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久しぶりに会った同級生に『自慰を見て欲しい!』と頼まれた結果
5 最終話
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「あの陛下が出場を命令したヘルガー様だが、どうなるだろうな」
「昔魔力暴走やらかしてるんだろう? それから国を出て修行してたって話だが、どんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ」
え? 陛下が出場を命令……? まさか今年の優勝候補の一人である、初出場の魔法使いってヘルガー様のことだったの!?
そんなヘルガー様の表情は自信満々って感じだ。そしてその表情を裏切ることなく、対戦相手を一瞬にして場外にしてしまった。会場もあまりの早い決着に「わぁぁぁぁ!」と拍手喝采。それにぺこりと軽くお辞儀を返すと、ヘルガー様は控室へと下がっていった。
そのあとのヘルガー様は危なげなく、一瞬で対戦相手に勝ち続けていく。そしてあっという間に決勝戦となり、少し手こずったものの見事優勝してしまった。
す、すごい……ヘルガー様、めっちゃ強い。学園の時より魔力の運用が凄く綺麗になってる。本当に修行をしてかなりの実力を身に着けたんだ。あんな変態なことをしていた同一人物とは思えない。すごく、すごくかっこよかった。あくまでも今回の戦いにおいて、だけどね。
「ヘルガーよ、実に見事な戦いじゃった! 我に叶えられる願いに限られるが、そなたの望みを何でも申してみよ!」
それを受けてヘルガー様は胸に手を当て陛下に一礼すると、会場は驚くほどの静寂に包まれた。みんな、ヘルガー様の願い事が何か気になっているんだ。僕も何を言うのかと心臓がドキドキしている。
「陛下! 私の願いは、魔法訓練所で働くロイとの結婚です! それを認めていただきたく思います!」
は? は!? はぁぁぁぁぁぁ!?
それ、それって僕のことだよねっ!? 魔法訓練所で働いている『ロイ』って名前の人間は僕しかいないんだけど!? え!? なんで僕との結婚がヘルガー様の望みなわけぇ!?
とんでもないことを言ったヘルガー様は、くるりと僕の方へ向くとにっこりと笑って手を振っていた。や、やっぱり僕のことで間違いなさそうだ……え、嘘だと言って!? 他に『ロイ』って人がいるって言って!?
「なんと。その者は平民なのだな。なるほど。ヘルガーはその平民との婚姻を望んでいるというわけか。よいだろう。その婚姻、我が認めようぞ!」
「ありがとうございます!」
ちょっとぉぉぉぉぉ!? 陛下ぁぁぁぁぁ!? 勝手に認めないで!? 僕の意志をまるっと無視しないで!? 「うむうむ。公爵家へ嫁ぐロイとやらは幸せじゃろう」なんて知ったか言わないでくれます!?
ってなになになになに!? いきなり数人の騎士に囲まれて舞台に引っ張り出されたんだけど!? え!? やだやだやだやだ! 無理無理無理無理! 僕をこんな目立つところに連れてこないで!
「ああ、ロイ。陛下に君との結婚を認めて貰えたよ。今日は人生で最高の日だ!」
「や、ちょっ……何かの間違いじゃ、ないんですか?」
「間違いなものか! 俺は君を愛している! 一生をかけて君を幸せにするとここに誓おう!」
ヘルガー様が大声でそう宣誓すると、会場は「わぁぁぁぁぁ!!」と大盛り上がり。あちこちから「おめでとう!」やら「末永くお幸せにー!」とか「ヘルガー様ぁ! 私と結婚してー!」とか、もうたくさんの声が聞こえてくる。ヘルガー様と結婚したいと思ってるそこのあなた。どうぞこの変態をお持ち帰りください。
「そんな馬鹿な……」
「ははは、嬉しすぎて呆然としているロイは可愛いな」
「それ勘違いっ……んむー!?」
ヘルガー様は僕の顎をくいっと持ち上げると、公衆の面前でぶちゅーっと熱烈なキスをかましやがった。それを見て会場は益々盛り上がり、僕達を祝福する声が聞こえてくる。
ああ……どこから間違ってしまったんだろう。どうしてこうなったのか。
誰か教えてくれないだろうか……
◇
そしてあっという間に数日が過ぎ、今僕はヘルガー様の家で生活をしている。
陛下に認められてしまった以上、平民の僕がこの結婚を受け入れるしか道はなかった。式はまだだけど、既に籍は入れていて僕はもう公爵家の人間だ。いきなり上流階級の生活が出来るわけはなく、ずっとびくびくしたまま過ごしている。
それから毎日のようにヘルガー様に抱き潰されてヘロヘロになったせいで、仕事には全く行けていない。というか僕の仕事は現在蜜月ということで休職中なのだそうだ。
そしてヘルガー様がどうして僕と結婚したのかというと。
学園時代に魔力暴走を起こした時、ヘルガー様の自信は木っ端微塵となったらしい。恥ずかしくて学園に戻ることも出来ず、魔法を使うことも怖くなって引きこもりの生活を送っていたそうだ。他国へと修行の旅に出ていたというのは嘘だったらしい。
そんな生活をしていたところ、今回の魔法武闘大会の出場を陛下に命令されてしまった。魔法を使うことが怖いヘルガー様は、事情を話して断ろうとしたが、ヘルガー様のお父様に受けるよう言われてしまい引き受けるしかなくなってしまった。
だがそんな時、学園時代に魔力暴走を止めてくれた人物がいたことを思い出す。その人物が誰だったのか突き止めたヘルガー様はあの日僕の前に現れた。ヘルガー様はすっかり魔法に関して自信を無くしてしまったが、僕と会えば何かが変わると思ったそうだ。
そしてこの時のヘルガー様は魔法武闘大会に出なきゃいけない精神的負担がかなり強く、追い込まれた結果頭がおかしくなっていて僕にあんなことを言ってしまったらしい。
だけど僕に甘えて僕を抱いて、僕の精液を飲んで僕の魔力を感じたことで、気持ちがとても前向きになったそうだ。一度精神がイってしまうと、元気になる理由も意味がわからない。
そして僕がヘルガー様にとってなくてはならない人物だと思ったヘルガー様は、大会で優勝して僕との結婚を認めてもらったと。こういうことらしいのだ。
あー、これはきっと僕は捨てられちゃうんだろうなー。今は僕のことを大切にしてくれるけど、きっとあっという間に飽きて離縁されて追い出されるんだろう。平凡な平民だった僕だもの。
そう思い続けて早三十年。未だに僕はヘルガー様に大切にされている。おかしいな。平凡な僕を飽きるどころか、毎日のように愛を囁かれているんだが。
どうしてこんなことになったのだろうか。でも、いっか。今の僕は間違いなく幸せなのだし。
「昔魔力暴走やらかしてるんだろう? それから国を出て修行してたって話だが、どんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ」
え? 陛下が出場を命令……? まさか今年の優勝候補の一人である、初出場の魔法使いってヘルガー様のことだったの!?
そんなヘルガー様の表情は自信満々って感じだ。そしてその表情を裏切ることなく、対戦相手を一瞬にして場外にしてしまった。会場もあまりの早い決着に「わぁぁぁぁ!」と拍手喝采。それにぺこりと軽くお辞儀を返すと、ヘルガー様は控室へと下がっていった。
そのあとのヘルガー様は危なげなく、一瞬で対戦相手に勝ち続けていく。そしてあっという間に決勝戦となり、少し手こずったものの見事優勝してしまった。
す、すごい……ヘルガー様、めっちゃ強い。学園の時より魔力の運用が凄く綺麗になってる。本当に修行をしてかなりの実力を身に着けたんだ。あんな変態なことをしていた同一人物とは思えない。すごく、すごくかっこよかった。あくまでも今回の戦いにおいて、だけどね。
「ヘルガーよ、実に見事な戦いじゃった! 我に叶えられる願いに限られるが、そなたの望みを何でも申してみよ!」
それを受けてヘルガー様は胸に手を当て陛下に一礼すると、会場は驚くほどの静寂に包まれた。みんな、ヘルガー様の願い事が何か気になっているんだ。僕も何を言うのかと心臓がドキドキしている。
「陛下! 私の願いは、魔法訓練所で働くロイとの結婚です! それを認めていただきたく思います!」
は? は!? はぁぁぁぁぁぁ!?
それ、それって僕のことだよねっ!? 魔法訓練所で働いている『ロイ』って名前の人間は僕しかいないんだけど!? え!? なんで僕との結婚がヘルガー様の望みなわけぇ!?
とんでもないことを言ったヘルガー様は、くるりと僕の方へ向くとにっこりと笑って手を振っていた。や、やっぱり僕のことで間違いなさそうだ……え、嘘だと言って!? 他に『ロイ』って人がいるって言って!?
「なんと。その者は平民なのだな。なるほど。ヘルガーはその平民との婚姻を望んでいるというわけか。よいだろう。その婚姻、我が認めようぞ!」
「ありがとうございます!」
ちょっとぉぉぉぉぉ!? 陛下ぁぁぁぁぁ!? 勝手に認めないで!? 僕の意志をまるっと無視しないで!? 「うむうむ。公爵家へ嫁ぐロイとやらは幸せじゃろう」なんて知ったか言わないでくれます!?
ってなになになになに!? いきなり数人の騎士に囲まれて舞台に引っ張り出されたんだけど!? え!? やだやだやだやだ! 無理無理無理無理! 僕をこんな目立つところに連れてこないで!
「ああ、ロイ。陛下に君との結婚を認めて貰えたよ。今日は人生で最高の日だ!」
「や、ちょっ……何かの間違いじゃ、ないんですか?」
「間違いなものか! 俺は君を愛している! 一生をかけて君を幸せにするとここに誓おう!」
ヘルガー様が大声でそう宣誓すると、会場は「わぁぁぁぁぁ!!」と大盛り上がり。あちこちから「おめでとう!」やら「末永くお幸せにー!」とか「ヘルガー様ぁ! 私と結婚してー!」とか、もうたくさんの声が聞こえてくる。ヘルガー様と結婚したいと思ってるそこのあなた。どうぞこの変態をお持ち帰りください。
「そんな馬鹿な……」
「ははは、嬉しすぎて呆然としているロイは可愛いな」
「それ勘違いっ……んむー!?」
ヘルガー様は僕の顎をくいっと持ち上げると、公衆の面前でぶちゅーっと熱烈なキスをかましやがった。それを見て会場は益々盛り上がり、僕達を祝福する声が聞こえてくる。
ああ……どこから間違ってしまったんだろう。どうしてこうなったのか。
誰か教えてくれないだろうか……
◇
そしてあっという間に数日が過ぎ、今僕はヘルガー様の家で生活をしている。
陛下に認められてしまった以上、平民の僕がこの結婚を受け入れるしか道はなかった。式はまだだけど、既に籍は入れていて僕はもう公爵家の人間だ。いきなり上流階級の生活が出来るわけはなく、ずっとびくびくしたまま過ごしている。
それから毎日のようにヘルガー様に抱き潰されてヘロヘロになったせいで、仕事には全く行けていない。というか僕の仕事は現在蜜月ということで休職中なのだそうだ。
そしてヘルガー様がどうして僕と結婚したのかというと。
学園時代に魔力暴走を起こした時、ヘルガー様の自信は木っ端微塵となったらしい。恥ずかしくて学園に戻ることも出来ず、魔法を使うことも怖くなって引きこもりの生活を送っていたそうだ。他国へと修行の旅に出ていたというのは嘘だったらしい。
そんな生活をしていたところ、今回の魔法武闘大会の出場を陛下に命令されてしまった。魔法を使うことが怖いヘルガー様は、事情を話して断ろうとしたが、ヘルガー様のお父様に受けるよう言われてしまい引き受けるしかなくなってしまった。
だがそんな時、学園時代に魔力暴走を止めてくれた人物がいたことを思い出す。その人物が誰だったのか突き止めたヘルガー様はあの日僕の前に現れた。ヘルガー様はすっかり魔法に関して自信を無くしてしまったが、僕と会えば何かが変わると思ったそうだ。
そしてこの時のヘルガー様は魔法武闘大会に出なきゃいけない精神的負担がかなり強く、追い込まれた結果頭がおかしくなっていて僕にあんなことを言ってしまったらしい。
だけど僕に甘えて僕を抱いて、僕の精液を飲んで僕の魔力を感じたことで、気持ちがとても前向きになったそうだ。一度精神がイってしまうと、元気になる理由も意味がわからない。
そして僕がヘルガー様にとってなくてはならない人物だと思ったヘルガー様は、大会で優勝して僕との結婚を認めてもらったと。こういうことらしいのだ。
あー、これはきっと僕は捨てられちゃうんだろうなー。今は僕のことを大切にしてくれるけど、きっとあっという間に飽きて離縁されて追い出されるんだろう。平凡な平民だった僕だもの。
そう思い続けて早三十年。未だに僕はヘルガー様に大切にされている。おかしいな。平凡な僕を飽きるどころか、毎日のように愛を囁かれているんだが。
どうしてこんなことになったのだろうか。でも、いっか。今の僕は間違いなく幸せなのだし。
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