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15.予想と実験
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「ソウタ、とりあえず無事でよかった……」
シルヴィア様の姿がなくなるとフェリクスは俺を強いくらいに抱きしめた。相当心配させてしまったのかと申し訳ない。だけどなんでフェリクスは俺の部屋に来るなり無事かどうかを確かめたんだろうか。
「王宮全体で強い魔法反応を感じたんだ。しかも発生源はソウタの部屋の辺り。まさかソウタが誰かに襲われたんじゃないかと心配で……」
なるほど。そうしたらシルヴィア様がいて、なんでこの人がここにいるのかと疑問に思ったわけだ。
フェリクスは俺からそっと体を離すとダグラスを強く睨みつける。
「ダグラス、お前が付いていながらあの王女を招き入れることになったのはどういうことだ?」
「返す言葉もございません。私の不徳の致すところです。厳罰はいかようにも――」
「待て待て待て待て! ダグラスは悪くないから! あのお姫様を部屋に入れたのは俺だから!」
むしろダグラスはシルヴィア様を部屋に入れることに反対していたんだ。それを大丈夫だからって俺が許可したんだから、ダグラスにお咎めがあるのはおかしな話だ。
なのに二人ともダグラスが悪いと納得していて、ダグラス本人なんて罰を受けることも当然だと思ってる。そんなの俺が許さんからな!
「だがソウタ。私が側にいないからこそダグラスを付けたんだ。それなのにソウタを危険な目に遭わせたことは許せることではない」
「だーかーら! 俺の話を聞けって!」
まずどうしてあのお姫様がこの部屋までやって来たのか。ダグラスの話だと、本来だったらあり得ないことだ。だけど騎士団の団員があっさりと王族居住区に通してしまった。
しかも俺の部屋にいる侍女さんですら、来訪を断るどころかシルヴィア様と会うことを勧めてきた。
おまけにシルヴィア様と会話をしたダグラスは、「妻と離縁することも厭わない」と愛妻家とは思えない発言をあっさりとする。極めつけは俺とフェリクス、ダグラスの三人を夫にしたいと宣ったシルヴィア様。それを侍女さんも護衛騎士も「素晴らしい!」と喜ぶ始末。
こんなこと、この世界じゃ普通のことなのかと聞いてみれば「あり得ない」とフェリクスもダグラスも首を横に振った。俺がいた世界同様、一夫一妻制が基本なんだそうだ。ただし王族の場合はその限りじゃないらしいけど。
どうしても後継問題があるから側妃を迎え入れることもあるらしい。まぁ今はそのことは置いといて。
「妻と離縁など考えたこともないのに、シルヴィア王女に夫にと請われた途端喜びが駆け巡った。あれは自分であって自分でなかったのは間違いない。どうして俺はあんなことをっ……!」
「うん、そうだと思う。だってあのお姫様、魅了の魔法を使ってたんだから」
「魅了……?」
フェリクスとダグラスはピンときていないみたいだ。まぁこの世界じゃ攻撃魔法しかないと思ってたんだし、そんな魔法なんて考えたこともないだろう。
「俺の予想なんだけどな。魔法ってイメージだって言っただろ? たぶんだけど、シルヴィア様って自分で魅了の魔法をかけてる自覚がないんじゃないのかな?」
魅了の魔法というものが存在しているなんてこの世界じゃ知られていないこと。だけどイメージが強ければ魔法を発動させることはできる。それは俺が今まで作った魔法が証明している。
シルヴィア様の考えは俺にはわからないけど、おそらく「私を好きになって」という強い思いがあって、それが魅了魔法になったんじゃないかと思う。
しかもシルヴィア様は魔力量が結構多いんだそうだ。だったら俺の予想はあながち外れではない気がする。
「だからか。私もあの王女と会っている時、ずっと不快感が付きまとっていたんだ。その理由がやっとわかった」
「あれ? じゃあフェリクスは魅了の魔法にかかっていなかったの?」
「かかるわけがない。私のソウタへの気持ちは、そんなものに負けるわけがないからね」
おぅふ……熱烈な告白をされて心臓がどっきーんと跳ねてしまった……そういうことサラッというの本当にやめてほしい。心臓によくない。
「ま、まぁ俺も気持ち悪さを感じてたし魅了の魔法にかかりはしなかったんだけどな。たぶん、シルヴィア様より魔力量が多いと効きが悪いんだろう」
ダグラスが魅了にかかったことを考えると、ダグラス以上の魔力量だということになる。それは相当すごいことだぞ。だからこの部屋へ案内した団員も侍女さんも護衛騎士も、みんな魅了にかかってしまったんだろう。
「陛下やスウェインがあの王女と積極的に婚姻を勧めてきた理由がわかった。あの二人も王女の魅了にかかっていたということなのだな。おかしいとは思っていたがそういうことだったのか」
「とりあえずこの城全体に状態異常無効の魔法をかけておいたからもう大丈夫だと思う」
「あの強い魔法反応はソウタの魔法だったんだね。ありがとう、ソウタ。あなたには助けてもらってばかりだ」
フェリクスは嬉しそうに笑って、また俺の指先にキスを落とす。そのせいで俺の心臓はまたドキッと跳ね上がった。それ、何回されても慣れる気配がない……
「俺もまだまだ修行が足りないということか……ソウタ殿、俺からもお礼を。妻を失わずに済みました。ありがとうございます」
ダグラスは騎士の礼を取り深々と頭を下げてくれた。ダグラスは愛妻家としても有名らしいから、ダグラスが一番ほっとしていることだろう。
「それよりもあの王女の魅了魔法をどうにかしなければ……」
「あ、一応俺が魅了魔法が使えないよう封印しておいたから大丈夫だと思う。だけど今後はこういった精神的な洗脳も想定して対策を練っておいた方がいいと思うぞ」
あの時はシルヴィア様の魅了魔法が邪魔だったから一時的に使えないようにしようと思って封印したけど、このままというわけにもいかないよな。とフェリクスに聞くと「あれはそのままにしておいてくれ。そっちの方が平和だ」と苦虫を嚙み潰したような顔をしてそう吐き捨てた。
相当お怒りのご様子だ……
「だが洗脳魔法の対策と言えどもどうすればいいのか……」
「うーん……たとえば、身につけるアクセサリーとかに状態異常無効の魔法を付与するとか?」
「魔法を、付与?」
あ、そうか。魔法は発動させるもので付与するっていう考えがないのか。俺だって、これも漫画やアニメで得た知識だしな。
とりあえずダグラスが身につけているピアスを拝借する。そこに状態異常無効の魔法を付与してみたところ、ちゃんとできた。それをダグラスにまた着けてもらう。
フェリクスも同様にピアスに魔法を付与して身につけてもらった。
「じゃあさ。ちょっと実験してみようよ。今から俺があのお姫様の封印を解くから、二人でお姫様のところに行ってきて。それで魅了がかからなければ成功ってことで」
ダグラスは魅了にかかってしまった経験があるから、魅了にかからなければこの付与魔法は成功だ。フェリクスは魔法を付与したピアスがなくても大丈夫なはずだから、もし実験が失敗してダグラスがおかしくなったらなんとかして俺のところに連れてきてもらおう。
俺はお姫様にかけた魅了封印の魔法を解く。さて、実験結果はどうなるだろうか。
シルヴィア様の姿がなくなるとフェリクスは俺を強いくらいに抱きしめた。相当心配させてしまったのかと申し訳ない。だけどなんでフェリクスは俺の部屋に来るなり無事かどうかを確かめたんだろうか。
「王宮全体で強い魔法反応を感じたんだ。しかも発生源はソウタの部屋の辺り。まさかソウタが誰かに襲われたんじゃないかと心配で……」
なるほど。そうしたらシルヴィア様がいて、なんでこの人がここにいるのかと疑問に思ったわけだ。
フェリクスは俺からそっと体を離すとダグラスを強く睨みつける。
「ダグラス、お前が付いていながらあの王女を招き入れることになったのはどういうことだ?」
「返す言葉もございません。私の不徳の致すところです。厳罰はいかようにも――」
「待て待て待て待て! ダグラスは悪くないから! あのお姫様を部屋に入れたのは俺だから!」
むしろダグラスはシルヴィア様を部屋に入れることに反対していたんだ。それを大丈夫だからって俺が許可したんだから、ダグラスにお咎めがあるのはおかしな話だ。
なのに二人ともダグラスが悪いと納得していて、ダグラス本人なんて罰を受けることも当然だと思ってる。そんなの俺が許さんからな!
「だがソウタ。私が側にいないからこそダグラスを付けたんだ。それなのにソウタを危険な目に遭わせたことは許せることではない」
「だーかーら! 俺の話を聞けって!」
まずどうしてあのお姫様がこの部屋までやって来たのか。ダグラスの話だと、本来だったらあり得ないことだ。だけど騎士団の団員があっさりと王族居住区に通してしまった。
しかも俺の部屋にいる侍女さんですら、来訪を断るどころかシルヴィア様と会うことを勧めてきた。
おまけにシルヴィア様と会話をしたダグラスは、「妻と離縁することも厭わない」と愛妻家とは思えない発言をあっさりとする。極めつけは俺とフェリクス、ダグラスの三人を夫にしたいと宣ったシルヴィア様。それを侍女さんも護衛騎士も「素晴らしい!」と喜ぶ始末。
こんなこと、この世界じゃ普通のことなのかと聞いてみれば「あり得ない」とフェリクスもダグラスも首を横に振った。俺がいた世界同様、一夫一妻制が基本なんだそうだ。ただし王族の場合はその限りじゃないらしいけど。
どうしても後継問題があるから側妃を迎え入れることもあるらしい。まぁ今はそのことは置いといて。
「妻と離縁など考えたこともないのに、シルヴィア王女に夫にと請われた途端喜びが駆け巡った。あれは自分であって自分でなかったのは間違いない。どうして俺はあんなことをっ……!」
「うん、そうだと思う。だってあのお姫様、魅了の魔法を使ってたんだから」
「魅了……?」
フェリクスとダグラスはピンときていないみたいだ。まぁこの世界じゃ攻撃魔法しかないと思ってたんだし、そんな魔法なんて考えたこともないだろう。
「俺の予想なんだけどな。魔法ってイメージだって言っただろ? たぶんだけど、シルヴィア様って自分で魅了の魔法をかけてる自覚がないんじゃないのかな?」
魅了の魔法というものが存在しているなんてこの世界じゃ知られていないこと。だけどイメージが強ければ魔法を発動させることはできる。それは俺が今まで作った魔法が証明している。
シルヴィア様の考えは俺にはわからないけど、おそらく「私を好きになって」という強い思いがあって、それが魅了魔法になったんじゃないかと思う。
しかもシルヴィア様は魔力量が結構多いんだそうだ。だったら俺の予想はあながち外れではない気がする。
「だからか。私もあの王女と会っている時、ずっと不快感が付きまとっていたんだ。その理由がやっとわかった」
「あれ? じゃあフェリクスは魅了の魔法にかかっていなかったの?」
「かかるわけがない。私のソウタへの気持ちは、そんなものに負けるわけがないからね」
おぅふ……熱烈な告白をされて心臓がどっきーんと跳ねてしまった……そういうことサラッというの本当にやめてほしい。心臓によくない。
「ま、まぁ俺も気持ち悪さを感じてたし魅了の魔法にかかりはしなかったんだけどな。たぶん、シルヴィア様より魔力量が多いと効きが悪いんだろう」
ダグラスが魅了にかかったことを考えると、ダグラス以上の魔力量だということになる。それは相当すごいことだぞ。だからこの部屋へ案内した団員も侍女さんも護衛騎士も、みんな魅了にかかってしまったんだろう。
「陛下やスウェインがあの王女と積極的に婚姻を勧めてきた理由がわかった。あの二人も王女の魅了にかかっていたということなのだな。おかしいとは思っていたがそういうことだったのか」
「とりあえずこの城全体に状態異常無効の魔法をかけておいたからもう大丈夫だと思う」
「あの強い魔法反応はソウタの魔法だったんだね。ありがとう、ソウタ。あなたには助けてもらってばかりだ」
フェリクスは嬉しそうに笑って、また俺の指先にキスを落とす。そのせいで俺の心臓はまたドキッと跳ね上がった。それ、何回されても慣れる気配がない……
「俺もまだまだ修行が足りないということか……ソウタ殿、俺からもお礼を。妻を失わずに済みました。ありがとうございます」
ダグラスは騎士の礼を取り深々と頭を下げてくれた。ダグラスは愛妻家としても有名らしいから、ダグラスが一番ほっとしていることだろう。
「それよりもあの王女の魅了魔法をどうにかしなければ……」
「あ、一応俺が魅了魔法が使えないよう封印しておいたから大丈夫だと思う。だけど今後はこういった精神的な洗脳も想定して対策を練っておいた方がいいと思うぞ」
あの時はシルヴィア様の魅了魔法が邪魔だったから一時的に使えないようにしようと思って封印したけど、このままというわけにもいかないよな。とフェリクスに聞くと「あれはそのままにしておいてくれ。そっちの方が平和だ」と苦虫を嚙み潰したような顔をしてそう吐き捨てた。
相当お怒りのご様子だ……
「だが洗脳魔法の対策と言えどもどうすればいいのか……」
「うーん……たとえば、身につけるアクセサリーとかに状態異常無効の魔法を付与するとか?」
「魔法を、付与?」
あ、そうか。魔法は発動させるもので付与するっていう考えがないのか。俺だって、これも漫画やアニメで得た知識だしな。
とりあえずダグラスが身につけているピアスを拝借する。そこに状態異常無効の魔法を付与してみたところ、ちゃんとできた。それをダグラスにまた着けてもらう。
フェリクスも同様にピアスに魔法を付与して身につけてもらった。
「じゃあさ。ちょっと実験してみようよ。今から俺があのお姫様の封印を解くから、二人でお姫様のところに行ってきて。それで魅了がかからなければ成功ってことで」
ダグラスは魅了にかかってしまった経験があるから、魅了にかからなければこの付与魔法は成功だ。フェリクスは魔法を付与したピアスがなくても大丈夫なはずだから、もし実験が失敗してダグラスがおかしくなったらなんとかして俺のところに連れてきてもらおう。
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