43 / 53
42 モテ期到来…?
しおりを挟む
「ヒカル様、レオナルドと少し席を外します」
「あ、はい。わかりました」
「夕食までまだ時間がありますからね。久しぶりにアナと王宮の庭園を歩いてまいります」
レオナルドさんはウキウキでブレアナさんの手を取ると、2人仲良く部屋を出ていった。本当にお似合いの2人だなぁ。
今日はこの後、夕食を王宮で取ることになっている。王族の皆さんと俺達だけのささやかな晩餐らしい。王族がいる時点でささやかとは? と考えたが深く考えちゃいけない。折角だからお言葉に甘えることにした。
ルーファスさんに「折角だから王宮内を案内しましょうか」とそう声を掛けられたが俺はそれを断った。
「もし可能であればなんですが、王妃様に会わせていただくことは出来ますか?」
「え? 王妃にですか?」
俺の治癒魔法は病気も怪我も何でも治せる。ヘインズ家に設置する予定の召喚陣のことを納得してもらったお礼とでも言えばいいのか。王妃様の病気を治そうと思ってそれを提案した。
俺が治癒魔法を使えることを分かっていても、王様を始め誰一人王妃様の病気を治して欲しいなんて言ってこなかった。この国の王様たちは良い人だろうし、俺の火傷の跡を見ても嫌悪感を抱くこともなかったしそれが嬉しかったのもある。
ブレアナさん達に聞いても王妃様の人柄も問題ないってお墨付きも貰ってるしね。
「神子様……何とお礼を言えばいいのか。本当にありがとうございます」
ルーファスさんが言うには、王妃様はかなりの大病を患っていて薬でなんとか延命している状態だったそうだ。それなのに俺に一言も言わなかったのは、なんて言うかただただ凄いなと思った。俺だったら必死にお願いしていたかもしれない。
王様たちと一緒に部屋を出て王妃様の寝室へと向かう。ランドルとオーサはそのまま部屋に残ることになった。流石に王族の居住スペースへは入れないらしい。
長い長い廊下をくねくねと曲がり歩いていると、もう今どこにいるのかさっぱりわからなくなった。まるで迷路だ。
王宮の中でも王族の居住スペースへの道は、わざとわかりにくくしているらしい。そうしないと色々危険もあるからだそう。王族って大変だ。
そしてやっと王妃様の部屋へと到着する。中へ入ると部屋は少し薄暗く、ベッドには天涯が引かれていた。それを王様がそっと開けると王妃様が眠っていた。
王妃様の顔はかなり痩せこけていて、顔色も随分と悪かった。そんな王妃様は今はもう、こうやって寝ている時間の方が長いらしい。
王様がそっと王妃様の頬を撫でると「神子様がいらしてくださったぞ」と優しい声を掛ける。そしてそっと体をずらし俺を呼んだ。
「王妃のカタリナです。ここ最近特に調子が悪くて、もう長くはないだろうと言われておりました」
「……そうだったんですね。間に合って良かったです」
王妃様の手をそっと握り治癒魔法を流し込む。王妃様の体がふわりと優しい光に包まれた。治癒魔法は弱った体の隅々にまで行き渡り、体に巣くった病を消し去っていく。なんの病気かわからないが、体全体が蝕まれていて今生きているのが不思議なくらいの状態だった。
体の中の病がすべて消えたのを確認し、治癒魔法を止める。王妃様を覆っていた光が収束すると、王妃様の顔色はかなり良くなっていた。
「これでもう王妃様の体の中に巣くっていた病は無くなりました。後はゆっくり休んで、食事を取れば回復すると思います」
「ああ……神子様っ……! 本当にありがとうございましたっ……!」
王様は静かに涙を流しながら、王妃様の頭を撫でている。王子様達皆からぐすっと鼻をすする音が聞こえる。それだけで、仲の良い家族だったんだなってわかった。
減っていた体力も回復しているからもしかしたら時期目が覚めるかもしれない。そう伝えると王様だけがここに残り、王子様達と王妃様の寝室を後にした。
「そう言えば神子様。オースティンとはどこまで進んだんですか?」
「ん? どこまで……??」
王妃様の部屋を出てしばらくすると、ふいにルーファスさんからそんなことを聞かれた。ただ俺は何が言いたいのかさっぱりわからなくて首を傾げてしまう。
「2人は恋人なのでしょう? この国へ来る道中も仲睦まじくていらっしゃいましたが、オースティンは抜けてるところがありますからね。キスくらいはちゃんとしました?」
「ふあっ!?」
キスだと!? 一体いきなり何を聞いて来るんだこの人は!?
魔力譲渡の時にめっちゃ舌を絡めるやつをやらかしてるし、それ以上の事もしてるけども!? でもあれは治療みたいなものでそんなのとは意味が違うし!!
「い、いや……してない、ケド……」
「え? してないんですか!?」
「だ、だって……恋人とか、そんなんじゃ、ないし……」
「恋人じゃ、ない……?」
皆がもうそういう風に見てることは分かってるけど、オーサからは別に返事を聞かせてくれとも言われてないし、あれからキ、キスなんてのもしていない。まぁ熱烈な愛の言葉は囁かれてはいるけども……。
「……神子様、じゃあ私にもチャンスはありますか?」
「はい?」
ルーファスさんの言葉に思わず足を止める。一緒にいるハロルドさん達は「おい! 神子様に何をっ……!」と慌ててルーファスさんを止めている。
「だって神子様はとても可愛らしいじゃないですか。あの国を出てからの数日間、ずっと一緒にいましたけど神子様は本当に優しい方ですし、使用人にだって分け隔てなく接していました。オースティン達の事も自分の事のように怒っていらして。そんな神子様を好きにならずにはいられなかったんです」
優しく微笑むルーファスさんは俺の目の前まで来ると、俺の頬を優しい手つきで撫でて来た。いきなりこんなことを言われて俺はどうしていいかわからず動けないままだ。
「だから私にもチャンスがあるって思っても、いいんですよね?」
そう言ってルーファスさんは俺の頬にちゅっと軽くキスをした。
「あ、はい。わかりました」
「夕食までまだ時間がありますからね。久しぶりにアナと王宮の庭園を歩いてまいります」
レオナルドさんはウキウキでブレアナさんの手を取ると、2人仲良く部屋を出ていった。本当にお似合いの2人だなぁ。
今日はこの後、夕食を王宮で取ることになっている。王族の皆さんと俺達だけのささやかな晩餐らしい。王族がいる時点でささやかとは? と考えたが深く考えちゃいけない。折角だからお言葉に甘えることにした。
ルーファスさんに「折角だから王宮内を案内しましょうか」とそう声を掛けられたが俺はそれを断った。
「もし可能であればなんですが、王妃様に会わせていただくことは出来ますか?」
「え? 王妃にですか?」
俺の治癒魔法は病気も怪我も何でも治せる。ヘインズ家に設置する予定の召喚陣のことを納得してもらったお礼とでも言えばいいのか。王妃様の病気を治そうと思ってそれを提案した。
俺が治癒魔法を使えることを分かっていても、王様を始め誰一人王妃様の病気を治して欲しいなんて言ってこなかった。この国の王様たちは良い人だろうし、俺の火傷の跡を見ても嫌悪感を抱くこともなかったしそれが嬉しかったのもある。
ブレアナさん達に聞いても王妃様の人柄も問題ないってお墨付きも貰ってるしね。
「神子様……何とお礼を言えばいいのか。本当にありがとうございます」
ルーファスさんが言うには、王妃様はかなりの大病を患っていて薬でなんとか延命している状態だったそうだ。それなのに俺に一言も言わなかったのは、なんて言うかただただ凄いなと思った。俺だったら必死にお願いしていたかもしれない。
王様たちと一緒に部屋を出て王妃様の寝室へと向かう。ランドルとオーサはそのまま部屋に残ることになった。流石に王族の居住スペースへは入れないらしい。
長い長い廊下をくねくねと曲がり歩いていると、もう今どこにいるのかさっぱりわからなくなった。まるで迷路だ。
王宮の中でも王族の居住スペースへの道は、わざとわかりにくくしているらしい。そうしないと色々危険もあるからだそう。王族って大変だ。
そしてやっと王妃様の部屋へと到着する。中へ入ると部屋は少し薄暗く、ベッドには天涯が引かれていた。それを王様がそっと開けると王妃様が眠っていた。
王妃様の顔はかなり痩せこけていて、顔色も随分と悪かった。そんな王妃様は今はもう、こうやって寝ている時間の方が長いらしい。
王様がそっと王妃様の頬を撫でると「神子様がいらしてくださったぞ」と優しい声を掛ける。そしてそっと体をずらし俺を呼んだ。
「王妃のカタリナです。ここ最近特に調子が悪くて、もう長くはないだろうと言われておりました」
「……そうだったんですね。間に合って良かったです」
王妃様の手をそっと握り治癒魔法を流し込む。王妃様の体がふわりと優しい光に包まれた。治癒魔法は弱った体の隅々にまで行き渡り、体に巣くった病を消し去っていく。なんの病気かわからないが、体全体が蝕まれていて今生きているのが不思議なくらいの状態だった。
体の中の病がすべて消えたのを確認し、治癒魔法を止める。王妃様を覆っていた光が収束すると、王妃様の顔色はかなり良くなっていた。
「これでもう王妃様の体の中に巣くっていた病は無くなりました。後はゆっくり休んで、食事を取れば回復すると思います」
「ああ……神子様っ……! 本当にありがとうございましたっ……!」
王様は静かに涙を流しながら、王妃様の頭を撫でている。王子様達皆からぐすっと鼻をすする音が聞こえる。それだけで、仲の良い家族だったんだなってわかった。
減っていた体力も回復しているからもしかしたら時期目が覚めるかもしれない。そう伝えると王様だけがここに残り、王子様達と王妃様の寝室を後にした。
「そう言えば神子様。オースティンとはどこまで進んだんですか?」
「ん? どこまで……??」
王妃様の部屋を出てしばらくすると、ふいにルーファスさんからそんなことを聞かれた。ただ俺は何が言いたいのかさっぱりわからなくて首を傾げてしまう。
「2人は恋人なのでしょう? この国へ来る道中も仲睦まじくていらっしゃいましたが、オースティンは抜けてるところがありますからね。キスくらいはちゃんとしました?」
「ふあっ!?」
キスだと!? 一体いきなり何を聞いて来るんだこの人は!?
魔力譲渡の時にめっちゃ舌を絡めるやつをやらかしてるし、それ以上の事もしてるけども!? でもあれは治療みたいなものでそんなのとは意味が違うし!!
「い、いや……してない、ケド……」
「え? してないんですか!?」
「だ、だって……恋人とか、そんなんじゃ、ないし……」
「恋人じゃ、ない……?」
皆がもうそういう風に見てることは分かってるけど、オーサからは別に返事を聞かせてくれとも言われてないし、あれからキ、キスなんてのもしていない。まぁ熱烈な愛の言葉は囁かれてはいるけども……。
「……神子様、じゃあ私にもチャンスはありますか?」
「はい?」
ルーファスさんの言葉に思わず足を止める。一緒にいるハロルドさん達は「おい! 神子様に何をっ……!」と慌ててルーファスさんを止めている。
「だって神子様はとても可愛らしいじゃないですか。あの国を出てからの数日間、ずっと一緒にいましたけど神子様は本当に優しい方ですし、使用人にだって分け隔てなく接していました。オースティン達の事も自分の事のように怒っていらして。そんな神子様を好きにならずにはいられなかったんです」
優しく微笑むルーファスさんは俺の目の前まで来ると、俺の頬を優しい手つきで撫でて来た。いきなりこんなことを言われて俺はどうしていいかわからず動けないままだ。
「だから私にもチャンスがあるって思っても、いいんですよね?」
そう言ってルーファスさんは俺の頬にちゅっと軽くキスをした。
118
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる