江ノ島の小さな人形師

sohko3

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墓の中へ

母の四十九日

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 八月十五日は波雪の四十九日だった。

 お墓への納骨を終えて家に戻ってきても葉織は放心状態で、勉強机の椅子に座って脱力し、波雪の遺影を見つめていた。

 この調子では、今日中に行うと約束していた、元は人形だった木屑のお焚き上げも出来ないかもしれない。

 かつて波雪の人形だったという木屑も、未だ、遺影の前に鎮座している。

 羽香奈は二段ベッドの下に腰を下ろして、そんな葉織を黙って見ていた。

 こんな時、葉織をひとりっきりにしてあげた方が良いのだろうかとも思ったのだけど……。

『羽香奈ちゃんも、葉織のことをよろしくね』

 他ならぬ波雪自身が、生前、羽香奈にそう言ってくれたから。

 こんな時に、葉織をひとりぼっちにするのが正しいと思えなかった。

 だって、ひとりぼっちって寂しいものでしょう? 

 羽香奈はずっとずっとそう感じて生きてきたから、誰よりわかっているつもりだった。


「……うっ……」

 やがて、葉織は自身の膝の上でぎゅっと握り拳を作って、声を噛み殺すように泣き出した。

 逡巡しながらも、羽香奈はベッドから立ち上がり。

 床に膝を着いて葉織の握り拳に触れて、産毛をくすぐるような優しさで撫でた。

 涙がいくつも落ちていて湿っていた。

「オレ……羽香奈を守るって言ったのに……こんなことで泣いてるし、一緒に学校行くことさえ出来ない、なんて」

 お骨だけだとしても自分のそばにあることは葉織にとって心の拠り所だった。

 波雪自身はもういないのに、お骨が手元からなくなっただけで、悲しくてたまらない……。

 こんなこと、っていうほど、軽くないよ。

 羽香奈は少しだけ、葉織が羨ましかった。

 お骨でもいいから側にいて欲しい。

 そんな人がお母さんだったんだから。

 その母を亡くして泣いている葉織に対してこんな感情を抱くなんて、羽香奈はそんな自分の心の醜さが嫌だった。

 それこそ、自分が墓に入るまで一生涯隠し通すつもりだった。

「……いやだなぁ。
わたしが葉織くんに守ってもらいたがってるなんて、勝手に決めないでよ」

 涙に暮れる葉織の顔を見上げると、羽香奈の発言が思いがけなかったのか、葉織はきょとんとしていた。

 驚きで涙も止まったかもしれない。

「わたしはね。
葉織くんと助け合って生きていきたいだけなの。
葉織くんが大変な時は私が助けてあげたい。
どっちが守るも守らないもないんだよ」

 女の子だからって、誰もが皆、好きな男の子に守られたいって思ってるわけじゃない。
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