江ノ島の小さな人形師

sohko3

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誰からも愛されなかった少女

流木に座る

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「ちょうどいい。ここで座って休もうか」

 葉織が途中で休む算段だったとはまるで想定していなかったから、羽香奈は素直に驚いた。

 流木は少し湾曲した形になっていて、盛り上がった部分はちょうど腰掛けやすい高さになっている。

 その部分を狙うように葉織は腰を下ろす。

 羽香奈もそれに続くが、そういった流木の形状から、二人の距離は肩が触れてしまいそうに近くなる。

 葉織と羽香奈は「いとこ」だし、まだ十二歳だし、異性として意識するわけではない。

 それよりも羽香奈が気になるのは、少し前かがみになった葉織が自分を見上げるような体勢になっていて、先ほどと同じような表情をしているから。

 心から、悼むような眼差し。

 やがて葉織は覚悟を決めたように、ひとりだけ立ち上がり、羽香奈の背中側にまわって立った。

 羽香奈はその動きを目で追って、首を傾げて葉織を見る。

「急で、驚くかもしれないけど。
……肩、凝ってたりしない?」

「……しないよ? 
わたし達、まだ小学生だもん」

 この年頃で肩こりに悩まされてる人なんているだろうか。

 中学受験する子とか? 

 葉織が何を言いたいのかわからない。

「そう……なんだ」

 言いながら、葉織が肩に向かって手を伸ばしてきたので、肩たたきでもしてくれるのだろうかと思った。

 しかしそうはならず、肩に触れるほんの手前ほどで、何かを掴むような動作をした。

 ぎゅ、っと、完全に拳を握りしめるわけではなく不自然な空白が指と手のひらの間にある。

 そのまま少しだけ後ろに下がった葉織は、今度は泥団子だかおにぎりだかを作るような不可解な動作を手元で繰り返しながら流木をまたぎ、羽香奈の隣に座る。

「うん……うん」

 今度は手のひらを合わせて、まるでその上に何か載せているようなポーズで手を目の高さ近くまで持ち上げて、独り言。

 誰かと話しているかのように相槌を打っている。

 あまりにも……奇妙。

 でも、なんでだろう。

 そんな葉織の行動を咎める気持ちにならない。

 むしろ、どうしてか……これまで誰ひとりとして慮ってもらえなかった心が慰められるような心地がした。


「いなくなれって言われて、ずっとずっと邪魔に扱われて、辛かったんだ。

大丈夫だよ。

オレん家では羽香奈のこと、そんな風にしたりしないから」

 添えていた右手を離して、左手の上で何かを撫でるような動きをしてから、葉織はズボンのポケットに手を突っ込む。

 ぱらぱらっと放るように、小さな流木の破片がみっつほど、手のひらの上に転がった。

 もう一度両手を揃えた葉織は、「これを見て」と言いながら羽香奈の目線の先に手を動かした。

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