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誰からも愛されなかった少女
陸繋島
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それからしばらく、葉織は江ノ島方面へ向かって砂浜を歩きながら、時折腰をまげて手を伸ばし小さな流木を拾っては片手にぶら下げたブリキのバケツに放り込んでいた。
からん、からんと乾いた音を立てる。
それはなんだか楽器みたいに聞こえて、羽香奈の耳には心地よかった。
「あそこ。正面に見えてるのが江ノ島だよ」
「島っていうくらいだから、もっと陸から遠くにあるのかと思ってた。
船に乗っていくみたいな」
「本当は島じゃないし。
ここの隣の片瀬海岸の砂浜が江ノ島までずっと繋がってて、陸続きになってるんだ」
「へー……」
葉織が説明しながら指し示してくれた方を羽香奈は見る。
海の上に、緑色のかたまりが浮かんでいる。
すぐ側の陸地は宅地開発されたごく普通の街並みだというのに、徒歩で渡るような場所に自然豊富な陸繋島がある。
些か神秘的な光景であると幼心に羽香奈も感じ入る。
ちょうど真ん中くらいの位置に塔なのか灯台なのか、穿つような細い建造物がある。
陸続きであると葉織は言っていたが、大きな太い橋のようなもので陸地、街と繋がっているように見える。
「そのおっきな橋で自動車が出入り出来るし、人が行き来する歩道もついてる。
潮が満ちてると砂浜が海に沈んで歩けなくなるから」
潮の満ち引きなんて、理科の授業で教わっただけで、羽香奈は現実に触れたことはない。
けれど、葉織にとっては日常の風景なのか。
……そして、羽香奈にとって今までもこれからもずっと続く、悪夢そのもの。
その権化たるあの人だって、かつてここで暮らしていたんだ。
そのことに気付いたとたん、濃い緑で覆われた島影が途端に影を帯びて見える気がした。
八月の日差しを受けながら延々と砂浜を歩くのだけど、今日は海風が強すぎず弱すぎず左側から流れてきて気持ちがいい。
首の後ろより少し長いくらいの羽香奈のショートヘアやワンピースの裾がご機嫌にゆるかやに躍る。
日射病になるほどではないと思う。
日除けの帽子があればもっと良かったんだろうけれど。
そんな気の利いたものを用意してくれるような家族ではなかった。
地元育ちでこの辺の気候に詳しいだろう葉織だって帽子を被っていないし、きっとバテてしまうより前に江ノ島に着くんだろう。
と、羽香奈は確認もしていないのに納得した。
「あ、この流木。
こんなおっきなのも流れてくるんだね」
葉織が拾い集めている、バケツに入るようなサイズとは比較にならない巨大な流木が、波打ち際から遠く離れた場所にぽつんと落ちている。
砂浜から離れているのも不思議だし、こんな大きなものどこから流れてくるんだろうと羽香奈は不思議だった。
からん、からんと乾いた音を立てる。
それはなんだか楽器みたいに聞こえて、羽香奈の耳には心地よかった。
「あそこ。正面に見えてるのが江ノ島だよ」
「島っていうくらいだから、もっと陸から遠くにあるのかと思ってた。
船に乗っていくみたいな」
「本当は島じゃないし。
ここの隣の片瀬海岸の砂浜が江ノ島までずっと繋がってて、陸続きになってるんだ」
「へー……」
葉織が説明しながら指し示してくれた方を羽香奈は見る。
海の上に、緑色のかたまりが浮かんでいる。
すぐ側の陸地は宅地開発されたごく普通の街並みだというのに、徒歩で渡るような場所に自然豊富な陸繋島がある。
些か神秘的な光景であると幼心に羽香奈も感じ入る。
ちょうど真ん中くらいの位置に塔なのか灯台なのか、穿つような細い建造物がある。
陸続きであると葉織は言っていたが、大きな太い橋のようなもので陸地、街と繋がっているように見える。
「そのおっきな橋で自動車が出入り出来るし、人が行き来する歩道もついてる。
潮が満ちてると砂浜が海に沈んで歩けなくなるから」
潮の満ち引きなんて、理科の授業で教わっただけで、羽香奈は現実に触れたことはない。
けれど、葉織にとっては日常の風景なのか。
……そして、羽香奈にとって今までもこれからもずっと続く、悪夢そのもの。
その権化たるあの人だって、かつてここで暮らしていたんだ。
そのことに気付いたとたん、濃い緑で覆われた島影が途端に影を帯びて見える気がした。
八月の日差しを受けながら延々と砂浜を歩くのだけど、今日は海風が強すぎず弱すぎず左側から流れてきて気持ちがいい。
首の後ろより少し長いくらいの羽香奈のショートヘアやワンピースの裾がご機嫌にゆるかやに躍る。
日射病になるほどではないと思う。
日除けの帽子があればもっと良かったんだろうけれど。
そんな気の利いたものを用意してくれるような家族ではなかった。
地元育ちでこの辺の気候に詳しいだろう葉織だって帽子を被っていないし、きっとバテてしまうより前に江ノ島に着くんだろう。
と、羽香奈は確認もしていないのに納得した。
「あ、この流木。
こんなおっきなのも流れてくるんだね」
葉織が拾い集めている、バケツに入るようなサイズとは比較にならない巨大な流木が、波打ち際から遠く離れた場所にぽつんと落ちている。
砂浜から離れているのも不思議だし、こんな大きなものどこから流れてくるんだろうと羽香奈は不思議だった。
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