【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶

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22.好きになった責任を取れ!

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『ソウタ様! ソウタ様! 聞こえますか!?』
「その声はスウェインか!?」
『ああ、ソウタ様! よかった、繋がって! 助けてください! どうか、どうかこの国を、世界を救ってください!』
「……は? おい、一体そっちで何があった!?」

 通信の魔道具の宝石が点滅すると、切羽詰まったスウェインの声がした。しかも助けてくれってどういうことだ!?

『どうやらまた魔王が復活したようなんです。それも以前とは比べ物にならないほど強いらしく、魔物の増加が尋常じゃなくてっ……』
「魔王が、復活した……?」

 なんで? あの時、俺は魔王を消し炭にしたんだぞ。そのあと調べても魔王の強い反応はどこにもなかった。
 あれから魔物の増加は落ち着いて、あちこちの魔物による被害はなくなったはずだ。

『なぜかはわからないんです。それに魔物はなぜかここ、アーマンド王国に集中していて、兄上やダグラス騎士団長、シャノン殿が主体となって討伐をしていますが、もういつ突破されてもおかしくなくてっ……』
「なっ……!」
 
 魔王の討伐メンバーが、フェリクスがずっと討伐していたのか! だからずっとこっちに帰ってこれなかったんだ。
 いつからだ? そう言えば、フェリクスが向こうに帰った時あっちの世界と通信していたよな。相手は誰かわからなかったが、フェリクスはなんて言っていた?

『――それから? 各地の現在の状況は?』

 ……そうだ。フェリクスはこう言っていた。この時には既に魔王が復活して魔物の増加が激しくて、各地で被害が出ていたんだ。
 だからあいつは向こうに帰ってなんとかしようと……

『我々でなんとか凌いでいたのですが、魔物の増加が早くてもうっ……ソウタ様! またソウタ様にお願いするのは筋違いだというのはわかっています! ですがこの国を、兄上を! 助けてください! 『賢者様』!」
「あ゛ー!! くっそ! あいつ、会ったら絶対しばいてやる! スウェイン! 今すぐ俺を召喚しろ!」
『賢者様! ありがとうございます! すぐに!』

 スウェインとの通信が切れた直後、俺の足元に久しぶりの魔法陣が広がった。
 早く早く早くっ……! 俺を早く向こうへ連れて行け!
 ぐるぐると回る魔法陣は焦る俺の気持ちに応えるように、一際強い光を放つと俺を向こうの世界へと連れて行った。

「ソウタ様!」
「スウェイン! 状況はどうなってる!?」

 召喚されるなり、ここから城にある俺の部屋へと駆け足で向かう。その後ろをスウェインが付いて来るが、こいつの姿はボロボロだった。
 どうやらスウェインも魔物討伐に参加していたらしく、こっちへと戻った時に俺へ通信を入れたらしい。

 現在、前線の状況は芳しくなく、魔王討伐メンバーだけじゃなく宮廷魔導士たち、討伐士たちが多く魔物討伐に参戦している。他国からも応援が来ているが、多勢に無勢といったところだそうだ。
 この世界の魔法は攻撃魔法しかなく、今はかなり変わったとはいえそれはこのアーマンド王国だけ。他の国は、まだ以前の魔法しか使える者がいない。

 他国から応援が来ても、戦力の増強は少しだけ。魔王討伐メンバーの三人が主に魔物の討伐を行っているそうだ。
 だがみんなだって普通の人間だ。ずっと戦っていれば疲労も蓄積するし、集中力だって続かない。三人の攻撃も段々と弱くなっており、魔物に押し返されそうになっているとのこと。
 それはそうだろう。あれから約一か月だ。こんなに長い間、ここまで凌げていただけでも相当だぞ。

 なんで俺に何も言わなかったんだ。なんで俺を頼らなかったんだっ……!

「兄上は『賢者様』に頼ることを良しとしませんでした。この世界の問題はこの世界で解決すべきだと。僕もそう思っていたのですが、あのままでは兄上もこの国もこの世界も終わってしまいそうでっ……!」
「いや、よく言ってくれた。こんな状況になっても俺に一言も言わないなんて、俺が喜ぶとでも思ったのかよ。俺だってこの国が、この世界が好きなんだ。絶対、守ってやるからな」
「ソウタ様っ……! ありがとう、ございますっ……!」

 自室に到着するなり動きやすい服に着替える。この服も魔王討伐に行った時に着ていた服だ。またこれに袖を通すことになるなんてな。
 スウェインにみんながどこで戦っているのか地図を見せてもらった。目的地は北の方だった。どこまで転移で飛べばいいかわからないが、北へ向かって上空へ転移し続ければ魔物の大軍も見えてくるだろう。

「よし! じゃあ行ってくるからな!」
「はい! ご武運を!」

 スウェインに見送られて、俺はひとり転移した。
 北へ北へと転移を繰り返す。外は夜なだけあって真っ暗だ。空には綺麗な星が瞬いている。まるで魔王が復活したなんて思えないほど綺麗な夜空だ。

 その中をとにかく転移を繰り返して飛び続けると、段々と明るく光る場所が見えてきた。あれは攻撃魔法による爆発の光だろう。

「あそこか!」

 場所がわかると一気に転移して足元に結界を作って足場を作る。すると目の前にはうようよと固まり動いている魔物の大軍が広がっていた。

「マジかよ……とんでもない数じゃないか!」

 きっと今回の魔王も自分の体から魔物を生み出し続けているんだろう。以前の魔王討伐の時だって魔物の数が多かったのに、今回はその時と比較にならない数だ。一体なんでこんなことにっ……!

 とにかくフェリクスたちはどうなっているのかと心配になり、魔力を薄く張り巡らせて探知を行ってみた。するとすぐに三人の強い反応を見つけ転移する。

「フェリクスっ……!?」

 フェリクスは剣に魔法を巻き付かせ、魔物の大軍へと単騎で突っ込んでいた。剣の一振りで魔物が次々と倒れていくが、後続の魔物はそんなフェリクスに向かって襲いかかっている。
 魔法も上手く使って囲まれないようにしているが、分が悪いと思ったのか一度退避した。その後を続けるようにダグラスが突っ込んでいく。
 シャノンの姿もあり、相変らずの素早さで魔物を討伐していた。

 だが三人の動きは明らかに悪い。以前よりも体のキレが悪いのだ。それはそうだ。こんな長期間ずっと戦っていたんだから。

 フェリクスたち三人が魔物から距離を取ったそのタイミングで、俺は広範囲に結界を張った。これでしばらくは魔物は襲って来れない。時間稼ぎはできた。

 フェリクスたちは急に結界が張られたことに驚き、周りをきょろきょろと見回している。そこへ俺は転移してみんなの前に姿を現した。

「ソウタさん!?」
「ソウタ殿!?」
「ソウタっ……なぜ、ここに……?」

 三人共俺の姿を見て驚いている。だがただひとり、驚きながらも悲しそうにしている奴がいる。
 俺はずかずかとそいつの前に近付いた。そしてそのままそいつの胸倉を両手で掴んで思いっきり引き寄せる。

「馬鹿野郎! なんで俺に何も言わなかった!」
「っ……! だって、この世界のことは、この世界でなんとかしないといけないと、思ったからっ……」

 こいつはまだそんなことを言ってやがるのか。そりゃ召喚された時、俺はそう言った。だっていきなり無関係な世界に召喚されて、危険な魔王を倒してくれなんて言われたからな。あの時は腹が立って、そう言ったことは間違いない。
 だけど今はもう俺だって無関係じゃないんだ。
 この世界には知り合いもいっぱいできて、この世界で過ごす日々が好きだった。

 シャノンやダグラス、モーリスくんだけじゃない。城で会った騎士団の団員たち、宮廷魔導士たちに使用人の人たちも。国王様や王妃様、スウェインにお姫様のヘルミーナ。
 王都の街の人たちも、各地にいる人たちも。俺はみんなまとめて大好きだ。

 その人たちが苦しい状況になっているのに、自分たちでは限界がきているのに、俺に何もさせないなんて、そんなの許せるわけがないだろう!

「あのなぁ! 俺はこの世界が好きなんだよ! 無関係じゃないんだよ! 誰も死なせたくないんだよ! わかれよ!」
「ソウタっ……」

 フェリクスもダグラスもシャノンもボロボロの姿だった。あちこち怪我をしているのか血だらけで、服なんて汚れが目立って破れている箇所もたくさんある。
 いつもは艶のある緋色の髪もぱさぱさでくすんで、顔なんて汚れて真っ黒だ。
 こいつがここまで踏ん張った証。俺に頼らずに頑張った証だ。

「このままお前が死んだらどうするんだ! 残された俺はどうしたらいい!?」
「でもっ……私はもうっ……ソウタを巻き込みたくなかったんだっ……」
「巻き込めよ! 俺はお前に死なれたら困るんだよ! やっとお前の気持ちに応えられると思ったのに、伝えられないまま死なれたら困るんだよ! 俺をひとりにするんじゃねぇ! お前を好きになった責任を取りやがれ! 馬鹿野郎が!」

 俺はそのままぐっとさらに引き寄せると無理やりこいつの唇にキスをした。色気も何もない、ただ唇を引っ付けただけのキス。だけどそれでいい。こいつに色っぽいキスはお預けだ。

「ソウタ……?」
「何?」
「え……私に、キス、した?」
「したけど? それが?」

 こいつ、何をされたのかわかっているはずなのに、信じられなくて呆けてやがる。
 さっきまで悲壮感マシマシだったくせに、今じゃぽかんと間抜け面だ。可愛いなちくしょう。

「……ねぇ、さっき私のことが好きって言われたような気がしたんだけど、気のせい?」
「気のせいじゃねぇよ。好きだって言った」
「ソウタっ……ソウタっ!」
「ぐえっ! くるしっ……!」

 感激したフェリクスに、体の中身が飛び出そうなくらい力いっぱい抱きしめられた。
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