今まで我儘放題でごめんなさい! これからは平民として慎ましやかに生きていきます!

華抹茶

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新・番外編

エレン、母になる③

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「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 と大きな赤ちゃんの泣き声が響き渡った。
 ああ、生まれた……生まれたんだ! 俺とライアスの赤ちゃんが!

「「エレンッ(ちゃん)!!」」
 
 どうやら、俺の両親は子供が生まれるまで邪魔しないように部屋の隅っこにいたらしい。勢いよく俺の側まで来ると「エレンッ! よくやった! よくやった!」「エレンちゃん、お疲れ様ぁっ!」と大騒ぎだ。もちろん大号泣。わーわーと貴族とは思えないはしゃぎっぷりだ。
 そしてライアスもその中に混ざって「やったーやったー!」と三人で大騒ぎ。この絵面が面白過ぎる。

「やかましいッ! 静かにせんかいッ! ……全く。嬉しいのは分かるが赤子がびっくりするじゃろうがっ!」

「「「……すみませんでした」」」

 さすがこの道五十年のベテラン先生。相手が貴族とか関係ない。ぴしゃりと三人を黙らせた。かっけぇ。マジ尊敬。

「ほれ、お前さんたちの可愛い赤子じゃ」

 先生はそう言っておくるみに包まれた赤ちゃんを手渡してくれた。

 うわぁ、ちっちゃい。軽い。可愛いっ!!
 顔をくしゃくしゃにしてまだぐずぐずいってるけど、もうここにいるだけで可愛くて可愛くて仕方がない!
 ごりっごりに魔力を持っていかれてぐっちゃぐちゃで苦しかったけど、そんなことは吹き飛ぶくらい、どうでもいいくらいの感動でいっぱいだ!

「エレンッ……お疲れさまでしたっ……ありがとう、ございますっ……! 産んでくれてっ……ありが、とっ……」

 ライアスがぼろぼろ泣いてる。泣きすぎて上手く喋れなくなってる。そんな姿見たら、俺もなんか泣けてきたっ……!

「エレンちゃん、よく頑張ったね。辛かったでしょう? 魔力ガンガン取られちゃうから。今はゆっくり休みなさい。お疲れ様」

 母上も嬉しそうに笑って俺の頭を撫でてくれた。久しぶりの母上の手は、温かくて気持ち良かった。

「うぅぅっ……ぐすっ……エ゛レ゛ン゛ッ……! よ゛く゛、よ゛く゛や゛った゛っ……! う゛う゛う゛っ……」

「もう、旦那さまったら……」

 父上はもう泣きすぎて何を喋ってるのかよくわからない。相変らずでちょっと呆れるけど、嬉しいんだなっていうのは痛いほどに伝わってくる。

「ライアス、抱っこしてあげてよ。ほら」

 ごしごしと目元を拭ったライアスは、そっと子供を抱き上げる。ライアスが抱くと、子供が更に小さく感じる。

「ああ……可愛いっ、なんて、なんて可愛いんだっ……! 産まれてきてくれて、ありがとうっ……」

 赤ちゃんがライアスの指をきゅっと握った。それだけでライアスは心底幸せそうに笑ってる。
 もしかして、赤ちゃんもライアスがお父さんだってわかってるのかな。ふふ。
 
「今抱っこしてるのがお父さんでちゅよ~。そして俺が、お母さんでちゅよ~」

「ぐふぅっ……!」

「え? ライアス? どうした?」

「ぐっ……エレンの赤ちゃん言葉っ……! なんて尊いんだッ……!」

 あ。俺自然と喋ってた! っず!


 赤ちゃんの名前はアシェルにした。『幸せな子』という意味だ。
 俺とライアスの『幸せの形』。幸せにし合うと決めた俺たちの子供らしい名前になったと思う。

 アシェルの髪は俺と同じ銀髪で、瞳はライアスの青。顔立ちは俺似だ。だからかライアスは「絶対どこの誰にもやらん!」と早くもそんなことを言っている。親バカだ。
 子供の世話も積極的にしてくれるし、宣言通り愛情をたっぷり注いで可愛がっている。

「アシェル~、ご機嫌でちゅね~、可愛いでちゅね~!」

 可愛がり過ぎて、ライアスまで赤ちゃん言葉で話しだした。もう顔がデレデレだ。

 俺の両親だが、子供が生まれて一週間ほどは家にいたが流石に帰らないといけないと泣く泣く帰っていった。だがその直後、また大量の赤ちゃん服やおもちゃが送られてきた。兄上たちまで一緒に。こんなにたくさんどうしろと……ありがとな!
 まぁ可愛いのは事実だからな。仕方ない。うん。

 ただ心配なのは、昔の俺みたいに我儘放題にならないかどうか。そこはちゃんと気を付けないとな。子供には俺みたいな悲惨なことにはなって欲しくないし。

「ああ、もう子供が可愛すぎて毎日が幸せです」

「ふふ。俺も」

 早く喋るようにならないかな。いっぱいいっぱい話したいことがある。どんな風に育っていくのか楽しみで仕方がない。

 俺達のところに生まれて来てくれてありがとう。これからよろしくな、アシェル。








 そして二年後。

 相も変わらずラブラブな俺達は、また新たな命を授かることになった。
 妊娠初期の体調の悪さは相変らずだったが、二人目ということもあり気持ちの面ではかなり落ち着いて過ごすことが出来た。
 ライアスも慌てたりすることなく冷静でいてくれたし、そのおかげで俺もアシェルの面倒見ながらでも難なく日々を過ごせた。
 
 父上たちに二人目の妊娠報告をしたら『祭りじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』な手紙が大量の荷物と共に送られてきた。お陰様で、この家には子供たちのものでいっぱいだ。

 そうそう。オットーとジャレミーも結婚して子供が出来た。第一子はジャレミーが生んだんだけど、次はオットーが生む番らしい。あの二人もずっと仲良く過ごしている。
 あの二人の子供が生まれた時は、おさがりだけどアシェルの時の服とかおもちゃとかをあげた。高級品だからかすごく喜んでくれたな。
 そして俺達の婚約パーティーの時にプロポーズして目立っていた冒険者と薬屋の人も子供が生まれた。そこにも同じように服とおもちゃをあげたら喜んでくれた。
 
 子供の成長は早い。あっという間に着られなくなってしまうし、高級品だから捨てるのも勿体ない。また誰かに子供が生まれたら、希望者にはあげようと思う。

 二人目の出産前には父上と母上だけじゃなく、兄上家族も来てくれた。だから今回は総勢六名の訪問だ。そうなると流石に俺達の家じゃ手狭になるから兄上達は宿に泊まることになったけど。
 一週間の滞在だけど、その間に二人目を出産出来て皆に赤ちゃんを抱っこしてもらうことが出来た。

 名前はライリー。『勇敢な子』という意味だ。
 ライリーはライアスと同じ茶色の髪に、俺の紫の目を受け継いだ。顔立ちはライアスにそっくりでこの名前を付けた。きっとライアスみたいに強い子になるだろう。

 ライリーが生まれた時も凄かった。アシェルの時は父上と母上だけだったけど、今回は兄上まで一緒になって「やったー!」と大騒ぎ。また「やかましいッ!」っておじいちゃん先生に怒られて、それを見て笑ってしまった。いつもはクールな兄上だけど、あの時だけははっちゃけてたな。初めて見る兄上で俺もびっくりした。

 そしてライアスと父上は大号泣。泣きすぎて何を喋ってるのかわからないくらいだった。でもそれだけライリーが生まれたことを喜んでもらえて俺もすごく嬉しい。

 これで俺達は四人家族になった。このソルズの街に来た時は二人きりだったのに、もうこんなに賑やかな毎日だ。
 子供を育てることは驚きと困惑ばっかりだ。だけど不思議ともう嫌だと思うことはなく、楽しんで子育てが出来ている。それはもちろんライアスがいるからだ。

 二人の子供だから二人で育てようって言ってくれて、俺以上に子供を構い倒している。そのおかげで家にいることが多くなったライアスを連れ出しに、デイビットさんは度々家を訪ねて来るようになった。それでも行きたがらないライアスをけしかけるために、デイビットさんはアシェルにこそこそと耳打ちをした。

「とうしゃん、かっこいい!」

「そうか。行ってくる」

 可愛いアシェルにそんなことを言われたら流石のライアスも陥落した。仕事の前にはアシェルに「がんばりぇ~」と言われると張り切って仕事に行くようになった。可愛いかよ。

 俺はまだ冒険者稼業はお休み中だ。子供が大きくなったら少しずつ仕事に復帰する予定だが、今は子供達と一緒にお留守番。ライアスが帰ってきたら、子供達と出迎えて労っている。その時のライアスの嬉しそうな顔を見るのが俺の楽しみだ。

「エレン、子供を生んでくれてありがとうございます。エレンと一緒にいると、どんどん幸せになっていきますね」
 
「うん、俺も一緒だよ。ライアスと一緒だから、こんなに幸せな家庭を築けてるんだ。本当にありがとう」

 子育ては大変だけど、それでも毎日が楽しくて幸せだと思う。

 ライリーもどんな子に育っていくんだろうか。成長が楽しみで仕方がない。ライリーもこれからよろしくな。
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