20 / 51
20 ルドヴィクside
しおりを挟む
あれからトントン拍子にリュークの側にいられる算段を付けることが出来た。我ながらよくやったと思う。
リュークが熱を出して寝込んでいる間に、まずは父上に話をしに行った。
「父上、お話があります」
「よく来たな。話を聞こう」
俺が久しぶりに父上を訪ねたからか、ほっとしたような表情をし、ソファーに座るよう促した。そこに腰をかけると正面に座る父上にはっきりと自身の要望を告げる。
「父上、リュークとの婚約を認めてください」
「…………は?」
俺の言葉を聞いた父上は、かなりの間を空け、それでも理解出来ないといった惚けた表情でただ一言答えるだけだった。まぁその気持ちもわからないでもないが。
同性同士の結婚は認められてはいるが、数は圧倒的に少ない。どちらかというと同性同士の場合は『愛人関係』にとどまっていることが多い。
だが同性同士のカップルというのは、結婚しているかどうかを度外視すれば別に珍しくとも何ともない。だから俺がリュークとの婚約を望むというのも別におかしな話ではないのだ。
ただ父上がすぐに理解出来ず呆けているのは、今までの俺のリュークに対する態度があまりいいとは言えなかったからだろう。
だがそれを無視して俺は言葉を続ける。
「俺は次男です。侯爵家は兄上がいれば問題ないでしょう。俺はリュークと生涯を共にすることに決めました。ですので婚約者の選定は兄上と姉上だけにしてください。もしも俺に他家からの打診があったとしてもすべて断って欲しいのです。それから――」
「ま、待ちなさい! 一体何がどうしてリュークとの婚約に!?」
「……俺の本当の気持ちを理解出来るのはリュークだけです。きっと父上も兄上も姉上も、誰も俺の気持ちを理解出来ないでしょう」
「……」
俺がそう畳みかけると、父上は「はぁ……」とため息を吐き額に手を当て項垂れた。そして「お前の本当の気持ちを聞かせて欲しい」と言われる。
「俺は、母上を殺したも同然です。そして母上を救うためにいろいろと模索しましたが、治療法を見つけることは出来ませんでした。俺は『役立たず』なんです。リュークも家族からそう言われ見放され、孤独の時間を過ごしました。俺達は同じなんです」
「ルドヴィク、何度も言うがマリアを救うことは無理だったんだ。お前のせいじゃない。ニコラスとアメリアも、お前に言ってしまったたあの言葉を後悔している。お前が気にすることじゃないんだぞ」
「わかっています。父上の仰ることは理解しています。それでも。それでも俺は俺を許すことは出来ません」
治療法が確立されておらず、治療薬もない特殊な病であったことも重々承知しているし、それを俺が見つけられなくて当然だったことも理解している。兄上と姉上が俺に対しよそよそしいながらも、俺に謝ろうとしていたんだろう気配は感じていた。
父上たちが言っていることの意味は理解出来ている。だが、理解出来ても心が納得しないんだ。もし俺が生まれていなければ。そう思わずにいることがどうしても出来ない。
「だから俺はこの家に居続けることがいいとも思えません。それにリュークの側にずっといると約束したんです。俺はこの家を出て、シモン先生のところで生活したいと思っています。その許可をいただけませんか」
「……家まで出るつもりなのか」
父上は深い溜息を吐くと、しばらく無言になった。恐らくそれでいいのかどうなのか、頭の中で忙しなく考えているんだろう。
「……ルドヴィク、婚約を今すぐ認めるわけにはいかん。それはお前の勝手な押し付けだ。だが婚約者の選定についてはお前の要望を叶えよう。それとシモンの家でのことは、シモンから許しが出たら許可する。お前が自分で納得させなさい」
「わかりました。十分です。お時間をいただきありがとうございました」
俺は父上に頭を下げるとさっさと部屋を出た。その足でシモン先生のところへと向かう。運よく執事のカールを見つけ、シモン先生の居場所を聞けば今はリュークの看病をしているという。そのままリュークの寝ている部屋へ行くと、ちょうどシモン先生がリュークを着替えさせているところだった。
「シモン先生。リュークの看病が一段落したら、お話したいことがあります」
「わかったよ。あと少しだけ待ってくれるかい?」
一つ頷き部屋に備え付けてあるソファーに腰掛け、シモン先生を待つことにした。着替えを終わらせ、額の濡れふきんを取り換えると「お待たせ」と俺の向かいのソファーに座った。
「話って何かな? あ、リュークは一応ぐっすり眠っているけど、声は小さめでね」
「俺はこの家を出て、シモン先生のところで生活したいと思っています。その許可をいただきに参りました」
「え? 私の家で生活したい? またどうして急に……」
「リュークを守るためです」
本当は婚約したいと言いたいところだが、父上に認めてもらえなかった以上、シモン先生に言うことは止めておく。むしろ余計にややこしくなりそうな気しかしない。
「リュークを守るためって……その理由を聞いても?」
「恐らくですが、リュークは魔法が効かないのではありませんか?」
「っ!?」
「その表情を見ると、あながち間違ってはいないようですね」
俺がそう言うと「しまった」と小さく呟き頭を抱えたシモン先生。腹の探り合いが苦手だというのはわかっていたが、こうも簡単に当たりを引くとは思わぬ有難い誤算だ。いくら違うと言われても、脅すなどして突破する方法はあったのだが。
「……もしかして、以前リュークに氷魔法を放ったあの時に?」
「そうです。リュークの服は破けましたが、体には傷一つ付きませんでした」
「……やっぱり、しっかり見ていたんだね。それを今になって言うのはどうしてだい?」
「最初は放っておくつもりでした。でも今回の母上の件で、唯一俺の側に寄り添ってくれたのがリュークだったんです」
父上やシモン先生が俺のことを気遣っていないとは言わない。言葉でたくさん尽くしてくれたと思う。でも俺の心には響かなかったし、二人はそれ以上無理やりどうこうしようとはしなかった。というか出来なかったのだろう。
だけどリュークだけは無理やり押し入って、俺がいくら拒否しようと冷たい態度をとっていようと構わず側に居続けてくれた。兄上や姉上は血の繋がった家族であっても離れていったのに、なんの関係もないリュークは俺の側にいてくれた。それに報いたい。
俺はそう答えた。
それは本心だし間違ってはいない。だが仄暗い俺の想いは誰にも打ち明けるつもりもないし悟られてはいけない。
それを押し殺し、シモン先生に訴えた。
「リュークのその特異体質はバレてはいけないと思って黙っていたんですよね? 王太子から贈られた腕輪も、その一環だと思いました。リュークを守る味方が増えるのはいい事だと思いますが?」
「……君は聡い子だと思っていたけどここまでだったとは」
とうとう観念したのか、シモン先生はリュークの特異体質について話をしてくれた。今このことを知っているのは陛下と王太子、そしてシモン先生だけらしい。
リュークの魔力そのものが、魔法を無効化する力を持っているらしく、それが理由で魔法を発動することが出来ない。だから攻撃魔法も効かなければ魔道具の起動も出来ないそうだ。
「このことが公になってしまえば、リュークはきっと狙われる。人体実験だけじゃなく、生きる盾として使われるだろう。あの子をそんな目に遭わせたくない。だからこのことは絶対に誰にも言わないで欲しい」
「もちろんです。俺もリュークを危険な目に遭わせたくはありません。どんなことからも、一生をかけて守ります」
「……ん? 一生??」
「ではシモン先生の家に住まわせていただくことをお許しいただけますか?」
「リュークの味方になってくれるのなら嬉しいけど……それにしても一生ってどういうこと?」
「ありがとうございます。ではリュークが家に戻る時に、一緒に俺もシモン先生の家に移りますね。荷物の準備を始めるので、今は一旦ここで失礼します。後でリュークの看病も代わりますので」
「え、うん。それはありがとう……なんだけど。ねぇ、一生って何!?」
シモン先生がしつこく何かを聞いてくるが、俺はそれを無視して自室へと戻った。使用人に荷物を纏めてもらうのを手伝ってもらわないと。
さて。今は誰の手が空いてるだろうか。
リュークが熱を出して寝込んでいる間に、まずは父上に話をしに行った。
「父上、お話があります」
「よく来たな。話を聞こう」
俺が久しぶりに父上を訪ねたからか、ほっとしたような表情をし、ソファーに座るよう促した。そこに腰をかけると正面に座る父上にはっきりと自身の要望を告げる。
「父上、リュークとの婚約を認めてください」
「…………は?」
俺の言葉を聞いた父上は、かなりの間を空け、それでも理解出来ないといった惚けた表情でただ一言答えるだけだった。まぁその気持ちもわからないでもないが。
同性同士の結婚は認められてはいるが、数は圧倒的に少ない。どちらかというと同性同士の場合は『愛人関係』にとどまっていることが多い。
だが同性同士のカップルというのは、結婚しているかどうかを度外視すれば別に珍しくとも何ともない。だから俺がリュークとの婚約を望むというのも別におかしな話ではないのだ。
ただ父上がすぐに理解出来ず呆けているのは、今までの俺のリュークに対する態度があまりいいとは言えなかったからだろう。
だがそれを無視して俺は言葉を続ける。
「俺は次男です。侯爵家は兄上がいれば問題ないでしょう。俺はリュークと生涯を共にすることに決めました。ですので婚約者の選定は兄上と姉上だけにしてください。もしも俺に他家からの打診があったとしてもすべて断って欲しいのです。それから――」
「ま、待ちなさい! 一体何がどうしてリュークとの婚約に!?」
「……俺の本当の気持ちを理解出来るのはリュークだけです。きっと父上も兄上も姉上も、誰も俺の気持ちを理解出来ないでしょう」
「……」
俺がそう畳みかけると、父上は「はぁ……」とため息を吐き額に手を当て項垂れた。そして「お前の本当の気持ちを聞かせて欲しい」と言われる。
「俺は、母上を殺したも同然です。そして母上を救うためにいろいろと模索しましたが、治療法を見つけることは出来ませんでした。俺は『役立たず』なんです。リュークも家族からそう言われ見放され、孤独の時間を過ごしました。俺達は同じなんです」
「ルドヴィク、何度も言うがマリアを救うことは無理だったんだ。お前のせいじゃない。ニコラスとアメリアも、お前に言ってしまったたあの言葉を後悔している。お前が気にすることじゃないんだぞ」
「わかっています。父上の仰ることは理解しています。それでも。それでも俺は俺を許すことは出来ません」
治療法が確立されておらず、治療薬もない特殊な病であったことも重々承知しているし、それを俺が見つけられなくて当然だったことも理解している。兄上と姉上が俺に対しよそよそしいながらも、俺に謝ろうとしていたんだろう気配は感じていた。
父上たちが言っていることの意味は理解出来ている。だが、理解出来ても心が納得しないんだ。もし俺が生まれていなければ。そう思わずにいることがどうしても出来ない。
「だから俺はこの家に居続けることがいいとも思えません。それにリュークの側にずっといると約束したんです。俺はこの家を出て、シモン先生のところで生活したいと思っています。その許可をいただけませんか」
「……家まで出るつもりなのか」
父上は深い溜息を吐くと、しばらく無言になった。恐らくそれでいいのかどうなのか、頭の中で忙しなく考えているんだろう。
「……ルドヴィク、婚約を今すぐ認めるわけにはいかん。それはお前の勝手な押し付けだ。だが婚約者の選定についてはお前の要望を叶えよう。それとシモンの家でのことは、シモンから許しが出たら許可する。お前が自分で納得させなさい」
「わかりました。十分です。お時間をいただきありがとうございました」
俺は父上に頭を下げるとさっさと部屋を出た。その足でシモン先生のところへと向かう。運よく執事のカールを見つけ、シモン先生の居場所を聞けば今はリュークの看病をしているという。そのままリュークの寝ている部屋へ行くと、ちょうどシモン先生がリュークを着替えさせているところだった。
「シモン先生。リュークの看病が一段落したら、お話したいことがあります」
「わかったよ。あと少しだけ待ってくれるかい?」
一つ頷き部屋に備え付けてあるソファーに腰掛け、シモン先生を待つことにした。着替えを終わらせ、額の濡れふきんを取り換えると「お待たせ」と俺の向かいのソファーに座った。
「話って何かな? あ、リュークは一応ぐっすり眠っているけど、声は小さめでね」
「俺はこの家を出て、シモン先生のところで生活したいと思っています。その許可をいただきに参りました」
「え? 私の家で生活したい? またどうして急に……」
「リュークを守るためです」
本当は婚約したいと言いたいところだが、父上に認めてもらえなかった以上、シモン先生に言うことは止めておく。むしろ余計にややこしくなりそうな気しかしない。
「リュークを守るためって……その理由を聞いても?」
「恐らくですが、リュークは魔法が効かないのではありませんか?」
「っ!?」
「その表情を見ると、あながち間違ってはいないようですね」
俺がそう言うと「しまった」と小さく呟き頭を抱えたシモン先生。腹の探り合いが苦手だというのはわかっていたが、こうも簡単に当たりを引くとは思わぬ有難い誤算だ。いくら違うと言われても、脅すなどして突破する方法はあったのだが。
「……もしかして、以前リュークに氷魔法を放ったあの時に?」
「そうです。リュークの服は破けましたが、体には傷一つ付きませんでした」
「……やっぱり、しっかり見ていたんだね。それを今になって言うのはどうしてだい?」
「最初は放っておくつもりでした。でも今回の母上の件で、唯一俺の側に寄り添ってくれたのがリュークだったんです」
父上やシモン先生が俺のことを気遣っていないとは言わない。言葉でたくさん尽くしてくれたと思う。でも俺の心には響かなかったし、二人はそれ以上無理やりどうこうしようとはしなかった。というか出来なかったのだろう。
だけどリュークだけは無理やり押し入って、俺がいくら拒否しようと冷たい態度をとっていようと構わず側に居続けてくれた。兄上や姉上は血の繋がった家族であっても離れていったのに、なんの関係もないリュークは俺の側にいてくれた。それに報いたい。
俺はそう答えた。
それは本心だし間違ってはいない。だが仄暗い俺の想いは誰にも打ち明けるつもりもないし悟られてはいけない。
それを押し殺し、シモン先生に訴えた。
「リュークのその特異体質はバレてはいけないと思って黙っていたんですよね? 王太子から贈られた腕輪も、その一環だと思いました。リュークを守る味方が増えるのはいい事だと思いますが?」
「……君は聡い子だと思っていたけどここまでだったとは」
とうとう観念したのか、シモン先生はリュークの特異体質について話をしてくれた。今このことを知っているのは陛下と王太子、そしてシモン先生だけらしい。
リュークの魔力そのものが、魔法を無効化する力を持っているらしく、それが理由で魔法を発動することが出来ない。だから攻撃魔法も効かなければ魔道具の起動も出来ないそうだ。
「このことが公になってしまえば、リュークはきっと狙われる。人体実験だけじゃなく、生きる盾として使われるだろう。あの子をそんな目に遭わせたくない。だからこのことは絶対に誰にも言わないで欲しい」
「もちろんです。俺もリュークを危険な目に遭わせたくはありません。どんなことからも、一生をかけて守ります」
「……ん? 一生??」
「ではシモン先生の家に住まわせていただくことをお許しいただけますか?」
「リュークの味方になってくれるのなら嬉しいけど……それにしても一生ってどういうこと?」
「ありがとうございます。ではリュークが家に戻る時に、一緒に俺もシモン先生の家に移りますね。荷物の準備を始めるので、今は一旦ここで失礼します。後でリュークの看病も代わりますので」
「え、うん。それはありがとう……なんだけど。ねぇ、一生って何!?」
シモン先生がしつこく何かを聞いてくるが、俺はそれを無視して自室へと戻った。使用人に荷物を纏めてもらうのを手伝ってもらわないと。
さて。今は誰の手が空いてるだろうか。
849
あなたにおすすめの小説
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生2929回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる