魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十一章

『諸島群の戦い。前編』

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 リザードマンとの戦いは半日に及んだが、勝負を決めたのは戦略だった。
居ると判った時点で警戒し、初動の段階でこちらは全力を注ぎ、相手は様子見を交えていたことが決定打になった。もちろん強者相手に苦戦はするがそれまでだ。そいつと出逢った浜辺での戦いが最も難関だったと言えるだろう。良くも悪くもこの後に控えている強力な魔物に対する考え方の差であろう。

人間側は緒戦を速攻で片付け次に備えたのに対し、リザードマン側は魔物を警戒した事が影響したと言える。

「あいつは順調進化型じゃないな。思ったより苦戦はしそうだが……あの様子なら大丈夫か。望遠鏡を使ってみるかい?」
「自前の呪文で十分ですわ。え? マジックアイテムやあらしまへんの?」
「技術的な問題で精々が三倍の拡大だけどね、この距離なら十分さ」
 交易品の中にレンズに出来そうなガラスがあり望遠鏡を作らせてみた。
イル・カナンや旧イラ・カナンではただのガラスではなく、色ガラスやら透明度の高い高級品のガラスを装飾品として売っているそうだ。なので幾つか取り寄せてみた後、丁度良いのがあったという感じである。もっとも磨いてナンボの代物なので適度な価格帯では十分に良いモノはなく、高級品の中で狙って製作させないと当面は無理だろう。しかも風呪文の中に『テレスコープ』という遠視できる呪文があるので、魔術師界隈では評価が低そうだ。

ただ、呪文を覚えていない物が中途半端な距離で使うには十分と言える。

「高価な磨き硝子を使うてまでするお品やあらへんでしょうになあ」
「技術の進歩か繰り返しと研究の果てさ。磨く方にはアテがあるから、今度イラ・カナンの難民で技術者が居たら出資するのも良いかもしれないね。ともあれ、積み重ねが重要というのは至言だな。あの尻尾の使い方は、やはり付け焼刃のゴーレムでは無理かあ」
 リザードマンの強者は武道家というか舞踊家だった。
槍でチャージを掛けた後、尻尾の反動で一回転。ゴーレムが盾で受け止め反撃を繰り出すのだが、その時には既に斜め横の位置から槍を半回転させている。腰を軸にした構えであり、刃が瞬時に跳ね上げられてゴーレムの腹を抉った。もしこれが人間の大男だったら、それだけで方が付いただろう。

しかし現実にはゴーレムはダメージを受けただけだし、その間に他のリザードマンが討ち取られていく。

「あっちのリザードマンは順当なチーフだな。強い事は強いがそんなものか。尻尾の使い方の参考にはなったが、みんな苦戦せずに倒せそうだ」
「あないに弓で射てもうたら勝負どころやあらしまへんしなあ」
 リザードマンチーフも二体ほど居たが瞬殺された。
あっちは剣や盾で強打した後、尻尾で体を元の位置に戻して攻防一体型という感じだった。しかし、ゴーレムの大きさからみれば『だからどうした』という話だ。盾で攻撃を防ぎ、剣……人間としては大剣サイズの刃を振り回せば終わりである。しかもその間、周囲の兵士たちは弓を構えて撃ちまくっている。これで苦戦しろという方が難しいだろう。

そしてこちらが繰り出した増援も弓を撃ちながら敵の脇へと展開なので、後は殲滅戦でしかない。

「悪いのだけどフィールドワーク・チームは騎士たちと一緒に調査を頼む。最初に軽く検死して魔獣による傷がないか、腹の中……はいいか。その後は探索の補助になるけれど、島の状態を把握できれば戦わなくても良いよ。そういうのはゴーレムを盾にした騎士たちがやるからね」
「はあ。それが任務なので噛まいませんが……まだ居るんです?」
「亜人種はオスメスで戦闘力に差がないが、卵を守ってる可能性はある」
「……そうですね。集落を潰さないと次の世代が……気は進みませんけどね」
 戦闘は彼らの本文ではないが、ここで帯同している魔術師たちを投入する。
では何が役目かというと、この島での情報を得る為だ。これまでは上陸した方の島を調べていたが、ここから先は強大な魔物との戦いも控えている。騎士たちも魔術師たちも重要なので、戦力分散にならないように調査して行く必要があるだろう。

なので最初は状況確認からだ。

「魔獣への警戒を第一に、その為にも掃討戦を行う」
「まず昨晩から置いているゴーレムは修理して陣地の作成に回す」
「騎士たちは二手に分かれ、一隊が周辺調査でもう一隊がフォローに回れ」
「ゴーレムを盾にして林を突かせ、出来た残党を速やかに殲滅せよ。気乗りがしないだろうが子供であるが卵であろうが容赦をするな。ここで潰せば少なくとも対岸は十年から二十年ほど平和になるぞ。人が入れる程度には大きいが、ゴーレムが入れないほどの穴があった場合にのみ私を呼べ。簡易的に調査を終えて強力な魔獣に備えるぞ」
 まず魔物と戦うためのリングを作らなければならない。
この島の何処かで戦いことになるのか、それとも浅瀬で繋がる別の島で戦う事になるのかが判らない。なのでこの島を掃討してリザードマンが後ろを突く可能性を無くし、魔物が潜んでいるならばその可能性を減らさなければならない。候補であるキマイラにしてもマンティコアにしても空を飛べるので後から飛んでくる可能性もあるが、先にリザードマンを殲滅し全力で戦えるならば問題は無いのだ。

重要なのは敵に専念することであり、後方を気にして戦うのが一番の問題である。

「あの、伯爵。それでしたら分隊に分けて手早く捜索しては?」
「後を考えれば、馬鹿馬鹿しくとも戦力をそれ以上分けてはいけない。強力な魔物とやらが林に潜んで居たり、実はリザードマンの集落を捕食中かもしれない。そもそも候補に入れてる敵は空を飛ぶからな。不意の遭遇で騎士一人と兵士数名を死なせるのは愚の骨頂だよ。もし魔将の軍団が迫るならば、君らを危険にさらして速攻を掛けることも考慮せざるを得ないが、今の段階では君たちの命の方が重要だ」
 騎士の一人が意見を述べるがやんわりと断って置いた。
状況によっては正しいのだが、もし強力な魔物が不意打ちしてきたら分隊では全滅しかねない。猛毒の毒蛇くらいならばまだ何とかなるが、キマイラ辺りが同時に三方向に攻撃して来たら一瞬だからな。マンティコアはそこまで火力全振りではないが、智慧が回るので林の中で一人ずつ消えているとか普通にあり得る。

しかし、万全の備えで攻める限りはどちらの魔物も対処できるので、無理に分隊で動かない方が良い。というかそもそも、後ろを突かれると困るから捜索を優先してるわけだしな。

「承知しました。そうなると……いえ、何でもありません」
「ああ。それ以上は言わない方が良いな。君はともかく、君の友人のなかには『彼ら』と同郷の者も居るかもしれない」
 最後に漏れたのは貴族連中に対する不満である。
彼らは安全な船で待機しているくせに、相当数の護衛を割かせているのだ。それならせめて最初の島で我々の後ろを守りながら飲み会でもして欲しいものだ。しかしそんな事を言っても仕方がないし、侮辱されたと思われも困るので此処までにしておこう。

後は捜索中に本人が襲われないように注意が必要かな。

「ジャコビニアス卿。相済まないが君は先ほどの戦闘で十分に手柄を立てただろう。ここは他の騎士体調に譲ってくれたまえ。その上でフォローの隊を構成し、彼らの援護を行いつつ、もし本隊が襲われた場合は頼む。来援に来るまででは保たせる心算ではあるがね」
「承知いたしました。今回は後方に付きます」
 という訳でこの日はリザードマンの集落を潰して終了。
次の日に浅瀬を渡って行ける別の島を捜索しよう。そう思った時に急変したのである。そう、夕暮れ時に成った所で、魔物が我々に襲い掛かって来たのだ!
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