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誰からも認められない人形師
小動(こゆるぎ)の切通し~片瀬海岸
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流木はもうじゅうぶんな量集まったのか、葉織は黙々と波打ち際を歩き、羽香奈もその後ろを影のように静かについていく。
会話がなくて気まずい、とは、不思議と感じなかった。
ふたりとも、常に話していたいと思う性分でもないから、むしろ居心地よく思えるくらいだった。
気が付けば小動の切通しにぶつかって砂浜が終わっている。
船を係留する斜面に小舟が数隻、底を空に向ける形で天日干しのように置かれている。
その隙間を抜けるように葉織が上がっていく後を羽香奈はついていく。
県道134号線沿いの海側の歩道を歩くが、歩道は狭い上に車道の交通量が多く、遠慮なく走る自動車との距離が近くて羽香奈は少しだけ怖かった。
腰越漁港入口に差し掛かるとその歩道すらなくなってしまい、葉織は押しボタン式の信号でいったん町側へ渡る。
その横断歩道そのものが腰越橋であり、渡りきると転落防止の柵にぶつかり、羽香奈は手すりにつかまり川を覗き込む。
海へ流れ込む河口であり、川でありながらほとんど海。
先ほどまで眺めていた海と同じ色をしているのが羽香奈にとっては不思議だった。
「海もあって、山もあって、川もあって……
わたしが暮らしていた町にはどれもなかったのに、ここにはなんでもあるんだね」
正確には、少し歩いた場所に川はある。
水が緑色で、羽香奈としてはあまり川と思いたくなかった。
単なる水路と思っていた。
「東京にだって楽しいところはたくさんあるって聞いたけど……
近所のお兄ちゃんもお姉ちゃんも、大人になったら東京へ行っちゃったよ」
楽しい場所があるんだとしても、それを自分が享受出来た試しがないから、羽香奈には葉織に教えてあげられるような情報は何もない。
申し訳ないなぁと思っていたところ、
「でも、東京ってここより人が多いみたいだから、オレもたぶん無理かな……
色々見えすぎて疲れそう」
腰越橋の横断歩道は交差点になっていて、葉織はまた海側の歩道に戻ってくるよう羽香奈を導く。
目の前には、弧を描くような片瀬海岸の海水浴場が広がっている。
夏休みシーズンのため海の家が点在し、海水浴客で賑やかで、遠く見える江ノ島の荘厳さもこの場所からでは少々霞んで見える。
「この時期の海水浴場って好きな人同士で遊びに来てる人ばかりだから、落ち込んだ色の人はほとんどいなくて、見ていて安心する。
みんな楽しそうな色してて、それがたくさん集まっててきれいだよ」
そんなにきれいなら、わたしも見られたらいいのにな。
葉織くんが見ているのと同じ景色……
どうして葉織くんにだけ、不思議な色が見える目と不思議なものを作れる手があるんだろう。
会話がなくて気まずい、とは、不思議と感じなかった。
ふたりとも、常に話していたいと思う性分でもないから、むしろ居心地よく思えるくらいだった。
気が付けば小動の切通しにぶつかって砂浜が終わっている。
船を係留する斜面に小舟が数隻、底を空に向ける形で天日干しのように置かれている。
その隙間を抜けるように葉織が上がっていく後を羽香奈はついていく。
県道134号線沿いの海側の歩道を歩くが、歩道は狭い上に車道の交通量が多く、遠慮なく走る自動車との距離が近くて羽香奈は少しだけ怖かった。
腰越漁港入口に差し掛かるとその歩道すらなくなってしまい、葉織は押しボタン式の信号でいったん町側へ渡る。
その横断歩道そのものが腰越橋であり、渡りきると転落防止の柵にぶつかり、羽香奈は手すりにつかまり川を覗き込む。
海へ流れ込む河口であり、川でありながらほとんど海。
先ほどまで眺めていた海と同じ色をしているのが羽香奈にとっては不思議だった。
「海もあって、山もあって、川もあって……
わたしが暮らしていた町にはどれもなかったのに、ここにはなんでもあるんだね」
正確には、少し歩いた場所に川はある。
水が緑色で、羽香奈としてはあまり川と思いたくなかった。
単なる水路と思っていた。
「東京にだって楽しいところはたくさんあるって聞いたけど……
近所のお兄ちゃんもお姉ちゃんも、大人になったら東京へ行っちゃったよ」
楽しい場所があるんだとしても、それを自分が享受出来た試しがないから、羽香奈には葉織に教えてあげられるような情報は何もない。
申し訳ないなぁと思っていたところ、
「でも、東京ってここより人が多いみたいだから、オレもたぶん無理かな……
色々見えすぎて疲れそう」
腰越橋の横断歩道は交差点になっていて、葉織はまた海側の歩道に戻ってくるよう羽香奈を導く。
目の前には、弧を描くような片瀬海岸の海水浴場が広がっている。
夏休みシーズンのため海の家が点在し、海水浴客で賑やかで、遠く見える江ノ島の荘厳さもこの場所からでは少々霞んで見える。
「この時期の海水浴場って好きな人同士で遊びに来てる人ばかりだから、落ち込んだ色の人はほとんどいなくて、見ていて安心する。
みんな楽しそうな色してて、それがたくさん集まっててきれいだよ」
そんなにきれいなら、わたしも見られたらいいのにな。
葉織くんが見ているのと同じ景色……
どうして葉織くんにだけ、不思議な色が見える目と不思議なものを作れる手があるんだろう。
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