私、魔王様と結婚します~聖女でも生まれ変わりでもありませんが頑張ります!

高岡玄三

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第4話 待ちに待った結婚式

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 日も昇らぬうちから子爵の城に王宮からの使いの者たちがやってきた。アミリアの部屋にも王宮からの侍女たちがやってきてアミリアを叩き起こした。

まだ寝ぼけ眼の彼女の顔を侍女たちは容赦なく温かく濡らしたタオルで顔を拭き、化粧を施し、寝間着を脱がせ送られてきた豪華な婚礼衣装へと身を包んだ。いつもなら自分の服は自分で用意するのだが、今回は他国の皇族との結婚だ。アミリアはなすがなされるまま髪をとかされていった。

勿論家族も例外ではない国から新調してもらった第一礼装に袖を通し、花嫁のついでと言わんばかりに手際よく身を整えられてしまった。

 身支度が済んだアミリア達は城の前に止められている馬車に乗り込むと御者が馬に鞭を打って走り始めた。ほかに嫁入り道具も真っ白な荷馬車に積み込まれ、アミリアは馬車の窓から故郷の風景を目に焼き付けていった。

馬車を走らせてから数時間、朝日も昇り始めた頃に馬車は王宮についた。すでに王宮周りでは花嫁見たさに民衆が群がっていた。アミリアと見るやいなやわああっと歓声を上げる者もおれば思ってたのと違うとも思えるような感じの者も感じ取れた。アミリアは大衆に向かってドレスの両裾をつまみ上げ軽く会釈をした。その光景に大衆は歓声に包まれた。

王宮に入り、謁見の間に通された。そこには国王に大臣、神官といったコック内の要人がすべて出そろっていた。この国では他国に嫁ぐ際国王から贈り物を受け取る習わしとがある。

「アミリア・ベティンよ、前に出なさい。」

神官が仰々しく口を開く。いわれたとおりに彼女は前へと出る。王は側近から長い袋を受け取り彼女の前に差し出す。

「これは月の女神の加護がこめられた神聖な剣だ。シルベルス帝国に持っていくといい」

「はい、喜んでお受け取りします。テルミア王国に栄光あれ。」

贈答の儀が終わったところでアミリアが王宮を出ると先ほどの馬車はなくそこにあったのは黒に銀色と赤が入った馬車が見えた。

(あれは帝国の馬車…)

その馬車から一人の魔族が現れた。頭全体が黒い炎に包まれていて不定形の炎の中に紫の瞳が人間と同じようについた男が立っていた。

「アミリア様ですね。私はシルベルス帝国からやってまいりましたワイゼルと申します。本日は陛下とのご成婚おめでとうございます。ここからは私がシルベルス帝国へとお連れ致します。」

ワイゼルと名乗った男は恭しく頭を下げた。アミリアも会釈をして黒の馬車に乗り込んだ。中はワインレッドを基調としたシンプルながらに品のある内装であった。

ワイゼルも乗り込むとどこからか号令が鳴り馬車が動き出したのだ。アミリアは窓から乗り出して家族の顔をもう一回見たかったがこのぼしゃに乗り込んだ以上そんなはしたない真似はできなくて窓から家族の顔を見ることしかできなかった。

 王都から離れて一時間たった頃馬車の中でワイゼルが向かいに座るアミリアに問いかけるように話してきた。

「アミリア様、これより先は帝国領へ向かいます。こちらの資料には我が国での婚礼の儀式の手順が書かれています。一応ですがそちらの言語で書かせてもらいました。何かわからないことがございましたら私にお申し付けください。」

「あらありがとう。確認のために見ておきますわ。これからは帝国の言葉で話しても構いませんわ。もちろん文字に関しましても。」

「私はアミリア様にお仕えする身、それがご用命なら従いましょう。」

ワイゼルはテルミア語からシルベルス語に切り替えた。国境を抜けると緩衝地帯の森に入っていった。ここの森は理性のない獣や魔獣が多く潜んでおり、王国の実質的な壁となっているのである。ただ畑を荒らす害獣としての面もあったがアミリアも一度師匠といったことがあるのだがまだ日が昇っている時間帯にも関わらず魔獣が多くうろついていたが今は魔獣の気配が感じ取れない。

「ねえ、このあたりって魔獣が多くいるはずなのに全然その気配がしないわ」

するとワイゼルがあっけらかんとした表情で

「ええ昨晩ここ一体の魔獣をお妃さまのために狩りつくしてしまいましたから今は獣どももおとなしくしているはずです。ご安心ください。」

何の悪気もなしに話すワイゼルを見て(何もそこまで…)と思っているうちに馬車は森を抜けた。暗い森を抜けると帝国に入っていった。帝国にも農地があるのかゴブリンやドワーフが畑の土を耕している光景が目に入った。まさか帝国に行っても懐かしい光景が広がっていたことにアミリアは窓に手をやるがふっと我に返って農民たちに小さくお手ふりをした。ゴブリンたちは馬車を見て慌てて服についた泥を手で払い、深々と頭を下げた。ワイゼルは小さな魔方陣を展開し、ヴェールを取り出した。

「アミリア様、ここからは首都へまっすぐ行きます。そろそろこれをお被りください。」

渡されたヴェールを被り彼女に緊張が走る。お昼ごろには帝都リアタリスに着く。農地から建造物が増え、一気に街並みが広がっていく。建物は王国の物とは違い無骨な感じのデザインが目に入る。馬車が傾く帝都と宮殿はやや高い丘の上に立っておりもうそろそろ帝都に着くという合図にもなった。

 帝都に入ると道路を除いたあちこちにたくさんの魔族がいた。もうお祭り気分なのか昼からお酒を飲んで酔っ払っている者や楽器をかき鳴らし踊っている民衆を目にした。窓とヴェール越しからでもその楽しい雰囲気は伝わっており、馬車を見た民衆が歓声を上げながらシルベルスの国旗を振って出迎えてくれた。

アミリアもそれに応えようと笑顔でお手ふりをすると民衆はさらに大きな歓声が上がった。

 正午になる前に宮殿に着いた。宮殿広場には王国とは様式が違うものの祝う準備がなされており、立食テーブルには豪華な食事、そこに参列していたのは帝国の要人たちもいた。馬車が付くと皆の注目が集まる。扉が開くと先にワイゼルが下りた。彼が手を差し出しエスコートをする。アミリアはその手を取って馬車から降りた瞬間、周りから黄色い声が出てきた。ワイゼルに連れられて宮殿の奥へと足を踏み入れた時、それまで賑やかだった声が一気に静まり返る。宮殿をある程度進んだところでワイゼルは彼女の手を放し、彼女にさらに奥へと行かせる。宮殿を進むと帝国の神官が大きな魔方陣から現れ、皇帝のいる玉座へと案内された。

黒い木材に白い絹の壁紙赤い幾何学模様の入ったシンプルな装飾、質素に見えるがどれも一流の物だ。薄いカーテン越しに皇帝の姿が見えた。

「レドルス皇帝陛下ただいま花嫁を連れてまいりました。これより婚姻の儀を執り行いたいと思います。」

アミリアは玉座に一歩また一歩と階段を上った。前はヴェールでほとんど見えない。転ばぬように慎重に歩いていると紺色の手が差し出されていた。その手を取り皇帝の目の前に立った。皇帝はアミリアにかかっていたヴェールをめくった。アミリアは初めて視界がはっきりと見えた。彼女の瞳に映ったのは頭部が紺色の立方体に三つの空色の瞳、そのなかに金のような黄色が差し色としてあった。体つきは人間とは変わらず青の詰襟に水色のマントを着ている。明らかに異形の皇帝を見て彼女は固まってしまった。それは恐怖からくるものではなく…


(ああああああああああああ!かっこいいいいいいい!どうぢよどうしよあの時見た頃よりも何百、いや何千倍かっこいいい!どあっぷありがとうございます!あああああああああああなにもかもかっこいいわ!こんな凛々しい方ほんっと素敵ですわ!はっだめだめだめここでニヤケ面してはいけないわ。変な表情をしてしまったらこの方に失礼よ!表情筋表情筋表情筋顔という顔に力を籠めるのよ!レドルス様にふさわしくあらねば!)

アミリアが顔に力を込めながら立っているとレドルスが

「我が国へようこそ。貴殿を歓迎する…」


(ああああああああああああああああ声もかっこいいなんて反則だわ!!しかも?声からして緊張が走ってるなんてなんて初々しいの!食べちゃいたいぐらいかわいい!かっこいいだげでもざいごうなのにかっこいいのにくわえてかわいい属性だと?!販促にもほどあんだろが!!!!あそうだ表情筋表情筋ふう)


「帝国に尽くす覚悟はできております。」

「では誓いの印としてお互いの手の甲に口づけを」

レドルスはぎこちなくアミリアの手を取り、小さく口づけした。続いてアミリアもレドルスの右手を取り、軽く口づけをした。そのときも


(あっっ死んだわ今日死んだ。今日命日になってもいいやはい命日です。手がちょっと冷たいそれもいい。なんかゴツゴツしてんの最高すぎ。もうずっとこの手触ってたいわ)


「さあ皆さんに挨拶をしに行きましょう。」

「はい。」

二人は手を取り合い宮殿を出た。広場に着くと大勢の魔族たちから拍手が響いた。アミリアは夫に連れられて要人たちに挨拶しに回った。

「テルミア王国から参りました。アミリアですわ」

彼女は流暢なシルベルス語を話した。

「これより帝国語でお話いたしますわ」

と両裾を持ち上げた。妻となった彼女は帝国の要人一人ひとりに向けて挨拶をしていく。もちろん出席している魔族いや魔人たちにも挨拶していった。

パーティーは盛大に行われ、アミリアは夫の隣に座り優雅な音楽とおいしい料理に舌鼓を打っていた。

アミリアは隣にいる夫を見る。夫は静かにワインを口に含んでいた。ヒトと顔の作りが違うからか表情はよく読めない。見られていることに気づいた彼が小さな声で

「どうしたんだい?もしかして料理口に合わなかった?」

「いいえ。あなた様のことが気になっただけです。料理もおいしいですわ。」

「そうか、それはよかった。君の好きなものもある今日は大いに楽しんでくれ。」

どこか照れ臭そうにレドルスは微笑んだ。表情こそ読めないものの雰囲気が緊張から一気に穏やかになった。

(私そんなに暗い表情していましたっけ?表情筋に力込めすぎたのかしら?ここは顔の筋肉をフル活用してレドルス様に相応しいお淑やかな花嫁に徹しなければ…)

アミリアが精神統一をしている中レドルスが二人分のケーキを持ってきた。

「アミリア、一緒に食べよう。」

「はっ…はい!」

二人は小さなベリーがのったケーキを口に入れた。クリームの甘みとスポンジの柔らかさ、ベリーの酸味がマッチしていてとても美味しかった。

(耐えるのよ…アミリア…こんな幸せなことに慣れるのよ…)

結婚パーティーは夜まで楽しくそして賑やかに続いたのだった。
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