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墓の中へ
壊れた心のなおし方
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「悲しいことがあって泣きたいならいくらだって泣いてよ、葉織くんはね。
わたしはたぶん、これからも、泣きたくたって泣けないと思うけど」
その理由を知っているのは、この世で葉織だけだ。
彼女自身にすら自覚のなかったその心に触れたのだから。
羽香奈がそれを知ったのは、直接的ではないにしろ葉織の行動によって気付かされたからだった。
羽香奈の「悲しみ」を感じるための心はとっくの昔に壊れていて、今となっては涙すら流れない。
「わたしだって、波雪さんのために泣いてあげたかった。
この家で一緒に暮らして、お母さんって呼びたかった。
そのどっちもわたしは出来なかったから……
わたしの分も、葉織くんがいっぱい泣いてあげて」
生まれ育ったあの家で、羽香奈の感情は全て破壊された。
けれど、葉織と出会って「嬉しい」「楽しい」「愛しい」などの心はすぐに修復した。
でも「悲しい」だけは、葉織と出会ってからはまるで無縁で、きっといつまでもなおらないだろう。
「わたし達がおじいちゃんとおばあちゃんになって、もし、先に葉織くんが死んじゃったら。
その時はきっと泣けると思う。
これ以上に悲しいことなんて、わたしにはありっこないもん」
「……そんなこと、ない、よ」
鼻をぐずりとすすり上げて、葉織は否定の言葉を口にした。
ああ、やっぱりこんなこと、言っちゃダメだったかな。
こんな、普通とかけ離れた壊れた女の子じゃ、葉織くんにとって重荷だよね……。
悲しみに沈む葉織は間違っていないと伝えたい一心で余計なことを言ってしまった。
そう、後悔しかけたけれど。
「羽香奈だって、これからオレ以外にも大切な人、いなくなったら悲しい人に出会えるよ。
学校行って、友達も出来て……。
『悲しい』って気持ちなら壊れたまんまでいいなんて、オレは思わない。
時間がかかるかもしれないけど、壊れてるっていうんならなおしてあげたいよ」
葉織は、膝の上で固く握りしめていた拳をほどいて、そばにあった羽香奈の手を取った。
……こんなこと、葉織くんには絶対言えないけれど。
葉織くんが誰より優しい人に育つために必要だった全てを、波雪さんは注ぎ終わったから……
だから役目を終えて、神様に呼び戻されてしまった天女様だったのかもしれないね。
わたしはたぶん、これからも、泣きたくたって泣けないと思うけど」
その理由を知っているのは、この世で葉織だけだ。
彼女自身にすら自覚のなかったその心に触れたのだから。
羽香奈がそれを知ったのは、直接的ではないにしろ葉織の行動によって気付かされたからだった。
羽香奈の「悲しみ」を感じるための心はとっくの昔に壊れていて、今となっては涙すら流れない。
「わたしだって、波雪さんのために泣いてあげたかった。
この家で一緒に暮らして、お母さんって呼びたかった。
そのどっちもわたしは出来なかったから……
わたしの分も、葉織くんがいっぱい泣いてあげて」
生まれ育ったあの家で、羽香奈の感情は全て破壊された。
けれど、葉織と出会って「嬉しい」「楽しい」「愛しい」などの心はすぐに修復した。
でも「悲しい」だけは、葉織と出会ってからはまるで無縁で、きっといつまでもなおらないだろう。
「わたし達がおじいちゃんとおばあちゃんになって、もし、先に葉織くんが死んじゃったら。
その時はきっと泣けると思う。
これ以上に悲しいことなんて、わたしにはありっこないもん」
「……そんなこと、ない、よ」
鼻をぐずりとすすり上げて、葉織は否定の言葉を口にした。
ああ、やっぱりこんなこと、言っちゃダメだったかな。
こんな、普通とかけ離れた壊れた女の子じゃ、葉織くんにとって重荷だよね……。
悲しみに沈む葉織は間違っていないと伝えたい一心で余計なことを言ってしまった。
そう、後悔しかけたけれど。
「羽香奈だって、これからオレ以外にも大切な人、いなくなったら悲しい人に出会えるよ。
学校行って、友達も出来て……。
『悲しい』って気持ちなら壊れたまんまでいいなんて、オレは思わない。
時間がかかるかもしれないけど、壊れてるっていうんならなおしてあげたいよ」
葉織は、膝の上で固く握りしめていた拳をほどいて、そばにあった羽香奈の手を取った。
……こんなこと、葉織くんには絶対言えないけれど。
葉織くんが誰より優しい人に育つために必要だった全てを、波雪さんは注ぎ終わったから……
だから役目を終えて、神様に呼び戻されてしまった天女様だったのかもしれないね。
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