江ノ島の小さな人形師

sohko3

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墓の中へ

お焚き上げ

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 その後、羽香奈は葉織に頼まれて、半蔵に「今年のお焚き上げは自分達ふたりだけでしたい」と伝えに行った。

 まだ泣きはらした顔で祖父母の前に出られないというので、羽香奈ひとりで。

「これからは、葉織くんとわたしだけでどんなことも出来るって、おじいちゃん達に見せて安心させてあげたいって……
そう、葉織くんが」

 葉織に頼まれた言葉をそのまま伝えると、半蔵は重苦しくひと息ついた。

 ハツは何の話かわかっていないようで、にこにこと、あさっての方を見ている。

 半蔵はいつにもまして険しい表情だし、毎年一緒にしてきたことから外されるのが嫌なのかなと羽香奈は不安だったが、それは見当違いだったとすぐに知る。

 おもむろに床に膝を着いた半蔵は、老人にしては背も高いので、羽香奈と同じ目線の高さになる。

 がっしりと痛い程に強く、彼女の肩を掴む。

 その指先は小さく震えていた。

「羽香奈……
わしらの家に来てくれて、ありがとう。
これからも、葉織のことを……頼んだよ」

「……は、い」

 葉織にとっては母を、祖父母にとっては娘を、それぞれ手放した日だった。

 悲しみの中にいるのは彼らも同じだった。

 そして、羽香奈は感じていた。

 先ほど葉織が言ってくれたのは正しかったと。

 おじいちゃん、おばあちゃんとお別れする時は、わたしもきっと泣いちゃうだろうから……。


 葉織の気持ちが落ち着くのを待って、ふたりは自宅の庭へ出た。

 羽香奈は木屑の入った木箱を、葉織は波雪の木屑が入った小皿をそれぞれ手に持って。

 太陽がちょうど西の海上に浮かぶ山並みの影へ沈みゆくところだった。

 空と海の境目は灼熱のように強い金色を放ち、闇をはらんだ空色は徐々に紫を深めていって、その炎を鎮めていく。

 一年間に渡って、亡くなったかもしれない方々の人形の残骸を受け止めた寝床なのだからと、毎年木箱ごと燃やしているという。

 延焼しないよう一斗缶の中に納める。

 準備が整って、波雪の木屑をどうするつもりなのか、最終確認する。


「最後にオレと羽香奈を会わせてくれて、それがたぶん、お母さんのこの世で最後の仕事だったんだ。

だからもう、ゆっくり休ませてあげなきゃ……」

 寂しそうだけれど、確かに自分の意思で、葉織は木箱の中へ波雪の名残を納めた。

 一度は激しく燃え上がり、徐々に燃え尽きていく木材は、先ほどの夕暮れの空に似ていた。


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