魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第九章

『婚礼へのカウントダウン』

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 龍学才たち水棲種族を送り出し、島魚との決戦を待つだけとなった。
とはいえ、その間にするべき事はあるし、予定していなくても相手の方から勝手に駆けつけてくるという事もある。

普段ならば下級の使者が手紙を置いて行く程度だが、今回は上位の貴族が自ら使者を務めていた。

「レオニード伯にはお変わりなく」
「世事は止せ。お前が巻き込んだ話に忙しくして居るところだ」
 やって来たレオニード伯と他愛のないやり取りを行った。
彼は環状農業圏構想で忙しく、参加を要望する連中を審査したり、実際に加わった領主には色々と指導したりしている。王党派の領袖とはいえ領地の国力が高かった訳ではないので、各地から送られる物資の一部を貸し出した倉庫で管理したり模していたはずだ。以前から忠告はしていたのだが、経済規模の拡大を舐めていたらしい。

そんな彼が辺境であるゴルビーまでわざわざやって来たのは、やはり王党派としての指示だろうか?

「陛下からの伝言だ。婿殿を自慢したいので新しい献上品を持って参れと」
「ユーリ姫に贈った物をそこまでお気に示されたのですか? 伯爵になるにはまだ早いともうのですが」
 ちょっと前に贈った冷却システムにもうお代わり要請が来た。
しかも伯爵にしてやるから良い物を持って来いよという催促付きである。感覚的には技術部の課長の一人で現場リーダーを兼ねているコネ入社の若手に、支社を一つ任せてやるから社長室の充実をよろしくなと命令したようなものかもしれない。

伯爵への昇爵自体は前から提示されて居たし、冷却システムも好意的に受け止められるとは思っていたが、少し早いんだよな。

「殿下に献上したアレな。貴族たちの間でもちょっとした評判だぞ。中に入っていた物も悪くはないが、アレを知ったら外には出たくなくなるな。ゆえに上納金を恐れることはもはやあるまい」
「大々的に公開した覚えはないのですが……持ち出したのですね」
「陛下は娘を外にやりたくないと、部屋に詰めておられる事になって居る」
(さては、クーラーと室内冷蔵庫にしてやがるな。どうしたもんか……)
 冷蔵庫と氷室と冷凍車を送ったつもりなのだが話が少し合わない。
また、話を聞いた時の反応が、ガブリールが氷室の周囲にある地下室に入った時の感想に近い。それを考えたら……というか転生前のおぼろげな記憶と照合しても一つしかなかった。氷室を作って物を管理しろと伝えたメモを無視して、ユーリ姫が室内に設置したのだろう。その結果、クーラーとなってしまい、評判を聞きに来た陛下が入り浸っているのではないかと思われた。

文明の味を覚えた被害者が増えたのは結構だが、少し予定よりも早いんだよな。

「レオニード伯。実は海の方で例の水棲種族と超大型の魔物が最終決戦を行っているようです。戦力貸し出しは断りましたが、有用なマジックアイテムを提供はしました。同盟とは言いませんが、上手くやればそれなりの関係が築けるのではないかと思われます」
「続報を待っていると? 私の所で話を引き延ばせなくはないがな……」
 面倒なので問題ない範囲でカードを切ることにした。
話の筋的に嘘ではなく、そして戦力提供を断ったという事を疑われ難い。何故ならばゴルビーは戦力そのものが少ないからだ。自警団の他は巡回部隊が幾つかという所で、そこにゴーレムを付け足して強引にバランスを取っているので、疑われるほどに兵士が居ないとも言う。なんというか、レオニード伯の意識でも俺が断るのは当然なんだよな。

真実に嘘を混ぜるのが一番疑われないというか、基本的に真実であり、曖昧にしているのは同盟関係を望めるという事だ。

「そもそも、どこまで信用できるのだ?」
「イル・カンを救援したり、イラ・カナン開放を行うならば、海岸線くらいは協力体制が作れますかね? 彼らも魔物は邪魔でしょうし、陸が得意では内容ですから」
 この話に切り込むと伯爵は肩をすくめた。
正直な話、亜人種よりは信用できる。魔族と戦っている最中なら信頼も信用も出来るくらいに思っておけば良いくらいだ。敵の敵は味方であり、陸が不得意ならば攻めて来る事は無いだろう……という程度の脅威に過ぎないのだから。

まさか『同盟を組んで良い』どころか『こちらの指名した人物を傀儡国家の後継者に任命しても良い』とまで言っているとは思うまい。まあ、彼らもそこまでするとは思っていないのだろうけどな(何しろオロシャの海はゴルビーだけ)。

「その件には陛下の耳に入れておくが勝手な事はするなよ。それと、先の話は既定路線だ。用意に時間が掛かると言う事で何とかするが、言い訳はそっちで用意しておくように」
「承知しました。良き外装に入れることを考えているとお伝えください」
 信じていないというか、あまり重要視していない雰囲気を感じた。
ゴルビーが僅かに海に接しているだけだし、イル・カナンやらイラ・カナンへの遠征をするとも決まっていない。そもそも出征することに意義を見出していないレオニード伯としては、その時に成ったら役立つくらいだろう。特に他国とのイザコザが起きた時に、『陸では弱い』というのは致命的なポイントだ。おそらく援軍は期待できないし、交易としても海魚や貝が手に入る程度だと思っているのだろう。

おそらくキーエル家ならそんな反応はしないと思うが、まあこれが一般的なオロシャ国の貴族が抱く感想というべきかもしれない。

「外装……確かにそうか。菓子や酒が入った箱はともかく、部屋を涼しくしていた方はむき出しだったからな」
「よろしければ装飾の得な職人をご紹介願えませんか? 箪笥はどうかと」
「箪笥? それでは箱とあまり変わり映えがせぬが、意味があるのか?」
「より冷やしたいなら霧吹きと、そうでないならカーテンをと思いまして」
 なんというか、箱や冷凍車は最初から用途に合わせて作っていた。
だが、氷室にする方は地下室の一角に置いて行くべきアイテムなので、剥き出しでそっけない形にしていたのだ。あえていうなら隠して置けるように、平べったく刻印も掘り込み易いデザインである。だが、クーラーとして利用するならば、冷気の調整は必要だろう。場合によっては『拡大』と『持続』の使い分けができるようにするか、さもなければ二つの場所で使えるように、二つ用意しておくべきなのだ。

そういう訳で、よりひんやりする時の為に霧吹きを設置する場所と、カーテンで冷気を一度留められるという構造を提案して置いた。

その辺りの調度品を作れる職人を派遣してもらい、直にデザインと機能の話をしてから、適当なタイミングで王都へ出かける事になるだろう。その時は昇爵とユーリ姫との婚礼がセットになるシーズンであると思われたのである。
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