【完結】聖女召喚はもう結構。……は?今度は魔王の嫁になれ?

華抹茶

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それから俺たちは、こっちとあっちを行き来する生活を送った。

サナトスは、こっちの世界のことをちゃんと理解してくれたから外出も問題ない。ただ、ものすごく目立つからあまり人に認識されない魔法を使ってもらったけど。「我を独り占めしたいという独占欲か?愛いやつめ。」とか勘違いしてたけど。違うと言っても聞き入れてくれないからもうほっといた。
でもサナトスと出かけるのは楽しくて、毎日色んな発見がある。

それからなんと株も始めてしまった。俺にはよくわかんないけど、父さんと毎日あーでもないこーでもないと言いながら楽しんでる。魔王なだけあって先読みが得意なのか、ハズレがないらしい。父さんは大興奮だ。


あっちの世界は、たまーに暴れん坊の魔族が出てきてるみたいだけど、ラウムさん達がサクッと手を打ってるみたいで大きな問題はないらしい。

ただ、何か心配事があるみたいでサナトスとラウムさん2人で何かを話し込んでいる。俺に聞かせたくないのか、俺に眠りの魔法をかけてくるから話の内容はわからない。何を話してたのか聞いても「なんでもない。心配するな。」としか言ってくれない。なんでもないわけないだろ。
それにふとした時にサナトスの眉間には皺が寄ることも多くなった。すごく気になるけど教えてくれないからもやもやしてる。俺じゃ力になれないのかな。



そんなある日、サナトスの世界に戻ってきた時に王宮が騒がしかった。どうしたんだろ?こんな事今まで無かったし不安だ。そう思ってたら、番部屋に入ってすぐ王様から呼び出しされた。

「魔王様、タケル殿。こちらに戻られてからすぐに呼び出してすまない。実は…」

「もしや、ディケーが何かしてきたか?」

「魔王様、なぜそれを?」

「…やはりか。何があった?」

え。何?何が起こってるの?

「…実は、ディケー様がタケル殿に会わせよと申されてな。我らの一存では決められぬゆえ、返答を待ってもらっている。」

「………。」

サナトスが険しい顔してる。再会してからこんな顔見るのは初めてだ。

「サナトス、そのディケー様って誰?なんで俺に会いたいの?」

「……ディケーは神の一柱だ。正義を司っている。我が神界にいた頃ディケーは我を排除しようとしていた。」

え…。なにそれ。

サナトスが言うには、昔この世界を破壊して滅亡させようとした事が許せなくて、創造神様の決めた事だけど神界でいろいろやってるのが気に食わなかった。何度も創造神様に消滅させるよう進言したけど、首を縦に振ることはなかった。
それから度々、サナトスに突っかかってきて散々邪魔されたらしい。攻撃もめちゃくちゃされたって。創造神様はディケー様に止めるよう言ったらしいんだけど、どうしても許せないのとなぜ魔王を庇うのかと反抗した。

「創造神は、我にこの世界の調停を願った。魔族はどうしても負の感情が強く、破壊活動をしたがる。魔族は、この世界の負の感情を取り込むからな。思考がそうなってしまうのだ。だから人間との間に争いが途絶える事がなかった。
だから我を下界に戻し、人間との調停をさせ争いをなくす事を願ったのだ。」

「サナトスがいれば、他の魔王が誕生することはないからこの世界を守れると思った…?」

「そうだ。神は下界に直接手を出すことはできぬ。神の力は強すぎるゆえ、下手をするとこの世界が滅ぶ。だから下界で何があっても直接手を出すことはできない。そなたが、エマが加護を受けて大聖女となったのも、神が直接手出しできなかったからだ。」

だから創造神様は、サナトスの俺に会いたいという願いを叶える代わりに、この世界の調停を願った。サナトスが消えていなくなったとしても、また第2第3のサナトスが生まれない保証はない。

でもたとえこの世界の調停の為とはいえ、ディケー様はサナトスが許せなかった。

「そして我がタケルを見つけ召喚した。…おそらくディケーの望みはタケル、そなたを我から引き離すことだ。魂の番であるそなたを引き離し、苦しめ、我を消滅させること。」

消滅…!? 嘘…サナトスが、居なくなる?

「ラウムがこちらで大きな力を感じたと言っていた。もしやと思い探らせていたが、さすがは神といったところか。見つけることはできなかった。」

「…2人で何か話していたのはそれだったんだ。」

「…魔王様、どうされるおつもりで?」

「ディケーの望みはタケルだ。だからタケルを向こうの世界へと戻す。その間に我が探し出し……っ!?タケル!!」

サナトスの話を遮るかのように、突風がいきなり吹き荒れて俺は飛ばされた。そして知らない金色の目の女の人に捕まっていた。

「その必要はないわ。魔王サナトス。」

「ディケーっ…!タケルを返してもらおう。」

「そんな事するわけないじゃない。お前の存在はこの世界にとって不必要なのよ。人間達を苦しめて、破壊して、滅亡させようとしたお前なんて。そんなお前に番なんていらないでしょ?
この子は貰っていくわ。返してほしければ、『世界の果て』にある私の塔までいらっしゃい。そこで相手してあげる。あははははは!」

「サナトス!!!」

必死に手を伸ばすけど届くことはなく、俺はディケーと共に姿を消した。






ぐらっと空間が捩れるような感覚に襲われて、俺は知らない場所へと連れてこられていた。

「タケル。サナトスの魂の番。お前にはしばらくここに居てもらうわ。」

「なんでこんな事!」

「私はあいつが許せないのよ。この世界を破滅に追い込もうとしたあいつをね。創造神様は許されたようだけど、私は絶対に許さない。こんなのは間違っているわ。魔族は全て滅ぶべき存在なのよ。」

「確かに前のサナトスはこの世界をめちゃくちゃにした!でも今は人間と友好を築いて、皆サナトスに感謝してる!魔族との争いは無くなったんだ!」

「甘いわね。あいつは魔族、魔王よ。それも強大な力を持った。破壊活動を抑えることなんて出来るわけない。またいずれ同じことを繰り返すに決まってる!」

「そんなのわからないじゃないか!俺が、俺がそうならないように止める!サナトスを昔のサナトスになんて戻さない!」

「その保証はどこにあるの?確証はあるの?」 

「それ、は…。」

そう言われると何も答えられない。信じてもらうしかない。でも俺は、今のサナトスなら絶対に大丈夫だっていう自信がある。サナトスだって人間を好きになってる。人間と結婚して仲良くやってる魔族だって沢山いる。

この世界は変わったんだ。サナトスのおかげで。


「保証なんてないけど、俺はサナトスを信じてる。」

「…ふん。本当に甘いわね。魔族を、魔王を信じるなんて。愚か者よ。」

ディケーはすっと手を振ると、俺の体に金色の糸が絡みついた。

「!? なんだよ、これ!」

「お前が勝手に向こうの世界へ戻らないよう、力を封じさせてもらったわ。それを解いてもらいたいなら私の願いを叶えなさい。」

「……願い?」

「お前がまた、サナトスを殺すのよ。」

「!?」

なんで…なんでだよ…。俺が、サナトスを、殺す…?

「私が殺してもいいのだけど…。それじゃあ面白くないわ。サナトスが苦しむ姿を見たいのよ。この世界を滅ぼそうとした報いを受けさせるの。
魂の番同士で争うの。面白そうでしょう?あいつの苦しむ顔が楽しみだわ。」


そう言って話すディケーの顔は、神とは思えないほど歪んでいた。綺麗な金色の目も、片方は黒く澱んでいた。
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