのは猫妖精の剣士とか、英雄の相棒である小妖精とかだな」
いわゆるサモナーの成長には定番のコースがある。
手乗りサイズの小鳥から始め、果てはロック鳥を目指す大型化のコース。あるいは複数の精霊を呼んで、自分と一緒に無数の魔法で押しまくるタイプなどである。それに対して今回紹介したのは、猫妖精をおとぎ話で聞く長靴の履いた猫並に強化したり、悪戯好きの小妖精を英雄に協力し続けた女神のように気の利く存在まで強化を目指して居るらしい。
その研究者曰く、長い付き合いになるから話は通じ易いし、伝承に語られるような存在に成れたら嬉しいので協力してくれる小生物は多いそうなのだ。残念ながら研究者全員を見渡しても、まだ達成している物は居ないが。
「何と言うか微妙ね。フィリッパの研究が上手く行くなら相棒には丁度良いんでしょうけど。最後に確認だけど、フレド以外の伝手って?」
「ブーの伝手だよ。あいつの二人居る弟のうち拳法家はかなり強いんだと。あとはサンドーンからこっちに移民を望む連中が居るなら、住処のと暮らしの世話をしてやるなら、その中に戦える奴が居るかもしれないくらいだな」
この件は新たな境地を開くが幾つか問題がある。
ブーの弟は強いらしいが、サンドーンで活躍しているので渡航費用だけではなく契約金を多めに積む必要がある。移民を望む方は渡航費用+@で済むだろうが、別に強いとは限らない事だ。あのブーが『肉親の欲目無しに弟は自分より強い』と言うのに対し、移民の方は十人近い人数の渡航費用を負担してやって尚、その中にそこそこ戦える奴が居るとも限らないという話だからな。
どのパターンを狙うにしても、時間が掛かるのは当然である。
俺はサンドーンに連絡便を送る手はずだけを整え、エレオノーラの決断に任せることにした。
演習を終えてレポートを作成し、エレオノーラに説明を行う。
その行動がいかにダンジョン経営の役に立ったか、あるいは経営に支障を与えずに、ダンジョンマスターが持つ別の目的に役に立ったかを説明せねばならない。
それがプロのコンサルタントと言う物だからだ。
もちろん上手く行った場合だけでなく上手く行かなかった時に合わせた対処、そしてその先の展望に関してもまとめておくべきだろう。
「結論から言えば予定通りに終わった」
「二人とも、考えて動くことができるようになった」
「森の手入れだけでなく、村へ向かう場合の対処」
「それと……万が一、想定外の戦力がこのダンジョンに訪れた時も討伐隊を編成して潰して回れるだろうさ」
演習の本義はダンジョン経営の健全化である。
定期的に魔力源である獣やモンスターがやって来るようにしつつ、村への被害を可能な限りゼロにし、そして想定外の事態やエレオノーラに害意を持つ第三者により陥落を避ける手段を用意するためだった。
これはリシャールを森へ管理人として居られるようにしておけば問題はなく、フィリッパがホムンクルスを貸し出せば何とでもなるようになったという訳だ。
「つまり、君が此処を留守にしても動けるようになったという訳だ」
「出来ない相談事務所を訪ねたつもりはないし、あなたを信用した以上は疑ってないわよ。で、戦力になるの?」
演習そのものの目的とは別に、彼女の戦略目的がある。
当然ながらそれは天然のダンジョンを攻略する為だ。エレオノーラが俺達を率いても留守のダンジョンが陥落しない様に手配しつつ、本来の目的の為に使用する戦力を見定める為でもあった。これらを同時に成し遂げることができると思ったからこそ、ダンジョンを弄り回すのではなく、森で演習をしていたとも言える。
俺は彼女の言葉に頷きつつ、改めて資料を提示した。
運用している量産型のデータだけではなく、そこから指揮官用や強化個体を製造中であること、そしてそれらの発展形を考え始めているという内容だった。
「基本形は気の利かないドワーフの戦士ってところだな」
「与えた武器に習熟して何でも一通り使いこなす」
「常に落ち着いて出来る事なら何でも着実に成し遂げる」
「そういうドワーフの良い所を持っている反面、ゴーレムみたいに頭が回らない所がある。なんでその程度の事を思いつけないのか、気が付いたのに報告しないのか、出来るのに対処しないのかともどかしい。こっちが状況を限定してから使うべきだろう。想定した状況に合わせて投入すれば、問題なく能力を発揮できると保証するよ」
ドワーフの中でも屈強だが盆暗な奴というと語弊があるだろうか?
ただ役割が決まっていれば話は別だ。正面に居る奴と地味に戦い続けろと言ってもまったく文句を言わず、死んでも慰労金を払う必要がない。もちろん再生産には費用がいるが、今は新型を作って更新中なので割り切れる。ドワーフと違って生まれて来る個体は確実に戦士なのだから、要は使い方次第と言うべきだろう。百人分の契約費用を払っても百人のドワーフ傭兵団を雇う事は出来ないが、ホムンクルスならば可能だというのが大きい。
そして現状の問題に関しては指揮個体が完成すれば概ね解決する。
量産型に同じ敵を狙うように指示した場合、倒しても死体に矢を放つが、指揮個体は次の敵を狙ってくれる。ということは指揮個体の真似をするように命じておけば、殆どの場合は敵を全滅させるまで戦い続けられるだろう。となると欠点は、丸ごと大穴に落ちるような大型トラップくらいだろうか? ホムンクルスは足場が悪くても全く申告しないからな。
「巣穴に籠ってるゴブリンの大集落程度なら既に問題ない」
「トロールやオーガを用心棒してるくらいなら何とでもなるだろうな」
「ただし洞穴エルフの大魔導師や知性あるトロール率いる大集団には勝てない」
「ブーの奴曰くオーク帝国の基準だと、ジェネラル率いる百戸兵で止められ、キング以上の千戸兵で闘争も許さずに撃破できるレベルだという話だ」
数を揃えて突っ込むだけでゴブリン程度は粉砕できる。
だが現状ではそこまでだ。強力な魔法を使う相手が相手であったり、四方八方から間断なく攻められると何大した成果も無く倒されてしまうだろう。これはあくまで屈強なドワーフと同程度、数を揃え易く裏切らないという程度の能力しかもたないからである。
ちなみにオークの単位が違うのはオーク帝国由来である。
百名の兵を常時提供できる部族単位が百戸兵。それを更にまとめ千人の軍団を常に維持できる氏族単位が千戸兵というらしい。その上は皇族が率いる氏族が万戸兵で、オーク皇帝は全ての氏族を統べるので、それ以上の単位はないのだとか。まあここ百年以上もサンドーンで千戸兵以上の部隊を見たことはないらしいけどな。
「今勝てない連中を何とかする対策はあるの?」
「大規模魔法に関しては、放たれると判ってれば俺が専念できるなら何とでも出来る。罠はブーの奴が、数相手にはエレオノーラが薙ぎ払えばいい。……後は屈強どころではない個体と、精鋭部隊になるな」
俺は儀式系の魔法使いなので時間と装備が必要だった。
魔法を何割か遮断する結界を張ることさえ出来れば、一撃で全滅なんて羽目には陥る事はない。その都度に普通の防御魔法も掛けるだろうし、今から大魔導師と戦うことになると判ってさえいれば何とでもなるのだ。なお、物理的な防御幕に切り替えることも出来るので、相手に大魔導師が居らずただの大軍団でも対処は可能だ。
もっとも、そんな都合が良い一面的な事はまず無いよな。
敵は数で圧倒しつつ攻撃魔法を連発するだろうし、策略も魔法も織り交ぜて来るという事だ。それが知性ある集団と戦い事の厄介さ、そしてそんな連中に余剰魔力を与えているのが天然物のダンジョンの厄介さである。天然物という時点で魔力の質は高いし、そいつらはダンジョン経営なんかしないので、余剰魔力はそのまま攻撃に回せるのだ。
「要するに後ろ向きな対処しかできないのが問題だ。どんな障害でも突破して、敵の親玉の元へ辿り着けるような頼もしさは『まだ』ない」
「突破できるか? ……なるほど、そう言えばそうね」
膠着状況になった時、何とか出来ることは重要だ。
たとえば階層ごと全部を水浸しにするような大規模魔法を唱えているとしよう。敵は当然の様に数を壁にするし、重要な場所には精鋭部隊やチャンピオン級の個体が待ち構えていると思って間違いはない。そんな状況でこちらが何ともできないのと、今にも防衛側を打ち破りそうだから、大規模魔法を唱えずに普通の攻撃魔法を連射した方が良いと思わせられるかは結構重要なのだ。
そんな状況に陥った時、攻め手は一度引くという手段も使える。
だが膠着状況だと退くもままならず、防衛側が思うままに時間を浪費して抹殺されかねない。それでなくとも、膠着状況だと敵地に魔力を残して相手を強化することになってしまうのだから。
「そして『まだ』ということは、何とかしているという事ね?」
「フィリッパが強化個体の次を考えているのと、一応は伝手で来てくれそうな連中を探してる。とはいえ『俺』の方はあまり変わりがないので、騎兵を除いたら小生物召喚の強化を研究してる奴くらいかな」
ホムンクルスの方は以前に語った通りである。
知性を大幅に強化した指揮個体と、知性では無く全体の能力を引き上げた強化個体。そして研究所が許可しないレベルまで費用を注ぎ込み、フィリッパがやりたいことを詰め込んだ『その先』の個体である。ひとまず武装込みで考えれば、チャンピオン級の個体を倒せると仮定しておこう。
そして俺個人の伝手だとどうしてもクラウディア関連になってしまう。
ペガサスを始めとした騎乗生物はどうしてもダンジョンには向かない。広い空間があるならばその時だけ呼ぶ手もあるが、そんなケースは稀にしかないだろう。
「小型生物の強化? そんなの初耳なんだけど」
「召喚師は基本的に呼べる種類を増やすし、数か大型化に進むだろう? それを初期に呼べる小型生物に限定する代わりに、ヌシ級まで育てられないかを研究して居るんだ。目指しているのは猫妖精の剣士とか、英雄の相棒である小妖精とかだな」
いわゆるサモナーの成長には定番のコースがある。
手乗りサイズの小鳥から始め、果てはロック鳥を目指す大型化のコース。あるいは複数の精霊を呼んで、自分と一緒に無数の魔法で押しまくるタイプなどである。それに対して今回紹介したのは、猫妖精をおとぎ話で聞く長靴の履いた猫並に強化したり、悪戯好きの小妖精を英雄に協力し続けた女神のように気の利く存在まで強化を目指して居るらしい。
その研究者曰く、長い付き合いになるから話は通じ易いし、伝承に語られるような存在に成れたら嬉しいので協力してくれる小生物は多いそうなのだ。残念ながら研究者全員を見渡しても、まだ達成している物は居ないが。
「何と言うか微妙ね。フィリッパの研究が上手く行くなら相棒には丁度良いんでしょうけど。最後に確認だけど、フレド以外の伝手って?」
「ブーの伝手だよ。あいつの二人居る弟のうち拳法家はかなり強いんだと。あとはサンドーンからこっちに移民を望む連中が居るなら、住処のと暮らしの世話をしてやるなら、その中に戦える奴が居るかもしれないくらいだな」
この件は新たな境地を開くが幾つか問題がある。
ブーの弟は強いらしいが、サンドーンで活躍しているので渡航費用だけではなく契約金を多めに積む必要がある。移民を望む方は渡航費用+@で済むだろうが、別に強いとは限らない事だ。あのブーが『肉親の欲目無しに弟は自分より強い』と言うのに対し、移民の方は十人近い人数の渡航費用を負担してやって尚、その中にそこそこ戦える奴が居るとも限らないという話だからな。
どのパターンを狙うにしても、時間が掛かるのは当然である。
俺はサンドーンに連絡便を送る手はずだけを整え、エレオノーラの決断に任せることにした。
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