【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー

華抹茶

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 そして翌日。寝不足で若干ふらふらとした足取りで教室へと向かった。ブランディス様と顔を合わせた時のことを考えていたら全然寝られなかったのだ。

 「貴女のせいで私の輝かしい成績に傷がついた落とし前をつけていただけますか?」とか「男爵家の女ごときが1位を取ったからといっていい気にならないでくださいね?」とか「いきなり逃げるなんていい度胸してますね。殺されたいんですか?」とか言われるんだと思うと胃がきりきりする……。

 ああ、可愛い私のヨアヒム……。私が死んだら骨を拾ってね……。

「誰ですか? ヨアヒムという方は?」

「あ、ヨアヒムは天使のように可愛い可愛い私の弟で…………って、ぇえ!?」

 バッと横を振り向けば輝かしい笑顔を見せるブランディス様……。
 ひぃっ! いつの間に私の横にいたんですかぁ!?

「弟でしたか。なるほど」

 何がなるほどなんでしょうか!? 何を納得されたんでしょうか!?
 涼しい顔されてらっしゃいますが、いきなり貴方に会った私は生きた心地が全くしていないんですが!?

「昨日は走って去ってしまわれましたが、お体の調子が悪かったのですか?」

 気遣うようなセリフなのに、目が全然笑っていなくてものすんごく怖いんですけど。今頃私の顔は冷や汗だらだらでみっともない顔になっていることだろう……。

「き、昨日はっ、その、し、失礼いたしましたぁ!! お願いですから殺さないでくださいぃ!!」

 言うや否や、見事なまでの土下座を披露した。
 どうやって謝ろうか考えていたけど、そんなものすっぽーんと何処かへと吹っ飛んでいってしまった。

 謝るなら徹底的に! 平身低頭! 立場の弱い貧乏男爵家の出来る精一杯を受け取って!

 地面に頭を擦り付けて殺さないでくれと必死に懇願する。
 私が今ここで死んだらヨアヒムが学院に通えなくなるんで、殺すならヨアヒムが成人した後でお願いします!!

「ぶふっ! くくくくっ! お、お前っ、嫌われてるじゃないかっ………くくくっ!」

「……殿下、笑わないでください」

 ひえぇ! 見えてなかったけど、殿下もそちらにいらっしゃったのですか!? なんてこと!? これじゃ問答無用で不敬罪で処刑されるんじゃないの!? うわーん! そんなのあんまりよ!!

「とにかくアルタマン嬢、立ってください。貴女にそんなことをさせたいわけではありません。
 ……それにとても目立っていますから」

 そう言われて腕を持ち上げられ強制的に立たされた。
 が、びくびくして怖くて顔を見られない。ああ、どうしてこうなってしまったの……。

「はぁ。とりあえずもうすぐで授業が始まりますから、昼食時お時間いただけますね?」

 もう逃げられないと分かった私はただコクコクと首を縦に振るしか出来なかった。


 そして午前の授業が全て終わった時、ブランディス様と第二王子殿下がそろって私のところへおいでになりそのまま食堂へと拉致、じゃなくてご一緒させていただいた。気分は売られる牛の気持ちだけども!


「それでアルタマン嬢。昨日はなぜ逃げたりなどしたのですか?」

 食事が運ばれ食べ始めてすぐ、ブランディス様は単刀直入に仰った。

「それは……その、あんな令嬢としてあるまじき振る舞いを見られてしまったので恥ずかしく……。
 逃げたりして申し訳ございませんでした」

「令嬢としてあるまじき振る舞いとは? 一体何があったんだ?」

「殿下……アルタマン嬢は奇妙なダンスを踊りながら奇声を発していました」

「ぶふぅっ!! 何だそれは!? すごく見たい!」

 嫌ー!! やめてー!! 傷に塩を塗るようなこと言わないでー!!

「というか、『令嬢としてあるまじき振る舞い』だという自覚はあったのですね」

 ……なんか別にいいんだけど、ものすごーく棘がある様に聞こえるのは気のせいではないですよね?

「…………申し訳ございません」

「それは何に対しての謝罪ですか?」

 うぐぅっ! そんな冷静に切り返さなくてもいいじゃない!?

「こらこらコンラート。そこまでだ。…ほら見ろ、アルタマン嬢が恐怖で縮こまってしまったじゃないか」

「…失礼しました」

「いえ……」

 もうなんなのよ。お願い、早く私をこの場から解放して。

「アルタマン嬢、そんなに怯えなくても大丈夫だ。
 コンラートは態度にはあまり出さないがなかなかの自信家でね。成績も優秀、顔も、まぁ私よりは劣るがかなり綺麗な顔をしている。女性はこぞってコンラートと仲良くなりたいと憧れる存在でもある」

「……ええ、はい。そうですね。存じております」

 さらっとご自分の自慢も入れているのはスルーしてもいいですか? いいですね? はい、スルーします。

「そんなコンラートが学力で打ち負かされ、声を掛けたら逃げられてかなりショックを受けてしまったようでね。こんなことは今まで無かったからどうしていいのかわからなかったんだ」

「え? ショックだったんですか?」

「そう。信じられないだろう? 何をやっても他の追随を許さず女性にだってモテたコンラートなのに、君には全部ひっくり返されてしまった。だから昨日のこいつは落ち込みがすごくてね。いやぁ、良いものを見せてもらったよ」

「殿下! そんなことは今はいいのです!」

 嘘。信じられない。上級貴族で頭もよくて顔もカッコよくてなんでも持ってるブランディス様が、そんなことで落ち込むだなんて。

「……なんというか、私は今まで私以上の成績を出すものに出会ったことはありませんでした。何かをやれば簡単になんでも出来てしまう。自分の力を過信していました。いい気になっていたんです。でも貴女が現れた。今回の試験は手を抜かず全力を出しました。ですが結果は貴女に負けてしまいました」

「……すみません」

「勘違いしないでください。謝ってほしいわけではありません。私の方こそ感謝を申し上げたいと思ったのです」

 へ? 感謝? 暴言ではなく?

「…………貴女は私を何だと思っているのですか?」

 あ、口に出してました!? 申し訳ありません!

 ……殿下、そこでプルプル震えず声に出して笑っていいのですよ。

「初めこそイラつきはしましたが、上には上がいる。そう知らしめてくれました。私の目を覚ましてくださいました。
 ――だから私は貴女をライバルに決めました」

「はい!? ライバル!?」

「次こそは貴女に勝ちます。負けません。覚悟してください」

 えぇ……。そんな一方的にライバル宣言なんてされても……。
 そんなのは望んでいないし、むしろあまり関わりたくないんですが……。

「そういう訳だ。こいつは今まで負けたことがないからね。初めての敗北で闘志を燃やしてしまった。だからこいつの為にも君はライバルとして頑張ってほしい。よろしくね」

 殿下にまでそんなことを言われて「嫌です」なんて口が裂けても言えるわけないじゃないですか……。私はしがない貴族の最底辺の男爵家ですよ。王族の方にそう言われたら「はい」としか言えないです。こんなの脅しじゃないの……。
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