魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第八章

『島魚への対策』

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 水棲種族に頼まれて水上歩行の術式を揃えることになった。
マジックアイテムとして幾つか考案し、その内の一つは銛として、別の一つは可変型の魚型ゴーレムとして、目玉としては結界型の魔法陣として条件起動を用意する事にしたのだ。

アイテムの数自体は、水棲種族の術者を加えたので結構な数が増やせた。問題なのは術に組み込む補助呪文のルールである。

「水の気が強過ぎるぜ! 地水火風のバランスが採れねえ」
「海底と言う大地、大海原、大いなる風、天の火。そう言う順で調整するしかないな。領地を狭めて小さい領域に設定するなら簡単なんだが……デカイとはいえ魚は海で素早いからなあ」
 条件起動というのは、魔王軍との戦いで生み出された補助呪文である。
様々な補助呪文を組み込んだり、術式の規模を大きくすると難易度が凄まじく上がってしまう。そこで、幾つかの欠点も備えることで、負荷を逃すことにしている。あるいは単純に、『こういう条件の相手に都合よく機能する呪文ないよね?』というときに。『別の規模の呪文を改良ないし意図的な改悪して合致させる』という手法であった。

今回の島魚で言うと、あの辺りで泳いでいる、ビルよりも巨大な魚という指定になる。そんな指定の呪文なんか存在しないので、『その辺の魚全部!』という指定をしてから、『ただし、一定以上の魚だよ』という限定を掛けていると言えば判り易いだろうか。

「あー。太陽を火に見立てるのか。そいつは良いが太陽ってそんなに強いのか? 一番上に持って来るならそうじゃないとバランス採れねえぞ」
「良いんだよ。天体ってのは無茶苦茶遠くにある巨大な火だからな」
 実の所、一定のルールで設定する為なので、真偽はあまり関係ない。
同じ呪文を異なる形で詠唱し、それを矛盾無しで一つ加えるたびに一段階の強化が出来る。距離や規模を何段階も強化すると別物の術に見える訳だが、最終的にやる事は水上歩行でしかない。銛に仕込むのは距離の長さでしかないし、ゴーレムに仕込むのは『呑み込まれたら変形しろ』『何m以内に入ったら変形しろ』という命令でしかない。この辺は大した強化ではないので、それほど困らないのだ(10mと30mでは随分違うが水中では大した差ではない)。

大変なのは『対象一体ではなく、触れているモノ全てに』とか『領域内全てに、ただし……』という大規模な範囲拡張である。これらは最低でも五段階以上をまとめないと(難易度を下げないなら五段階でも行ける)、上位の補助呪文を組み込めないのだ。

「ったく久々の大忙しだ。一夜城の戦いでもこんな感じだったのかよ?」
「あん時はゴーレムで壁と土台を作り、敵が囲んだところで崩すだけだったから遥かに簡単だったぞ。何日か保たせて時間稼ぐだけだったからな」
 俺は戦闘タイプではないが、何度か賢者以上の戦果を挙げた事はある。
それはゴーレムで罠を設定し、そこに引き込んだ時にまとめて倒す手法だ。いわゆる足場崩しの罠で、アレを見た時に賢者が驚いたのを見て胸のすく思いをしたものだ。中二病の気がある……というか実際にガキだった賢者は攻撃呪文大好き魔人だったのだが、クレバーな戦いで敵を追い詰めたり、罠で一斉爆破とかやるとある種の感動を覚えたらしい。まあ、そう言う感じの呪文開発し始めたので、根本的な所で賢者(笑)だったのだが。

ともあれ、サイズが大きなビルを遥かに超えてるし、魔物だから移動距離がおかしいので注意が必要なのだが、それでも相手の習性と移動半径を考えればある程度はハメる事は可能だろう。後はそれを何処まで積み上げるかである。

「そういえば師匠。水棲種族の方は翻訳してますけど問題ないんです?」
「まさに翻訳してるから言語は関係ない。ただし、存在しない単語と、リズムを用いる様式は注意しないと駄目だな。言語には独自のリズムがあるから、歌を元に教えている門派の詠唱なんかは組み込めない。もちろん正確な輪唱をルールに組み込む場合は、絶対に不可能になる」
 補助呪文の強化のためにルールを説明する場合、歌が割りと有名である。
俳句や短歌の様にルールが決まって居る文化をそのまま用いれるというか、この場合は漢詩の四行x五文字の方が判り易いだろうか? 韻を必ず組み込み、数字や色彩に関する記述を必ずルールに組み込んで謡う訳だ。詩としては失格同然の趣の無さになるが、所定の部分だけを変更し、そこに矛盾がない様に何度も検証すれば良いので判り易いのだ。魔術師に歌の才能は必ずしも必要ないが、その歌の基本形を教えておけば詠唱を覚えるのが楽だからな。

いずれにせよ、今回は術者が追加できるのでそれほど難しくはない。ルールの幾つかを術者の人数で肩代わりできるのが儀式呪文の良い所なのだから。

「龍学才殿。色々と計画しましたが、『相手が気が付く可能性』を必ず考慮してください。魚の形をしたゴーレム……宝貝人形は相手が飲み干してまとめて殺そうとしたり、油断している時に使用。基本は銛による接近を囮として、多少は距離を延ばせる物を本命。最後の結界型はたまたまそのルートを通ったら運が良いと思うが、あるいは最初から逃げ道に設置しておくなどです」
「何ともかたじけない。これらが完成すれば何とでもして見せましょうぞ!」
 いよいよ術者を集めて儀式魔法を実行という段で龍学才がやって来た。
案の定と言うか、こいつも水上歩行が使えるらしい(おそらく水中呼吸も)ので、どんなアイテムを作るか説明しながら作戦を伝えておいた。何のかんのといって、魚の魔物が愚かだろうが、生物としての直感は侮れないのだ。それに水上歩行を使われて生れて初めての窮地に陥ったわけだし、その傷が癒える前に仕掛けるのだから、警戒していると見なすべきだろう。

だからこそ、銛を突き立てたら発動するタイプは完全な囮であり、途中で継続使用するための存在に成る。本命は逃げられても多少の距離なら届くタイプだったり、罠で嵌め殺す方が適切な筈だ。

「ではお互いのどちらかに時間的な問題が生じるまでは作成に費やしましょうか。幾つ作れるか判りませんので、それぞれの予測時間とどれほどの意味を持つかをメモに書いておきました」
「ふむ……確かに本命の数が欲しいですが、囮も相応に必要ですな」
 最終的にどれか一つでも敵に取り付ければ水上歩行を行使できる。
だが、逆に全員が接近できなかったり、相手が最初から逃げに回ったらどうしようもないのだ。一番早い魚は時速100kmを越えていたと思うが、魔力を使えば島の様に大きかろうとそのくらいの速度は出せるだろう。そうなればこちらも加速したとして、一度の『キック』で進める距離に差がある。それを考えたら、最後は数での勝負になるだろう。

最終的に俺たちは戦いに参加しないが、だからこそ準備に力を入れることにした。
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