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第38話:三つの遺産
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神殿の地下広間で、三つの遺産が激しく共鳴し始めた。アシュが握る時の揺り籠から白い光が溢れ出し、懐に入れていた生命の聖域と死の境界も呼応するように輝きを増していく。
「これは...!」
アシュは驚いて遺産を見つめた。三つの光が絡み合い、一つの大きな光の球となって宙に浮かび上がった。
「アシュ、離れろ!」
オズワルドが叫んだが、既に遅かった。光の球が弾け、眩い閃光が地下広間を包み込んだ。トーマとオズワルドは目を覆い、アシュは光の中に飲み込まれた。
光が収まった時、アシュは床に倒れていた。三つの遺産は彼の周囲に浮かび、ゆっくりと回転している。
「アシュ!」
トーマが駆け寄り、彼を抱き起こした。アシュは目を開け、呆然とした表情で宙を見つめていた。
「大丈夫か? しっかりしろ!」
「ああ...見えた...」
アシュは掠れた声で言った。
「何が見えたんだ?」
「真実が...三つの遺産の、真実が...」
アシュはゆっくりと立ち上がった。彼の目には、何か深い知識を得たような光が宿っている。
「三百年前、神官王は三つの遺産を作った。だが、それは力を封じるためだった」
「封じる...? 何を?」
オズワルドが聞いた。
「生と死の境界を超える力。時を操る力。それらは、あまりにも強大すぎた」
アシュは三つの遺産を見つめた。
「神官王は、その力を自ら三つに分け、世界各地に封印した。もし、三つが再び揃えば...」
「何が起きる?」
「完全なる生命の器が完成する。それは、死者を蘇らせ、時を巻き戻し、生命を自在に操る力だ」
トーマとオズワルドは息を呑んだ。
「そんな力が...」
「だが、代償も大きい」
アシュは右腕を見た。痣は顔の半分にまで広がり、左目の周囲まで達している。
「使用者の生命力を、全て吸い取る。神官王は、それを恐れた」
「だから、封印したのか」
「ああ。だが、今、三つは再び揃ってしまった」
アシュは深く息を吐いた。
「ヴォイドの目的は、この完全なる生命の器を手に入れることだ。そして、それを使って...」
「何をする気だ?」
「分からない。だが、良いことではない」
その時、神殿全体が揺れ始めた。天井から石が落ち、壁に亀裂が走る。
「まずい! 神殿が崩れ始めた!」
オズワルドが叫んだ。
「三つの遺産が揃ったことで、封印の魔法が解けたんだ! 急いで脱出しろ!」
三人は三つの遺産を回収し、階段を駆け上がった。背後では天井が崩落し、巨大な石が次々と落ちてくる。
地上のホールに出ると、そこも崩壊が始まっていた。柱が倒れ、床が割れている。
「外だ! 急げ!」
三人は全速力で神殿の外へ飛び出した。直後、神殿全体が轟音を立てて崩れ落ちた。砂煙が舞い上がり、三百年の歴史が瓦礫の山へと変わった。
「間に合った...」
トーマは息を切らしながら、崩れた神殿を見つめた。
「これで、もう誰も遺産には近づけないな」
「ああ」
アシュは三つの遺産を布で包み、背嚢に収めた。
「とにかく、エルムヘイヴンに戻ろう」
三人は森を抜け、荷馬車が待つ場所へ戻った。既に日は沈み、夜の帳が降りていた。
———
エルムヘイヴンに戻ったのは、翌日の昼過ぎだった。ミラとリアが出迎え、エリーゼも元気そうに手を振っていた。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
アシュは疲れた笑みを浮かべた。だが、ミラは彼の顔を見て驚愕した。
「アシュさん...その顔...!」
痣は顔の半分を覆い、左目の周囲まで達している。まるで、黒い仮面をつけているかのようだった。
「大丈夫だ。気にするな」
「気にしないわけないでしょう!」
ミラは涙を浮かべた。
「こんなに...こんなに広がって...!」
リアも震える声で言った。
「アシュさん、もう力を使わないでください。お願いします」
「分かってる」
アシュは優しく微笑んだ。
「でも、まだやることがある」
ギルドの執務室に全員が集まった。アシュは三つの遺産をテーブルに並べた。生命の聖域、死の境界、時の揺り籠。三つは静かに光を放ち、互いに共鳴している。
「これが、神官王の三つの遺産だ」
アシュが説明を始めた。
「これらが揃うことで、完全なる生命の器が完成する。それは、生と死と時を操る、究極の力だ」
「そんな力が...」
ミラは息を呑んだ。
「でも、それを使えば、アシュさんは...」
「死ぬ」
アシュは静かに言った。
「全ての生命力を吸い取られる。それが、代償だ」
室内が静まり返った。
「だから、俺はこれを使わない」
アシュは続けた。
「だが、ヴォイドは必ずこれを狙ってくる。俺たちは、これを守らなければならない」
「どうやって守る?」
トーマが聞いた。
「このままギルドに置いておけば、ヴォイドが襲ってくる。町の人々も危険に晒される」
「分かってる」
アシュは考え込んだ。
「だから、王都に協力を求める。レオナルドと王国騎士団に、遺産を守ってもらう」
「それは賢明だ」
オズワルドが頷いた。
「だが、本当に王国を信用できるのか? 院長は、遺産を研究したがっていた」
「リスクはある」
アシュは認めた。
「でも、他に選択肢がない。それに、レオナルドは信用できる」
その時、ギルドの扉が激しく叩かれた。ミラが急いで扉を開けると、息を切らした町の少年が立っていた。
「大変です! 町の外に、黒い集団が!」
「何だと!?」
全員が立ち上がった。
アシュは窓から外を見た。町の外れに、黒いローブを纏った集団が並んでいる。その数は、少なくとも三十人以上。
「ヴォイドだ...!」
「こんなに早く...!」
トーマが剣を抜いた。
「準備する時間もなかったのか」
「彼らは、遺産が揃ったことを知っている」
オズワルドが冷静に言った。
「恐らく、神殿の崩壊を見ていたんだ」
アシュは深く息を吸った。
「みんな、戦闘準備だ。町の人々を避難させろ」
「了解!」
全員が動き出した。ミラは町の人々に避難を呼びかけ始め、リアは弓の準備をした。トーマとオズワルドは武器を手に取り、アシュは三つの遺産を背嚢に収めた。
ギルドの外に出ると、黒い集団が既に町の入口に迫っていた。先頭に立つのは、傷だらけの顔をしたダミアンだった。
「アシュ・ルーンフォード! 遺産を渡せ!」
ダミアンが叫んだ。
「そうすれば、町は傷つけない!」
「断る!」
アシュは前に出た。
「遺産は、お前たちには渡さない!」
「ならば、力づくで奪うまでだ!」
ダミアンが手を上げると、黒ローブたちが一斉に魔法を放った。炎、氷、雷。様々な属性の魔法が町へ飛んでくる。
「させるか!」
アシュはライフ・サンクチュアリを展開した。巨大な白い障壁が町を覆い、魔法を全て弾き返す。
だが、その瞬間、アシュの身体に激痛が走った。
「ぐあっ...!」
彼は膝をついた。右腕の痣が脈打ち、熱を持っている。
「アシュ!」
ミラが駆け寄ろうとしたが、アシュは手を上げて制した。
「大丈夫だ...まだ、戦える...!」
彼は立ち上がり、再びライフ・サンクチュアリを展開した。だが、その光は以前より弱く、不安定だった。
「お前の力は、既に限界だ」
ダミアンが冷たく笑った。
「もう、長くは持たない。観念しろ」
「黙れ...!」
アシュは歯を食いしばった。
その時、町の外から別の声が響いた。
「ヴォイド! そこまでだ!」
全員が振り返った。街道の向こうから、銀色の鎧を纏った騎士団が現れた。その先頭には、レオナルド・ゴールドマンが馬に乗っていた。
「レオナルド!」
アシュが驚いて叫んだ。
「アシュ、間に合ったようだな」
レオナルドは馬から降り、剣を抜いた。
「我々アストラルクラウンが、お前を支援する」
彼の後ろには、二十人以上のギルドメンバーと、王国騎士団の兵士たちが控えていた。
「ちっ...邪魔が入ったか」
ダミアンは舌打ちした。
「退却だ! 今日のところは引く!」
黒ローブたちは煙幕を張り、素早く撤退していった。
煙が晴れた時、ヴォイドの姿はもう消えていた。
———
「レオナルド、助かった」
アシュは安堵の息を吐いた。
「礼には及ばない」
レオナルドは微笑んだ。
「お前からの連絡を受けて、急いで駆けつけた」
「連絡...?」
アシュは首を傾げた。
「俺は、連絡していないぞ」
「ミラ嬢からだ」
レオナルドはミラを見た。
「彼女が、お前の身を案じて連絡をくれた」
アシュはミラを見た。彼女は少し恥ずかしそうに頷いた。
「ごめんなさい、勝手に...でも、アシュさん一人では危険だと思って...」
「ミラ...」
アシュは胸が熱くなった。
「ありがとう」
レオナルドは真剣な表情で言った。
「アシュ、今後のことを話し合おう。ヴォイドは必ず戻ってくる。我々は、準備をしなければならない」
「ああ」
アシュは頷いた。
そして、ライフ・サンクチュアリと王国の戦いが、新たな局面を迎えようとしていた。
「これは...!」
アシュは驚いて遺産を見つめた。三つの光が絡み合い、一つの大きな光の球となって宙に浮かび上がった。
「アシュ、離れろ!」
オズワルドが叫んだが、既に遅かった。光の球が弾け、眩い閃光が地下広間を包み込んだ。トーマとオズワルドは目を覆い、アシュは光の中に飲み込まれた。
光が収まった時、アシュは床に倒れていた。三つの遺産は彼の周囲に浮かび、ゆっくりと回転している。
「アシュ!」
トーマが駆け寄り、彼を抱き起こした。アシュは目を開け、呆然とした表情で宙を見つめていた。
「大丈夫か? しっかりしろ!」
「ああ...見えた...」
アシュは掠れた声で言った。
「何が見えたんだ?」
「真実が...三つの遺産の、真実が...」
アシュはゆっくりと立ち上がった。彼の目には、何か深い知識を得たような光が宿っている。
「三百年前、神官王は三つの遺産を作った。だが、それは力を封じるためだった」
「封じる...? 何を?」
オズワルドが聞いた。
「生と死の境界を超える力。時を操る力。それらは、あまりにも強大すぎた」
アシュは三つの遺産を見つめた。
「神官王は、その力を自ら三つに分け、世界各地に封印した。もし、三つが再び揃えば...」
「何が起きる?」
「完全なる生命の器が完成する。それは、死者を蘇らせ、時を巻き戻し、生命を自在に操る力だ」
トーマとオズワルドは息を呑んだ。
「そんな力が...」
「だが、代償も大きい」
アシュは右腕を見た。痣は顔の半分にまで広がり、左目の周囲まで達している。
「使用者の生命力を、全て吸い取る。神官王は、それを恐れた」
「だから、封印したのか」
「ああ。だが、今、三つは再び揃ってしまった」
アシュは深く息を吐いた。
「ヴォイドの目的は、この完全なる生命の器を手に入れることだ。そして、それを使って...」
「何をする気だ?」
「分からない。だが、良いことではない」
その時、神殿全体が揺れ始めた。天井から石が落ち、壁に亀裂が走る。
「まずい! 神殿が崩れ始めた!」
オズワルドが叫んだ。
「三つの遺産が揃ったことで、封印の魔法が解けたんだ! 急いで脱出しろ!」
三人は三つの遺産を回収し、階段を駆け上がった。背後では天井が崩落し、巨大な石が次々と落ちてくる。
地上のホールに出ると、そこも崩壊が始まっていた。柱が倒れ、床が割れている。
「外だ! 急げ!」
三人は全速力で神殿の外へ飛び出した。直後、神殿全体が轟音を立てて崩れ落ちた。砂煙が舞い上がり、三百年の歴史が瓦礫の山へと変わった。
「間に合った...」
トーマは息を切らしながら、崩れた神殿を見つめた。
「これで、もう誰も遺産には近づけないな」
「ああ」
アシュは三つの遺産を布で包み、背嚢に収めた。
「とにかく、エルムヘイヴンに戻ろう」
三人は森を抜け、荷馬車が待つ場所へ戻った。既に日は沈み、夜の帳が降りていた。
———
エルムヘイヴンに戻ったのは、翌日の昼過ぎだった。ミラとリアが出迎え、エリーゼも元気そうに手を振っていた。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
アシュは疲れた笑みを浮かべた。だが、ミラは彼の顔を見て驚愕した。
「アシュさん...その顔...!」
痣は顔の半分を覆い、左目の周囲まで達している。まるで、黒い仮面をつけているかのようだった。
「大丈夫だ。気にするな」
「気にしないわけないでしょう!」
ミラは涙を浮かべた。
「こんなに...こんなに広がって...!」
リアも震える声で言った。
「アシュさん、もう力を使わないでください。お願いします」
「分かってる」
アシュは優しく微笑んだ。
「でも、まだやることがある」
ギルドの執務室に全員が集まった。アシュは三つの遺産をテーブルに並べた。生命の聖域、死の境界、時の揺り籠。三つは静かに光を放ち、互いに共鳴している。
「これが、神官王の三つの遺産だ」
アシュが説明を始めた。
「これらが揃うことで、完全なる生命の器が完成する。それは、生と死と時を操る、究極の力だ」
「そんな力が...」
ミラは息を呑んだ。
「でも、それを使えば、アシュさんは...」
「死ぬ」
アシュは静かに言った。
「全ての生命力を吸い取られる。それが、代償だ」
室内が静まり返った。
「だから、俺はこれを使わない」
アシュは続けた。
「だが、ヴォイドは必ずこれを狙ってくる。俺たちは、これを守らなければならない」
「どうやって守る?」
トーマが聞いた。
「このままギルドに置いておけば、ヴォイドが襲ってくる。町の人々も危険に晒される」
「分かってる」
アシュは考え込んだ。
「だから、王都に協力を求める。レオナルドと王国騎士団に、遺産を守ってもらう」
「それは賢明だ」
オズワルドが頷いた。
「だが、本当に王国を信用できるのか? 院長は、遺産を研究したがっていた」
「リスクはある」
アシュは認めた。
「でも、他に選択肢がない。それに、レオナルドは信用できる」
その時、ギルドの扉が激しく叩かれた。ミラが急いで扉を開けると、息を切らした町の少年が立っていた。
「大変です! 町の外に、黒い集団が!」
「何だと!?」
全員が立ち上がった。
アシュは窓から外を見た。町の外れに、黒いローブを纏った集団が並んでいる。その数は、少なくとも三十人以上。
「ヴォイドだ...!」
「こんなに早く...!」
トーマが剣を抜いた。
「準備する時間もなかったのか」
「彼らは、遺産が揃ったことを知っている」
オズワルドが冷静に言った。
「恐らく、神殿の崩壊を見ていたんだ」
アシュは深く息を吸った。
「みんな、戦闘準備だ。町の人々を避難させろ」
「了解!」
全員が動き出した。ミラは町の人々に避難を呼びかけ始め、リアは弓の準備をした。トーマとオズワルドは武器を手に取り、アシュは三つの遺産を背嚢に収めた。
ギルドの外に出ると、黒い集団が既に町の入口に迫っていた。先頭に立つのは、傷だらけの顔をしたダミアンだった。
「アシュ・ルーンフォード! 遺産を渡せ!」
ダミアンが叫んだ。
「そうすれば、町は傷つけない!」
「断る!」
アシュは前に出た。
「遺産は、お前たちには渡さない!」
「ならば、力づくで奪うまでだ!」
ダミアンが手を上げると、黒ローブたちが一斉に魔法を放った。炎、氷、雷。様々な属性の魔法が町へ飛んでくる。
「させるか!」
アシュはライフ・サンクチュアリを展開した。巨大な白い障壁が町を覆い、魔法を全て弾き返す。
だが、その瞬間、アシュの身体に激痛が走った。
「ぐあっ...!」
彼は膝をついた。右腕の痣が脈打ち、熱を持っている。
「アシュ!」
ミラが駆け寄ろうとしたが、アシュは手を上げて制した。
「大丈夫だ...まだ、戦える...!」
彼は立ち上がり、再びライフ・サンクチュアリを展開した。だが、その光は以前より弱く、不安定だった。
「お前の力は、既に限界だ」
ダミアンが冷たく笑った。
「もう、長くは持たない。観念しろ」
「黙れ...!」
アシュは歯を食いしばった。
その時、町の外から別の声が響いた。
「ヴォイド! そこまでだ!」
全員が振り返った。街道の向こうから、銀色の鎧を纏った騎士団が現れた。その先頭には、レオナルド・ゴールドマンが馬に乗っていた。
「レオナルド!」
アシュが驚いて叫んだ。
「アシュ、間に合ったようだな」
レオナルドは馬から降り、剣を抜いた。
「我々アストラルクラウンが、お前を支援する」
彼の後ろには、二十人以上のギルドメンバーと、王国騎士団の兵士たちが控えていた。
「ちっ...邪魔が入ったか」
ダミアンは舌打ちした。
「退却だ! 今日のところは引く!」
黒ローブたちは煙幕を張り、素早く撤退していった。
煙が晴れた時、ヴォイドの姿はもう消えていた。
———
「レオナルド、助かった」
アシュは安堵の息を吐いた。
「礼には及ばない」
レオナルドは微笑んだ。
「お前からの連絡を受けて、急いで駆けつけた」
「連絡...?」
アシュは首を傾げた。
「俺は、連絡していないぞ」
「ミラ嬢からだ」
レオナルドはミラを見た。
「彼女が、お前の身を案じて連絡をくれた」
アシュはミラを見た。彼女は少し恥ずかしそうに頷いた。
「ごめんなさい、勝手に...でも、アシュさん一人では危険だと思って...」
「ミラ...」
アシュは胸が熱くなった。
「ありがとう」
レオナルドは真剣な表情で言った。
「アシュ、今後のことを話し合おう。ヴォイドは必ず戻ってくる。我々は、準備をしなければならない」
「ああ」
アシュは頷いた。
そして、ライフ・サンクチュアリと王国の戦いが、新たな局面を迎えようとしていた。
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