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第二期ダンジョン経営計画
予定外の新型生産
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方針が確定すれば、後は目標に向けて予定を詰めて行くだけだ。
まずは替えが効かない所から始めて、他は余裕を持たせていけば良い。具体的に言うと生成と育成に時間が掛かるホムンクルスだな。場所がすぐそこだし、まだ間借りしてる形なので遠慮が要らないのも良い。
ダンジョン内に設置されたフィリッパの研究室で、彼女の要望と出来ることを確認することにした。
「で、だ。なんで昨日の今日でもう生成を始めてんだ?」
「えへへ。いやー。いただいたアイデアを考えたら、つい面白く成っちゃって検証をっすねえ……」
うちには暴走魔神しかいないのか?
既にフィリッパは何か良く分からない……今までとは違うモノを生成し始めていた。今までの例ならば失われた強化型ホムンクルスを作っているのだろうが、相談抜きにこいつは今までとまったく違うモノを研究し始めたのだ。
何が問題かと言って、研究の延長上に無い物は役に立つのか不明なのである。時間と素材を使って役にも立たんナニカを作られたら、良く成り計画が頓挫するだろうに。
「このデカブツは何の役に立ってくださるんですかね? いや、これだけデカイと場所を選ぶ上に、身動きちゃんと出来るか心配なんだが」
「だ、大丈夫っす! この子は純戦闘用じゃないので!」
ダンジョン攻略用の戦力を詰める話をした矢先に、こいつは何をいってるんだ?
そう思いはしたが、すんでの所で頬をつまみあげたりオデコをグリグリするのを止めた。エレオノーラが戻ってくる前にやった相談会で、関連することを口にしたのを思い出したからである。
なるほど、こいつは四つ足で動くから巨体に見えたわけだな。
「サンドーンに出荷する騎馬か?」
「ですです。正確には騎馬にも荷馬にもなる兼用の存在っすね。でも目玉は荷馬のまま戦闘に活かせる事っすよ。命令を切り替えるのは面倒だと気が付いたっすから」
こいつ、頭が良い様で馬鹿なんだな。
そんな中途半端で役に立たない物を渡して喜ばれる訳がないじゃないか。迂闊に使って解体され、食料になって消費されないか今から心配に成って来た。ホムンクルスは食えない事も無いが、費用は絶対に回収できんからなあ。
そう思った俺にフィリッパは自信満々の顔でテーブルに向かった。
どうやら同じことに思い至ったのか、あるいは誰かと相談してその先を考えていたらしい。テーブルの上には布で隠された何かが載っている。ちゃんと役に立つ物であれば良いのだが。
「命令通りに動いて怯えない事で第一条件はクリアしてると聞いたっすよ! なので次は戦闘力としてコレを牽引するっす!」
「……攻城用のアーバレストか。なるほど」
テーブルの上に載っていた布を取ると超大型のクロスボウがあった。
確かに雪上ソリみたいな物に載せて引っ張れば砂漠でも使える筈だ。向こうに人型ホムンクルスを一緒に送っても良いが、攻城用だと割り切れば数人で運用するのも良いだろう。つまりこいつは……。
「馬鹿じゃないのか? 何も無い砂漠だから遮る物はないと? 敵が分散したらどうするんだ。攻城用は城にしか使えんから攻城用って言うんだ。俺たちはホムンクルスが居るから、オーガや大型の獣相手に使えるけどな」
「秒で否定された!? ヒドイっすよ!」
既に生成を始めたので打開策を考えねばなるまい。
こんな物を研究する前に倒された新型を生産するなり、売り物になるホムンクルスを生成して置けば魔剣の一つを交換してもらうのは簡単だったはずだ。そういえば、その辺りの手配をしておく必要もあるだろうか?
何かしらの方法でこのホムンクルスに有用性を見出すか、アーバレスト以外の使い道を考えておくとしよう。というかこいつ、拠点防衛に使う気だったんだろうが、その場合は新型ホムンクルスを量産する方が絶対に良いよな。教え込めば予備戦力にもなるんだし。
「とりあえずこいつの完成はお前さんの要望って事でいいな? 万が一上手く行ったら量産するし、上手く行かなくても何とか使い道を考えて見るしかないが……」
「そうっすね。普通に強くしていく方は考えが行き詰ってるっすから」
どうやらこいつは現実逃避でこんな物を作ったらしい。
完全に自分の研究所だったら好きにしろと言えば済むが、間借りしている研究室なのだから自嘲しろと言いたい。
せめて騎馬かに場のどっちかとして非常に優秀な存在になってくれないかなあ……と思いつつ、幾らかの思案を巡らせる。正確には、過去に聞いた内容や、他の場所で見聞きした内容を思い出す程度だが。
「ペガサスみたい羽を生やして飛ぶとか、ケンタウルスみたいにはならないのか? 足じゃなくて腕が四本のホムンクルスでも構わんが」
「無茶を言うっすねぇ。おおもとのキメラ科とは既に袂を別れて久しいっすよ。この子たちは今ある構造の何処を弄って、何処を強化したら育つかのみを追い求めてる存在っす。この子が完成したらそのデータを元に、動きを良くしたり小さくまとめたりっすね。仮に六本脚のランドリザードを元にしても、足が増えるだけっす」
流石に妙な改造というのは無理らしい。
つまりこの中途半端な馬はそのまま生産して、有望な方向で能力を絞る方向で行くしかない訳だ。しかもその研究機関はまた最初から。次の攻略作戦はまだ決まっていないが、ゴブリンたちの反応を見たいので、そこまで時間を掛けるわけにはいかないだろう。
ペガサス牧場から連想する系統はダメ……と。
次はこいつがやって来た時、リシャール関連、そしてジャンやブーに関する事? とりあえずブーは荷車みたいな輸送用として使うくらいだろうな。
「そう言えば来た当初、お前さんは武装のサイズを大きくしつつ、ボルトを転移出来ないかと言ってたな。アポートねえ……荷車自体を複数用意して、そこに魔法陣もアーバレストも置いておくとしても……難しいな。矢は論外だし……矢?」
「何か思いついたっすか!?」
次にフィリッパに関する事を思い返しながら色々と考えた。
矢を矢筒に転移させるのは色々と無駄だし、ぎっしり詰まった矢筒を転送なんか出来ないのだ。そんな都合の良い使い道など出来ないと言えよう。だが、専用の魔法陣で交換すること自体はアリなので、転送先の魔法陣へ大型の攻城兵器そのものを送りつけるのはアリな訳だ。
もっともソレでは攻城兵器が砂漠で役に立たないという事は覆せない。まだ大天幕を呼び寄せるとか、考え方を変えるしかないと思った時である。
「別にアーバレストである必要はねえよな。例えばカタパルトと鉄球でも良い訳だ。鉄球なんぞ使い道はねえが、投げ網なら話も変わって来る」
「ああ、それならキメラとの戦いが楽になるかもっすね」
塔石器を呼び寄せて球を工夫するとかはどうだろうか?
砂漠に石はあまりないだろうが、だから大きな石を用意して置けば意味がある。もちろん乱戦では使えないが、その場合は網を投げれば良いのだ。相変わらず攻城兵器という概念からは逃れられないが、その延長としては悪くない考えであるような気がしてきた。投げつけるモノを色々と工夫すれば面白いのではないだろうか?
もちろん投げられない物もある。
例えば生成した油で向こう側を燃やすとかは無理だ。液体というあやふやな塊を転移など出来はしない。水と違って凍らないから、固形にして転送と言う手段も使えないだろう。
「専用の魔法陣で巨大な氷を送って水不測の解決……は無理だな。だが氷を砕いて無数の球には出来る?」
「んーと。液体は転移出来ないんっすよね? なら泥団子とかどうっすか? あれなら固形と言えなくもないっすよ」
「それだ!」
こんな感じで妙なアイデアが固まり始めた。
攻城兵器から離れられないでいるが、アポートという取り寄せ専用の転移で、コスト良く球を増やす方法は確立した。砂漠で使い道が難しいのは相変わらずだが、ダンジョンで予備の球を量産するくらいはできるだろう。場所によっては戦いが終わったら回収しても良いさな。
後は兵器の種別とサイズの問題だろうか?
弾のサイズによっては、カタパルトではなくアーバレストに戻して石弾丸を飛ばすタイプにしても良い。威力だけならばそっちの方が優れているくらいだ。ダンジョンの場合は放物線を描くカタパルトと、直線のアーバレストを使い分けられる方が良いだろう。こう考えるとなんだか、四つ足のホムンクルスが傑作に見えて来るから不思議である。
「フィリッパ。とりあえず既に始めてるなら仕方ない。このまま研究を進めて良いが、勝手に増やすな。次の生産は人型に戻して、戦力の補強なり、売り払って魔剣を手に入れる材料にする」
「了解っす! 腕が鳴るっすねぇ!」
こうして俺たちは妙な方向から戦力を手に入れることになったのである。
方針が確定すれば、後は目標に向けて予定を詰めて行くだけだ。
まずは替えが効かない所から始めて、他は余裕を持たせていけば良い。具体的に言うと生成と育成に時間が掛かるホムンクルスだな。場所がすぐそこだし、まだ間借りしてる形なので遠慮が要らないのも良い。
ダンジョン内に設置されたフィリッパの研究室で、彼女の要望と出来ることを確認することにした。
「で、だ。なんで昨日の今日でもう生成を始めてんだ?」
「えへへ。いやー。いただいたアイデアを考えたら、つい面白く成っちゃって検証をっすねえ……」
うちには暴走魔神しかいないのか?
既にフィリッパは何か良く分からない……今までとは違うモノを生成し始めていた。今までの例ならば失われた強化型ホムンクルスを作っているのだろうが、相談抜きにこいつは今までとまったく違うモノを研究し始めたのだ。
何が問題かと言って、研究の延長上に無い物は役に立つのか不明なのである。時間と素材を使って役にも立たんナニカを作られたら、良く成り計画が頓挫するだろうに。
「このデカブツは何の役に立ってくださるんですかね? いや、これだけデカイと場所を選ぶ上に、身動きちゃんと出来るか心配なんだが」
「だ、大丈夫っす! この子は純戦闘用じゃないので!」
ダンジョン攻略用の戦力を詰める話をした矢先に、こいつは何をいってるんだ?
そう思いはしたが、すんでの所で頬をつまみあげたりオデコをグリグリするのを止めた。エレオノーラが戻ってくる前にやった相談会で、関連することを口にしたのを思い出したからである。
なるほど、こいつは四つ足で動くから巨体に見えたわけだな。
「サンドーンに出荷する騎馬か?」
「ですです。正確には騎馬にも荷馬にもなる兼用の存在っすね。でも目玉は荷馬のまま戦闘に活かせる事っすよ。命令を切り替えるのは面倒だと気が付いたっすから」
こいつ、頭が良い様で馬鹿なんだな。
そんな中途半端で役に立たない物を渡して喜ばれる訳がないじゃないか。迂闊に使って解体され、食料になって消費されないか今から心配に成って来た。ホムンクルスは食えない事も無いが、費用は絶対に回収できんからなあ。
そう思った俺にフィリッパは自信満々の顔でテーブルに向かった。
どうやら同じことに思い至ったのか、あるいは誰かと相談してその先を考えていたらしい。テーブルの上には布で隠された何かが載っている。ちゃんと役に立つ物であれば良いのだが。
「命令通りに動いて怯えない事で第一条件はクリアしてると聞いたっすよ! なので次は戦闘力としてコレを牽引するっす!」
「……攻城用のアーバレストか。なるほど」
テーブルの上に載っていた布を取ると超大型のクロスボウがあった。
確かに雪上ソリみたいな物に載せて引っ張れば砂漠でも使える筈だ。向こうに人型ホムンクルスを一緒に送っても良いが、攻城用だと割り切れば数人で運用するのも良いだろう。つまりこいつは……。
「馬鹿じゃないのか? 何も無い砂漠だから遮る物はないと? 敵が分散したらどうするんだ。攻城用は城にしか使えんから攻城用って言うんだ。俺たちはホムンクルスが居るから、オーガや大型の獣相手に使えるけどな」
「秒で否定された!? ヒドイっすよ!」
既に生成を始めたので打開策を考えねばなるまい。
こんな物を研究する前に倒された新型を生産するなり、売り物になるホムンクルスを生成して置けば魔剣の一つを交換してもらうのは簡単だったはずだ。そういえば、その辺りの手配をしておく必要もあるだろうか?
何かしらの方法でこのホムンクルスに有用性を見出すか、アーバレスト以外の使い道を考えておくとしよう。というかこいつ、拠点防衛に使う気だったんだろうが、その場合は新型ホムンクルスを量産する方が絶対に良いよな。教え込めば予備戦力にもなるんだし。
「とりあえずこいつの完成はお前さんの要望って事でいいな? 万が一上手く行ったら量産するし、上手く行かなくても何とか使い道を考えて見るしかないが……」
「そうっすね。普通に強くしていく方は考えが行き詰ってるっすから」
どうやらこいつは現実逃避でこんな物を作ったらしい。
完全に自分の研究所だったら好きにしろと言えば済むが、間借りしている研究室なのだから自嘲しろと言いたい。
せめて騎馬かに場のどっちかとして非常に優秀な存在になってくれないかなあ……と思いつつ、幾らかの思案を巡らせる。正確には、過去に聞いた内容や、他の場所で見聞きした内容を思い出す程度だが。
「ペガサスみたい羽を生やして飛ぶとか、ケンタウルスみたいにはならないのか? 足じゃなくて腕が四本のホムンクルスでも構わんが」
「無茶を言うっすねぇ。おおもとのキメラ科とは既に袂を別れて久しいっすよ。この子たちは今ある構造の何処を弄って、何処を強化したら育つかのみを追い求めてる存在っす。この子が完成したらそのデータを元に、動きを良くしたり小さくまとめたりっすね。仮に六本脚のランドリザードを元にしても、足が増えるだけっす」
流石に妙な改造というのは無理らしい。
つまりこの中途半端な馬はそのまま生産して、有望な方向で能力を絞る方向で行くしかない訳だ。しかもその研究機関はまた最初から。次の攻略作戦はまだ決まっていないが、ゴブリンたちの反応を見たいので、そこまで時間を掛けるわけにはいかないだろう。
ペガサス牧場から連想する系統はダメ……と。
次はこいつがやって来た時、リシャール関連、そしてジャンやブーに関する事? とりあえずブーは荷車みたいな輸送用として使うくらいだろうな。
「そう言えば来た当初、お前さんは武装のサイズを大きくしつつ、ボルトを転移出来ないかと言ってたな。アポートねえ……荷車自体を複数用意して、そこに魔法陣もアーバレストも置いておくとしても……難しいな。矢は論外だし……矢?」
「何か思いついたっすか!?」
次にフィリッパに関する事を思い返しながら色々と考えた。
矢を矢筒に転移させるのは色々と無駄だし、ぎっしり詰まった矢筒を転送なんか出来ないのだ。そんな都合の良い使い道など出来ないと言えよう。だが、専用の魔法陣で交換すること自体はアリなので、転送先の魔法陣へ大型の攻城兵器そのものを送りつけるのはアリな訳だ。
もっともソレでは攻城兵器が砂漠で役に立たないという事は覆せない。まだ大天幕を呼び寄せるとか、考え方を変えるしかないと思った時である。
「別にアーバレストである必要はねえよな。例えばカタパルトと鉄球でも良い訳だ。鉄球なんぞ使い道はねえが、投げ網なら話も変わって来る」
「ああ、それならキメラとの戦いが楽になるかもっすね」
塔石器を呼び寄せて球を工夫するとかはどうだろうか?
砂漠に石はあまりないだろうが、だから大きな石を用意して置けば意味がある。もちろん乱戦では使えないが、その場合は網を投げれば良いのだ。相変わらず攻城兵器という概念からは逃れられないが、その延長としては悪くない考えであるような気がしてきた。投げつけるモノを色々と工夫すれば面白いのではないだろうか?
もちろん投げられない物もある。
例えば生成した油で向こう側を燃やすとかは無理だ。液体というあやふやな塊を転移など出来はしない。水と違って凍らないから、固形にして転送と言う手段も使えないだろう。
「専用の魔法陣で巨大な氷を送って水不測の解決……は無理だな。だが氷を砕いて無数の球には出来る?」
「んーと。液体は転移出来ないんっすよね? なら泥団子とかどうっすか? あれなら固形と言えなくもないっすよ」
「それだ!」
こんな感じで妙なアイデアが固まり始めた。
攻城兵器から離れられないでいるが、アポートという取り寄せ専用の転移で、コスト良く球を増やす方法は確立した。砂漠で使い道が難しいのは相変わらずだが、ダンジョンで予備の球を量産するくらいはできるだろう。場所によっては戦いが終わったら回収しても良いさな。
後は兵器の種別とサイズの問題だろうか?
弾のサイズによっては、カタパルトではなくアーバレストに戻して石弾丸を飛ばすタイプにしても良い。威力だけならばそっちの方が優れているくらいだ。ダンジョンの場合は放物線を描くカタパルトと、直線のアーバレストを使い分けられる方が良いだろう。こう考えるとなんだか、四つ足のホムンクルスが傑作に見えて来るから不思議である。
「フィリッパ。とりあえず既に始めてるなら仕方ない。このまま研究を進めて良いが、勝手に増やすな。次の生産は人型に戻して、戦力の補強なり、売り払って魔剣を手に入れる材料にする」
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