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幼い頃
しおりを挟む母子家庭だった。
家族は母と1つ上の兄と祖父と私の4人家族。
兄は祖父が大好きで祖父と将棋をうったり風呂に入ったり一緒に寝ていた。
私は母がとても大好きだった。優しかった。私が産まれる前には崇教に入っていて信仰と仕事で忙しく毎日23時に帰ってきた。まだ5歳だった私は母と一緒に寝たくて毎日母の帰りを寝ないで待っていた。
「遅くなってごめんね、一緒に寝よう」
優しい声、優しい顔、優しい匂い。
毎日遅く帰ってきても一緒にいれる時間は短くても何も不満はなかった。いつも私達の為に働いてくれてありがとう!とむしろ感謝しかなかった。
貧乏だった為おもちゃなどはなかった。
欲しくないわけがない。
言えなかった、ワガママはいけないって思ってたし。毎日テレビをボーッとひたすら見てたのを覚えてる。
少し経った頃、咳がでだした。ただの風邪だろうと軽視してた母だったが私がグッタリし呼吸困難になっていた為慌てて救急車を呼び病院に連れて行った。
「どうしてこんなんになるまでほっといてたんだ!!」医者から酷く怒られた。もう少し遅れていたら死んでいたと。ゾッとしたらしい。そのまま入院する事になり仕事と信仰で忙しかった母だったが私の為に休んでくれて病院にずっといてくれた。とても嬉しかった。独り占めだー!と。2週間程入院してすっかり回復し退院した。その後も喘息の発作はたまにあったが前回の様に酷くなる事はなかった。
ある日の夜。いつもの様に母の帰りを待っていると母が何冊かの本とウサギのぬいぐるみを誕生日にと買って帰ってくれた。初めての誕生日プレゼントだった。すごくすごく嬉しくてそのウサギのぬいぐるみに【ミミちゃん】と名前をつけた。
本は全て伝記物だった。過去に凄い事を成し遂げた偉人達の物語。ライト兄弟やヘレン・ケラー、坂本龍馬など。
その中に幼いながらに感動を覚えた人物がいた。『ナイチンゲール』だ。入院中にとても優しくしてもらった大好きな看護婦さん達の存在もあり「こんな人になりたい!人の為に尽くしたい!」と強く思った。
ナイチンゲールの本に夢中になり保育園から家に帰ると毎日読んでいた。物語の中に壊れてしまったぬいぐるみをナイチンゲールが塗って治してあげたとゆう内容がある。どうしても早くナイチンゲールに近づきたかった私はいつも抱っこしてたミミちゃんを見た。考える事なく躊躇なくミミちゃんの左腕と左足をハサミでバックリ切った。綿がいっぱい出てきたのでそれを押し込んだ。器用だった事もあり裁縫道具を取り出し塗ってあげた。
「ミミちゃん!治ったね!よかったね!」って。綺麗に縫えたのでとても満足していた。そして母の帰りをいつも以上にワクワクしながらその日も待っていた。
「ただいまー」と母が帰ってきた。
「おかえり!あのね、ミミちゃんの腕と足がとれちゃったんだけど治してあげたよ!」と弾むような声で伝えた、ニコニコと。
母はじっとミミちゃんを見つめてハッとしたような顔をした。
「なんて事するの!!!こんな事したらダメでしょ!!!」と大きな声で怒られた。
母に褒められるとしか考えていなかった私はビックリした。こんな大きな声で怒られたのは初めてだった。すごく慌てて私は
「私は本当に塗ってあげただけだよ!ミミちゃんの腕と足が本当に取れてたんだよ!痛そうだから塗ったんだよ!」と言ったが母は信じてない。母に嫌われる!!と焦りたくさん自分を擁護したが無駄だった。
これが私が母についた初めての嘘だ。
その日の事は今でもすごく覚えてる。
ただナイチンゲールに近づきたかっただけなのに。すごく泣いた。悲しい。確かに嘘ではあったが信じてくれなかった母に少しイラついた。
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