ライフ・サンクチュアリ ~追放された回復術師の第二の人生~

都一

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第13話:王都ヴァルディア到着

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三日目の午後、ライフ・サンクチュアリの馬車は、ついに王都ヴァルディアの城門前に到着した。

高さ二十メートルはある石造りの城壁が、町全体を囲んでいる。城門には王国の旗が掲げられ、衛兵たちが厳重に出入りを管理していた。交易商人や旅人、冒険者たちの列が、城門の前で長く伸びている。

「すごい......!」

ミラが、馬車の窓から身を乗り出して歓声を上げた。

「これが王都......!」

リアも、懐かしそうに町を見つめている。

「久しぶりだな。子供の頃以来だ」

「俺は五年ぶりか」

トーマが手綱を操りながら呟いた。

「オズワルド、お前は?」

「......十年は来ていないな」

老戦士は、どこか複雑な表情を浮かべていた。

馬車は列に並び、ゆっくりと城門へと近づいていく。やがて、順番が回ってきた。

「次の方、どうぞ!」

衛兵が手招きする。トーマが馬車を進め、衛兵の前で止まった。

「ギルド登録証を提示してください」

「はい」

アシュが、銀級ギルドの登録証を差し出した。衛兵はそれを確認し、目を見開いた。

「これは......ライフ・サンクチュアリ!?」

「ああ」

「噂のギルドか! 死者を蘇らせる回復魔法使いがいるって......!」

衛兵の声に、周囲の人々がざわついた。他の列に並んでいた冒険者たちも、興味津々でこちらを見ている。

「本当に死者を蘇らせるのか!?」

「すげえな......!」

「会ってみたかったんだ!」

あっという間に、人だかりができてしまった。

「あ、あの......通してもらえますか?」

アシュが困惑していると、衛兵は慌てて人々を制した。

「皆さん、通行の妨げになります! 下がってください!」

何とか人々を散らし、衛兵は恭しくお辞儀をした。

「失礼しました。どうぞ、お通りください」

「ありがとうございます」

馬車は城門をくぐり、王都の中へと入っていった。



城門を抜けると、そこには石畳の大通りが広がっていた。

両脇には三階建て、四階建ての建物が立ち並び、一階部分は店舗になっている。武器屋、防具屋、雑貨屋、飲食店——ありとあらゆる店が軒を連ねていた。

通りには人々が溢れ、商人の呼び込みの声が響き渡る。馬車や荷車が行き交い、路地からは子供たちの笑い声が聞こえてくる。

「すごい活気だな」

トーマが感心したように呟いた。

「エルムヘイヴンとは比べ物にならない」

「人口が違いますからね」

リアが地図を広げた。

「ギルド交流大会の会場は......王都闘技場。中央広場の近くです」

「まずは宿を取ろう。大会は明日からだ」

アシュの提案に、全員が頷いた。



宿は、冒険者街にある『銀の盾亭』という中級宿屋に決めた。一泊銀貨五枚と、少々高めだが、清潔で設備も整っている。

「四部屋、お願いします」

「かしこまりました。お名前は?」

「ライフ・サンクチュアリです」

受付の女性が、顔を上げた。

「......もしかして、あの?」

「ああ、多分」

「まあ! 本物なんですね! 噂は聞いてましたよ!」

またしても注目を浴びてしまった。だが、女性は親切で、部屋の鍵を渡しながら言った。

「大会、頑張ってくださいね。応援してます!」

「ありがとうございます」



部屋に荷物を置いた後、アシュは一人で町を歩くことにした。

夕暮れ時の王都は、オレンジ色の光に包まれている。ランプに火が灯り始め、町はさらに幻想的な雰囲気を帯びていた。

(懐かしいな......)

アシュは、かつて【アジュールブレイド】の一員として、この町を何度も訪れた。あの頃は、自分が英雄の一人だと信じていた。

だが、今は違う。

(俺は、もう英雄じゃない)

(ただの、ギルドマスターだ)

そう思いながら歩いていると、ふと、見覚えのある建物が目に入った。

——アジュールブレイドの拠点。

かつて、自分が所属していたギルドの建物。立派な三階建てで、看板には青い剣のエンブレムが刻まれている。

(......まだ、あるのか)

アシュは、少しだけ複雑な気持ちになった。

あの時、自分を追放したゼクスたちは、今も元気にやっているのだろうか。

(......いや、考えるのはやめよう)

アシュは踵を返し、宿へと戻っていった。

だが、その背中を——。

建物の窓から、一人の女性が見つめていた。

白魔道士のリリア・ハートウィンドだ。

「......アシュさん」

彼女は、窓ガラスに手を当てた。

「あなた、王都に来てたんですね......」

その表情は、後悔と悲しみに満ちていた。
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