10 / 14
10 飲み会で
そして翌日。
退勤後、両魔術師団の団員たちは王宮にある少し小さめのパーティー会場に集まった。小さめ、とはいえ、王宮内にある会場のため団員全員が集まれるだけの広さはある。
そこには数多くの料理に多種多様の酒も用意されており、団員の飲み会、というにはいささか力が入りすぎな様子だ。とても豪華な内容であるのに、喜ぶどころか団員たちは白と黒で睨み合っている。
「さ、始めるか。これからの両魔術師団の繁栄を願って! 乾杯!」
「待ってください!」
白魔術師団の団長がさっさと始めようと乾杯を告げるが、そこに黒魔術師団の古株から待ったがかかる。彼は黒魔術師団の中でもかなりの腕前を持つ魔術師だ。彼を慕う団員も多い。そんな彼が白魔術師団の団長を睨みつけ、ずいっと前へと出た。
「なぜ白魔術師団が乾杯の音頭を? いつも前衛で体を張って戦っている黒魔術師団の団長が挨拶をするべきでは? 戦闘時と同じく、白魔術師団は後ろで大人しくしていればいいんですよ」
彼がそう語れば黒魔術師団からはそうだそうだと同調する声が上がる。それを見て白魔術師団の団長は、隣に立つ黒魔術師団の団長をちらりと見た。黒魔術師団の団長は、団員の主張を聞いて深い溜息を吐いている。
「お前達、我々黒魔術師団が前衛で戦えているのは白魔術師団の補助があるからだと分かっていないのか? 彼らの補助があるからこそ、我々は前へ出られるんだ。そこを勘違いするな」
「ですが! その補助は甘く、我々が怪我をすることも多いんです! それは団長だってご存知でしょう? 白魔術師団の適当な仕事ぶりで我々黒魔術師団はずっと迷惑を被っているんです!」
実際この前の討伐だけじゃなく、今までにも何度もそういったことはあった。本来ならば無傷で簡単に討伐出来る任務ですらこうなのだ。その事に対する黒魔術師団の不満は高い。それに実際白魔術師団が前衛に出ることはあまりない。だからこそ許せないのだ。
「それに対しては同意する。白魔術師団の責任だ。申し訳なかった」
「え……?」
黒魔術師団の不満を直接聞いたジョシュアは前に一歩出ると、謝罪の言葉と共に深々と黒魔術師団に向かって頭を下げた。それを見た黒魔術師団の団員たちに動揺が走る。
先陣を切って黒魔術師団の、というかヴァージルと散々やり合ってきたジョシュアが白魔術師団の至らなさを認め頭を下げたのだ。ジョシュアは白魔術師団の副団長だ。まだ若いとはいえ実力は白魔術師団最強。プライドもあるだろうそんな人が、黒魔術師団に向かって謝罪するなど今までならば考えられないことだ。
その姿を見て白魔術師団団長に噛みついた団員は何も言えず苦い顔をする。
「確かに白魔術師団の補助は甘かったかもしれない。だけど黒魔術師団は補助をして貰って当然だと思っていないか? 本来ならば補助が無くても戦えるように訓練しているはずだ。だが補助があるからと慢心し、後先考えずに敵に切り込んでいったのは自分達だろう。そして自分たちのミスであるのに白魔術師団の補助が甘いと責任を擦り付ける。ならば黒魔術師団にも責任はあるはずだ。白魔術師団の諸君、申し訳なかった」
「え……?」
今度はヴァージルが白魔術師団に向かって謝罪と共に頭を下げた。それを受けて今度は白魔術師団の団員たちに衝撃が広がった。
これで両魔術師団の副団長がそれぞれの非を認め謝罪したことになる。両魔術師団の団長二人は、副団長たちのその姿を見てふっと笑った。
「我々魔術師団は個々の力量も高く、他国では真似の出来ない事をやってのける。それは強みだ。だがそれにはお互いの信頼関係があってこそ」
「そうだな。相手を認め信頼するってことは簡単なようで難しい。だからこそちゃんと話し合い相手を理解する。お前たちはそれをやったか? ただ相手のイヤなところばっかりを見てこなかったか?」
黒魔術師団団長が口を開けば、その後に続いて白魔術師団団長も口を開く。両団長の言葉を聞いた団員たちは気まずそうに下を向いた。
「俺もヴァージルを良く知りもせずに決めつけていた。今じゃそれは大きな間違いだったと後悔している。こいつのお陰で魔術理論がひっくり返る新魔術が完成したんだ。俺一人じゃ絶対に出来なかったことだ」
「それは僕も同じだ。ジョシュアを知って誤解していた自分を恥じた。新魔術は僕達二人が信頼出来るようになったから誕生したんだ。僕たちが出来た事なら、君たちも出来ると思う」
ジョシュアとヴァージルはお互いの顔を見て微笑み合った。その姿を見てこの二人にはもう蟠りがないことがわかる。
両団員たちもそろりと相手の団員達を伺う。これはチャンスだ。そう思った団長は改めて乾杯の言葉を発した。
それに合わせて一人の白魔術師団の団員が先陣を切って動いた。ある一人の黒魔術師団の団員に恐る恐る声をかける。
「あの……この前の討伐で結界魔法が緩かったのは悪かった……そのせいで怪我させてしまってすまない」
「い、いや……俺も結界魔法があるからって無茶な切込みをしたのは分かってるんだ。お前だけのせいじゃないさ。俺の方こそごめん」
「う、うん! でもお前なら僕の結界魔法がなくてもきっと大丈夫だと思う! いつも高火力の攻撃魔法で討伐してるのは知ってるし!」
「俺は脳筋だからな。お前たちの治癒魔法がなかったら早々に死んでたかもしれねぇ。そうだ! お前の高速治癒魔法ってすげぇよな。どうやってるのか聞かせてくれよ!」
その二人を皮切りに次々とそれぞれの団員たちが話をするようになった。酒の力も借りて普段言えなかったことを言い合う。中には喧嘩の場面もあったが、それぞれの団員がとりなし誤解を解くことで収束する。そして喧嘩をした団員は今じゃ肩を組んで酒を飲んでいた。
初めはギスギスしていた空気も今ではすっかり和気藹々とした雰囲気に変わった。大量に用意されていた料理も酒もどんどんと消えてなくなっていく。お陰で多くの酔っ払いが出来上がり、笑い声も絶えず煩いくらいだ。
「なんか不思議な感じだな。こうやって両団員が笑ってるのを見るとさ」
ジョシュアはこの光景を眩しいものでも見るような表情で見ていた。
「そうだな。こんなに簡単に蟠りがなくなるんだな。僕達は今までの時間を無駄にしていたんだ。本当に勿体ないことをしたと思う」
ヴァージルはそっとジョシュアの手を取った。
「本当にありがとう。ジョシュアがいてくれてよかった」
「なっ……!?」
ヴァージルはジョシュアの手の甲にちゅっとリップ音を響かせてキスをする。突然のことにジョシュアは真っ赤になり固まってしまった。
「ふはっ! 真っ赤になってる! お前って可愛いな」
「んなぁっ!? お、俺をからかってるんじゃねぇ! くっそ! 酒取って来る!!」
近頃ヴァージルの様子がおかしい。仲良くなれたのは良かったが、友人にはしないであろうことを平気な顔でしてくる。そして決まって優しい瞳で見つめるのだ。
急にこんな風にされてどうしていいかわからなくなる。一度同じような事をし返してやろうと思ったが、考えただけで恥ずかしくなって行動に移すことは出来ていない。
はぁ……とため息を吐きながら新しい酒を手に取った。それに一口、口を付けると白魔術師団の団員が数名やってきてジョシュアに声をかける。
「ジョシュア副団長。新魔術のコツ、聞かせてください!」
「俺も! 早く扱えるようになりたいんです!」
自分よりも年上ではあるがこうやって自分を副団長として慕ってくれる団員達。こうやって頼りにされて嬉しくないはずがない。そこでジョシュアはしばらく新魔術についての講義を行った。すると徐々に人が集まりだし飲み会の場は新魔術の話題になった。
団長二人にヴァージルも混ざり、魔術理論を語り合う。お陰で先ほどあった恥ずかしいことはすっかりと忘れてしまった。
それから数日後。ジョシュアとヴァージルは仕事を終えて帰宅した。早速腹が減ったと二人でキッチンに立つ。こうして一緒に作業してしまえばあっという間に料理は出来上がる。食前の祈りを捧げると二人は早速口を付けた。
「いやぁ~、今日の討伐最高だったな!」
今日は魔獣討伐を行った。無事に任務も完了し、全員無傷で問題が起こることなく終了した。
ジョシュアは討伐が終わってからずっとテンションが高いままだった。今もにっこにこで興奮が収まっていない。
「ああ。全員の連携が素晴らしかった。本当に気持ちのいい討伐任務だったな」
今日はケルベロスが五体、バジリスク二体、大型トレント三体の討伐を行ってきた。それぞれ厄介な魔獣で、他国ではトレントはまだ特級指定の魔獣だがケルベロスやバジリスクは災厄級に指定されている。しかもケルベロスは群れで動きバジリスクは番で動く。一体見つけたら必ず複数いるのだ。
だが通常であればそれほど危険な魔獣の討伐も、今の魔術師団にかかれば赤子の手を捻るくらいの容易さ。あの飲み会から魔術師団全体の不仲問題は解消され、魔術師団の連携力はかなり高まったのだ。
「それにお前の新魔術! 最高過ぎだろ! 何なんだよあの威力! 本当にカッコよかった!」
ジョシュアが興奮している理由の一つに、ヴァージルが扱った攻撃魔法があった。新魔術で構成された攻撃魔法は今までの攻撃魔法とは桁違いの威力を見せ、辺り一帯を焦土と化してしまった。流石にこれは問題があるとその一回しか使う事はなかったが、あの時の凄まじさは言い表せられないほどだ。
「僕も討伐で使ったのは初めてだったから威力がどれほどかわからなかったが、あれは自分でも唖然とした。それにジョシュアの新魔術だって凄かったじゃないか」
結界魔法と治癒魔法を合わせた新魔術は、まだジョシュアしか使えない。だからジョシュアが黒魔術師団にその新魔術を掛けたのだがそれが良い仕事をした。
ケルベロスは素早い動きで仲間と連携しながら襲ってくる魔獣だ。案の定黒魔術師団も狙われた。だが高い攻撃力を誇るケルベロスの攻撃を受けて結界が破壊され、傷を負った団員の傷はあっという間になくなった。そしてすぐに反撃を行い、討伐に成功したのだ。
もちろんこの二人の新魔術だけが活躍したわけじゃない。両魔術師団の団員たちはお互いを嫌う事もなくなり、むしろお互いを鼓舞し合っていた。モチベーションも上がり最高のパフォーマンスを行えたのだ。
討伐が終わった後の団員達は冷静でいられなかった。新魔術のとんでもない結果に大騒ぎとなり、魔術師団棟に戻った後もそれが魔術師団全体に伝わりまた大騒ぎとなった。それも両魔術師団の団員が一緒になってだ。
新魔術だけじゃなく『あいつのアレが良かった』だの『こいつのアレは冴えてた』など互いの健闘を称え合っていた。
退勤後、両魔術師団の団員たちは王宮にある少し小さめのパーティー会場に集まった。小さめ、とはいえ、王宮内にある会場のため団員全員が集まれるだけの広さはある。
そこには数多くの料理に多種多様の酒も用意されており、団員の飲み会、というにはいささか力が入りすぎな様子だ。とても豪華な内容であるのに、喜ぶどころか団員たちは白と黒で睨み合っている。
「さ、始めるか。これからの両魔術師団の繁栄を願って! 乾杯!」
「待ってください!」
白魔術師団の団長がさっさと始めようと乾杯を告げるが、そこに黒魔術師団の古株から待ったがかかる。彼は黒魔術師団の中でもかなりの腕前を持つ魔術師だ。彼を慕う団員も多い。そんな彼が白魔術師団の団長を睨みつけ、ずいっと前へと出た。
「なぜ白魔術師団が乾杯の音頭を? いつも前衛で体を張って戦っている黒魔術師団の団長が挨拶をするべきでは? 戦闘時と同じく、白魔術師団は後ろで大人しくしていればいいんですよ」
彼がそう語れば黒魔術師団からはそうだそうだと同調する声が上がる。それを見て白魔術師団の団長は、隣に立つ黒魔術師団の団長をちらりと見た。黒魔術師団の団長は、団員の主張を聞いて深い溜息を吐いている。
「お前達、我々黒魔術師団が前衛で戦えているのは白魔術師団の補助があるからだと分かっていないのか? 彼らの補助があるからこそ、我々は前へ出られるんだ。そこを勘違いするな」
「ですが! その補助は甘く、我々が怪我をすることも多いんです! それは団長だってご存知でしょう? 白魔術師団の適当な仕事ぶりで我々黒魔術師団はずっと迷惑を被っているんです!」
実際この前の討伐だけじゃなく、今までにも何度もそういったことはあった。本来ならば無傷で簡単に討伐出来る任務ですらこうなのだ。その事に対する黒魔術師団の不満は高い。それに実際白魔術師団が前衛に出ることはあまりない。だからこそ許せないのだ。
「それに対しては同意する。白魔術師団の責任だ。申し訳なかった」
「え……?」
黒魔術師団の不満を直接聞いたジョシュアは前に一歩出ると、謝罪の言葉と共に深々と黒魔術師団に向かって頭を下げた。それを見た黒魔術師団の団員たちに動揺が走る。
先陣を切って黒魔術師団の、というかヴァージルと散々やり合ってきたジョシュアが白魔術師団の至らなさを認め頭を下げたのだ。ジョシュアは白魔術師団の副団長だ。まだ若いとはいえ実力は白魔術師団最強。プライドもあるだろうそんな人が、黒魔術師団に向かって謝罪するなど今までならば考えられないことだ。
その姿を見て白魔術師団団長に噛みついた団員は何も言えず苦い顔をする。
「確かに白魔術師団の補助は甘かったかもしれない。だけど黒魔術師団は補助をして貰って当然だと思っていないか? 本来ならば補助が無くても戦えるように訓練しているはずだ。だが補助があるからと慢心し、後先考えずに敵に切り込んでいったのは自分達だろう。そして自分たちのミスであるのに白魔術師団の補助が甘いと責任を擦り付ける。ならば黒魔術師団にも責任はあるはずだ。白魔術師団の諸君、申し訳なかった」
「え……?」
今度はヴァージルが白魔術師団に向かって謝罪と共に頭を下げた。それを受けて今度は白魔術師団の団員たちに衝撃が広がった。
これで両魔術師団の副団長がそれぞれの非を認め謝罪したことになる。両魔術師団の団長二人は、副団長たちのその姿を見てふっと笑った。
「我々魔術師団は個々の力量も高く、他国では真似の出来ない事をやってのける。それは強みだ。だがそれにはお互いの信頼関係があってこそ」
「そうだな。相手を認め信頼するってことは簡単なようで難しい。だからこそちゃんと話し合い相手を理解する。お前たちはそれをやったか? ただ相手のイヤなところばっかりを見てこなかったか?」
黒魔術師団団長が口を開けば、その後に続いて白魔術師団団長も口を開く。両団長の言葉を聞いた団員たちは気まずそうに下を向いた。
「俺もヴァージルを良く知りもせずに決めつけていた。今じゃそれは大きな間違いだったと後悔している。こいつのお陰で魔術理論がひっくり返る新魔術が完成したんだ。俺一人じゃ絶対に出来なかったことだ」
「それは僕も同じだ。ジョシュアを知って誤解していた自分を恥じた。新魔術は僕達二人が信頼出来るようになったから誕生したんだ。僕たちが出来た事なら、君たちも出来ると思う」
ジョシュアとヴァージルはお互いの顔を見て微笑み合った。その姿を見てこの二人にはもう蟠りがないことがわかる。
両団員たちもそろりと相手の団員達を伺う。これはチャンスだ。そう思った団長は改めて乾杯の言葉を発した。
それに合わせて一人の白魔術師団の団員が先陣を切って動いた。ある一人の黒魔術師団の団員に恐る恐る声をかける。
「あの……この前の討伐で結界魔法が緩かったのは悪かった……そのせいで怪我させてしまってすまない」
「い、いや……俺も結界魔法があるからって無茶な切込みをしたのは分かってるんだ。お前だけのせいじゃないさ。俺の方こそごめん」
「う、うん! でもお前なら僕の結界魔法がなくてもきっと大丈夫だと思う! いつも高火力の攻撃魔法で討伐してるのは知ってるし!」
「俺は脳筋だからな。お前たちの治癒魔法がなかったら早々に死んでたかもしれねぇ。そうだ! お前の高速治癒魔法ってすげぇよな。どうやってるのか聞かせてくれよ!」
その二人を皮切りに次々とそれぞれの団員たちが話をするようになった。酒の力も借りて普段言えなかったことを言い合う。中には喧嘩の場面もあったが、それぞれの団員がとりなし誤解を解くことで収束する。そして喧嘩をした団員は今じゃ肩を組んで酒を飲んでいた。
初めはギスギスしていた空気も今ではすっかり和気藹々とした雰囲気に変わった。大量に用意されていた料理も酒もどんどんと消えてなくなっていく。お陰で多くの酔っ払いが出来上がり、笑い声も絶えず煩いくらいだ。
「なんか不思議な感じだな。こうやって両団員が笑ってるのを見るとさ」
ジョシュアはこの光景を眩しいものでも見るような表情で見ていた。
「そうだな。こんなに簡単に蟠りがなくなるんだな。僕達は今までの時間を無駄にしていたんだ。本当に勿体ないことをしたと思う」
ヴァージルはそっとジョシュアの手を取った。
「本当にありがとう。ジョシュアがいてくれてよかった」
「なっ……!?」
ヴァージルはジョシュアの手の甲にちゅっとリップ音を響かせてキスをする。突然のことにジョシュアは真っ赤になり固まってしまった。
「ふはっ! 真っ赤になってる! お前って可愛いな」
「んなぁっ!? お、俺をからかってるんじゃねぇ! くっそ! 酒取って来る!!」
近頃ヴァージルの様子がおかしい。仲良くなれたのは良かったが、友人にはしないであろうことを平気な顔でしてくる。そして決まって優しい瞳で見つめるのだ。
急にこんな風にされてどうしていいかわからなくなる。一度同じような事をし返してやろうと思ったが、考えただけで恥ずかしくなって行動に移すことは出来ていない。
はぁ……とため息を吐きながら新しい酒を手に取った。それに一口、口を付けると白魔術師団の団員が数名やってきてジョシュアに声をかける。
「ジョシュア副団長。新魔術のコツ、聞かせてください!」
「俺も! 早く扱えるようになりたいんです!」
自分よりも年上ではあるがこうやって自分を副団長として慕ってくれる団員達。こうやって頼りにされて嬉しくないはずがない。そこでジョシュアはしばらく新魔術についての講義を行った。すると徐々に人が集まりだし飲み会の場は新魔術の話題になった。
団長二人にヴァージルも混ざり、魔術理論を語り合う。お陰で先ほどあった恥ずかしいことはすっかりと忘れてしまった。
それから数日後。ジョシュアとヴァージルは仕事を終えて帰宅した。早速腹が減ったと二人でキッチンに立つ。こうして一緒に作業してしまえばあっという間に料理は出来上がる。食前の祈りを捧げると二人は早速口を付けた。
「いやぁ~、今日の討伐最高だったな!」
今日は魔獣討伐を行った。無事に任務も完了し、全員無傷で問題が起こることなく終了した。
ジョシュアは討伐が終わってからずっとテンションが高いままだった。今もにっこにこで興奮が収まっていない。
「ああ。全員の連携が素晴らしかった。本当に気持ちのいい討伐任務だったな」
今日はケルベロスが五体、バジリスク二体、大型トレント三体の討伐を行ってきた。それぞれ厄介な魔獣で、他国ではトレントはまだ特級指定の魔獣だがケルベロスやバジリスクは災厄級に指定されている。しかもケルベロスは群れで動きバジリスクは番で動く。一体見つけたら必ず複数いるのだ。
だが通常であればそれほど危険な魔獣の討伐も、今の魔術師団にかかれば赤子の手を捻るくらいの容易さ。あの飲み会から魔術師団全体の不仲問題は解消され、魔術師団の連携力はかなり高まったのだ。
「それにお前の新魔術! 最高過ぎだろ! 何なんだよあの威力! 本当にカッコよかった!」
ジョシュアが興奮している理由の一つに、ヴァージルが扱った攻撃魔法があった。新魔術で構成された攻撃魔法は今までの攻撃魔法とは桁違いの威力を見せ、辺り一帯を焦土と化してしまった。流石にこれは問題があるとその一回しか使う事はなかったが、あの時の凄まじさは言い表せられないほどだ。
「僕も討伐で使ったのは初めてだったから威力がどれほどかわからなかったが、あれは自分でも唖然とした。それにジョシュアの新魔術だって凄かったじゃないか」
結界魔法と治癒魔法を合わせた新魔術は、まだジョシュアしか使えない。だからジョシュアが黒魔術師団にその新魔術を掛けたのだがそれが良い仕事をした。
ケルベロスは素早い動きで仲間と連携しながら襲ってくる魔獣だ。案の定黒魔術師団も狙われた。だが高い攻撃力を誇るケルベロスの攻撃を受けて結界が破壊され、傷を負った団員の傷はあっという間になくなった。そしてすぐに反撃を行い、討伐に成功したのだ。
もちろんこの二人の新魔術だけが活躍したわけじゃない。両魔術師団の団員たちはお互いを嫌う事もなくなり、むしろお互いを鼓舞し合っていた。モチベーションも上がり最高のパフォーマンスを行えたのだ。
討伐が終わった後の団員達は冷静でいられなかった。新魔術のとんでもない結果に大騒ぎとなり、魔術師団棟に戻った後もそれが魔術師団全体に伝わりまた大騒ぎとなった。それも両魔術師団の団員が一緒になってだ。
新魔術だけじゃなく『あいつのアレが良かった』だの『こいつのアレは冴えてた』など互いの健闘を称え合っていた。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された婚活オメガの憂鬱な日々
月歌(ツキウタ)
BL
運命の番と巡り合う確率はとても低い。なのに、俺の婚約者のアルファが運命の番と巡り合ってしまった。運命の番が出逢った場合、二人が結ばれる措置として婚約破棄や離婚することが認められている。これは国の法律で、婚約破棄または離婚された人物には一生一人で生きていけるだけの年金が支給される。ただし、運命の番となった二人に関わることは一生禁じられ、破れば投獄されることも。
俺は年金をもらい実家暮らししている。だが、一人で暮らすのは辛いので婚活を始めることにした。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
《完結》政略結婚で幸せになるとか
mm
BL
貧乏侯爵家の跡取り息子ラブラドライトは密かにパン屋でバイトに励みながらも、お人好しでお金の算段の苦手な父を助け、領地経営を頑張っている。
ある日、縁談が持ち込まれたが、お相手は男性だった。
侯爵家の肩書きと歴史、骨董品が目当てらしい。その代わり、生活には不自由させないという、つまりが政略結婚。
貴族の家に生まれた以上、家のために婚姻するのは仕方ないと思っていたが、相手が男性だなんて。
え、と。嫁いでくるということはお嫁さん、だよね。僕が頑張る方?
あ、子供を作るわけじゃないから頑張らなくていいのか。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
追放系治癒術師は今日も無能
リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。
追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。