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Episode:01
Dreamer(2)
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「やってみい。」
飄々とした第一声にミツキは脳天を貫かれた衝撃を受けた。
「俺がこのちっぽけなラジオの責任者なんや。お前は何も考えんと、好きにやったらええがな。やけど、最後までケジメはつけなあかん。サクライいう人が一縷の望みをお前に託したんや。いつ終わってもおかしくないこのラジオやからこそ、お前にはこの一時間に全力投球して欲しいんや。別にお前に解決できるとは微塵も思うとらんし、そんなことお前に期待して起用した訳とちゃう…。」
「え…、でも…。」
「来週まで時間はある。ま、頑張ってみいや。」
岡のその非情な背中はみるみる小さくなり、やがて見えなくなっていた。
さっきまでラジオ放送していたとは思えないくらい静寂なスタジオでミツキは濃い霧に包まれていた。もう何も見えない。分からない。広大な宇宙を矮小な隕石になって漂う、あるいは深海の暗闇を灯火一つ持たず泳ぐ、そんな感覚だ
何をどうすれば正解なの?どうすれば彼の期待に背かない結果になるの?逡巡と同時に憤懣していた。訳の分からない番組、解決不能の相談、意味不明なディレクター…。今考えると絶対怪しいというのに何故ド素人である自分は承諾してしまったんだろう。まあ、承諾した以上最後まで手を抜くつもりは無いが。
「とりあえずこれまでの情報を整理するとこんな感じですかね?」
「①サクライさんは誰かの人生を追体験するような夢を見始める
②その夢の現在の季節は冬でご自身は入院されていて植物状態である。
③夢の中の正確な日時は不明。
④その夢での死が現実世界の死にもつながると危惧している。」
この相談内容の肝は夢が現実世界に干渉するか否かだ、とそう普通の人なら考える。それに対し、ミツキは確実にこの人は死ぬだろうと解釈する。邯鄲の夢のようなそんな生易しいものじゃない。中国では人生を四分割して青春、朱夏、白秋、玄冬という季節で表現する。この人の夢の場面がそう移り変わったように。それに声だけでも前回より生気を失っているのは明白だった。
「一つ質問良いですか?どうして現在の夢は植物状態であるにもかかわらず、まるで第三者のような視点からの物言いなのでしょう?追体験の夢ならば恐らく現在は何も見えないのではないでしょうか。」
「……。分かりません……、ただ、そういうものなんです…。自分でもよく分かってはいないんですが、冬の場面に切り替わってからはずっとその視点でした。」
「なるほど…。えー…、今日はですね。こちらとしてもただサクライさんの話に耳を傾けるだけでは何も前に進まないということで、今回はこちらから切り込ませて頂きます。」
ミツキはこれまでの沈んだ空気を払拭するためにわざと声を張った。
「単刀直入に言います。サクライさんあなたはすでに亡くなっています。というか、多分逆なんだと思います。あなたは多分私の考察では病室の中の植物人間こそがあなたの本体だったんだと思います。えー、信じるには無理があるかもしれませんがその推論が一番辻褄が合うんです。」
「……。 続けてください……。」
サクライは意外にも取り乱すことはなかった。彼にもその自覚が少しはあったということなのだろうか。
「あなたの夢は走馬灯だったんです。だから五感や記憶もあなた自身の経験だったから鮮明だったというわけですね。あなたが他人の夢だと言い張ったのは病気の過程であなたはあなた自身の記憶を失っていたからだと考えられます。」
ミツキは得意げに続ける。
「んで、あなたが今この電話で話せているのはおそらく今が丑の刻…」
(…プツッ…)
…
すかさず岡はCMを流した。ミツキが調整室の方を見ると岡が腕で×印を作っているのが見えた。どうやら今週はここまでらしい。
飄々とした第一声にミツキは脳天を貫かれた衝撃を受けた。
「俺がこのちっぽけなラジオの責任者なんや。お前は何も考えんと、好きにやったらええがな。やけど、最後までケジメはつけなあかん。サクライいう人が一縷の望みをお前に託したんや。いつ終わってもおかしくないこのラジオやからこそ、お前にはこの一時間に全力投球して欲しいんや。別にお前に解決できるとは微塵も思うとらんし、そんなことお前に期待して起用した訳とちゃう…。」
「え…、でも…。」
「来週まで時間はある。ま、頑張ってみいや。」
岡のその非情な背中はみるみる小さくなり、やがて見えなくなっていた。
さっきまでラジオ放送していたとは思えないくらい静寂なスタジオでミツキは濃い霧に包まれていた。もう何も見えない。分からない。広大な宇宙を矮小な隕石になって漂う、あるいは深海の暗闇を灯火一つ持たず泳ぐ、そんな感覚だ
何をどうすれば正解なの?どうすれば彼の期待に背かない結果になるの?逡巡と同時に憤懣していた。訳の分からない番組、解決不能の相談、意味不明なディレクター…。今考えると絶対怪しいというのに何故ド素人である自分は承諾してしまったんだろう。まあ、承諾した以上最後まで手を抜くつもりは無いが。
「とりあえずこれまでの情報を整理するとこんな感じですかね?」
「①サクライさんは誰かの人生を追体験するような夢を見始める
②その夢の現在の季節は冬でご自身は入院されていて植物状態である。
③夢の中の正確な日時は不明。
④その夢での死が現実世界の死にもつながると危惧している。」
この相談内容の肝は夢が現実世界に干渉するか否かだ、とそう普通の人なら考える。それに対し、ミツキは確実にこの人は死ぬだろうと解釈する。邯鄲の夢のようなそんな生易しいものじゃない。中国では人生を四分割して青春、朱夏、白秋、玄冬という季節で表現する。この人の夢の場面がそう移り変わったように。それに声だけでも前回より生気を失っているのは明白だった。
「一つ質問良いですか?どうして現在の夢は植物状態であるにもかかわらず、まるで第三者のような視点からの物言いなのでしょう?追体験の夢ならば恐らく現在は何も見えないのではないでしょうか。」
「……。分かりません……、ただ、そういうものなんです…。自分でもよく分かってはいないんですが、冬の場面に切り替わってからはずっとその視点でした。」
「なるほど…。えー…、今日はですね。こちらとしてもただサクライさんの話に耳を傾けるだけでは何も前に進まないということで、今回はこちらから切り込ませて頂きます。」
ミツキはこれまでの沈んだ空気を払拭するためにわざと声を張った。
「単刀直入に言います。サクライさんあなたはすでに亡くなっています。というか、多分逆なんだと思います。あなたは多分私の考察では病室の中の植物人間こそがあなたの本体だったんだと思います。えー、信じるには無理があるかもしれませんがその推論が一番辻褄が合うんです。」
「……。 続けてください……。」
サクライは意外にも取り乱すことはなかった。彼にもその自覚が少しはあったということなのだろうか。
「あなたの夢は走馬灯だったんです。だから五感や記憶もあなた自身の経験だったから鮮明だったというわけですね。あなたが他人の夢だと言い張ったのは病気の過程であなたはあなた自身の記憶を失っていたからだと考えられます。」
ミツキは得意げに続ける。
「んで、あなたが今この電話で話せているのはおそらく今が丑の刻…」
(…プツッ…)
…
すかさず岡はCMを流した。ミツキが調整室の方を見ると岡が腕で×印を作っているのが見えた。どうやら今週はここまでらしい。
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