2 / 138
プロローグ
秘密を知ってしまった顛末
しおりを挟む
睡眠から覚め、うっすら瞼を開く。
目の前に広がるのはいつもとは違う景色。視界に映る窓はいつにもまして広い気がする。窓から漏れる日差しは眩しくも暖かい。
朧げながらも記憶を遡っていく。
そうだ。入学式中に目眩を引き起こして保健室に来たんだった。
今は一体何時だろう。ポケットにしまってあるスマホを取り出すために状態を起こした。
「おはよう。気分はどうだ?」
ふと、横から声が聞こえた。
反射的に顔を向けると、一人の女性がベッドの足を置く側で椅子に座っていた。
金髪のショートヘア。一重の瞼に、人を試すような余裕さを感じる瞳。整った顔立ちは美人と言わざるを得ない。
ボタンのしまっていない白衣から垣間見える胸は立派なものだ。
小さすぎることもなければ、大きすぎることもない。すらっとした体に対して見事にマッチしている。
「そいつは良かった。まさか入学早々、保健室で寝ている奴がいるとは思わなかった」
「すみません。目眩が激しかったので、先生を探すに探せず。寝るくらいなら大丈夫かと思ってました」
「サボりを疑っているわけじゃないさ。それに、先生が心配して保健室に来たから、その時時に事情は聞いたよ」
「そういえば入学式はどうなりましたか?」
「とっくの昔に終わったよ。今はみんな帰ってしまったよ。部活動は除いてな」
そんなに眠ってしまっていたのか。
少しまずいことになったかもしれない。入学式はともかく、教室でのホームルームを過ごせなかったとなると孤立する可能性が出てきた。
クラスで自己紹介をしていないことを願うばかりだ。
「ところで少年」
明日以降どう接しようか考えていると、先生が僕を呼んだ。
大人の女性だ。彼女から見れば僕はまだ子供なのだろう。成人してないのだから無理もない。
僕は再び彼女に顔を向ける。
先生は片手で持った文房具で、もう片方の手のひらをパチパチと叩いていた。
あれは……芯の出ていないカッターナイフだ……
「ここで休んでいる時に、何か変な音を聞かなかったか?」
彼女は僕の顔を見ずに戯れている自分の手を注視する。
変な音。僕は寝る前の記憶を辿る。
確か、僕が入眠する前に彼女が保健室に入ってきたような気がした。
それで誰も来ないのをいいことにパソコンで遊んでたんだっけ。
あれは……何のゲームだったか……
「流れたのは可愛い女の子の声だった件?」
刹那、密閉された部屋にも関わらず突風が巻き起こった。
僕は首元に添えられたカッターナイフを見て戦慄する。風が発生する瞬間、微かにカチカチと芯が出る音がした。
女性は僕と一緒にベッドに座っていた。
僕と彼女を阻むカッターナイフさえなければ萌えシチュエーションだったかもしれない。しかし、これは胸の高鳴るシーンではない。ラブコメではなくサスペンスだ。いや、ホラーとでも言おうか。
「不正解だと言いたいところだが、最初と最後が合っているのでオセロ形式に従って正解としよう」
先生は意味の分からない言葉を並べて僕の回答を正解にする。彼女のオーラから明らかな殺意が感じ取れる。
「正解すると何があるんですか?」
「ご褒美に決まっているだろ。美人である私に犯される」
「その犯されるは『わいせつ罪』ですか?」
女性は不敵に笑うと、僕の腰あたりに手を回す。
これはもしかして本当にわいせつ……
「残念。『傷害罪』です」
ですよね。
カッターナイフの芯の冷たい感触が首に触れる。これを横にして引いたものなら、僕の人生ゲームはゲームオーバーだ。
「先生がやっていたゲームなら、僕が秘密を暴露しない条件に、先生に淫らな行為をすると思うですが……何で僕の立場が危ういんでしょうか?」
「よく知ってるな。18歳未満は閲覧不可能なはずだが」
「どの時代もそんなのに従う子どもなんていませんよ」
「そうか。残念。現実は非情だったな。私が社会的に消される前に、君を存在ごと消してしまえば何もなかったことになるんだ。わざわざ淫らな行為をするまでもない」
カッターナイフが僕の首元から離れる。だが、安心はできない。むしろ、危険になったとでも言えよう。高校入学と同時に人生卒業か。長かったような短かったような。
「しかし、私も流石に人の命は奪えない」
どうやら先生は僕にチャンスをくれるらしい。
「保健室の先生ですもんね」
「いや、刑務所には行きたくないからな」
「真っ当な考えですね。じゃあ、どうするんですか?」
「君はさっき、子どもは18禁を見ているような言い方をしていたな。つまり、君も見ているということでいいか?」
ここで嘘をつけばチャンスは完全に失われるだろう。
「一応」
「漫画、ゲーム、動画のうちどれだ?」
「……全部です」
「なら、その中で君のベスト5を見せてくれ。スマホは持っているだろ。それでチャラだ」
なるほど。秘密の共有ってわけか。僕が暴露すれば、こちらも暴露すると。
この状況では従わずにはいられない。仕方なく僕はスマホを取り出し、パスワードを解除した。
目の前に広がるのはいつもとは違う景色。視界に映る窓はいつにもまして広い気がする。窓から漏れる日差しは眩しくも暖かい。
朧げながらも記憶を遡っていく。
そうだ。入学式中に目眩を引き起こして保健室に来たんだった。
今は一体何時だろう。ポケットにしまってあるスマホを取り出すために状態を起こした。
「おはよう。気分はどうだ?」
ふと、横から声が聞こえた。
反射的に顔を向けると、一人の女性がベッドの足を置く側で椅子に座っていた。
金髪のショートヘア。一重の瞼に、人を試すような余裕さを感じる瞳。整った顔立ちは美人と言わざるを得ない。
ボタンのしまっていない白衣から垣間見える胸は立派なものだ。
小さすぎることもなければ、大きすぎることもない。すらっとした体に対して見事にマッチしている。
「そいつは良かった。まさか入学早々、保健室で寝ている奴がいるとは思わなかった」
「すみません。目眩が激しかったので、先生を探すに探せず。寝るくらいなら大丈夫かと思ってました」
「サボりを疑っているわけじゃないさ。それに、先生が心配して保健室に来たから、その時時に事情は聞いたよ」
「そういえば入学式はどうなりましたか?」
「とっくの昔に終わったよ。今はみんな帰ってしまったよ。部活動は除いてな」
そんなに眠ってしまっていたのか。
少しまずいことになったかもしれない。入学式はともかく、教室でのホームルームを過ごせなかったとなると孤立する可能性が出てきた。
クラスで自己紹介をしていないことを願うばかりだ。
「ところで少年」
明日以降どう接しようか考えていると、先生が僕を呼んだ。
大人の女性だ。彼女から見れば僕はまだ子供なのだろう。成人してないのだから無理もない。
僕は再び彼女に顔を向ける。
先生は片手で持った文房具で、もう片方の手のひらをパチパチと叩いていた。
あれは……芯の出ていないカッターナイフだ……
「ここで休んでいる時に、何か変な音を聞かなかったか?」
彼女は僕の顔を見ずに戯れている自分の手を注視する。
変な音。僕は寝る前の記憶を辿る。
確か、僕が入眠する前に彼女が保健室に入ってきたような気がした。
それで誰も来ないのをいいことにパソコンで遊んでたんだっけ。
あれは……何のゲームだったか……
「流れたのは可愛い女の子の声だった件?」
刹那、密閉された部屋にも関わらず突風が巻き起こった。
僕は首元に添えられたカッターナイフを見て戦慄する。風が発生する瞬間、微かにカチカチと芯が出る音がした。
女性は僕と一緒にベッドに座っていた。
僕と彼女を阻むカッターナイフさえなければ萌えシチュエーションだったかもしれない。しかし、これは胸の高鳴るシーンではない。ラブコメではなくサスペンスだ。いや、ホラーとでも言おうか。
「不正解だと言いたいところだが、最初と最後が合っているのでオセロ形式に従って正解としよう」
先生は意味の分からない言葉を並べて僕の回答を正解にする。彼女のオーラから明らかな殺意が感じ取れる。
「正解すると何があるんですか?」
「ご褒美に決まっているだろ。美人である私に犯される」
「その犯されるは『わいせつ罪』ですか?」
女性は不敵に笑うと、僕の腰あたりに手を回す。
これはもしかして本当にわいせつ……
「残念。『傷害罪』です」
ですよね。
カッターナイフの芯の冷たい感触が首に触れる。これを横にして引いたものなら、僕の人生ゲームはゲームオーバーだ。
「先生がやっていたゲームなら、僕が秘密を暴露しない条件に、先生に淫らな行為をすると思うですが……何で僕の立場が危ういんでしょうか?」
「よく知ってるな。18歳未満は閲覧不可能なはずだが」
「どの時代もそんなのに従う子どもなんていませんよ」
「そうか。残念。現実は非情だったな。私が社会的に消される前に、君を存在ごと消してしまえば何もなかったことになるんだ。わざわざ淫らな行為をするまでもない」
カッターナイフが僕の首元から離れる。だが、安心はできない。むしろ、危険になったとでも言えよう。高校入学と同時に人生卒業か。長かったような短かったような。
「しかし、私も流石に人の命は奪えない」
どうやら先生は僕にチャンスをくれるらしい。
「保健室の先生ですもんね」
「いや、刑務所には行きたくないからな」
「真っ当な考えですね。じゃあ、どうするんですか?」
「君はさっき、子どもは18禁を見ているような言い方をしていたな。つまり、君も見ているということでいいか?」
ここで嘘をつけばチャンスは完全に失われるだろう。
「一応」
「漫画、ゲーム、動画のうちどれだ?」
「……全部です」
「なら、その中で君のベスト5を見せてくれ。スマホは持っているだろ。それでチャラだ」
なるほど。秘密の共有ってわけか。僕が暴露すれば、こちらも暴露すると。
この状況では従わずにはいられない。仕方なく僕はスマホを取り出し、パスワードを解除した。
20
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる