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40 浄化石と結界石
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そして2日後。俺は王宮からの迎えの馬車に乗っている。一緒に乗っているのはオーサとランドル、そしてブレアナさん夫婦。双子とジャックさん、ヘンリーさんはお留守番だ。それからもちろん火傷の幻影と、それを隠す仮面も装着している。
レオナルドさんの屋敷から王宮まではとても近い。馬車に乗って向かえばすぐに到着した。
馬車を降りると驚くほどの人が出迎えていた。俺が馬車を降りると一斉に片膝を付き最上の礼をされた時は、圧巻の光景過ぎて言葉を失った。
でも隣にいるオーサが「これが本来の光景だ」と言う。神子って本当に凄い。俺はただの一般庶民だったのに。
案内に従い王宮内へと進み、前に来た部屋と同じ部屋へと案内された。だが内装は一新されていて、あちこちに花が飾られ家具も全て入れ替えられていて雰囲気がまるで違った。
あれ? と思ってきょろきょろとしていたら王様とルーファスさん、そして知らない男性が2人やって来た。俺の様子を見てルーファスさんが「この部屋は神子様が初めて利用した部屋ですので、神子様専用に変えさせていただきました」と。
置かれている物は全て最高級品らしい。あの花瓶とか一体いくらするんだろうか……。怖いから割ってしまわない様近づくことはしないでおく。
「神子様、お初にお目にかかります。サザライト王国王太子、ハロルド・サザライトでございます。ご挨拶が遅れましたことお詫びいたします」
「第二王子、クラレンス・サザライトでございます。先日は宰相を始め、国の者が神子様をご不快に思わせてしまったことも申し訳ございませんでした」
知らない2人はこの国の王太子と第二王子、つまりはルーファスさんとレオナルドさんのお兄さんたちだった。これで兄弟4人揃ったのか。それぞれ雰囲気が違うけど流石兄弟。顔が似てる。全員イケメンだ。王族オーラ凄い。
あんな国と比べるのも失礼な話かもしれないけど、あの国の王族と違い、この国の王族は皆顔が穏やかで優しい感じだ。意地悪そうな感じは見受けられない。
王太子さんと第二王子は、俺がこの前ここに来たとき丁度公務で王宮に不在だったそうだ。お仕事だったんだから仕方ない。謝られたけど気にしない様言った。
それと王妃様はご病気らしく、挨拶に来られなかったそうだ。その事も詫びられたけどそれも仕方のない事だ。病気でしんどいのに無理してこられても俺が困る。
挨拶も済ませ、全員が席に着く。広い部屋だし用意されているテーブルも長方形の立派な物だ。全員が座ってもまだ余っている。
「再びのご来訪、恐れ入ります」
「いえ、俺もお話したいことがありましたし、レオナルドさんのお屋敷はまだバタついてましたから」
本来であれば王様が出向かなきゃいけないらしいのだが、俺達が急にレオナルドさんの屋敷に押しかけたことで中は未だにバタついている。そんなところに王様が来るとそれ用の準備までしなきゃいけないから、と俺が王宮へ出向いたのだ。
今回の謁見の内容は『瘴気の浄化』について。結界は張り終わったし人が住んでいる場所は危険にさらされることはない。だけどそれ以外の場所は魔物に襲われてしまう危険がある。
瘴気の浄化を行わないと狂暴化した魔物が増える一方となってしまい、街道へ出ることが出来なくなってしまう。そうなれば物流も何もかもが止まり、離れた地域の町は村は孤立してしまう。そうならない為にも瘴気の浄化は行わなければならない。
過去の神子たちは皆、瘴気の浄化の旅に出ていた。それについての報奨をどうするのか、サザラテラ王国とは関係なくなったため俺個人とその内容を話し合うのだ。
「こちらからはしっかりと旅の安全の為に騎士を付けますし、報奨もお支払いいたします。神子様のご要望をお聞かせ願えればと存じます」
「そのことについてなんですが、俺は旅に出るつもりはありません」
「なっ……。そ、それはどういう事でしょうか?」
過去の神子たちが行ってきた浄化の旅。俺がそれに行かないと言えば、一気に顔色が悪くなった王族の皆さん。「もしやデュアン達の事があったからでしょうか……」と震える声で問われてしまう。
「いえ、そういう訳じゃありません。俺は元々この世界とは関係のない人間です。ですがこの世界の為に拉致同然でいきなり召喚され、元の世界との関りも問答無用で消されました。そんな俺からすればこの世界の事はこの世界の人間で解決すべきだと思っています。ですのでこれを用意してきました」
そう言って鞄の中からころころと数個の白い石と青い石を取り出し王様の前へと差し出す。王様とルーファスさんはそっと手に取り、不思議な顔で色々な角度から眺めていた。
「これは『浄化石』と『結界石』です」
「……浄化石?」
この世界が今後も問題なく回っていくためには瘴気の浄化は必要不可欠。だけど俺はその過酷な旅に出るつもりはなかった。
この世界の問題はこの世界の人間が解決するべきだと思ったし、そうしなければまたいずれ神子を自分勝手に扱おうとする奴らも出てくると思ったんだ。
そこでこの王宮へ来る間の2日間、俺はちょっとした実験を行った。
携帯式結界が作れたのだから、携帯式の浄化が出来る物が作れるんじゃないかと思った。それで俺の魔力で石を作り出しそれに浄化の力を付与してみた。そしたら案の定簡単に作れてしまった。
だけど長期間浄化が出来るわけじゃないからそこを何とかしたかった。そこで考えた末思いついたのが、元の世界にあった『太陽光発電』だ。
あれは太陽の光を受けることで発電する仕組みだ。その仕組みを利用し、太陽の光を魔力に変換すれば半永久的に機能出来るんじゃないかと考えた。
試しにいくつか作り王都の外、つまりは結界の外へと出掛けてみた。そして瘴気がある場所へ来ると浄化石に魔力を流し起動。すると俺の思惑通りちゃんと機能することが分かった。
この石を棒や柱、何でもいいから何かに結界石と一緒に取り付ける。結界石も同じ機能を搭載した。これがあれば常に浄化を行えるし結界があることで魔物に壊される心配もない。
それをこの世界の人が自分たちの手で設置していく。これなら俺がわざわざ浄化の旅に出なくても、この世界の人達で瘴気を浄化することが出来る、というわけだ。
ただ今後耐久性とか何かしらの問題が起こる可能性はある。その時は都度相談、という感じだ。
レオナルドさんの屋敷から王宮まではとても近い。馬車に乗って向かえばすぐに到着した。
馬車を降りると驚くほどの人が出迎えていた。俺が馬車を降りると一斉に片膝を付き最上の礼をされた時は、圧巻の光景過ぎて言葉を失った。
でも隣にいるオーサが「これが本来の光景だ」と言う。神子って本当に凄い。俺はただの一般庶民だったのに。
案内に従い王宮内へと進み、前に来た部屋と同じ部屋へと案内された。だが内装は一新されていて、あちこちに花が飾られ家具も全て入れ替えられていて雰囲気がまるで違った。
あれ? と思ってきょろきょろとしていたら王様とルーファスさん、そして知らない男性が2人やって来た。俺の様子を見てルーファスさんが「この部屋は神子様が初めて利用した部屋ですので、神子様専用に変えさせていただきました」と。
置かれている物は全て最高級品らしい。あの花瓶とか一体いくらするんだろうか……。怖いから割ってしまわない様近づくことはしないでおく。
「神子様、お初にお目にかかります。サザライト王国王太子、ハロルド・サザライトでございます。ご挨拶が遅れましたことお詫びいたします」
「第二王子、クラレンス・サザライトでございます。先日は宰相を始め、国の者が神子様をご不快に思わせてしまったことも申し訳ございませんでした」
知らない2人はこの国の王太子と第二王子、つまりはルーファスさんとレオナルドさんのお兄さんたちだった。これで兄弟4人揃ったのか。それぞれ雰囲気が違うけど流石兄弟。顔が似てる。全員イケメンだ。王族オーラ凄い。
あんな国と比べるのも失礼な話かもしれないけど、あの国の王族と違い、この国の王族は皆顔が穏やかで優しい感じだ。意地悪そうな感じは見受けられない。
王太子さんと第二王子は、俺がこの前ここに来たとき丁度公務で王宮に不在だったそうだ。お仕事だったんだから仕方ない。謝られたけど気にしない様言った。
それと王妃様はご病気らしく、挨拶に来られなかったそうだ。その事も詫びられたけどそれも仕方のない事だ。病気でしんどいのに無理してこられても俺が困る。
挨拶も済ませ、全員が席に着く。広い部屋だし用意されているテーブルも長方形の立派な物だ。全員が座ってもまだ余っている。
「再びのご来訪、恐れ入ります」
「いえ、俺もお話したいことがありましたし、レオナルドさんのお屋敷はまだバタついてましたから」
本来であれば王様が出向かなきゃいけないらしいのだが、俺達が急にレオナルドさんの屋敷に押しかけたことで中は未だにバタついている。そんなところに王様が来るとそれ用の準備までしなきゃいけないから、と俺が王宮へ出向いたのだ。
今回の謁見の内容は『瘴気の浄化』について。結界は張り終わったし人が住んでいる場所は危険にさらされることはない。だけどそれ以外の場所は魔物に襲われてしまう危険がある。
瘴気の浄化を行わないと狂暴化した魔物が増える一方となってしまい、街道へ出ることが出来なくなってしまう。そうなれば物流も何もかもが止まり、離れた地域の町は村は孤立してしまう。そうならない為にも瘴気の浄化は行わなければならない。
過去の神子たちは皆、瘴気の浄化の旅に出ていた。それについての報奨をどうするのか、サザラテラ王国とは関係なくなったため俺個人とその内容を話し合うのだ。
「こちらからはしっかりと旅の安全の為に騎士を付けますし、報奨もお支払いいたします。神子様のご要望をお聞かせ願えればと存じます」
「そのことについてなんですが、俺は旅に出るつもりはありません」
「なっ……。そ、それはどういう事でしょうか?」
過去の神子たちが行ってきた浄化の旅。俺がそれに行かないと言えば、一気に顔色が悪くなった王族の皆さん。「もしやデュアン達の事があったからでしょうか……」と震える声で問われてしまう。
「いえ、そういう訳じゃありません。俺は元々この世界とは関係のない人間です。ですがこの世界の為に拉致同然でいきなり召喚され、元の世界との関りも問答無用で消されました。そんな俺からすればこの世界の事はこの世界の人間で解決すべきだと思っています。ですのでこれを用意してきました」
そう言って鞄の中からころころと数個の白い石と青い石を取り出し王様の前へと差し出す。王様とルーファスさんはそっと手に取り、不思議な顔で色々な角度から眺めていた。
「これは『浄化石』と『結界石』です」
「……浄化石?」
この世界が今後も問題なく回っていくためには瘴気の浄化は必要不可欠。だけど俺はその過酷な旅に出るつもりはなかった。
この世界の問題はこの世界の人間が解決するべきだと思ったし、そうしなければまたいずれ神子を自分勝手に扱おうとする奴らも出てくると思ったんだ。
そこでこの王宮へ来る間の2日間、俺はちょっとした実験を行った。
携帯式結界が作れたのだから、携帯式の浄化が出来る物が作れるんじゃないかと思った。それで俺の魔力で石を作り出しそれに浄化の力を付与してみた。そしたら案の定簡単に作れてしまった。
だけど長期間浄化が出来るわけじゃないからそこを何とかしたかった。そこで考えた末思いついたのが、元の世界にあった『太陽光発電』だ。
あれは太陽の光を受けることで発電する仕組みだ。その仕組みを利用し、太陽の光を魔力に変換すれば半永久的に機能出来るんじゃないかと考えた。
試しにいくつか作り王都の外、つまりは結界の外へと出掛けてみた。そして瘴気がある場所へ来ると浄化石に魔力を流し起動。すると俺の思惑通りちゃんと機能することが分かった。
この石を棒や柱、何でもいいから何かに結界石と一緒に取り付ける。結界石も同じ機能を搭載した。これがあれば常に浄化を行えるし結界があることで魔物に壊される心配もない。
それをこの世界の人が自分たちの手で設置していく。これなら俺がわざわざ浄化の旅に出なくても、この世界の人達で瘴気を浄化することが出来る、というわけだ。
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