人間不信の黒鷹王子は捨てられ令嬢に手懐けられる

poi

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17 接触を図ろうと思う

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 (クロヴィスside)


 王都の外れに借りたアパートメントの一室に防音魔法を二重に掛け、三人はお互いの調査結果を照らし合わせていた。


 コリンヌに再び接触を図り新たな証拠を手に入れた。

 「父の隠してある手紙の一部です。こちらは母が物忘れの薬を飲ませた後の物で、父に読まれる前に母が回収したものです。母と父に見つからないように数通しか持ち出せませんでしたが、こちらはお役に立つでしょうか?」

 ──アングラード侯爵……軍務副長官……大物じゃないか……

 「コリンヌ嬢助かる。これがあれば証拠になる」

 「私にはこれくらいしかできません。私と母はいくら罰せられても構いません。しかし姉は私たち家族の被害者です……殿下……どうかお姉さまをよろしくお願い致します」


 ────


 一方、マニエ家の森について調べていたアルノーも色々と調べが進んでいた。

 まずクロヴィスの読み通り隠蔽魔法は隣国シュメルの魔法で間違いなかった。そして驚くべきことに、これまた厳重に隠蔽された転移魔法陣まであった。

 転移魔法陣はおそらくこの研究所・栽培施設と使用者を繋ぐ陣。
 軽く分析したが、使用者本人の魔力でしか動かない、登録型の陣のようだった。


 シュメルとの関係について調べると、デボラは子爵家の次女で、シュメルの薬学専門科に留学していた才女だった。

 アルノーは密偵は専門外なのだが、シュメルに赴いた。
 そして、持ち前のコミュニケーション能力と酒の強さで魔術師と接触を図ったところ、思いがけずに魔法薬学の専門家とも知り合いになった。


 研究所で見つけた薬のサンプルらしきものを見せると、すごい勢いで食いついた。

 『──素晴らしい!これはどちらで?これは魔術師や貴族の夢の薬ですよ!!!!おそらくまだ途中なのでしょうが、開発者はさぞ優秀に違いない!!これが完全に完成して、安定して製造できたなら叙爵ものの快挙ですよ!』



 「──結論から言いますと、デボラもまた被害者なところがありますね。彼女も処罰は免れませんが、現時点でかなりの研究結果を残しているだろうことが予測されます。平民に落として国外追放するのは我が国にとって損ですから、何らかの役職を与え、我々の目に届く範囲で監視しながら飼うのが一番かと」

 「たしかに、それだけ優秀ならば国外追放したところで、シュメルで研究者になるだろうな。引く手数多だろう」


 アルノーと二人頷きあった。


 ────


 「二人とも俺のわがままに付き合ってもらい感謝する。デボラがどうやらこちら側ということで……接触を図ろうと思う」

 ──アルベルティーヌはどうしようか……
 タイミングを見てオーバン卿に根回ししておくか……いや、一番はベルの気持ちが大事だよな。


 クロヴィスが考えていることがお見通しだったのか、エリクは提案した。

 「あのさぁ、もうおそらくアルベルティーヌ嬢を傷つけることはなさそうだし……アルベルティーヌ嬢を隠して同席させたら?デボラには森の研究所に転移してもらえばいいじゃん?」

 「まぁこちらで調べたことと、デボラの視点での話との擦り合わせの機会は欲しい。それはありだな。アルベルティーヌも、デボラの話を聞いた上で、自分がどうしたいか考える時間が要るだろうしな」


 ──はいっ!

 それまで黙って聞いていたアルノーが元気に手を挙げて提案した。

 「では、僕が擦り合わせを行いますので、エリク先輩はアルベルティーヌ嬢を上手いこと連れてきて隠してもらっていいですか?僕が上手いことデボラの話を引き出すんで!」

 「──おい待て!何故そこに俺が入っていない」

 「いや、殿下はせっかく人間の姿に戻れたんですし、運命の女性と再会するなら、それこそ感動的な!運命的な!ドラマティックな再会が良いじゃないですか!?」


 アルノーの突飛な提案に深く皺を寄せ、眉間を指でグリグリと揉みこんだ。

 「あのな……感動的な、運命的な再会、ドラマティックな再会ってなんだよ……まず俺はベルのことを気にしつつも自分のことで精一杯でずっと放置してしまっていたんだぞ?……そんな男が今更愛する資格なんてないだろ」


 俯いた俺にエリクは痛烈なデコピンを喰らわせた。

 「愛する資格だなんだって、お前それは逃げだろ。反省しているんならこの件ビシッと締めて、振り向かせて生涯愛し尽くしてやる!くらいの気概を見せろ」

 「エリク先輩の言う通りですよ!一番大事なのはアルベルティーヌ嬢の気持ちじゃないですか!──まっ、僕は演出は無理なので、エリク先輩が考えてくれますよ!」


 ──逃げだと言われても、俺はずっと何もしてやれなかったのに、今更どうやって顔を合わせればいいのだろう。
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