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第十一章
『魔族の島討伐作戦』
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魔族の島を目指す戦いが始まった。
オロシャ国と隣接していないので本格的な戦争状態にはなっていないが、これから目指すということには変わりない。それに先だってヨセフ伯とその一同が俺の新領地にやって来た。
連中は事もあろうに建設中の学校を接収し、これを総司令部と称している。
「総司令官閣下は進まぬ現状に不満を抱いておられる。説明せよ」
「「……」」
いつもの取り巻きが議事進行役になって口火を切った。
周囲は沈黙しているが、その意味は異なる。ヨセフ伯に近い筋は役目にかこつけてマウントを取る為の笑いを浮かべ、そうでない者はあまりの不躾さに並行している。
とはいえ黙っていても仕方が無いので説明しよう。
「総司令官であるヨセフ閣下並びに、聖俗の諸卿に対して説明申し上げる」
「まず現状と原因。次に情報と対策について順を追って解説いたします」
「長話にならない様に気を付ける心算ですが、暫しご清聴いただきたい」
「最初の事案はイル・カナン四州と、イラ・カナン三州についてになります」
ヨセフ伯へ爵位を付けて呼ばず、総司令官閣下と職に対して敬意を払った。
どうでも良い事に見えるがこれをやっておかないと、本来は同格であるはずの彼が最上位に位置して居る理由を全員に説明できない。人間は集まれば派閥と対立が生まれる物だし、マウント合戦やら足の引っ張り合いをするからだ。
当然ながら同格である伯爵に対して下手に出る俺も甘くみられるので、面倒だが必須の過程である。
「可能な範囲で調べた地図になりますが、これをご覧ください」
「イル・カナン国は援軍要請をしていますが兵の通過を認めて居ません」
「これは彼らの中でもめたまま、許可する者としない者で分かれている為です」
「イル・カナン側に関しては要請が出れば送る程度で、次々にやって来る魔族を討つことで彼ら自身にやってもらう余裕を作りましょう。我々としても魔物が通過して来なければ全く問題はありませんので。要請に応えないのは痛功を認めない彼ら自身の責任に成ります」
大まかな地図を描き、七つに分割している。
それぞれに州名を記載し、街道と河川や都市の位置を適当に描いている。二重の意味で『適当』になっているが、なのは『正確な地図は軍事情報』だから公開しないし、調べて回っている者が居たら罰するからである。これは何処の国でも問題なので、あまり問題している者は居ない。むしろ、東部にある大国について初めて認識した者が多いようだ。
全員が認識した所で、赤い色で矢印を描き、魔物の侵攻ルートを付け足した。
「つまり軍を派遣するのはイラ・カナン側というわけだな?」
「当然ながらそうなりますね。ただし、それこそがイル・カナン政府の思惑でしょうな。何も考えずに魔物を駆逐した場合、彼らは口約束を反故にして我々の切り取りを認めないと思われる。各国に訴えて反オロシャ同盟を組み、戦後をいち早く脱却した我々を叩く口実にするだろうから、これに対しても対策が必要になる。男爵の質問はこれで良いとして、他の諸卿からも質問があれば可能な限り答えよう」
取り巻き男爵が当たり前の事を聞き、マウントを取りに来た。
これをスルーすると『俺こそが議事進行役だ!』と勝手に話を進めて、勝手に結論を出してしまいかねないので対応しておく。やや砕けた口調に変え、男爵の質問と銘打つことで、総司令官であるヨセフ伯には含むところはないとしたのだ。面倒だがやはりこれをしないと、『総司令官閣下の意思を組んで質問したのに、不敬である!』と言われかねないからだ。もちろんスルーさせても俺の評価が下がる地獄である。
ここまで話したところで他の諸卿に振ったので、こちら側の貴族から援護射撃が入った。
「確認するのじゃが、各国にこちらからも説明するのはどうかね? イル・カナンは報酬として領地を約束したのに反故にした、と」
「何も知らない者は『同族の国を売り渡す筈がない』『まずは証拠を出せ』と言うでしょうね。事情を理解できる者は『二枚舌に絡めとられたな。外交の重要性を舐め過ぎだ』『それはそれとして、オロシャを叩くには良い機会だ』と考えるでしょう。そもそも諸外国にとってイラ・カナンは遠い地です。むしろ距離的に近いオロシャを共同で攻めとる口実にするでしょう。一国ならば勝てても、数か国同時では無理ですので」
何度も説明するが国家に永遠の友人など居ない。
オロシャが順調に魔族との大戦で生じた傷跡を癒し、大きく飛躍しようとしているならば攻撃すべきなのだ。あるいは尻馬に乗って自分も得をすべきなのだが、生憎とイラ・カナンは遠過ぎる。しかも魔物が多く蔓延る場所を飛び地にするよりは、オロシャを迫るなり何らかの権利と引き替えに中立でいる事を選ぶだろう。皆が攻め込むときに自分だけ攻め込まないというのは、それだけで功績になるのだから(どちらかが一方的に勝てば別だが)。
この質問は現状を諸卿に理解させるために老バルガスが気を回してくれたものだ。もちろんバルガス家が主戦力になるから戦死者が多くなるからでもあるが。
「やってみなくては判らぬ事で最初から臆病過ぎだ! もし何も言ってこなければどうする? 貴様の所のゴーレムは案山子なのか? 役に立たないのならばそう言えば良かろうに」
「ゴーレムの強さは固定だよ、男爵。騎士隊長以上ではないし、隘路に籠られたら君でも全てを一人で相手に取れる。それにこう言っては何だが、判り切っている流れがあるならば、対策してこそ貴族であり軍人という者だろう? 外交は私の仕事ではないから断言できないが、きっと対策案を立てている所だろうし、私自身も口を出して良いならば用意するとも」
取り巻き男爵君は騎士隊長上がりなので引き合いに出しておいた。
彼は勇者軍に居たので戦闘力は知っている筈だし、改良型のアダマンティン2やジュガス2なども見知った立場である。その上で自分が勝てると持ち上げられたゴーレムを理由にはできないし、それはそれとして対策を立てていると言われたらどうしようもないだろう。
事実その通りで鼻を鳴らして着席してしまった。
「そもそも全ての原因は、旧イラ・カナン領の内、耐え忍んでいた北部の州をイル・カナン政府が併合した事。そのまま中央の穀倉地帯を切り取りに向かった挙句、自由になる軍隊が摩耗している事にある。彼らの思惑で言えば、カナン河周辺から北部の州には手を出させず、中央を我々に攻めさせたいものだと思われる。そして……」
「我々が次の場所に向かった所で、ガラ空きになった所を抑えると」
「数を動員せねば容易に勝てず占拠も出来ない。痛し痒しだな」
俺の言いたいことを他の貴族たちが先回りして口にした。
彼らは無能ではないし、放っておくと先ほどの男爵がまた噛みついて面倒だからだ。ここらでそういうのは終わりにして、さっさと次の段階に進みたいのだろう。そもそも俺が『最初の事案』としか言ってないもんな。会議の初動でこんなに時間が取られたら面倒でしかないだろう。
もちろん、利益の為ならここから千日手に移行しても構わないのが貴族政治なので、彼らが味方に成ったわけではないので注意が必要だ。
「能書きもくだらぬ反感も良い。さっさと本題に入れ」
「では総司令官殿の意向に従って次の事案に入りましょう。『魔族の脅威からの脱却』と『可能な限りの権益確保』となります。地図に追加したこの赤い矢印は、魔族の移動ルートです。連中はイラ・カナン南東にある州に島や半島を経由して渡るか、海流に流されて北へ北へと移動します。これは魔族の島周囲を含む海流がそうなっているからで、全軍が北へ向かったことで北部の諸都市が壊滅しました」
無言だったらヨセフ伯が本題への移行を促した。
無駄話に最も腹を立てていたとしたら彼だろう。ヨセフ伯からすれば土地を奪って領地とし、魔族を討った名将として歴史に名を遺す栄光の旅路なのだ。上手く行けばそのままオロシャ国を差配する事も出来るとあっては、くだらない口論よりも本題である魔族対策の方が重要だろう。マウント合戦は後日に来る功績争いの為に見逃していたに過ぎないのだろう。
この流れ自体は俺も賛成なのであえて乗っておこう。こうなると総司令官相手に敬称を使っても舐められないというのは助かるな(本来は当然の事なのだが)。
「イル・カナンの思惑に乗らずに動く方法。大きく分けて三つあります」
「一つ目は親オロシャ側の貴族や聖職者を帯同して反論を未然に潰すこと」
「二つ目はバルガス河からカナン河が交わる中央の州を通らないこと」
「ポーセスに近い南部諸侯の地から山岳地帯を抜けて行くなり、そこに建設中の港から海路で一気に魔族の島や……現実的な所では半島部を目指します」
一つ目の話を受け、諸侯は何故か在席している聖職者たちに理解を示した。
最初は魔族対策に聖職者たちの戦力に期待したと思ったのだろうが、此処に来て諸外国の宗教家経由でも話を通じておくという路線に気が付いたのだ。南部や西部の貴族はそれぞれに伝手を持っているし、中には数代前の入植時に血縁がある者も居る。その二るを合わせれば、諸外国に釘を刺すことも出来るのではないかと、同席している事に理解を示したのだ。
後は西の大国へ正式な使者を送るなり、勇者たちが所属する教国と呼ばれる小国群を束ねる教会に話を付ければ完璧だろう(もちろん彼らが反論に負ける可能性もあるが)。
「カナン河を使わないのですか? かなり遠回りになりますが」
「それに……最大の利益は中央部の穀倉地帯であろう?」
「海から行くと言っても水深はどうする? 下手をすると座礁だぞ」
「最初の質問だが、残念なことにイル・カナン政府が入港を許可していない。だからバルガス河と交わる位置までで我慢し、そのまま中央部に上陸して、彼らの予定通りに動けと言う訳だな。次に、そんな状態で上陸しても良い様に使われるのが関の山ですよ。やるなら南部を抑えてから、確保できる場所だけ抑えるべきでしょう。海に関しては問題ありません。水棲種族を味方に付けましたからね」
まず騎士の質問にキーエル家の代表者が頷いて回答としてくれた。
次に何処かの伯爵の質問だが(おそらく西部)、カナン河流域にある穀倉地帯は基本的にイル・カナン政府が併合している。もちろんそうではない場所もあるのだが、先ほどの問答で口にしたように、彼らが奪う気マンマンで待機しているだろう。軍隊を呼び戻して自国内の魔族を倒せば良いのに、土地を奪うために残留させているからまた危機が訪れるという、実に馬鹿馬鹿しい状態である。
だが、そんな気分も最後の説明で覆された。それはこの遠征の根幹に当たる部分だからだ。
魔族の島を目指す戦いが始まった。
オロシャ国と隣接していないので本格的な戦争状態にはなっていないが、これから目指すということには変わりない。それに先だってヨセフ伯とその一同が俺の新領地にやって来た。
連中は事もあろうに建設中の学校を接収し、これを総司令部と称している。
「総司令官閣下は進まぬ現状に不満を抱いておられる。説明せよ」
「「……」」
いつもの取り巻きが議事進行役になって口火を切った。
周囲は沈黙しているが、その意味は異なる。ヨセフ伯に近い筋は役目にかこつけてマウントを取る為の笑いを浮かべ、そうでない者はあまりの不躾さに並行している。
とはいえ黙っていても仕方が無いので説明しよう。
「総司令官であるヨセフ閣下並びに、聖俗の諸卿に対して説明申し上げる」
「まず現状と原因。次に情報と対策について順を追って解説いたします」
「長話にならない様に気を付ける心算ですが、暫しご清聴いただきたい」
「最初の事案はイル・カナン四州と、イラ・カナン三州についてになります」
ヨセフ伯へ爵位を付けて呼ばず、総司令官閣下と職に対して敬意を払った。
どうでも良い事に見えるがこれをやっておかないと、本来は同格であるはずの彼が最上位に位置して居る理由を全員に説明できない。人間は集まれば派閥と対立が生まれる物だし、マウント合戦やら足の引っ張り合いをするからだ。
当然ながら同格である伯爵に対して下手に出る俺も甘くみられるので、面倒だが必須の過程である。
「可能な範囲で調べた地図になりますが、これをご覧ください」
「イル・カナン国は援軍要請をしていますが兵の通過を認めて居ません」
「これは彼らの中でもめたまま、許可する者としない者で分かれている為です」
「イル・カナン側に関しては要請が出れば送る程度で、次々にやって来る魔族を討つことで彼ら自身にやってもらう余裕を作りましょう。我々としても魔物が通過して来なければ全く問題はありませんので。要請に応えないのは痛功を認めない彼ら自身の責任に成ります」
大まかな地図を描き、七つに分割している。
それぞれに州名を記載し、街道と河川や都市の位置を適当に描いている。二重の意味で『適当』になっているが、なのは『正確な地図は軍事情報』だから公開しないし、調べて回っている者が居たら罰するからである。これは何処の国でも問題なので、あまり問題している者は居ない。むしろ、東部にある大国について初めて認識した者が多いようだ。
全員が認識した所で、赤い色で矢印を描き、魔物の侵攻ルートを付け足した。
「つまり軍を派遣するのはイラ・カナン側というわけだな?」
「当然ながらそうなりますね。ただし、それこそがイル・カナン政府の思惑でしょうな。何も考えずに魔物を駆逐した場合、彼らは口約束を反故にして我々の切り取りを認めないと思われる。各国に訴えて反オロシャ同盟を組み、戦後をいち早く脱却した我々を叩く口実にするだろうから、これに対しても対策が必要になる。男爵の質問はこれで良いとして、他の諸卿からも質問があれば可能な限り答えよう」
取り巻き男爵が当たり前の事を聞き、マウントを取りに来た。
これをスルーすると『俺こそが議事進行役だ!』と勝手に話を進めて、勝手に結論を出してしまいかねないので対応しておく。やや砕けた口調に変え、男爵の質問と銘打つことで、総司令官であるヨセフ伯には含むところはないとしたのだ。面倒だがやはりこれをしないと、『総司令官閣下の意思を組んで質問したのに、不敬である!』と言われかねないからだ。もちろんスルーさせても俺の評価が下がる地獄である。
ここまで話したところで他の諸卿に振ったので、こちら側の貴族から援護射撃が入った。
「確認するのじゃが、各国にこちらからも説明するのはどうかね? イル・カナンは報酬として領地を約束したのに反故にした、と」
「何も知らない者は『同族の国を売り渡す筈がない』『まずは証拠を出せ』と言うでしょうね。事情を理解できる者は『二枚舌に絡めとられたな。外交の重要性を舐め過ぎだ』『それはそれとして、オロシャを叩くには良い機会だ』と考えるでしょう。そもそも諸外国にとってイラ・カナンは遠い地です。むしろ距離的に近いオロシャを共同で攻めとる口実にするでしょう。一国ならば勝てても、数か国同時では無理ですので」
何度も説明するが国家に永遠の友人など居ない。
オロシャが順調に魔族との大戦で生じた傷跡を癒し、大きく飛躍しようとしているならば攻撃すべきなのだ。あるいは尻馬に乗って自分も得をすべきなのだが、生憎とイラ・カナンは遠過ぎる。しかも魔物が多く蔓延る場所を飛び地にするよりは、オロシャを迫るなり何らかの権利と引き替えに中立でいる事を選ぶだろう。皆が攻め込むときに自分だけ攻め込まないというのは、それだけで功績になるのだから(どちらかが一方的に勝てば別だが)。
この質問は現状を諸卿に理解させるために老バルガスが気を回してくれたものだ。もちろんバルガス家が主戦力になるから戦死者が多くなるからでもあるが。
「やってみなくては判らぬ事で最初から臆病過ぎだ! もし何も言ってこなければどうする? 貴様の所のゴーレムは案山子なのか? 役に立たないのならばそう言えば良かろうに」
「ゴーレムの強さは固定だよ、男爵。騎士隊長以上ではないし、隘路に籠られたら君でも全てを一人で相手に取れる。それにこう言っては何だが、判り切っている流れがあるならば、対策してこそ貴族であり軍人という者だろう? 外交は私の仕事ではないから断言できないが、きっと対策案を立てている所だろうし、私自身も口を出して良いならば用意するとも」
取り巻き男爵君は騎士隊長上がりなので引き合いに出しておいた。
彼は勇者軍に居たので戦闘力は知っている筈だし、改良型のアダマンティン2やジュガス2なども見知った立場である。その上で自分が勝てると持ち上げられたゴーレムを理由にはできないし、それはそれとして対策を立てていると言われたらどうしようもないだろう。
事実その通りで鼻を鳴らして着席してしまった。
「そもそも全ての原因は、旧イラ・カナン領の内、耐え忍んでいた北部の州をイル・カナン政府が併合した事。そのまま中央の穀倉地帯を切り取りに向かった挙句、自由になる軍隊が摩耗している事にある。彼らの思惑で言えば、カナン河周辺から北部の州には手を出させず、中央を我々に攻めさせたいものだと思われる。そして……」
「我々が次の場所に向かった所で、ガラ空きになった所を抑えると」
「数を動員せねば容易に勝てず占拠も出来ない。痛し痒しだな」
俺の言いたいことを他の貴族たちが先回りして口にした。
彼らは無能ではないし、放っておくと先ほどの男爵がまた噛みついて面倒だからだ。ここらでそういうのは終わりにして、さっさと次の段階に進みたいのだろう。そもそも俺が『最初の事案』としか言ってないもんな。会議の初動でこんなに時間が取られたら面倒でしかないだろう。
もちろん、利益の為ならここから千日手に移行しても構わないのが貴族政治なので、彼らが味方に成ったわけではないので注意が必要だ。
「能書きもくだらぬ反感も良い。さっさと本題に入れ」
「では総司令官殿の意向に従って次の事案に入りましょう。『魔族の脅威からの脱却』と『可能な限りの権益確保』となります。地図に追加したこの赤い矢印は、魔族の移動ルートです。連中はイラ・カナン南東にある州に島や半島を経由して渡るか、海流に流されて北へ北へと移動します。これは魔族の島周囲を含む海流がそうなっているからで、全軍が北へ向かったことで北部の諸都市が壊滅しました」
無言だったらヨセフ伯が本題への移行を促した。
無駄話に最も腹を立てていたとしたら彼だろう。ヨセフ伯からすれば土地を奪って領地とし、魔族を討った名将として歴史に名を遺す栄光の旅路なのだ。上手く行けばそのままオロシャ国を差配する事も出来るとあっては、くだらない口論よりも本題である魔族対策の方が重要だろう。マウント合戦は後日に来る功績争いの為に見逃していたに過ぎないのだろう。
この流れ自体は俺も賛成なのであえて乗っておこう。こうなると総司令官相手に敬称を使っても舐められないというのは助かるな(本来は当然の事なのだが)。
「イル・カナンの思惑に乗らずに動く方法。大きく分けて三つあります」
「一つ目は親オロシャ側の貴族や聖職者を帯同して反論を未然に潰すこと」
「二つ目はバルガス河からカナン河が交わる中央の州を通らないこと」
「ポーセスに近い南部諸侯の地から山岳地帯を抜けて行くなり、そこに建設中の港から海路で一気に魔族の島や……現実的な所では半島部を目指します」
一つ目の話を受け、諸侯は何故か在席している聖職者たちに理解を示した。
最初は魔族対策に聖職者たちの戦力に期待したと思ったのだろうが、此処に来て諸外国の宗教家経由でも話を通じておくという路線に気が付いたのだ。南部や西部の貴族はそれぞれに伝手を持っているし、中には数代前の入植時に血縁がある者も居る。その二るを合わせれば、諸外国に釘を刺すことも出来るのではないかと、同席している事に理解を示したのだ。
後は西の大国へ正式な使者を送るなり、勇者たちが所属する教国と呼ばれる小国群を束ねる教会に話を付ければ完璧だろう(もちろん彼らが反論に負ける可能性もあるが)。
「カナン河を使わないのですか? かなり遠回りになりますが」
「それに……最大の利益は中央部の穀倉地帯であろう?」
「海から行くと言っても水深はどうする? 下手をすると座礁だぞ」
「最初の質問だが、残念なことにイル・カナン政府が入港を許可していない。だからバルガス河と交わる位置までで我慢し、そのまま中央部に上陸して、彼らの予定通りに動けと言う訳だな。次に、そんな状態で上陸しても良い様に使われるのが関の山ですよ。やるなら南部を抑えてから、確保できる場所だけ抑えるべきでしょう。海に関しては問題ありません。水棲種族を味方に付けましたからね」
まず騎士の質問にキーエル家の代表者が頷いて回答としてくれた。
次に何処かの伯爵の質問だが(おそらく西部)、カナン河流域にある穀倉地帯は基本的にイル・カナン政府が併合している。もちろんそうではない場所もあるのだが、先ほどの問答で口にしたように、彼らが奪う気マンマンで待機しているだろう。軍隊を呼び戻して自国内の魔族を倒せば良いのに、土地を奪うために残留させているからまた危機が訪れるという、実に馬鹿馬鹿しい状態である。
だが、そんな気分も最後の説明で覆された。それはこの遠征の根幹に当たる部分だからだ。
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