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第12話:王都への旅路
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出発の日は、すぐにやってきた。
朝もやが町を覆う中、ライフ・サンクチュアリのメンバーたちは馬車に荷物を積み込んでいた。王都までは馬車で三日の道のり。その間、ギルドは一時休業となる。
「ミラ、薬草は持ったか?」
「はい! それと、包帯と応急キットも!」
「リア、矢は?」
「十分あります。予備の弦も持ってきました」
準備は万端だった。町の人々も、見送りに集まってきている。
「アシュさん、頑張ってくださいね!」
「王都で名前を轟かせてきてください!」
「ありがとうございます。必ず良い結果を持ち帰ります」
アシュは町の人々に頭を下げた。この数ヶ月で、エルムヘイヴンは自分たちにとって第二の故郷になっていた。
「さあ、出発するぞ」
トーマが御者台に座り、手綱を握った。馬車がゆっくりと動き出す。
町の人々が手を振る中、ライフ・サンクチュアリの馬車は王都ヴァルディアへと向かった。
◆
馬車の中は、思ったよりも快適だった。
ギルドの収入で、それなりに良い馬車を借りることができたのだ。クッションの効いた座席に、小さな窓からは外の景色が見える。
「アシュさん、王都ってどんなところなんですか?」
ミラが目を輝かせながら尋ねた。彼女は生まれてから一度も王都に行ったことがないのだという。
「大きな町だよ。人口は十万人以上。石造りの建物が立ち並んで、城壁に囲まれている」
「すごい......!」
「魔法学術院もあるし、大きな市場もある。冒険者ギルドの本部もそこだ」
リアが補足する。彼女は一度だけ、幼い頃に王都を訪れたことがあるらしい。
「楽しみですね!」
ミラの無邪気な笑顔に、アシュも少し気が楽になった。
(そうだ、これは楽しい旅なんだ)
(不安ばかり抱えていても仕方ない)
◆
だが、その考えは甘かった。
旅の二日目、森の中を通過している時だった。
「......待て」
オズワルドが突然、馬車を止めさせた。
「どうした?」
「......何かいる」
老戦士の勘は、決して外れない。アシュも警戒して、外の気配を探った。
すると——。
ザザザザ......
茂みが揺れ、複数の影が飛び出してきた。
「山賊か!」
トーマが剣を抜く。
「おいおい、こんな立派な馬車に乗ってるってことは、金持ちだろ?」
「大人しく金を出しな!」
山賊たちは、粗末な武器を構えている。数は七人。だが、動きを見る限り、それほど強くはなさそうだ。
「......悪いが、金は渡せない」
トーマが前に出た。
「あ? やるってのか?」
「やらせてもらう」
瞬間、トーマの剣が閃いた。
「うわっ!?」
山賊の一人が武器を弾き飛ばされる。オズワルドも動いた。老体とは思えない速さで、二人の山賊を瞬時に制圧する。
「くそっ! こいつら、強い!」
「逃げろ!」
残りの山賊たちは、慌てて森の奥へと逃げていった。
「......ふう、なんとかなったな」
トーマが剣を鞘に収める。
だが、アシュは何かに気づいた。
「......待て」
「どうした?」
「あいつら、わざと負けたように見えなかったか?」
「え?」
トーマとオズワルドは顔を見合わせた。
「確かに......妙に動きが雑だった」
「囮か?」
「かもしれない。警戒を強めよう」
アシュの予感は、当たっていた。
◆
その夜、野営地。
焚き火を囲んで、メンバーたちは夕食を取っていた。ミラが作った野菜のスープは、意外と美味しい。
「ミラ、料理上手いな」
「えへへ、ありがとうございます!」
和やかな雰囲気だったが、アシュは警戒を解いていなかった。昼間の山賊たちの動きが、どうしても引っかかる。
(何か、裏があるはずだ......)
そして、その予感は的中した。
深夜、見張りをしていたオズワルドが小さく口笛を吹いた。それは、敵の接近を知らせる合図だ。
アシュは即座に目を覚まし、剣を手に取った。トーマとリアも、すぐに戦闘態勢に入る。
「......来たか」
闇の中から、複数の人影が現れた。
だが、それは山賊ではなかった。
「......ヴォイド」
黒いローブを纏った男たちが、静かに焚き火の周りを囲んでいた。その数、十人以上。
「初めまして、アシュ=ルーンフォード」
中央の男が、フードを外した。三十代ほどの男で、鋭い目つきをしている。
「私の名はヴィクター。ヴォイドの幹部だ」
「......何の用だ」
「用? 決まっているだろう」
ヴィクターは、冷たく笑った。
「お前のライフ・サンクチュアリ———その力を、我々に譲ってもらおう」
「断る」
「即答か。だが、選択肢はないぞ」
ヴィクターが指を鳴らすと、周囲のローブの男たちが武器を構えた。
「大人しく来れば、仲間は傷つけない」
「......嘘だろうな」
「賢いな」
ヴィクターは嘲笑した。
「では、力ずくで連れて行かせてもらう」
瞬間、戦闘が始まった。
◆
トーマとオズワルドが前線で敵を食い止め、リアが後方から矢で援護する。アシュは【ライフ・サンクチュアリ】を展開し、味方の傷を即座に治療していく。
「くそっ! 数が多い!」
トーマが叫ぶ。ヴォイドの構成員たちは、思ったよりも強い。統率も取れている。
「リア、右から来るぞ!」
「分かってます!」
リアの矢が、敵の肩を射抜く。だが、すぐに別の敵が迫ってくる。
(このままじゃ、押し切られる......)
アシュは決断した。
「みんな、俺の周りに集まれ!」
「アシュ!?」
「いいから!」
トーマたちは、アシュの元に集まった。
「ライフ・サンクチュアリ——全力展開!」
アシュの魔力が爆発的に膨れ上がる。温かい光が、周囲一帯を包み込んだ。
その光は、単なる回復魔法ではなかった。
光に触れたヴォイドの構成員たちが、次々と動きを止めていく。
「ぐっ......なんだ、この魔法......!」
「体が......動かない......!」
「これが、真のライフ・サンクチュアリか......!」
ヴィクターだけは、何とか立っていた。だが、その顔には明らかな驚愕の色が浮かんでいる。
「......まさか、ここまでとは」
「二度と近づくな」
アシュは、冷たくそう告げた。
ヴィクターは、忌々しそうにアシュを睨んだ。
「......覚えていろ。次は、もっと強力な手で来る」
そう言い残し、ヴィクターたちは闇の中に消えていった。
◆
戦闘が終わり、静寂が戻った。
「......大丈夫か、みんな」
「ああ、なんとか」
トーマが肩で息をしている。オズワルドも、珍しく疲労の色が見える。
「アシュさん......今の魔法......」
ミラが、不安そうにアシュを見つめた。
「......すまん。少し、力を使いすぎた」
アシュ自身も、魔力の消耗が激しい。だが、それよりも——。
(俺のライフ・サンクチュアリ、あんな使い方もできるのか......)
敵の動きを止める。それは、回復魔法の範疇を完全に超えている。
(まるで、生命そのものを支配したみたいだ......)
その力の大きさに、アシュは改めて恐怖を覚えた。
朝もやが町を覆う中、ライフ・サンクチュアリのメンバーたちは馬車に荷物を積み込んでいた。王都までは馬車で三日の道のり。その間、ギルドは一時休業となる。
「ミラ、薬草は持ったか?」
「はい! それと、包帯と応急キットも!」
「リア、矢は?」
「十分あります。予備の弦も持ってきました」
準備は万端だった。町の人々も、見送りに集まってきている。
「アシュさん、頑張ってくださいね!」
「王都で名前を轟かせてきてください!」
「ありがとうございます。必ず良い結果を持ち帰ります」
アシュは町の人々に頭を下げた。この数ヶ月で、エルムヘイヴンは自分たちにとって第二の故郷になっていた。
「さあ、出発するぞ」
トーマが御者台に座り、手綱を握った。馬車がゆっくりと動き出す。
町の人々が手を振る中、ライフ・サンクチュアリの馬車は王都ヴァルディアへと向かった。
◆
馬車の中は、思ったよりも快適だった。
ギルドの収入で、それなりに良い馬車を借りることができたのだ。クッションの効いた座席に、小さな窓からは外の景色が見える。
「アシュさん、王都ってどんなところなんですか?」
ミラが目を輝かせながら尋ねた。彼女は生まれてから一度も王都に行ったことがないのだという。
「大きな町だよ。人口は十万人以上。石造りの建物が立ち並んで、城壁に囲まれている」
「すごい......!」
「魔法学術院もあるし、大きな市場もある。冒険者ギルドの本部もそこだ」
リアが補足する。彼女は一度だけ、幼い頃に王都を訪れたことがあるらしい。
「楽しみですね!」
ミラの無邪気な笑顔に、アシュも少し気が楽になった。
(そうだ、これは楽しい旅なんだ)
(不安ばかり抱えていても仕方ない)
◆
だが、その考えは甘かった。
旅の二日目、森の中を通過している時だった。
「......待て」
オズワルドが突然、馬車を止めさせた。
「どうした?」
「......何かいる」
老戦士の勘は、決して外れない。アシュも警戒して、外の気配を探った。
すると——。
ザザザザ......
茂みが揺れ、複数の影が飛び出してきた。
「山賊か!」
トーマが剣を抜く。
「おいおい、こんな立派な馬車に乗ってるってことは、金持ちだろ?」
「大人しく金を出しな!」
山賊たちは、粗末な武器を構えている。数は七人。だが、動きを見る限り、それほど強くはなさそうだ。
「......悪いが、金は渡せない」
トーマが前に出た。
「あ? やるってのか?」
「やらせてもらう」
瞬間、トーマの剣が閃いた。
「うわっ!?」
山賊の一人が武器を弾き飛ばされる。オズワルドも動いた。老体とは思えない速さで、二人の山賊を瞬時に制圧する。
「くそっ! こいつら、強い!」
「逃げろ!」
残りの山賊たちは、慌てて森の奥へと逃げていった。
「......ふう、なんとかなったな」
トーマが剣を鞘に収める。
だが、アシュは何かに気づいた。
「......待て」
「どうした?」
「あいつら、わざと負けたように見えなかったか?」
「え?」
トーマとオズワルドは顔を見合わせた。
「確かに......妙に動きが雑だった」
「囮か?」
「かもしれない。警戒を強めよう」
アシュの予感は、当たっていた。
◆
その夜、野営地。
焚き火を囲んで、メンバーたちは夕食を取っていた。ミラが作った野菜のスープは、意外と美味しい。
「ミラ、料理上手いな」
「えへへ、ありがとうございます!」
和やかな雰囲気だったが、アシュは警戒を解いていなかった。昼間の山賊たちの動きが、どうしても引っかかる。
(何か、裏があるはずだ......)
そして、その予感は的中した。
深夜、見張りをしていたオズワルドが小さく口笛を吹いた。それは、敵の接近を知らせる合図だ。
アシュは即座に目を覚まし、剣を手に取った。トーマとリアも、すぐに戦闘態勢に入る。
「......来たか」
闇の中から、複数の人影が現れた。
だが、それは山賊ではなかった。
「......ヴォイド」
黒いローブを纏った男たちが、静かに焚き火の周りを囲んでいた。その数、十人以上。
「初めまして、アシュ=ルーンフォード」
中央の男が、フードを外した。三十代ほどの男で、鋭い目つきをしている。
「私の名はヴィクター。ヴォイドの幹部だ」
「......何の用だ」
「用? 決まっているだろう」
ヴィクターは、冷たく笑った。
「お前のライフ・サンクチュアリ———その力を、我々に譲ってもらおう」
「断る」
「即答か。だが、選択肢はないぞ」
ヴィクターが指を鳴らすと、周囲のローブの男たちが武器を構えた。
「大人しく来れば、仲間は傷つけない」
「......嘘だろうな」
「賢いな」
ヴィクターは嘲笑した。
「では、力ずくで連れて行かせてもらう」
瞬間、戦闘が始まった。
◆
トーマとオズワルドが前線で敵を食い止め、リアが後方から矢で援護する。アシュは【ライフ・サンクチュアリ】を展開し、味方の傷を即座に治療していく。
「くそっ! 数が多い!」
トーマが叫ぶ。ヴォイドの構成員たちは、思ったよりも強い。統率も取れている。
「リア、右から来るぞ!」
「分かってます!」
リアの矢が、敵の肩を射抜く。だが、すぐに別の敵が迫ってくる。
(このままじゃ、押し切られる......)
アシュは決断した。
「みんな、俺の周りに集まれ!」
「アシュ!?」
「いいから!」
トーマたちは、アシュの元に集まった。
「ライフ・サンクチュアリ——全力展開!」
アシュの魔力が爆発的に膨れ上がる。温かい光が、周囲一帯を包み込んだ。
その光は、単なる回復魔法ではなかった。
光に触れたヴォイドの構成員たちが、次々と動きを止めていく。
「ぐっ......なんだ、この魔法......!」
「体が......動かない......!」
「これが、真のライフ・サンクチュアリか......!」
ヴィクターだけは、何とか立っていた。だが、その顔には明らかな驚愕の色が浮かんでいる。
「......まさか、ここまでとは」
「二度と近づくな」
アシュは、冷たくそう告げた。
ヴィクターは、忌々しそうにアシュを睨んだ。
「......覚えていろ。次は、もっと強力な手で来る」
そう言い残し、ヴィクターたちは闇の中に消えていった。
◆
戦闘が終わり、静寂が戻った。
「......大丈夫か、みんな」
「ああ、なんとか」
トーマが肩で息をしている。オズワルドも、珍しく疲労の色が見える。
「アシュさん......今の魔法......」
ミラが、不安そうにアシュを見つめた。
「......すまん。少し、力を使いすぎた」
アシュ自身も、魔力の消耗が激しい。だが、それよりも——。
(俺のライフ・サンクチュアリ、あんな使い方もできるのか......)
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