【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー

華抹茶

文字の大きさ
7 / 17

7

しおりを挟む
 
 何かの冗談であってくれと祈ってはみたが意味はなく。本当にブランディス様と一緒に食事をすることになった。

「貴方がヨアヒムですか。初めましてコンラート・ブランディスと申します。貴女の姉上とはライバルとして切磋琢磨させていただいています」

「あ、あの。ヨアヒム・アルタマンと申します。えっと、姉上がいつもお世話になっております。これからもよろしくお願いいたします」

「あああああ! 可愛い!! ちゃんとご挨拶出来て偉いわ! 100点満点! いえ、1000点満点あげちゃう!」

 あまりの可愛さにぎゅーっと抱きしめて頭をなでなでしてあげた。

「あ、姉上! お客様の前ですよ! 恥ずかしいです!」

「……弟君にはそんな風になるのか。これは妬けるな」

「? 何か仰いました?」

「いえ、何も。
 それよりもとても美味しそうですね。楽しみです」

 食卓に並んだのは家庭菜園でとれた野菜をたっぷり使ったシチュー。そしてサラダにパン。急遽お肉料理も付けたはいいけどこんな質素な食事で恥ずかしすぎる。

「あ、あのお口に合わなければ無理しないでくださいね。侯爵家の方にお出しする物ではありませんし…」

 そして食前の祈りを捧げてスプーンを手に取った。

 ブランディス様がシチューを口に入れていく。いつも思うけど本当に綺麗な所作で食事されるのよね。
 あああ、あんな高貴な上級貴族の方の口に私の手作り料理が運ばれていく……。

「…………美味しい」

「え?」

「とても美味しいです、アルタマン嬢。なんというか、ほっとする味ですね。野菜の味もとても濃くて濃厚なシチューに全然負けていません」

「野菜は家庭菜園でとれたものを使いました。うちは見ての通り裕福ではありません。節約のために野菜は自分達で作っているんです。ですので、本当に恥ずかしいのですけど……」

「え? ご自分で作られているのですか? それは凄いですね。こんなに美味しい野菜を作れるなんて素晴らしいと思います」

 え…? 家庭菜園なんてあり得ないって言われるかと思ったのに。まさか褒めてもらえるだなんて…。

「アルタマン家はうらやましいですね。こんなに美味しい料理を食べられるなんて」

 美味しいって、そんなにいい笑顔で言われたら嫌でも顔が赤くなってしまう。
 どうしよう。すごく嬉しい。それがたとえお世辞であっても。



 それからたまに週末にはブランディス様がいらっしゃるようになった。そして一緒に食事もしていく。侯爵家の方に出すような食事じゃないはずなのに、食べる姿は本当に嬉しそうでいつも「美味しい」と言ってくださる。

 なんで……。

 こんな風にされたら勘違いしてしまうから止めてほしい。最近はブランディス様の顔を見るだけで心臓がどきどきとしてしまう。
 好き、なんだろうな。身分が違いすぎて好きになっちゃいけない人なのに、私は好きになってしまった。



 学院では相変らずライバルとして試験で成績を争っていた。お互い1位になったり2位になったり。時間が合えば図書室で一緒に勉強することも変わらない。
 そんなある時、ふとブランディス様が私に質問された。

「アルタマン嬢、貴女はなぜこんなにも勉強に力を入れているんです? 前から不思議だったのです。女性ですからここまで勉強に力を入れる方が珍しくて……」

 ブランディス様の仰ることはごもっとも。普通のご令嬢ならばここまでがむしゃらに勉強なんてしない。結婚して子供を産むことが第一だから私のような人間は珍しい。

「それは……。恥ずかしながらご存知の通りうちは貧乏です。これから先、弟のヨアヒムが学院に通うための学費が足りないんです。ですから私が良いところに就職してお金を稼ぐ必要があって……。
 それに昔は縁談もあったのですが全て断られてしまいまして。私がなんとかするしかなくて、だから勉強をしなければならないんです」

 うちの経済状況をお話しするのはすごく恥ずかしいけど、恥ずかしいだけで隠すようなことでもない。だから全部正直にお話しした。ブランディス様なら馬鹿にすることはないとも思ったし。

「そうだったのですか。弟のために。……なるほど」

「? 何か?」

「いえ。それに縁談はすべて断られたというのは本当ですか?」

「はい。向こうから来た縁談なんですが、貧乏男爵家と縁を結んでもいいことなんてないですからね。しかも私はこんな平凡顔ですし。絶世の美女だったら、貧乏でも誰か貰ってくれたんでしょうけど…。
 ま、しょうがないです。私は1人でも大丈夫です。逞しさなら負けません!」

「そうですか…。確かに貴女は逞しいですしね」

「あ、ブランディス様もそう思われます? ふふっ。逞しいご令嬢って本来あり得ないんですけどね」

 こんなこと好きな人に自分で話してて悲しくなるけど、そんなことを思わせないように必死に笑顔を張り付けた。




 3年に上がってしばらくして。私はお父様に呼ばれて執務室へと向かった。

「ベティーナ。実はお前に縁談の申し込みが来ている」

「え? 縁談? 誰からですか? こんな平凡顔の貧乏男爵家の私に縁談の申し込みだなんて……」

「……ブランディス侯爵家のコンラート様だ」

「は?」

 え? 今、なんて? ありえない名前が聞こえたんですけど?

「ブランディス侯爵家のコンラート様からだ。お前と婚約したいと打診が来た。うちは男爵家で身分も釣り合わない。だがこちらからお断り出来る立場でもないからお受けするしかないんだが…。
 お前は何も聞いていなかったのか?」

「き、聞いていません! 知りませんこんなこと! 絶対何かの間違いです! 学院に戻ったら確認してみます!」

 なんてことなんてことなんてことー!? 意味がわからない! なんで一体どうしてこんなことに!? 絶対これは何かの間違いよ! こんなこと私の身におこるはずがない!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

処理中です...