79 / 121
第16章
彩芽、墓に来る
しおりを挟む
ストラディゴスは地下通路を出ると、作った地図とエドワルドの遺体をエドワルドの仲間に託した。
潰れた浴場の大きな乾いた浴室の中。
エドワルドの部下達は、ボスの亡骸を囲む。
殆どの者が無力感から、遺体を前に放心状態であった。
人目も気にせず泣き崩れる者もいる。
「あんたは、これからどうする」
酒場で会ったエドワルドの側近らしき部下が、ストラディゴスに聞いてきた。
「連れをさらったのも、エドワルドを殺したのも、ヴェンガンの仲間だ。奴の城に乗り込む」
ストラディゴスは、ブルローネから持ってきた物と、馬車の上で無事だった装備を装着し、戦に出る準備を整えている。
「あんた、なんでヴェンガンだってわかったんだ?」
場の空気が凍り付いた様に緊張したのを、その場の全員が感じた。
「俺の連れが、奴に呪いをかけられた。恐らく、その呪いのせいで奴の仲間が……」
「あんた、ボスは、エドワルドさんはそれじゃあ、あんたの連れを逃がす為に、リーパーに殺されたってのか」
エドワルドの側近の言葉に、エドワルドの亡骸を囲んでいた無法者達の中に、殺意が沸き上がった。
ボスは、どこの誰とも知らない女を逃がそうとして殺された。
巻き込まれただけ。
しかも、逃がしきれなかったとあっては、完全な無駄死に。
「あんたら、何なんだ。ボスの古いダチか?」
「そうだ。エドワルドとは戦場で背中を預けあった戦友だった。エドワルドは俺の女を逃がそうとして殺された。あんたの言う通りだよ」
「あんた、名は?」
「ストラディゴス」
「あんたが、噂の団長殺し……あんたの大勢いる女の一人を逃がして、ボスは死んだってのか」
「……そうだ」
「ふざけてるのか! あんたダチ殺されて涙も流さないのか!」
「俺が泣くとしたら、仇をとってからだ」
「…………あんたなら、とれるんだな? 軍隊とリーパーを相手に、戦うって言うんだな?」
「命に代えても、奴の首をエドワルドの墓に」
ストラディゴスの言葉を聞き、エドワルドの側近は全員に見え、聞こえる様に浴場に備え付けられたサウナにある様なベンチの上に立った。
「お前ら、よく聞け! ボスは、ダチの、このストラディゴスの為に死んだ! 伯爵に殺されたんだ! だがな、こいつをボスに直接謝らせにやっても、ボスは喜ばねぇ! ボスの為に俺達は何が出来る!」
「敵討ちだ!」「伯爵を殺せ!」
「そうだ! ストラディゴスは命に代えても伯爵の首をとると言った! お前ら聞いてただろ! それなら、俺達はボスの為に、それを手伝うしかない! そうだよな!」
エドワルドの側近は、密輸組織のナンバー2だけあり、その場にいる部下全員をまとめ上げ、ストラディゴスに向かっていた殺意を伯爵へと向きを変えてしまったのだった。
敵討ちだと盛り上がる部下達をしり目に、側近はベンチから降りるとストラディゴスの前に立つ。
「モサネドだ。あんたを伯爵の近くまで連れて行ってやる」
「どうして……」
「ボスがあんたを気に入ってたのは、ここにいる全員知っている。ボスがあんたの女を救おうとして死んだのなら、救ってやらなきゃ、ボスが浮かばれねぇじゃねぇか……あんたの為じゃない」
「連れて行くって、城の裏口でも知ってるのか?」
「あんた、俺達を何だと思ってる?」
* * *
「逃がしただと!? 頭から花を咲かせたバカ女一人捕まえられないのか! この役立たずが!!」
フィデーリス城の地下牢ではヴェンガンが、リーパーが彩芽を取り逃して帰ってきた事に怒り狂っていた。
「どうかお許しを、主様。思わぬ邪魔が入って」
リーパーは、何人もの人の声が重なった様な聞き取りづらい声で、怯える様に言い訳をする。
「咎人の分際で口答えするのか! ならば、望み通り牢に戻してやろう! 貴様の代わりなどいくらでもいる!」
地下牢の中を見ると、生きた人間は誰もおらず、白骨死体が一室に一体転がっている。
「お、お許しを! (死の)宣告を受けた女が下水道に逃げたので、追ったのですが、俺とは別の死人が女をさらって」
「別の? ははぁ、そう言う事か。過去の亡霊め、墓守の分際で、まだ私の邪魔をするのか……それよりも、あのバカ女、奴の知り合いだったのなら、遊ばずに殺しておけば……」
「そいつは壁の外でも動けて、俺では追う事が出来ず……」
「あれは私の魔法とは、また別物だからな。そうか、あれが墓から出て来るとは、珍しい。何十年ぶりだ? それほどまでにバカ女が大切なのか? あの盗人の事が……」
「主、様?」
「女を取り逃した罪、貴様には苦痛を持って償って貰わなければならないが、あいつめ、そうか、今度は下水道から……奴には相応しいが、どうやって入ったのだ? 出入りは誰にも出来ない筈……」
「それが、下水道の下に、横穴が」
「なんだと!? すぐにその穴を埋め、奴を閉め出せ。くそぉ、いつの間にそんな物を……それと、ストラディゴスとか言う女の連れがまだ町にいる筈だ。見つけたら生かして捕えろ。使えるかもしれん」
「生かして、ですか? ああ、ですが、穴の方は女をさらった死人の仲間がもう塞いじまったようで、埋めるにしても時間が……」
「ならグズグズするな! 全員でかかれ! 愚か者が!!」
ヴェンガンが命令をすると、牢屋の中に数十を超えるリーパーが一斉に起き上がり、檻の扉が解放された。
* * *
「あの……ここは……」
「アダマス王家の墓、と言って、お前は恐らく知るまい。人族ではな」
「王家の墓って、ピレトス山脈の亡国の王墓?」
「なんだ、多少は物を知っておる様だな」
ライターの明かりだけが彩芽の周囲を照らす中、彩芽は得体のしれないマントを着て鎌を持った赤い瞳の何かが墓場だと言う場所を歩いていた。
自らを死を統べる者と名乗った、それが何なのか、彩芽は分かっていた。
ソウルリーパーとストラディゴスが言っていた、マルギアス王国によって二千万フォルトの懸賞金をかけられている怪物である。
しかし、彩芽を追ってた同じ様なリーパーから助けてくれた上に、普通に話しが通じる。
怪物と言う感じは、あまりしない。
最初に「なんで、私を助けてくれたの?」と聞くと「助けたかった訳では無いが、助けを求められれば助けぬわけにもいくまい」と答え、その後も聞けば答えてくれる。
「しかし、一つ間違っておる。亡国と言ったな。 ここに、まだ侵攻に抗う国がある。生者がいないとしてもな。我らは王の帰還を待っておるのだ」
「王?」
「裏切り者ヴェンガンに捕らえられし、ミセーリア・アダマス。フィデーリス王国の真の主だ」
彩芽が死を統べる者を名乗るリーパーに連れて来られたのは、広大な地下空間に作られた神殿であった。
上を見ると、遥か上に網目状に光が差し込んでいる。
どうやらピレトス山脈とは、テーブルマウンテンと呼ばれる卓状山の集合体らしい。
外から見た時は、頂が雲で隠れている巨大な山脈でしか無かった。
だが、その内部は、天井が網目状に崩落し、地下には広大な大空洞があり、そこに神殿が建てられ、荘厳な空間となっていた。
ただし、所狭しと無数のスケルトンが石を切り出して彩芽が今しがた歩いてきた通路へと運んでいた。
「あの、あの人達は何を?」
「彼らを人と呼ぶか、面白い奴よ。聞けば泣いて喜ぶぞ。泣けぬがな」
「え、あの……」
リーパーなりの冗談だったが、彩芽はまったく笑えない。
「まあいい。フィデーリス王国は四百年もの間、フィデーリスの名を汚し続けるあの男、ヴェンガンから王と国を取り戻す為の戦いをしておる。あれはその一環、攻め込む道を作っておるのだ」
「あ、あの、私、町に帰らないといけなくて、待ってる人が」
「我も、町に行くぞ。機は熟したのだ。積年の恨みを晴らす時よ。それより、そんな霧を身体から出していては、目立って仕方が無かろう。そいつはヴェンガンの魔法だな? いつまでも進歩の無い上に、なんとも品性の無い。取ってやるから、こっちへ来るがいい」
「え、とるって、呪いを? 出来るんですか?」
「当たり前だ。我を誰と心得る。フィデーリス王国一の魔法使いである」
「あの、おいくらぐらいで?」
エルムは相談だけで一千フォルトだった。
呪いを解くなんて、いかにも金がかかりそうである。
しかし、リーパーは赤い目を細めて、おかしそうに笑いながら答える。
「何を言っておる。奴の嫌がる顔を見れれば、それで十分よ。むしろ、お前に金を払ってやりたいぐらいだわ」
* * *
そこは、城の拷問部屋であった。
「伯爵様、どうか、お慈悲を……」
「咎人の分際で許しも無く話しかけるなっ! だが、まあ良い。新しい拷問官の腕前はどうだ? 気にいってくれたか?」
椅子に全裸の状態で、首、手、足を固定され、血まみれで泣き叫ぶ一人の男。
彼は、ルカラを捕えようとしてエドワルドに兵士の詰所へと引き渡された、盗賊の一人。
背の高い男であった。
「カーラルア、練習だ。殺さない様に、痛めつけるんだ」
「やめてくれ! やめっもがっ!? んんんんっ! んんん!」
本職の屈強な拷問官が背の高い男に猿轡をかけ、ヴェンガンが嬉しそうにルカラに指つぶし機を手渡す。
「使い方は分かるか? わかるよな? なんども見せて貰ったはずだ。ここにどの指を挟む? 一本か? 全部一気に挟むか? それとも、別のものを挟んでみるか?」
ヴェンガンは、背の高い男の股間を見た。
「伯爵様、これ以上は……どうか、この人が本当に死んでしまいます」
「カーラルア、指が無くなっても死なないから安心するんだ。こっちが無くなってもね。それに、練習でうまくなっておかないと、お前の大好きな女の番が来た時に、誤って殺してしまうかもしれない。それは嫌だろ?」
「伯爵様……お願いです。鞭打ちでも何でも受けます! だから!」
「いいからやれ!!! お前が、十秒以内にこの男の何かを一本でも潰さないなら、この場で殺す。十、九、八……」
ルカラは男の目を見た。
椅子に縛り付けられ、猿轡をはめられた男は、必死に左手の小指を立てる。
いいから、やってくれと目で訴える。
「三、二……」
ルカラは男の指を装置に挟むと、挟み込む物を締めあげる為のネジを回し始めた。
男が猿轡越しに絶叫して痛がると、ヴェンガンは男と同じ様な辛い顔をしながらネジを震える手で回していくルカラを見ながら勃起していた。
「やれば出来るじゃないかカーラルア。この男から痛みが引くまで、次はこの男で練習だ」
そこには、背の高い男と同じ様に、全裸で椅子に固定された、背の高い男と一緒にいた小柄な男がいた。
「カーラルア、この男のどこを壊して練習したい?」
潰れた浴場の大きな乾いた浴室の中。
エドワルドの部下達は、ボスの亡骸を囲む。
殆どの者が無力感から、遺体を前に放心状態であった。
人目も気にせず泣き崩れる者もいる。
「あんたは、これからどうする」
酒場で会ったエドワルドの側近らしき部下が、ストラディゴスに聞いてきた。
「連れをさらったのも、エドワルドを殺したのも、ヴェンガンの仲間だ。奴の城に乗り込む」
ストラディゴスは、ブルローネから持ってきた物と、馬車の上で無事だった装備を装着し、戦に出る準備を整えている。
「あんた、なんでヴェンガンだってわかったんだ?」
場の空気が凍り付いた様に緊張したのを、その場の全員が感じた。
「俺の連れが、奴に呪いをかけられた。恐らく、その呪いのせいで奴の仲間が……」
「あんた、ボスは、エドワルドさんはそれじゃあ、あんたの連れを逃がす為に、リーパーに殺されたってのか」
エドワルドの側近の言葉に、エドワルドの亡骸を囲んでいた無法者達の中に、殺意が沸き上がった。
ボスは、どこの誰とも知らない女を逃がそうとして殺された。
巻き込まれただけ。
しかも、逃がしきれなかったとあっては、完全な無駄死に。
「あんたら、何なんだ。ボスの古いダチか?」
「そうだ。エドワルドとは戦場で背中を預けあった戦友だった。エドワルドは俺の女を逃がそうとして殺された。あんたの言う通りだよ」
「あんた、名は?」
「ストラディゴス」
「あんたが、噂の団長殺し……あんたの大勢いる女の一人を逃がして、ボスは死んだってのか」
「……そうだ」
「ふざけてるのか! あんたダチ殺されて涙も流さないのか!」
「俺が泣くとしたら、仇をとってからだ」
「…………あんたなら、とれるんだな? 軍隊とリーパーを相手に、戦うって言うんだな?」
「命に代えても、奴の首をエドワルドの墓に」
ストラディゴスの言葉を聞き、エドワルドの側近は全員に見え、聞こえる様に浴場に備え付けられたサウナにある様なベンチの上に立った。
「お前ら、よく聞け! ボスは、ダチの、このストラディゴスの為に死んだ! 伯爵に殺されたんだ! だがな、こいつをボスに直接謝らせにやっても、ボスは喜ばねぇ! ボスの為に俺達は何が出来る!」
「敵討ちだ!」「伯爵を殺せ!」
「そうだ! ストラディゴスは命に代えても伯爵の首をとると言った! お前ら聞いてただろ! それなら、俺達はボスの為に、それを手伝うしかない! そうだよな!」
エドワルドの側近は、密輸組織のナンバー2だけあり、その場にいる部下全員をまとめ上げ、ストラディゴスに向かっていた殺意を伯爵へと向きを変えてしまったのだった。
敵討ちだと盛り上がる部下達をしり目に、側近はベンチから降りるとストラディゴスの前に立つ。
「モサネドだ。あんたを伯爵の近くまで連れて行ってやる」
「どうして……」
「ボスがあんたを気に入ってたのは、ここにいる全員知っている。ボスがあんたの女を救おうとして死んだのなら、救ってやらなきゃ、ボスが浮かばれねぇじゃねぇか……あんたの為じゃない」
「連れて行くって、城の裏口でも知ってるのか?」
「あんた、俺達を何だと思ってる?」
* * *
「逃がしただと!? 頭から花を咲かせたバカ女一人捕まえられないのか! この役立たずが!!」
フィデーリス城の地下牢ではヴェンガンが、リーパーが彩芽を取り逃して帰ってきた事に怒り狂っていた。
「どうかお許しを、主様。思わぬ邪魔が入って」
リーパーは、何人もの人の声が重なった様な聞き取りづらい声で、怯える様に言い訳をする。
「咎人の分際で口答えするのか! ならば、望み通り牢に戻してやろう! 貴様の代わりなどいくらでもいる!」
地下牢の中を見ると、生きた人間は誰もおらず、白骨死体が一室に一体転がっている。
「お、お許しを! (死の)宣告を受けた女が下水道に逃げたので、追ったのですが、俺とは別の死人が女をさらって」
「別の? ははぁ、そう言う事か。過去の亡霊め、墓守の分際で、まだ私の邪魔をするのか……それよりも、あのバカ女、奴の知り合いだったのなら、遊ばずに殺しておけば……」
「そいつは壁の外でも動けて、俺では追う事が出来ず……」
「あれは私の魔法とは、また別物だからな。そうか、あれが墓から出て来るとは、珍しい。何十年ぶりだ? それほどまでにバカ女が大切なのか? あの盗人の事が……」
「主、様?」
「女を取り逃した罪、貴様には苦痛を持って償って貰わなければならないが、あいつめ、そうか、今度は下水道から……奴には相応しいが、どうやって入ったのだ? 出入りは誰にも出来ない筈……」
「それが、下水道の下に、横穴が」
「なんだと!? すぐにその穴を埋め、奴を閉め出せ。くそぉ、いつの間にそんな物を……それと、ストラディゴスとか言う女の連れがまだ町にいる筈だ。見つけたら生かして捕えろ。使えるかもしれん」
「生かして、ですか? ああ、ですが、穴の方は女をさらった死人の仲間がもう塞いじまったようで、埋めるにしても時間が……」
「ならグズグズするな! 全員でかかれ! 愚か者が!!」
ヴェンガンが命令をすると、牢屋の中に数十を超えるリーパーが一斉に起き上がり、檻の扉が解放された。
* * *
「あの……ここは……」
「アダマス王家の墓、と言って、お前は恐らく知るまい。人族ではな」
「王家の墓って、ピレトス山脈の亡国の王墓?」
「なんだ、多少は物を知っておる様だな」
ライターの明かりだけが彩芽の周囲を照らす中、彩芽は得体のしれないマントを着て鎌を持った赤い瞳の何かが墓場だと言う場所を歩いていた。
自らを死を統べる者と名乗った、それが何なのか、彩芽は分かっていた。
ソウルリーパーとストラディゴスが言っていた、マルギアス王国によって二千万フォルトの懸賞金をかけられている怪物である。
しかし、彩芽を追ってた同じ様なリーパーから助けてくれた上に、普通に話しが通じる。
怪物と言う感じは、あまりしない。
最初に「なんで、私を助けてくれたの?」と聞くと「助けたかった訳では無いが、助けを求められれば助けぬわけにもいくまい」と答え、その後も聞けば答えてくれる。
「しかし、一つ間違っておる。亡国と言ったな。 ここに、まだ侵攻に抗う国がある。生者がいないとしてもな。我らは王の帰還を待っておるのだ」
「王?」
「裏切り者ヴェンガンに捕らえられし、ミセーリア・アダマス。フィデーリス王国の真の主だ」
彩芽が死を統べる者を名乗るリーパーに連れて来られたのは、広大な地下空間に作られた神殿であった。
上を見ると、遥か上に網目状に光が差し込んでいる。
どうやらピレトス山脈とは、テーブルマウンテンと呼ばれる卓状山の集合体らしい。
外から見た時は、頂が雲で隠れている巨大な山脈でしか無かった。
だが、その内部は、天井が網目状に崩落し、地下には広大な大空洞があり、そこに神殿が建てられ、荘厳な空間となっていた。
ただし、所狭しと無数のスケルトンが石を切り出して彩芽が今しがた歩いてきた通路へと運んでいた。
「あの、あの人達は何を?」
「彼らを人と呼ぶか、面白い奴よ。聞けば泣いて喜ぶぞ。泣けぬがな」
「え、あの……」
リーパーなりの冗談だったが、彩芽はまったく笑えない。
「まあいい。フィデーリス王国は四百年もの間、フィデーリスの名を汚し続けるあの男、ヴェンガンから王と国を取り戻す為の戦いをしておる。あれはその一環、攻め込む道を作っておるのだ」
「あ、あの、私、町に帰らないといけなくて、待ってる人が」
「我も、町に行くぞ。機は熟したのだ。積年の恨みを晴らす時よ。それより、そんな霧を身体から出していては、目立って仕方が無かろう。そいつはヴェンガンの魔法だな? いつまでも進歩の無い上に、なんとも品性の無い。取ってやるから、こっちへ来るがいい」
「え、とるって、呪いを? 出来るんですか?」
「当たり前だ。我を誰と心得る。フィデーリス王国一の魔法使いである」
「あの、おいくらぐらいで?」
エルムは相談だけで一千フォルトだった。
呪いを解くなんて、いかにも金がかかりそうである。
しかし、リーパーは赤い目を細めて、おかしそうに笑いながら答える。
「何を言っておる。奴の嫌がる顔を見れれば、それで十分よ。むしろ、お前に金を払ってやりたいぐらいだわ」
* * *
そこは、城の拷問部屋であった。
「伯爵様、どうか、お慈悲を……」
「咎人の分際で許しも無く話しかけるなっ! だが、まあ良い。新しい拷問官の腕前はどうだ? 気にいってくれたか?」
椅子に全裸の状態で、首、手、足を固定され、血まみれで泣き叫ぶ一人の男。
彼は、ルカラを捕えようとしてエドワルドに兵士の詰所へと引き渡された、盗賊の一人。
背の高い男であった。
「カーラルア、練習だ。殺さない様に、痛めつけるんだ」
「やめてくれ! やめっもがっ!? んんんんっ! んんん!」
本職の屈強な拷問官が背の高い男に猿轡をかけ、ヴェンガンが嬉しそうにルカラに指つぶし機を手渡す。
「使い方は分かるか? わかるよな? なんども見せて貰ったはずだ。ここにどの指を挟む? 一本か? 全部一気に挟むか? それとも、別のものを挟んでみるか?」
ヴェンガンは、背の高い男の股間を見た。
「伯爵様、これ以上は……どうか、この人が本当に死んでしまいます」
「カーラルア、指が無くなっても死なないから安心するんだ。こっちが無くなってもね。それに、練習でうまくなっておかないと、お前の大好きな女の番が来た時に、誤って殺してしまうかもしれない。それは嫌だろ?」
「伯爵様……お願いです。鞭打ちでも何でも受けます! だから!」
「いいからやれ!!! お前が、十秒以内にこの男の何かを一本でも潰さないなら、この場で殺す。十、九、八……」
ルカラは男の目を見た。
椅子に縛り付けられ、猿轡をはめられた男は、必死に左手の小指を立てる。
いいから、やってくれと目で訴える。
「三、二……」
ルカラは男の指を装置に挟むと、挟み込む物を締めあげる為のネジを回し始めた。
男が猿轡越しに絶叫して痛がると、ヴェンガンは男と同じ様な辛い顔をしながらネジを震える手で回していくルカラを見ながら勃起していた。
「やれば出来るじゃないかカーラルア。この男から痛みが引くまで、次はこの男で練習だ」
そこには、背の高い男と同じ様に、全裸で椅子に固定された、背の高い男と一緒にいた小柄な男がいた。
「カーラルア、この男のどこを壊して練習したい?」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる